2013年1月18日金曜日

鈴蘭 4 - 25 Vol. 1



4月24日 金曜日 朝 曇り  伊豆 

神山は目覚ましをセットしておいたが早く目が覚め
亜矢子を起こさないようにそろりとベッドを抜け出した
冷蔵庫からビールを出し テラスでタバコを吹かし呑んだ
結局昨夜は亜矢子が起きなかったので神山も早く寝る事が出来た
今朝は昨日と違って少し曇っていた 上原の什器搬入を考えると
このままもって欲しいと案じるしかなかった
天候を気にして部屋でTVを音声無しで見ていると今日は雨が
降らないようだったが 明日は雨が来る可能性が高かった 
車を手配しておいて良かったと思った
暫くすると亜矢子が目を覚まし
「ごめんなさい わたしどうしたの 寝ちゃったのね」
「おはようございます どう 頭は痛くない?」
「ええ なんか急に酔いが廻ったみたいで ごめんなさい」
「いいよ そんなに謝らなくても それより今日は曇りだ
一日持つといいね」
「そうね 雨具は折りたたみの傘しか持ってこなかったの」
「うん大丈夫だよ 降らないさ ふたりの行いがいいから」
神山は亜矢子の寝ているベッドに入り込み キスをした
亜矢子も答え上になってキスをした 
「ねぇ 大事なところ なめて」
亜矢子は神山の顔を跨ぐ格好で秘所を押し付けてきた
神山は指と唇でクリトリスを愛撫したが 更に強くそして前後に動いて
自分でリズムを取っていた 空いた手で神山のおちんちんを触り始めた
このままでは何も出来ないので 亜矢子を倒し神山が上になり
亜矢子のクリトリスを愛撫した
指と舌先で攻撃すると喘ぎ声を漏らし始めた
亜矢子も必死に口と両手で肉棒を大きく硬くしていった
突然亜矢子が体を入れ替え上になると 両手でキリをまわすマッサージを
してきて 唇は亀頭をちょろちょろとしゃぶりはじめた
神山も指を膣に入れGスポットあたりを刺激した
もう秘所はぐちゃぐちゃになり
「ねぇ 入ってきて 指じゃいや お願い」
神山は亜矢子を下にして ゆっくりと挿入した
「ああ 気持ちいいわ あなた ほんとよ 気持ちいいの 可笑しいわ」
少しづつ最初はゆっくりと動かしていった
亜矢子も膣の中が感じてきたのか腰を使い始めた
二人の腰の使い方がリズム良くなってきた時 亜矢子が
「だめ あなた いくわ ああ あっ うっ」
神山が亜矢子のリズムを壊し早くすると
「ああっ うっ だめよ そんなに ほんと」
亜矢子の膣が段々と窮屈になってきてきた
神山も段々と昇天が近づいてきてストロークを早く大きくすると
「だ め いく ああっ い・く・わ、、、、」
亜矢子は躰を反らしてピクピクとした時に神山も昇天してしまった
神山がぐったりと亜矢子の上にかぶると亜矢子の手が神山を抱きしめた
神山が少し元気になったときに 膣から肉棒を抜くと
「ああっ 出て行く だめ 出て行かないで」
亜矢子は腕と足で神山の腰を抑えぬけないようにした
「こら亜矢子シャワーを浴びようよ」
「もう少しだけ お願い」
そう言っていると腰を少しずつ動かし始めた 
神山は完全に硬度を失っていなかったので気持ちよかった
亜矢子の膣も締まったままなので 肉棒は再び元気になった
神山も腰を動かし始め 亜矢子とリズムを合わせると
気持ちが良くなったのか 先ほどとは違う喘ぎ声を漏らすようになった
「あっ きのうから可笑しいわ 今までに無いきもちよさ あっ」
神山は上体を後ろへ反らしピローを亜矢子の腰の下に入れ
Gスポットを刺激すると
「ねぇ もう だめ いきそう ねぇ、、、」
神山は下から同じリズムで上につついた
亜矢子は膣をきゅんと閉めながら躰を反らして
額にはうっすらと汗が滲んで髪の毛がまとわりついた
「あなた い・い・ ほんとよ いいわ だめっ、、、」
神山は更に速く動かし膣の奥まで突き上げると
「あっ あっ うっ ぐっ い・ぐ・ あっ」
膣が更に窮屈になり神山は
「でるぞ」
「ぎ・で うっ ぐっ ああっ」
神山と亜矢子は一緒に昇天してしまった
二人とも動けず神山は亜矢子の上に倒れた
亜矢子はよほど気持ちよかったのか両足を開き投げ出していた
神山が先にうごき始め亜矢子の躰からおり仰向けになった
亜矢子が神山の胸に乗ってきて 
「ありがとう 一杯してくれて嬉しいわ」
「こちらこそ 気持ちよかったよ 膣が狭くてちぎれそうだったよ」
「あんなに大きく硬くなって嬉しいわ こんな躰にしたのはあ・な・た・よ」
ふたりはベッドの中でキスを繰り返していた
「ねぇ 私髪を流したいから 屋天風呂に行きたい」
「うん ぼくも洗いたいな 昨日のままだし」
神山と亜矢子は部屋の確認をして屋天風呂へ向かった
「朝食は少し遅れても良いや 30分くらいで出られる?」
「ええ 多分大丈夫よ」
「うん 余り気にしないでゆっくり入っておいでよ
僕が先だと思うから部屋で待っているから ねぇ」
「分りました お願いします」
屋天風呂の入り口でキスをして分かれた

