2013年2月2日土曜日

薔薇 1 - 26 Vol. 1



4月25日 土曜日 
神山はけたたましく鳴る目覚まし時計で目が覚めた
昨夜は23時過ぎに帰宅したが祥子は不在でそのまま寝てしまったようだ
携帯電話の着信記録を見たが祥子からの電話はなかった
神山は冷蔵庫からビールを出してテラスに出たが
あいにくの霧雨ですぐに部屋に入った

タバコを吹かし昨日渋谷で買った賃貸物件の週刊誌を開き覗いた
上原のINDXで見てみるとここの3階が空いていて12万円で出ていた
神山の部屋は最上階なのでもう少し高くなるのかと考えた
ここから代々木公園方面でここと同じ様にワンルームで広い部屋が有った
最上階で12万円した 築2年だから綺麗だと思い○印を付けた
あと何箇所かあり全て○印を付け第一候補から順番に番号を振って
わかり易くしておいた
幸いな事に候補5番までは全て同じ不動産屋で現地を回るのも
1社で済むので手間が省けたと思った

神山はマンション探しを終えるとPCで過去の記事を調べてみた
先日洋子がアレックス氏の来日だったと言う記事を探した
検索エンジンを利用してみると果たしてアレックス氏と婦人の
写真付き記事で出ていた
暫く関連記事を見ていると【アレックスジャパン撤退か】と書かれたた
記事が出ていたので早速コピーした 
日付は4月21日18時になっていた
神山は時計を見ると7時30分になっていたので洋子に電話をした
「はい 田所です おはようございます」
「おはようございます 神山です 実は今 アレックス氏の関連記事を
色々と見ていたんだが 【アレックスジャパン撤退か】と日経が
4月21日18時で配信しているんだ そこで洋子の家で取っている
新聞でこの記事が出ているか調べてほしいんだ」
「はい 分りました PCの記事が新聞媒体になっているかですね」 
「うん もし時間が有るようだったら アレックス氏の所から
xxxに行ってxxxの所から下に行ってxxxにいく
そうすると出てきたよ」
「はい 分りました しかし 神山さんはなんでも出来るんですね」
「あっ お母さんがそばに居るんだ」
「はい 分りました それではまたご連絡します」
神山は今度会話のサインを決めておくと良いかなと思ったが
実際に使うときに忘れていたらどうにもならないので辞めた
更にアレックスグループの関連記事を調べれとアレックスジャパンの
社内報を扱っている記事に当った
【社長アレックスJrの放漫経営】これはやはり日経の記事で
昨年9月1日付けだった
神山はこの記事もコピーした
アレックスJrは人間としてはいいものを持っているが父親が
偉大すぎて嫌気がさしているのかも知れない
少し短気だが果たしてあの性格で経営はどうか考えると?マークが付く
更に株式チャートを見てみるとやはり右下下がりだった
この情報もコピーした
改めて時計を確認すると8時になっていた
神山は祥子がどうしたのか心配になり携帯電話に電話したが出なかった
話が盛り上がり誰かの所にでも泊まっているのだろうと思った時
神山の携帯電話が鳴ったので出てみると祥子だった
「おはよう ごめんなさい 私今起きた」
「どこに居るの?」
「お部屋よ 来る?」
「ああ 顔をだすよ」
神山は起きたままの格好で祥子の部屋に行った
一目で呑みすぎと分る顔をしていた
「おはよう ごめんなさい 電話しなくて」
「うん 待っていたけど寝てしまったよ」
「昨日手伝った子は本社の女の子達で それで余り外で呑んだ事が
無いって言う事だったの それでカラオケ行ったりして
呑みすぎちゃったの わかる?」
「うん 昨夜一杯呑みましたって書いてある」
「ほんとうに ごめんなさい ふぁ~だめだわ」
「そうしたら 僕は今夜現場に行く 午前中は別件で出かけるから
ゆっくりしなさい 但し15分位前には行って応援隊を待っていないと」
「はい 分りました 怒っている?」 
「うん 怒っているよ では しゃっきっとしないとだめだ」
「はい 分りました」
神山は祥子にきつく当ったが果たしてわかってもらえたか心配だった
すくわれるのは準備当日という事でこれがオープン当日だと
どうにも打つ手が無いだろうと感じた

