「今ね さっき撮影した写真を見ていたの」
「うん 見せて」
洋子は神山にデジカメを渡して
「ねっ 2件目が断然いいわ それとタクシーの運転手さんが
言っていた事が本当ならば 絶対に2件目ね」
「決まったよ」
「えっ なにが?」
「だから2件目が」
「えっ どう言う訳」
「うん さっき内藤社長と話したんだ そうしたら決まったのさ」
「ねぇ 解るように話して」
「うん 早い話洋子があの部屋を頻繁に出入りすると
有らぬ疑いが発生して 鈴ややアルタにとって非常に
不利益になってくるので 関係者がしらないプライベートな時間を
作れる場所が必要になってくるだろうと内藤社長が気にしていた訳
あの部屋は鈴ややアルタやニーナ・ニーナの皆が知っている
作業場兼住居さ 部屋から洋子の出入りが頻繁にするのを見た人間は
面白おかしく風潮されるわけさ そこが心配の種になるって事です
そこでアルタは住宅手当があるのでそれを充当すると言ってたよ
だから決まりです」
「ふぁ~ ほんと 嬉しいわ」
「うん それで支度金を頂いた 700万」
「ふぁ~ ほんと しかしねぇ」
「うん 僕はゆっくり出来るところだから いい家具買うつもりだよ
そうなると この位必要になってくる」
「そうなると 28日の挨拶周りの時にお礼を言わないといけないわね」
「うん 僕が言うから傍でお辞儀するだけで良いよ」
「はい 分りました 家具を選ぶのに時間がかかるわね」
「うん 明日内藤社長から返事が来るから 27日のゴルフの後は
渋谷に高級家具が揃っているお店が在るからそこで選ぼう
カーテン等もそこで揃えればいいし」
「そうね たしか22時までやっているでしょ そうしたらこれから
行きましょうか」
「うんそうだね 膳は急げだ」
神山と洋子は少し食べたが巻物を頼んでこれから買う品物を
リストアップした 簡単な食器棚 チェスト 引き出しチェストなど
上原では造り付けでついていたが こんどは自分で探さなければ
いけなかった
全てを食べ終わると清算しタクシーで渋谷に向かった
高級家具を扱っている家具センターに入ると神山はイタリアの
有名ブランド アルフレッタのコーナーに行った
広さが8mx10mの陳列スペースにリビングルームを想定した
コーナーがあった 神山は洋子に
「このままで 入るでしょ」
洋子は不動産屋に貰った資料を取り出し 寸法を確認した所
充分収まった 神山は店員にほしい家具を順番に伝えた
チェスト2台40万円 引き出しハイチェスト1台25万円
引き出しミドルチェスト1台20万円 食器棚1台30万円
クローゼット1台40万円 ガラステーブル1台25万円
ソファー2台60万円 PCなどが置けるテーブル 25万円
椅子2脚 10万円 合計275万円
店員に確認すると全て在庫があり明日以降の配達可能という事で
早速支払いを済ませ住所と携帯電話をお届け伝票に記入した
「あとシモンズのベッド等一緒に届けてもらいたいが出来ますか」
「はい 出来ます それでは私が一緒に付いていき 商品を
ひとまとめします」
神山は次にベッドでは有名で高級ホテルで使われている
シモノズのベッドを見たが 一番大きいキングサイズの
ベッドを選んだ 業務用と違いスプリングが2段になっているベッド
これはお買い得で30万円
次にこのベッドサイズに合う大きさの羊毛敷きパッドやシーツ
羽毛布団 これから必要になる薄い羽毛布団など在庫を確認したところ
OKサインが出たこちらの合計が40万円 合計70万円
次にタオル売場で上質コットン使用の大判バスタオル5枚や
台所で使うタオル 化粧室で使うタオルなど合計10万円
神山は洋子に
「どうだろう これだけ揃っていれば まずは大丈夫なのかな」
「そうね あと家庭用品は後からちょこちょこ揃えられるし大丈夫です」