貴重品ロッカーにロレックスと部屋のカードキーを入れ暗証番号を
入力して脱衣所へ行った
この時間帯は朝食の関係で誰も入浴客は居なかった
神山は簡単に躰を流して 海の見える屋天風呂に入った
熱い温泉が躰の隅々まで染み渡った
(あ~ 早いな 亜矢子ともこれで暫く逢えないのか 寂しいな
今日は亜矢子の言うことを全部聞いてやろう)
神山は昨日高校時代の辛い思いを思い出させてしまった反省で
二度と高校時代のことは封印と決めた 
せめてもの慰めとして今朝 明るい亜矢子の顔だった
暗い表情だったら 神山は亜矢子に逢えなくなると思っていた

一方亜矢子は
入り口で貴重品ロッカーに時計と部屋のカードキーを入れ暗証番号を
入力して脱衣所へ行った 浴衣の下は何もつけていないので
タオルで前を隠しそのまま屋天風呂へ行き簡単に流し入った
だれも居ない屋天風呂だったが先日のように寂しくは無かった
海を見ていると父親の事を思い出すが 忘れよう忘れようと
思っていたから余計悲しくなって来るんだと思った
こうやって毎日海を見ていると 直ぐそこで微笑んでいる父が見え
全然寂しくなくなった
(昨夜は 神山さんに対して悪い事したわ 昨夜の涙で
なんか吹っ切れたような気がするわ 今朝 笑顔で
良かった あれだけ一杯入って貰ったから嬉しいな
早く逢いたいな そうだ 熱海で赤いショーツを買って
また宝くじ買おうかしら 今度は神山さんの宝くじ)
亜矢子は熱海で赤いショーツを買って穿き宝くじを買うつもりでいた

神山は頭を洗って体も隅々まで洗った おちんちんを洗う時
感覚がなくなっていたのでもう一度指でつまむと痛かったが
少し麻痺しているようだった
そうだな結構使っているから仕方ないかと思った
石鹸を流すと再び屋天風呂に入り体を温めた
昨日のように朝日が見えないが これはこれで別の雰囲気を楽しめた
(そうだ 熱海でデパートがあったけど あそこで赤いショーツを
買って 宝くじでも買うか まあ2度と無いだろうが夢だから)
神山も熱海のデパートで赤いショーツを買う事を決めた
風呂から出ると6階の自動販売機でビールを買い部屋に戻った
亜矢子はまだ戻っていなかった 買ってきたビールを持ってテラスにある
椅子に座ってタバコを吹かしながらビールを呑んだ
神山は赤いショーツを買うにしても熱海のデパートが
何時に開店するのか気になってフロントに聞いた
10時開店と教えてくれた
ここを8時30分に出れば充分なので結構ゆっくりできると思った
テラスに戻りかけた時 亜矢子が帰ってきた
「どうだった いい湯加減だったよ男風呂は」
「ええ 女風呂も熱くなく入りやすかったわ」
神山は冷蔵庫からビールを出して亜矢子に渡した
「ああ美味しいわ 風呂上りの一杯 ですね」
ふたりは笑った
「ねぇ あなた熱海にデパートがあるでしょ 開店時間聞いたでしょ」
「うん なんで?」
「じつは私が聞いていた時だったの」
また顔を見つめあい笑った
「もしかして もしかして あ・か・ぱ・ん?」
「そうよ あなたの赤パン」
「えっ 亜矢子の赤パンだよ」
「いいえ あなたのよ」
また笑った
風呂上りでつやつやしている亜矢子の顔がほんのり赤くなった
「ねぇ わたし このまんまでいい それとも化粧したほうがいい」
「なに言ってるの このままで十二分大丈夫だよ」
「嬉しいわ」