神山は貯めておいた肌着類を洗濯機で洗った
昨夜着たジャケットから90万円出てきて一瞬思い出せなかったが
アレックスJr達から貰ったお金と思い出した
これだけお金が入ってくるとどこにしまうか考えてしまったが
一応カメラバッグにしまった 
金庫はいかにもお金がありますと見られるので簡単な登山バッグでも
買って 非常食と現金を入れておけば いざという時にもOKと思った
神山は50万円ほど持ってカメラバッグの中を調べると
アルタの100万円を除いても250万円はあったので
そのうちの100万円を持って銀行に入れておこうと考えた
通帳を見てみるとこの2週間で250万円も入金していた
神山は洋子が言ったデジタルカメラをインターネットで
性能や機能や使いやすさや 価格を調べ
2つ位に候補をしぼってメモった
神山は賃貸物件を実際に見て回る時に使えると思い
レストランを出てから大きい家電量販店があるのでそこで買おうと決めた
ぼんやりとWebを見ているとドアホンがなったのでモニターを
見ると祥子だったので戸を開けた
「さっきはありがとうございます 寝坊していたわ これから行って
応援隊を待つわ 貴方が夕方に来るまで陳列を終えて飾付けが
出来たらしておきます」
「うん 分りました それで遅くなるのかな?」
「多分 筒井が来てくれるし わからないわ」
「そうだね しかし今夜はアルコール控えないと
明日臭くて仕事にならないよ 分った まあ筒井さんの事だから
そんな遅くまで呑まないと思うがね」
「はい 分りました」
「それと あと一つ 26日のオープンが済んだら僕とアルタの高橋君は
ゴテンバ グランド インの仕事で居なくなります 27日は現地で
骨休みです 分った」
「はい 分りました けどアルタの人も27日は骨休みするの?」
「そう 作業メンバー慰労会さ 26日は小田原工場に立ち寄って
それからゴテンバ グランド インの現場さ 運がよければ 
今夜会えるかもだね」
「そうね 昨夜はほんとごめんなさい 今夜は早めに帰れるようします
だって 寂しいもん」
「わかった では行ってらっしゃい」
「は~い 行ってきます」

神山は1階のロビーまで見送って部屋に戻ると
まだ9時前で時間が中途半端に余ったのでベッドに横になり
洋子との逢瀬を考えた しかし夕方筒井さんと内藤社長が来ると
二人だけ抜け出す事が出来ないと思い どうしたものかと考えた
神山は冷蔵庫からビールを出してタバコを吹かしたが いいアイデアは
見つからなかった 今日はがんじがらめだった
普通何処かに抜け穴があるがそれが見つからなかった
洗濯機の洗濯終了ブザーが鳴り 洗濯ものを浴室に干し自動乾燥の
スイッチをONにして部屋に戻った
再びベッドで横になっていると時間がすぐに過ぎ9時30分になった 
神山は熱いシャワーを浴びて出かける仕度をしてからタクシーを
マンションまで呼んでロビーで待つ事にした
少しの間タバコを吸っているとタクシーの運転手がマンションの
自動ドア入り口へ小雨の中 小走りで駆け寄ってきた
神山は傘を差し運転手と一緒に車に乗った
行き先を告げると
「この雨は 今夜あがるって言ってましたよ」
「そうですか 上がりますか 今夜」
「ええ 今 天気予報で言っていましたよ 明日は快晴ですって」
「ありがとうございます 助かるね」 