「そうすると クーラーだね」
「ええ そうね 取り扱っていますか」
洋子が店員に聞くと
「種類は多いほうではありませんが扱っています」
次に クーラーを見に行って20畳タイプを2台購入した 合計50万円
照明器具を見るとシンプルな物を選び2台合計10万円
ここで神山が内藤社長に電話をした
「神山です いま渋谷で家具類を揃えています
ところで PCやTVはこちらで揃えて構いませんか?」
「ええ お願いします 足りなくなったら 言ってください」
「はい ありがとうございます」
電話を切った神山は店員にPCとTVの取扱を聞いたが
扱っていなかったので 後日揃え様と洋子に言った
店員が
「全ての商品が明日以降の配達や取り付け工事OKです」
と言ってくれたので
「では 27日月曜日の18時でお願いします」
「はい 畏まりました そのように手配させて頂きます」
神山は洋子に
「何か足りない物あるかな?」
「ええ大丈夫よ これだけ揃えば充分だわ」
神山は店員に
「では お待ちしてますので お願いします」
「はい 本日はご来店ありがとうございます」
洋子が計算をしてくれていて
「このお店で 合計415万円よ 凄いわね」
「うん そのくらいなると思う しかし良い物だから長く使っても
決して飽きが来ないさ そこがいいと思うよ」
神山は時計を見るとまだ21時だったので昼 デジカメを買った
家電量販店へ向かった
PCコーナーに行くと種類が豊富で迷ったが洋子が
「あそこのお部屋で本格的なPCは不要でしょ
だからノートPCで良いと思うけどどう?」
「そうだね 大きいデスクトップで場所取られたくないしね」
神山はそう言ってノート型PCと簡単なプリンター それと
インターネットで必要なプロバイダー契約をした
店員に配達をして貰えるか聞いたところ明日以降のお届けでOKと
言われ配達手続きをした
神山はTVも購入するが一緒に届けて貰えるか聞いたら
「私が TVコーナーに一緒に行くます 大丈夫です」
TVコーナーに行き 48インチ薄型モニターとTVチューナーを
購入した 神山は洋子に
「あと何かあるかな?」
「ええ 小さいラジオがあると便利かなと思います」
「うん そうだね」
神山と洋子はラジオコーナーで邪魔にならない大きさのラジオを買った
このお店では PC20万円 プリンター10万円 モニター40万円
TVチューナー6万円 ラジオ2万円 と合計78万円だった
神山は店員に
「これで全てです 配達の手続きをお願いします」
店員が全ての商品を神山に確認して伝票を作った
お届け伝票に必要事項を記入して配達日は4月27日月曜日の
18時に指定した
店員が伝票類の控えを神山に渡して完了した
神山は洋子に
「なんか忙しかったね」
「ええ あの短時間にこれだけの商品をセレクトするなんて
並みの人間ができる事ではないわ 改めて貴方の凄さに感心したわ」
「うん まあ 興味あると調べるでしょ それが頭の中に入っていて
必要な時にスムーズに出てくる その判断を素早くしているだけさ
だから洋子と一緒だよ」
「どこか回路が違うのね 私 貴方のスピードについて行けなかったわ」
「うん ありがとうございます さて慌てて食べたからおなかすいたな」
「ええ 私も 何処かで食べなおししましょうか」
「そうしたら 昼の中華は あそこの餃子美味しかったよ」
「ええ そうしましょう 確か23時オーダーストップよ」
神山は時計を見るとまだ22時になっていなかった
歩いて直ぐのホテルに行き中華料理店に入った
ここもまだ客が多かった ウエイトレスの案内でテーブルに着くと
ビールと餃子を頼み
「あとは これからメニューをみてオーダーします」
ウエイトレスはお辞儀をして厨房へ行った
神山は洋子に
「先ほどの間取図を見せてほしい」
「はい ちょっと待ってね」