神山と亜矢子はレストランへ行った 昨日と同様に
海の見える窓際が席だった
トレーを持って取り皿に食べたい物をどんどん乗せていった
亜矢子は昨日と同じ和食がメインだが 少し洋食メニューものせた
神山はビールを頼み亜矢子が席につくのを待っていた
亜矢子はお味噌汁を2杯持ってきたので
「あとでお代わりすれば良いのに」
「これはあなたの分よ アサリだからお酒飲む人には良いでしょ」
「そうか ありがとう」
ビールが届いたたので 乾杯をして食べた
そんなに運動はしていなかったが よく食べられた
亜矢子も昨日の朝より食べている
温泉玉子が美味しいので お代わりに行った時無くなっていた
変りにベーコンエッグにしようと並んでいると葉山と高柳に会った
「おはようございます 昨夜はありがとうございました」
「いえ こちらこそ 僕たちは今日帰ります」
「そうですか 残念ですね 私たちは明日帰ります
又何処かでお会いした時は 宜しくお願いします」
「こちらこそ では」
神山はベーコンエッグを取り皿にのせ席に戻った
「今ね葉山君と高柳君に会ったよ 明日帰るんだってさ」
「へぇ~ まあ楽しみ方色々ありますからいいでしょ」
亜矢子は少しあきれた感じでしゃべった
神山はお昼の事も有るので8文目でやめた しかし食べたほうだった
亜矢子もおなか一杯にするとお昼が美味しくなくなるからと言ってやめた

ふたりはレストランを後に部屋に戻った
神山が亜矢子に抱きつくと
「だめです」
「だっていいだろ 大きいのだめ」
「だって 可笑しいわ なんか中に貴方が入っているようで だめ」
「そうか亜矢子もなんだ ぼくも風呂でちんちんを洗ったら
麻痺していて 感覚がなくなっているんだ」
「もう だったらだめでしょ 二人とも使いもんにならないんだから」
「わかった ごめんなさい 謝るよ」
部屋の中が一瞬静かになった時 亜矢子の携帯電話が鳴った
「はい 桜川です おはようございます」
神山は聞くのを避けるためにテラスに出てタバコを吹かした
電話が終ったのか声が聞こえなくなったので部屋に入った
亜矢子が
「今 副支配人 橘さんからだったの 緊急で16時から入ってくれと
要請があったの だけど勝手に言われても 私にも予定が有って
ずらせませんって わかった そうしたら18時で何とか出来ないかと
言ってきたわ だから19時だったら行きます でなかったら他の人を
当ってくださいって言ってやったわ ほんと嫌な奴」
「それだけ頼られているんだ 良いじゃないか」
「でも貴方と一緒にいたいわ」
「わかった ごめん」
「だから 帰りは熱海を4時頃だと充分だと思います」
「うん ぼくもその位なら充分間に合う ありがとう 色々と
気を使ってくれて アサリの味噌汁もありがとう 気がつかないからな」
「、、、ばか ばか」 
亜矢子は神山の胸に向かって抱きついて来た 泣いていた
「ほら 折角の美貌が崩れるぞ それでなくとも崩れそうなんだから」
亜矢子は涙顔で神山の顔をじっと見つめ ば~かと言って笑った
「そうしたら 帰る仕度をしよう」
「ねぇ あなた これ受け取って」
「なに」
「うん 私今回 何も出していないでしょ だから」
「いやとっておきなさい 今回僕が全部出すつもりで来ているよ
だから 気にしないで それに外人から貰ったの有るから
結構お釣り来るから大丈夫だよ」
「ほんと ありがとうございます」
「うん 気にしないで」
神山はその分をお母さんに回しなさいと言えなかった
亜矢子は気を取り直し 笑顔で化粧を済ませた
「どう さっきと」
「うん どちらも素敵だ 比べる事出来ないよ」
「上手に逃げたわね ありがとう でも嬉しいわ」
亜矢子はにこにこしてキスをした
神山はフロントに熱海行き電車の発車時刻とタクシーを聞いた
今からタクシーを頼めば充分電車に間に合うと言われタクシーを頼んだ 
「さあ でますよ 浴室にショーツの忘れ物は無いでしょうね」
「あるわけ無いでしょ ちゃんとしまったから」
「じゃあこれは」
浴室を開けるとショーツが掛かっていた 
「えっ いやだ私忘れていたのかしら ごめんなさい」
二人は笑った
亜矢子は何も確認しないでバッグにしまった
「種明かしは 今朝 穿いていたショーツさ」
「もう 探したの でも無いから諦めたのよ もう 貴方が隠したなんて」
「ちがうよ 隠したのはベッド ベッドの脇にこうやって苦しそうになって
挟まっていたんだ 僕が取上げると亜矢子と一緒 すけべって
だから分りやすい浴室に干しておいたんだ これが真相です
うそだと思うんだったらショーツちゃんに聞いてごらん」
「わかった もう ありがとうございます」
こんどこそ部屋を出た二人はフロントで清算しタクシーを待った