運転手と天気予報の会話をしていると渋谷のホテルについた
車を降りるとすぐの所にATMがあったので入金をした
ホテルの12階レストランに行くと洋子が先に来ていて
手を振ってくれた
「お待たせ さっきはごめんね」
「いいの ほら年寄りだから朝は早いでしょ あの時間帯は
丁度 元気はつらつの時間だわ」
「うん 気を付けます」
「何 頼む? 私はコーヒーを頼んだの」
「う~ん ビールとサンドイッチ」 
「食べてこなかったの」
「うん 時間はあったけど 材料がアルコールばかりでは何も出来ないよ」
「もう だめじゃない 私がついていればちゃんと食べれるのに」
「うん そうだね」
神山はウエイトレスを呼んでビールとサンドイッチを注文した
「この赤く丸をつけた所が良いかなって 候補さ」 
洋子は神山が印をつけた物件を見てみると驚いた
「ふぁ~ 私と同じよ そうなの広くてワンルームで最上階で
探して 駐車場とか色々と条件を当てはめたの
まったく一緒よ 凄いわね」
神山と洋子はさらに書かれている情報を確認しながら
他に見落としが無いか調べたら一つ一戸建てが出てきた
神山は運ばれてきたサンドイッチを食べながら
「しかし 一戸建てだと ちょっとメンテナンスが大変だね」
「そうね 当然タタミ敷きだから ちょっと大変ね
これから飛び回るとゆっくりとお掃除だけで大変よ」
「そうしたらここはパスしよう そうすると二人の候補で行くと
最初に出てきた この5つの物件だね」
「そうね どこも12万だったら同じじゃないかしら
貴方のマンションも出ていたわ」
「うん 3階ででしょ 12万円 しかし 自分の部屋と
行ったり着たりでなんか落ち着かないしな」
「ええ 私もそう思ったわ それに3階だったらせめて南向きでないと
出ていたのは北向きで貴方のしたでしょ やっぱり
日が差し込んだほうが気分がほぐれると思うわ」
「うん 僕もそう思うよ あそこの部屋で丸一日過ごした事が無いから
判らない所が有るけど 南向きがいいでしょう」 
「そうね」
「そうしたら電話をしてみようか」
「ええ」
神山は記載されている不動産屋に電話をしてみると受付が出て
今の時間は営業が全員出ていて対応できないので 13時に営業を
待機させますからご来店くださいといわれ
「では必ず伺いますので 資料など準備をお願いします」
神山は物件ナンバーを伝え 受付は復唱してくれた
「それでは お願いします」
「はい お待ちしております」
神山は用件を伝えた事がOKだった事を洋子に言った
「そうすると時間が余ったわね」
「うん 家電量販店でデジカメを買って早めのお昼にしよう」
「ええ そうしましょう デジカメを買う気になったの?」
「うん 今回の物件めぐりで使えるしね」
「いい考えだわ 私も買おうかしら」
「うん 僕が忘れた時に役に立つね しかし洋子が忘れたら大笑いだ」
ふたりは顔を見詰め合って笑った