洋子はバッグから間取図をだし テーブルに広げて
家具類の配置を楽しく検討した
洋子が慌てた様子で
「ねぇ あなた ダイニングセットが抜けているわ」
「うん でも必要かな だって食事をしたければ外で充分だと思うし
それで今は不要と思って買わなかった」
「そうね あの部屋で24時間生活しないからそれで良いかしら
必要になったらその時に買えば良いわよ」
「うん だから 28日は午後から必要な家電小物をチェックして
購入すれば良いでしょ 例えば冷蔵庫とか 湯沸しとか」
「そうね 冷蔵庫も大きさがあるし 今日急がなくても良いわね」
神山と洋子は27日に届けられる商品を待ちどうしかった
注文した単品が時間を空けて食べるのに都合よく運ばれてきた
神山と洋子はよく食べた
ウエイトレスが近寄ってきて
「そろそろラストオーダーになりますが、、、」
神山は洋子に
「久しぶりにラーメンでも食べるかな?」
「ええ 頂くわ」
ウエイトレスにシンプルなラーメンを1つ注文し
分けるので小さい器を2つ貰った
運ばれると 久しぶりなので美味しかった
屋台のラーメン屋と違って具が一杯入っていた
神山と洋子はスープまできれいにした
「あ~ 美味しかった 満腹です」
「ええ わたしも 美味しかったわ あなたと一緒だからよけい」
二人はおなかと幸せが一杯になり店を出た
少し歩いて
「洋子 明日は13時に上原のマンションだけど 気をつけて来なさい
いいね それで例え5分でも遅れるようだったら僕の携帯に
必ず電話をしてください」
「ええ わかったわ 一応 家を出る時にします」
「うん 頼みます」
「はい 分りました」
「うん ではお休みなさい」
「は~い お休みなさい」
神山と洋子は別々のタクシーで家に帰った
マンションに着いた神山は入り口で祥子の部屋を押した
在宅であればドアホンが鳴りこちらのインターホンに声が
聞こえてくるはずだが 3回鳴らしても出てこなかった
神山は部屋に戻ると祥子の携帯を鳴らしたが応答しなかった
今日は久しぶりに早く寝ようとシャワーを浴び
冷蔵庫からビールを出して呑んでいると携帯が鳴った出てみると
「亜矢子です こんばんわ 夜遅くにごめんなさい」
「いえ今帰った所で シャワーを浴びて地ビールを呑んでるよ」
「ねっぇ聞いて驚かないでね」
「うん 又当った?」
「ええ当ったわ」
「へー それで幾らなの?」
「1等の1億円よ」
「えっ、、、いちおくえん?」
「ええ その前後賞が1枚当って5000万円」
「えっ、、、5000まんえん、、、」
「ええ今言ったのは私のボディーサイズのほうね
実は貴方のボディーサイズも当ったわ」
「えっ、、、」
「2等賞で3000万円 こちらは前後賞が2つ当って
1500万円の2枚で3000万円よ 合計で2億1千万円」
「えっ、、、におくいっせんまんえん へぇ~、、、なにほんと」
「ええ 本当よ ありがとうございます あなた それでね
貴方のボディーサイズの分6000万円は貴方のだから
明日来た時にお渡しするわね」
「えっ、、、そんな ねぇホント」
「ええ私も新聞を何十回も確認して 宝くじセンターにも確認したわ」
「えっ、、、う~ん そうしたら 僕が貰うお金は1000万円で良いよ
またいつなんどき必要になるか分らないだろ ねっそうしよう
で 無かったら 亜矢子と分かれる いいね」
「嫌よ 別れるなんて 言わないで」
亜矢子が電話口で泣いているのが分った
「ごめん 言いすぎた ごめんね」
「もう絶対に言わないで 嫌よ その言葉は、、、」
「うん ごめんなさい 絶対に言わないよ 信じてくれ
しかし 僕はこれからお金が入ってくる しかし亜矢子の場合は
いつもと一緒だ だったらお母さんの事もあるし
気持ちよく受け取ってくれ お願いします」