暫くするとタクシーが来た事を告げられ伊豆高原駅まで行ってもらう
金曜日の朝なのに観光客は結構いた 若いカップルは少ないが
お年よりの団体とかが多かった 
熱海まで二人分の乗車券を買ってホームで入線を待った
曇りの天気予報だったがすこしづつ明るくなってきた
今日一日降らないで下さいと改めて天にお願いした
電車が入ってきた ここに来る時と同じ様に伊豆急ロイヤルボックスが
連結されていたので
神山と亜矢子は迷わずその車両に移った
発車すると亜矢子は急に口数が少なくなったので心配したが
神山が何を言ってもしょうがないと思い仕事の確認をした
手持ち無沙汰だったのでテーブルの赤いボタンを押して
女性の車掌を呼んだ
「ウイスキーの水割りセット2つお願いします」
「はい 畏まりました」
と言って準備して直ぐにもってきてくれた
亜矢子は心配そうにこちらを観て
「朝から 大丈夫? お昼までに出来上がってもしりませんよ」
ようやく口を開いたので
「ほら 何事も準備が大切だろう だから」
「もう しらない」
そう言いながら亜矢子は丁寧に氷をかき混ぜ水割りを作ってくれた
「はい 準備です 絶対に」
笑いながら 乾杯した
出発した時は薄い雲の合間から所々太陽が見え隠れしていたが
今は ほとんど雲はなくなった 海に反射する光がまぶしかった
今日も伊豆急ロイヤルボックスは貸し切りであった
神山と亜矢子はときどきキスをしたり残り少ない
二人の時間を楽しんだ

熱海駅に着くと家族連れやカップル お年よりの団体など
観光客がロータリー前に溢れていた
ホテルや旅館ののぼりを持った客引きたちが声を張り上げていた
そんな勧誘を断って熱海のデパートに入った
婦人用品肌着は3階にあって神山と亜矢子は一緒に売場に行ったが
神山は少々照れくさく亜矢子の後ろを歩いていた
「ねぇ 有ったわよ これ同じ物だわ 大丈夫ね」
「うん そうしたら Lサイズがあるから 僕はLサイズがいいかな」
「大丈夫よ 前に穿いた時 Mサイズでしょ
私 本当はLサイズなの だけどこのショーツは
伸縮するからMで大丈夫よ」
「うん では3枚買おう」
「えっ なんで」
「うん 亜矢子が2枚」
そう言われて納得したので神山がお金を出して会計を済ませた
「そうしたら 化粧室で穿き替えましょ」
「うん でないと魔力が通じないからね」
二人は笑って化粧室で赤いショーツに穿き替えた
神山と亜矢子は赤いショーツに穿き替えると不思議と力が湧いてきた
「ねぇ 可笑しくない 穿き替えただけなのに なんかちがうわ」
「そうかな ぼくは感じないけど」