神山と洋子はレストランを出てすぐ傍にある家電量販店に向かい
デジカメコーナーに行った
いろいろ種類がある中で洋子が
「これだけあると迷うわね ねぇ」
「大丈夫だよ ちゃんとリストアップしてきた」
神山は朝調べたメモを洋子に見せた
「へぇ~ 準備が出来ているのね 凄い」
神山と洋子はリストアップした機種を見ていると店員が近寄ってきた
「もうお決まりですか」
神山は性能や機能や使いやすさや 価格などで
2機種にしぼった事を告げると 
店員は良く調べてきた事とこの2機種は人気が有るとも付け加えた
神山は大きさが違うので小さい方を洋子に大きい方を自分が使うが
洋子に聞いたら 同じ方が言いといわれ 小さい方を色違いを2台買い
記憶カードなども予備を含め購入した
バッテリーは単3乾電池なので少し余分に買った 合計で15万円だった
神山財布から15万円出し会計をしようとすると
洋子がこれは会社で買いましょうと言い清算した
二人は箱など余分な物はお店で処分してもらい
カメラにストラップをつけて首から下げた
洋子はなれないのかバッグの中にしまって歩いた
再びホテルに戻った二人は中華料理店に入った
時間は充分にあったが定食に単品を少し追加して頼んだ
不動産屋にはここから車で10分ほどだったが 
デジカメの取扱説明書など見たり操作など覚えていると
直ぐに時間が過ぎてしまうのを心配したからだった
ビールとシュウマイや餃子が先に運ばれてきた
洋子が楽しそうに
「では デジカメさんに乾杯」
普段は冗談や洋子と逢うまでの出来事など喋る神山だったが
今日だけ余り言葉が無く食べる事に集中した 
洋子もそんな神山の気持ちを判ってか口数は少なかったが
「ねぇ あなた今夜はどうなっているの?」
「うん 筒井さんと内藤社長が来るでしょ それで筒井さんは
ニーナ・ニーナの連中とご飯だけど 内藤社長が読めないんだ」
「そうなんだ アルタの高橋さんを誘って何処かに行くとかは」
「うん それだったら僕を誘うだろう 読めないなほんと」
話が終ってしまった洋子は仕方ないかと思った
普段なら 理由を聞いてくるのに今は余裕が無いのかなと思った
しかし神山がデジカメを覚えようとしているのを邪魔は出来なかった
突然神山が洋子の目を見て
「ごめんな 喋らないから気を使ってくれて ごめん」
洋子は胸が熱くなって目が潤んでしまった
暫くすると神山は全部食べ終わりビールを注文した
「やはり普段のペースで無いから 呑まないと元気が出ないよ」
洋子は神山が笑顔で話し出したので安心して
「私も食べ終わったら教えてね」
「うん 急がなくていいよ 消化不良を起こすよ 焦ると」
「は~い 分りました」
神山は取扱説明書の操作するページや設定を読んで早速撮影した
最初に日時設定をしてズーム機能やその他の機能をいじっていた
次にフラッシュをたいたりして納得していた
「洋子 貸してごらん 日時設定をするから」
洋子は箸を置いてバッグからデジカメを取り出し渡した 
神山は受け取るとバッテリーを入れ 簡単に日時設定をして
その他の設定も取り説を見ないで行ってしまった
洋子のデジカメを設定し終わるとフラッシュをたいたが
光らなかったので色々と見たが判らなかった
「これ 初期不良かもしれないな 困ったな」
そう言って取り説をもう一度見直したら フラッシュのボタンを
押していない事に気がつきもう一度フラッシュをたいて見たら成功した
「ハハハ 僕の間違いでした お騒がせしました」
普段の神山に戻ったので洋子は笑ってしまった
洋子も食べ終わり ビールを呑みながら操作方法を聞いて自分で
シャッターボタンを押した
神山の顔写真が大きく写っていた洋子は神山に
「ねぇ みて こんなに大きく撮れたわ」
神山は自分の顔をみて
「こんなに大きいと幾ら自分でも気持ち悪いや 早く削除して」
「削除は 確かここのボタンを押して あれ、、、出来ないわ」
「貸してごらん」
洋子が手渡し 操作を教えてもらった
「わかったわ ここのボタンを間違えたんだ ありがとうございます」
食事を終った二人はデジカメをいじりまわし短時間だが操作を覚えた
「意外と簡単だったね このデジカメ」
「ええ そうね 操作を2、3回失敗すれば覚えるもん 嬉しいわ」
「早いね もうこんな時間だよ 出よう」