「ありがとう 分ったわ では明日は用意出来ないから
次に逢う時か 銀行に振り込むわ」
「うん 1000万だと持ち歩くのに物騒だから振込みがいいな
じゃあ 言うよ xxxx銀行 普通口座 xxxxxxx
名義はカミヤマケー です」
「復唱するわね 、、、、、、、、、、、、で間違っていない?」
「うん 大丈夫だよ お願いします しかしどうしたんだろうね
亜矢子さ この事 分っていると思うけど人に言ったら
絶対だめだよ いい」
「ええ」
「お金の使い方も普段通りにしていないと いいね」
「はい 分りました」
「うん 言ったらお終い 亜矢子が不幸になるだけだよ いいね」
「はい 分りました ありがとう 実はね このお金で 富士の方に
引越しを考えているの 母は抗がん剤を使わなくて良かったの
しかし先生がいい病院を紹介して下さるって仰られるの
この話は前から出ていたんだけど ほら お金が無いから
今の先生の所に行ってたの だから空気のいいそして
いい病院の近くを探そうと考えていたの だけど相談できる人が
居ないでしょ だからあなたにお願いしようと思ったの」
「うん いい事だよ それで新築するわけだ」
「ええ そうすれば自宅で診る事が出来るし なにしろ
今は病院で可哀相だから せめて一緒に生活して
昔の恩返しが出来れば良いと思ったの 駄目ですか」
「いや そんな事は無い う~ん しかし来週は分らないが
出来るだけ三島に行くよう時間を作る」
「ええ 信じているわ」
「うん さっきは言いすぎた 本当にごめんなさい」
「うん あなたの事分っているから 気持ちは凄く嬉しいの
ただね 別れるって言わないで おねがい 亜矢子どうしたら
いいか分らなくなっちゃうから もう言わないで」
「うん 言わない ごめんね 折角の嬉しい報告で 楽しかった
時間を壊してしまって」
「うん いいわ 元気が出てきたから」
「うん 勤務のスケジュールを教えてくれる」
「ええ 29日水 5月2土 5火 8金です その前の日は
12時で上がれる日よ」
「分ったわ 最悪休日前になるかもしれないけどなるだけ早く行く」
「ええ 待っているわ ごめんなさい 我侭言って」
「恩返しのいい我侭じゃないか わかった 今日はまだ仕事?」
「ええ これから仮眠よ それではお待ちしています 明日は
早いの 来るのは」
「うん 出来るだけ早く行く でも5時を過ぎますね 6時から
直ぐ仕事が出来るよう準備しないといけないからね」
「わかったわ 気をつけてきてね」
「うん では亜矢子も気を付けてね お休み」
「ええ お休みなさい」
神山は電話を切ると果たして誰に相談するか悩んだ
しかし浮かんで来なかった
ロレックスを見ると24時を廻っているのでもう一度祥子に電話をしたら
繋がり
「ごめんなさい 今帰るととこなの ごめんなさい」
「うん では先に寝るよ」
「怒っている」
「勿論さ ではお休み」
電話を切って 祥子は一体何を考えているのか判らなくなった
スタッフの話し合いなど日にちを変えれば済む事で
今そんな時期か考えて欲しかった
上手く行っていないのなら それは今日までの指導が間違っていた
神山はそれしか考えられなかった
冷蔵庫からビールを出しタバコをふかして暫くして眠った
4月26日 日曜日 快晴 朝
神山は目覚まし時計より早く起きた
カーテンを開けると目に入る家の屋根が眩しく光っていた
神山は冷蔵庫からビールを出してテラスの椅子で呑んだ
昨夜の亜矢子の話しが頭から離れなかった
時間は早かったが アルタの高橋に電話をした
「神山です 朝早くからごめんなさい」
「いえ いいですよ 何かありました?」
「うん アルタさんって 一般家屋って扱っている 新築だけど」
「う~ん あまりないですね しかし社長に話せば判りませんよ」
「うん ありがとう 今日 社長は何時頃来るかな」