目的の宝くじ売場にやってきて
「まずは小手試しだ スクラッチを買ってみよう」
神山と亜矢子は売場のおばさんにスクラッチ宝くじを出してもらい選んだ
亜矢子が選んだくじを削っていくと 3千円が当った
「ねぇ やっぱり違うわよ」
今度は神山が選び削ると 1千円が当った
「うん 凄い確立だよ もう一枚買ってみよう」
亜矢子が時間を掛けて選び 削って見ると 1万円が当った
「ふぁ~ 凄い 絶対に凄い」
亜矢子は当選金額の大きさではなく 当ったことを喜んだ
神山は 
「よし では本番だ 亜矢子のバスとはいくつ?」
「なんで関係有るの?」
「まあいいから いくつ」
「2つ」
「よし 組は 2組 下一桁2 その次 本当のバストサイズは」
「え~と 93cmよ」
「うん」
神山はメモをとって間違わないようにした
「6桁の最初2桁が93だ その次ウエストは」
「普段 57かしら」
「9357 次はヒップだ」
「90よ」
「よし できたぞ 935790で探そう 組は下一桁2で」
売場のおばさんに聞いたら
「02組 135790 はあるわよ どうする」
といわれ 確か前後賞がついているから 0の前後があるか聞いたら
「連番で この前の数字があるわよ」
亜矢子は135781から135790の10枚を買った
「ねぇ 今度は貴方 そうね 組は年齢でどう」
「うん 42歳だから やっぱり2か」
「そうね 胸は?」 
「107cmかな」
「ウエストは?」
「うん 79cm」
「ヒップは?」
「うん99だった」
「うん そうしたら 42組の177999番ね 叔母さんある」
おばさんは親切に探し出し 
「わぁ 有ったわよ そしたらこれも連番で買う」
「ええ」
神山と亜矢子は 42組177990から178000の
10枚を買った 神山は買った宝くじを亜矢子に手渡し
「当るといいね スクラッチを最後の1枚買ってみよう」
神山はおばさんが用意してくれたスクラッチの中から選んでいたが
知らない間に自分の意志ではなく手が伸びた 
削ってみると 大当たりの10万円だった
「凄いわ どうしたのかしら」
「うん分らない 知らない間に勝手に選んでいたんだ」
神山と亜矢子は喜んでおばさんに御礼を言って売場を離れた
「はい これ」
「いいわよ 貴方が当てたんだから」
「いや 僕はまだ昨日の外人の分で充分だよ」
「分ったわ ありがとうございます 大切に使うわ」
二人は少し早いが 真鶴へ向かった