慌てて会計を済ませ時計を見ると12時45分になっていた
急いでタクシーに乗り込み行く先を告げた
神山が思っていたより早く不動産屋に着いた 
店内に行くと受付嬢に神山ですと伝えると 座りカウンターを案内された
暫く待つと営業らしき女性が近寄ってきて自己紹介をして椅子に座った
カウンターには神山が指示した資料が並べられた
各物件の状況や特徴を一通り説明されると 今度は実際に部屋を
見て廻る事になり その営業が車で案内してくれた
最初の部屋は 神山が一番候補に上げた部屋だった
「ここはとても見晴らしがよく 南向きなので陽射しもあります」
神山と洋子は所々写真を撮った
「ねぇ 思っていた以上にいい所ね」
「うん ぼくもそう思うよ」
神山と洋子がいいと思った部屋はワンルームで飾付けがなく
シンプルでモダンな感じだった
神山と洋子は週刊誌に感想を書いた
風呂場と化粧室を見たが記事に記載されている寸法より小さく感じた
ここも写真を撮っておいた
部屋を見終わると 次の物件に移動した
この部屋は寝室とDLKと二部屋に分かれていて 寝室用の部屋も
10畳ほどあり大きかった この部屋も南向きで陽射しが入ってきた
玄関を入るとLDで右側に浴室が南側にありキッチンが浴室の後ろ側に
あってLDの左側に寝室がある ここは東南角になる
神山が気に入ったのはテラスが上原と同じ様に広い事が気に入った
洋子も資料の間取図より大きく感じられると言って写真を撮っていた
風呂場が素敵だった テラスに面していて上原より広く前面ガラスで
覆われ浴槽もジャグジーが付いていた
丁度南西角に位置していた
キッチンはカウンターで仕切られていて これはこれでいいかなと
思い神山と洋子は写真を撮った
部屋のコンセントの位置など写真に撮っておいた
全ての説明が終ったのでこの部屋をでて次の物件に移った
3件目から5件目までは同じ様な感じで資料の間取図通りで
新しい発見は無かった
不動産屋に戻ったのが16時になっていた
テーブルに座るとどうするか神山と洋子は相談していた
営業の女性が言うには 手付金として家賃の半額6万円を
払って頂けるようなら 2週間は抑えるといわれた
手付金は2週間を超えると戻らないが以内なら日割りで戻ると言われた
これは契約をしてもしなくても同じ様に支払われると言った
神山は2件目の部屋が気に入りどうかと洋子に聞いたらOKだったので
2件目の部屋に手付金を6万円洋子が支払った
「自動ドアで 駐車場も広いし 管理人さん居るし 申し分ないと
思うわ 契約する?」
「うん 分るけど一応初心で行こうよ ねぇ」
「そうね 2週間あるしね」
「うん あと周りも調べたいし 酒屋とか寿司屋とか」
「美容室もね」
「そうそう だから 一応手付にしておこう」 
神山と洋子はそう決めて 改めて営業の名刺や領収書を貰った
営業の説明を聞き終わると5時近くになっていた
神山と洋子は御礼を言って不動産屋を出ると
雨が小ぶりになってきたので明日は晴れる事を祈った

すぐにタクシーが来たので乗り込み上原に向かった
車の中で洋子が撮影した写真をバックモニターで見ていた
「2件目は本当に素敵ね 周りは静かだし 今の上原に似ているわね」
「うん 浴室兼化粧室兼乾燥室 一緒だよ ただ前面ガラスには驚いたね」
運転手が話を聞いていたのか
「お客さん達は お部屋探しをされたのですか」
「ええ」
「それでしたら 評判が良い物件をお教えしましょうか」
「何処かあるんですか」
「ええ 実はそこに住んでいた方の まあ専属ドライバーだったんですが
その方が ご実家に戻られたんで 今空家に成っている筈です」
「どこですか それは」
「ええ お客さんたちが乗られた処から車で5分程度の
小高い山の上にある とても静かなマンションです 確かまだ
建てられて2年位だったと思いますよ 廻りはきちんとされた
会社の重役さんの家だったり とにかく静かですね」
「マンションの名前は?」
「ええ xxxxxxマンションです そこの最上階とその方は
仰られてました」
神山と洋子は顔を見合わせた
「その方とは男性ですか」
「いえ 女性で 表参道でファッションのお店を出されていましたがね
何時も決まった時間にお迎えに行ってました 綺麗な方でした
つい先日でした 実家に帰る事になりましたありがとうございますって
少し張り合いが無くなって寂しい思いをしています 
あっ すみません 愚痴を言って」
「いえ ありがとうございます 探します」