「昨夜の話だと11時オープンなのでその前にはくるそうです」
「うん 分りました そのとき聞いて見ます」
「山ちゃんが造るの?」
「いやいや 知人ですよ」
「はい 分りました では僕は出来るだけ早く大工と行きます
それと ゴルフの件は順調です」
「了解です では現場で」
神山は高橋に言われゴルフの準備をはじめた
ボストンバッグを催事課に届けてもらってそのままにしてしまった
今日は横浜から持ってきたバッグを使う事にした
色々と調べていくとゴルフボールが全然無く後は万全だった
内藤社長から貰ったゴルフセットでクラブを握るのは
初めてだが 少し振ったところバランスが良くて打ちやすそうだった
パターも高額品でこれもバランスが良く打ち易そうだった
13時に戻ってあれこれ慌てないように一箇所に纏め
後は準備する物は無いと見回し確認をした
ゴルフの準備で時間を忘れ時計を見ると8時を廻っていた
神山は祥子に電話をした まだ寝ているのか出なかった
今日 上原の仕事は11時のオープンに顔を揃える人達との
挨拶をするだけだった
一応ディスプレーを見るが基本は昨日出来ていたので
今日は少しの手直しで充分いけると考えていた
なんとしても13時少し前に出て 小田原に行きたかった
高橋が9時に現場に来ると言っていたのでその時間に
合わせてここを出ようと考えたが 軽くサンドイッチを食べたくなり
まだ8時30分だが出る用意をした
部屋を出る時祥子から電話があったので出ると
「ごめんなさい 遅くなって 今起きたところです」
「うん 僕は駅でサンドイッチを食べるからこれから出る」
「ごめんなさい約束破って 怒っている?」
「あきれているよ 何があったか分らないけど 今日の事を
考えるなら 皆を早く返して爽やかな顔でオープンを迎えるのが
普通だろう 多分今日の事で揉めたと思うが それは昨夜
話す事ではなく昨夜までに決めておく事ではないのかな?
このオープンにみんなの努力があるんだ それを忘れるな」
「はい そうです ごめんなさい」
「忙しいのは分るが そう言った事をきちんと決めていくのが
祥子の立場だろうと思う 忙しそうだからお先に」
神山はそう言って 部屋を出て どうしたものか考えた
この間も浜野の一件で悩んでいたし 自分で抱え込みし過ぎて
どうにも解決出来なくなったと考えられる
祥子は良い子に成ろうとしてはいないが 多分に
そいった所も見え隠れした
祥子がこのような生活を続けるならば 代々木で寝起き
する事が多くなりそうだと思った
やはり一人で歩くのは寂しい物があった
今まで一生懸命に現場に行っていた祥子と違う祥子が居るようだった
今朝は現場を通る道ではなく別の道で駅まで行った
売店で新聞を久しぶりに買いカフェスタンドに入った
コービーとサンドイッチを注文し新聞を読んでいると アルタの高橋が
「山ちゃん どうしたの ここで さては外泊?」
「ちがうよ さっきの電話も部屋からですよ」
「久保さんは」
「うん 携帯掛けたら 起きたばかりと言っていた」
「うん まああの人も大変だね 昨日も一人で頑張っていたよ」
「そこなんだよ 前にも相談されたんだけど 自分で溜め込む
性格かなって 相談する人間がいない訳さ 自分の弱い所を
人に見せたくないから 抱え込んだらお終いだよ」
「うん そうだね 山ちゃんに甘えているけど
どう切り出すか分らないんだと思うよ」
「そうかな まあ 仕方ないですね ところでゴルフバッグは?」
「うん もう誠二君に渡してあるよ どう内藤社長から貰ったクラブ」
「うん さっきちょこと振ったんだけど振りぬけがいいし
あのバランスは僕にピッタリだよ」
「アレレ そうすると明日は山ちゃんかな なんか山ちゃん オーラーが
出ているよ ほんと」
「まさか 禿げていないよ そんな」