駅に降りると潮の香りがして 気持ちよかった
閑散としている駅前にタクシーが空いていたので乗り
神山が以前上野店にいる時連れていってもらった店名を告げた
運転手は頷き車を発進させた
そんなに広くない駅前商店街を下っていくと
直ぐに真鶴港が目の前に現れ 目的のお店も5分ほどでついた
店の前に大きく『うに政』と看板が出ていた
お店に着くと店員がご予約ですかと聞いてきたので
「いえ予約はしていません」
そうすると 13時からになりますがいいですかと聞かれたので
予約を入れた
神山は時計を見るとまだ11時だったので真鶴岬に行く事にした
さっき乗ってきたタクシーが空き車だったので再び乗車して
「岬に行って下さい」
と告げた
車は先ほどと違い崖縁の道を岬向かった 道幅が狭く両側から
樹木がせり出し空気が美味しかった ゆっくりと走ったが 
7,8分で岬についた
観光地だが平日とあって 余り観光客は居なかった
会社の団体や 老人会の団体などで
神山と亜矢子のようなカップルは数えるほどだった
岬の上からみる海は昨日の城ヶ崎海岸と同じでどこまでも紺碧で
吸い込まれそうな不思議な世界だった
海風と陸風が交互に優しく吹き寄せ神山と亜矢子は暫く風の余韻を楽しんだ
神山が
「ビールを買ってくる」
と言い売店で買い求め戻ると亜矢子は写真を撮っていた
「あそこの夫婦岩が凄く素敵ね 片方は貴方のように
しっかりがっしりしていて もう一つは寄り添っているわ
あっ ごめんなさい 変な意味じゃないのよ ごめんなさい」
「うん 気にしていないよ 大丈夫だよ そう見ると見えるね」
神山は亜矢子にビールを渡し仲良く呑んだ
「ねぇ あそこに人が居るわ あそこよ」
「本当だ どこからか下に降りられるんだ 探そう」
「ええ 行きたいわ」
神山と亜矢子は海に出る坂を探したが直ぐに見つかった
「与謝野晶子の石碑があるわ」
そこには与謝野晶子の詩がエッチングされていた
亜矢子がこの石碑をバックに写真を撮ってほしいと言って来た
「うん そう 少し笑って」
神山は胸から上と 全身が入る構図で2枚撮影した
「光線の関係で石碑が綺麗に写っているかどうか心配ですが」
「じゃあ 私は」
「うん 大丈夫だよ 綺麗に撮れているよ」
「ふぁ~ 嬉しい」

二人は手を繋いで細い坂道を下るとごろごろとした岩場にでた
降り注ぐ光がまぶしく亜矢子は
「こんなに陽射しが強いと日焼けするわ だけど気持ちいいわ」
時折海風がつよく吹き付けると亜矢子の髪がなびいた
神山は横顔を見ていると 母親が早く良くなってくれる事を祈った
「ねぇ もう少し沖に行きましょ 引き潮だから大丈夫よ」
亜矢子の言う通り潮が満ちた時はこの岩場の半分以上が海になる
岩に貝や海藻が一杯付いている所に来ると
海藻で足元を取られそうだった
「亜矢子だめだ 危ないから 戻ろう」
神山は亜矢子がこちらに進んで来ているので戻るように言った
「分ったわ 戻りまーす」
亜矢子はそう言われると足元を良く見て戻った
二人が安全ところに戻ると 周りにはほとんど観光客が居なかった
二人だけの世界に亜矢子は酔っていた
軽くキスをするだけで 昨日の公園のように悪戯をしなかったので
「二人っきりなのに どうして触らないの?」
「そんな事したら 今日帰れないでしょ おばかさん」
「えっ」
「だって 貴方だって大きくなったら欲しくなるでしょ」 
「うんまあね」
「だから 中途半端は自重しているの だからお願いだから触らないでね」 
「分りました 触りません」
二人はキスをして我慢した
ゆっくりとした時間とこの場所が二人の幸せな空間を作っていた

突然神山の携帯電話が鳴ったので見てみると小田原工場の赤坂からだった
「はい 神山ですが」
「アルタ小田原工場の赤坂です お休みの処すみません
実は第二貨物さんですが 積み込みが順調に進み 今お昼ご飯を
食べているんですが この後直ぐに東京に行きたいそうなんですよ
で 上原の高橋に確認したら 床が乾いたらニーナ・ニーナさんが
商品搬入があるのでずらした方がいいと言っているんです」
「うん その通りですよ」
「そこで 何時に上原が良いか最終判断は神山部長に確認してくれと
いう事なんです」
「そうか 出られる状態ならば 早くても良いかな
分りました 一回現場と相談して 直ぐに連絡します」 
「はい 待っています」 
亜矢子に
「ごめんね 直ぐに終るから」
「は~い 分りました」
神山はアルタの高橋に電話した
「神山です お疲れ様です」
「やあ 山ちゃん 聞いてくれた」
「うん それで現場はどう?」
「ええ 床はもう乾いてきているけど もう少しかな 扇風機を入れたよ」
「ありがとう それでニーナ・ニーナは」
「うん さっき商品のダンボールは来たけど久保さんたちはまだですね」
「そうしたら そこまで行っているなら 当初どおり15時ですね」
「ええ 段ボールの数は驚くほどは無いけど 整理しながら
バックヤードに運ぶと結構店舗内も大変でしょうから その方がいいです」






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