話を聞き終わった時に上原の現場についた
二人は運転手にお礼を言って別れた 少し歩いて現場に入った
神山と洋子は内緒のサインを出し互いに頷いた
「孝ちゃん 遅くなりまし済みません」
「やあ 山ちゃんと田所さん いらっしゃい 遅くないですよ
もう終わりですよ」
「えっ そんな」
「うそうそ 今ね 筒井さんが来て皆にコーヒーをご馳走している
だけど 陳列は終ったと言っていたよ」
「そうだね あと飾付けだけど それもほぼ終っているね」
「うん だからさ 筒井さんうれしいんだよ きっと 
それで昨夜の領収書は」
「いいよ たまには」
「わかった ありがとうございます でも済みませんでした」
「人気もんは辛いね」
3人で笑った
「それで 何か追加とか変更はあった?」
「うん それがぜんぜんなにもな~し 退屈しています
商品陳列の時 壊したとか はずれたとか なんにもな~し
ほんと 久しぶりじゃないかな こんな退屈しているの」
「そう 大変だね それで 御殿場コース攻略法を考えていたんでしょ」
「うん まあ 参った 大工も帰りたいって言うけどね
なんかあった時は一人で出来ないし これは山ちゃんが悪いんだ」
「そう 早く進めば山ちゃん 退屈すれば山ちゃん ですよ」
また皆で大笑いしているところへニーナ・ニーナの部隊が
休憩から戻ってきた 筒井が
「山ちゃん ありがとうございます 凄くいいのを造ってくれて
感謝している ありがとうございます それにアルタさんも
一所懸命作ってくれたので感謝しているよ」
「僕は大した事していないですよ 久保さんや現場のアルタの高橋に
御礼を言ってくださいよ ほんと」
「おかげで 仕事が早く進み今 みんなで休憩作戦会議をしていたんだ」
「もう 終わりですか?」
「うん あと飾付けの手直し 商品のバランスチェックかな」
「良かったですね」
「商品が当初予定していたより一割位多く入る事が分ったので
嬉しい悲鳴ですよ あっ 遅くなったけど アルタさんでは常務に
なられると聞いたよ 凄いね それからこちらの方が秘書さん?」
「はい 私は鈴や東京本社神山次長 アルタ担当常務神山さんの
専属秘書の田所洋子です これからもお力になれるよう
努力致しますのでお願いします」
「申し遅れました ニーナ・ニーナの筒井です
確か 本社人事ですよね」
「ええ そうです」
「これから 山ちゃんを支えて下さいね」
「はい ありがとうございます それでニーナ・ニーナさんには改めて
28日の14時にご挨拶にうかがわせて頂きます お願いします」
「はい 分りました お待ちしています」
挨拶が終ったので現場を見てみると祥子が珊瑚の砂を出してきて 
棚などのポイントになる場所に置いていった 
神山が祥子に
「珊瑚の砂は最初は少なめに薄く広げて それからグラスとか置くと
綺麗に見えるよ それと考え方だけど ドーナツのように
真中を開けて構成しても面白いかもしれない 色々と試した方が良いよ
ただし 全部が同じ構成でないとばらばらで訴求力が無くなる わかった」
「はい 分りました あとで見てください」
「うん か 明日早くが良いでしょう」 
神山と祥子がディスプレーの事で話している間に内藤社長が来ていて
筒井と二人きりで相談していたが終ると神山を呼んで
「お疲れ様です 山ちゃん あとで時間を作ってください
直ぐに終ります」
「はい 分りました 僕一人が良いですか」
「ええ では お願いしますね そうですね そうしたら今大丈夫ですか」
「ええ」

内藤社長は高橋に30分位寿司屋に行くといい筒井にも30分ほど
山ちゃんをお借りしますと言って出た
寿司屋に入ると女将が奥の座敷を案内した
「いや 山ちゃんのおかげで我社は安泰です」
「えっ」
「ほら 地ビールさ 御殿場アウトレットがある限り 絶対安泰
いや 本当にありがとうございます 感謝ですよ」
「そんな 何もしていないですよ」
「まあまあ 権利を取得する事が凄く難しいんです
それが まだ誰も手を付けていない地ビールだったんで助かりました」
「良かったですね」
女将がビールと鮮魚の盛り合わせを持ってきた
神山が慌てて
「ごめんなさい 今回はこれだけにして お願いします」
女将が頷きカウンターへ戻っていった
内藤社長が二人のグラスにビールを注いだ
「では 乾杯」
二人でビールを呑むと内藤社長が
「実はここに来て貰ったのは 今のマンションの他に 何処か
住処を作らないとお互いぎすぎすして仕事が捗らないだろうと
考えたわけさ 結局 田所さんと次長室以外で話となると
横浜しかないけど あそこにわざわざいかれない
となると ここら近辺でプライベートな部屋を持つ必要が出てくる
分ってもらえれかな このことはさっき筒井さんにも話をしてある
田所さんが久保さんと鉢合わせしないうちに手を打たないと
仕事が出来なくなる そうするとアルタにとっても痛手なんだよ
だから大至急 探してそこで田所さんと話をして貰いたいんだ」
「ありがとうございます 実は久保さんが居ない日に呼んで
仕事場を見て貰ったんですが あの部屋の出入りは危険が伴うと
思いまして 今日探して 手付金を払ってきました
場所はここと彼女の家と中間くらいで環境も良かったですよ」
「山ちゃんは素晴らしいや もうそこまで気が付いて
手を打っていたなんて 分りました良かったです
すると久保さんも田所さんもまだ何も知らない訳ですね」
「ええ 僕の仕事場兼住居があそこにあると言う事実だけです」
「うん 素晴らしいね 分りました それで住民票など色々と
手続きが大変になってくるので アルタで借ります それと
家具類は山ちゃんが購入してください スタンスとしては
秘密の部屋 ですね」
内藤社長と神山は大笑いした 神山は今日 不動産屋で手続きした
書類一式を内藤社長に渡した
「山ちゃん 最悪法人契約を不動産屋と結べなかった時は山ちゃんの
個人になるけど 大丈夫?」
「ええ 別に構いませんよ」
「分りました 早速明日手配します 午前中には連絡します」
「ありがとうございます 何から何まで」
「鈴やさんにとっても至宝ならうちでも同じ事です
それで 家具類はこれで買ってください お願いします
それと 日産フェアレディーを鈴やさんで買われたと
お聴きしました 済みませんうちでご用意できなくて
本当に申し訳ないと思っています」
「早いですね 西野理事ですか?」
「ええ そうなんです 内緒ですよ 怒られますから」
「はい 分りました」
「では 私は先に帰ります あと筒井さんには私から電話しますから
それと26,27日楽しんできてください あっ26日は仕事でしたね」
内藤社長はそう言って先に出て行った

神山は先ほど置かれた事務袋を開けてみると700万円入っていた
信じられないが バッグに入れ神山も清算して店を出た
現場にもどると筒井が寄って来て
「山ちゃん よかった 今聞いた このことは3人の秘密だ」
「ええ」
そう言ってお辞儀をして店舗内に入るとニーナ・ニーナは
帰り仕度をしていた 祥子が
「ねぇ こうやってディスプレーしたけど大丈夫なのかな」
「うん」
神山は全体を見渡しOKサインを出した
「細かい所は明日僕が直接直してあげるよ」
「ふぁ~ ありがとうございます 助かるわ」
横にいた田所が
「神山さんてそうやって何時も親切だから男女 関係無くもてるのね」
「そんな事無いって さあニーナ・ニーナさんお帰りだからね 孝ちゃん」
神山は高橋の傍に行って小声で
「二人の女性の前で必要以外のことは内緒だよ」
「うん了解です 今 内藤からも釘を刺されました刺激するなって」
そうしている内に ニーナ・ニーナの面々が店舗から出て行った
「お疲れ様」
見送ったあと高橋は大工を返し神山と洋子に
「昨夜食べ残した物を食べたいんだけど また本社応援です
済みません それで明日は昨夜の予定通り行動しますのでお願いします
朝は 9時には来ます それでは失礼します」
「うん残念だけど 明日お願いしますね」

高橋と別れた神山と洋子は
「さあ どこへ食べに行きますか」
神山は時計を見ると18時を少し廻っていた
「私は 駅前寿司で充分よ 美味しいし」
「よし 行こう」
神山は先ほどの件をどこまで洋子に伝えるか迷ったので
内藤社長に電話した
「神山です 先ほどはありがとうございます」
「いえ こちらこそ ありがとうございます」
「ところで 先ほどの物件ですが田所さんには アルタさんの
福利厚生の一環で用意して頂いたと説明していいですか」
「そうですね キーは隣りにニーナ・ニーナさんの事を表現しなければ
良いと思いますが」
「ええ しかし 今後アルタさんで仕事をする上で そのように
しておいた方が 例えば転勤になっても通りが良いと思いますが」
「そうですね 凄い 山ちゃん そこまで考えるとは そうしましょう
実際の支払いは 住宅手当で経費計上しますから妥当でしょ 了解です」
「はい では失礼します」
話が終って中に入ると洋子は奥の座敷に座っていた
「ごめん 遅くなりまして」





.