神山とアルタの高橋はおおわらいした
軽食を済ませた二人は現場に着いたが誰も来ていなくて神山が
シャッターをあけ中を一通り見渡した
外からの光線が綺麗に入って商品もはえて見えた
神山は照明をつけ外に出てみると陳列された商品が
先ほどより更に見栄えした 神山は高橋を呼んで
「思った通りに効果が出ているね」
「そうですね 商品が映えて見えますよ うん良く出来ました」
「僕はこのような仕事で外は初めてなんですよ
しかしこれで少し勉強できましたね 床もいいし 自分で
誉めるのは余り好きではないけど 100点でも良いでしょう」
「うん 山ちゃんがコーディネートしてくれなかったらアウトでしょ
ぼくはそう思っていますよ ほんと」
「ありがとう やはり現場だね 現場を把握しないと出来ないね」
「うん そうですね ここのように主役が商品で脇役が造作や什器
しかし造作や什器もしっかり主張していますからね 凄いですね」
神山と高橋が話しているところへ祥子が俯いてきた
「済みませんでした 遅くなりました」
神山と高橋は顔見合わせ高橋が 店から出て行った
「なあ祥子 もう二度と言わないよ 自分で抱え込んで良い格好するの
辞めなさい でないと我々が振り回され 仕事が出来なくなる
先日の浜野君のように打ち明けてもらえば何とか考える
抱え込んで何でも自分で解決しようとする事は絶対に辞めなさい
筒井さんも居る ぼくも付いている そんなに自分で
格好つけるんだったら 今後祥子と仕事が出来ない 良いかな」
「はい 今朝の電話の通りで 何とかしようと思っていたの だけど
蓋を開けたら大違いで大変だったんです」
「うん その話は昨夜ではなくもっと早めに解決をしておかなければ
いけないことだろ だから何か小さい事でも抱え込んで 解決すると
言う事を辞めないと 同じ事の繰り返しになるし
祥子の進退問題に発展する いいね分った」
「はい 分りました どうも済みません 今日筒井と相談します」
「うん でないと祥子の居場所がなくなるよ ほんと
筒井さんが自分で決めなさい そんな事は と言われ迷ったら
僕が居るだろ そこだよ 見極めをきちんとしないとだめだ いいね」
「はい 分りました ほんとごめんなさい」
神山と祥子は話しが終わり祥子は元気なさそうに仕事をはじめた
今まで見た事が無い暗い表情だった
しかし ここで立ち直らせるにはああ言う事を言わなければ
駄目になると思った
神山は祥子に近づき
「ほら 笑顔だよ笑顔 お客さん見ているよ それも仕事 ねっ」
神山に励まされた祥子は作り笑いで
「は~い 分りました 頑張るわ ありがとう やっぱりあなたね」
「さあ 笑顔 ねっ 笑顔」
そう言って 外に出たら高橋が
「山ちゃんらしいや 久保さん やる気出したもん いいなもてる男は」
「さあ お仕事ですね」
高橋と話し終わるとニーナ・ニーナの面々がにこにこやってきた
時計は9時30分になっていた 神山はカチンと来ていた
ニーナ・ニーナの女性軍が神山におはようございますと言ったので
「おはようございます では無い
何時だと思っている 遅い しっかり準備をしなければ
いけない時だろ それをこんな時間に来て なにを考えている」
その剣幕でみなビックリしたが浜野が
「昨夜 話したんです チーフと それでこの時間に来たんですが
どこか間違っていますか」
「わかった 君はそれをどう思う」
「ええ チーフの指示だったので別になんとも思っていません」
「この中に早く来て仕事をしようと思ったのは誰もいないのか」
みんなシーンとしていた
「いいかい 分っていると思うが 君たちの給料がこのショップに
掛かっているんだ 大切なショップって分っているのか
会社のお金を使って アルタさんだって頑張って造ってくれただろう
そんな自分のお店をなぜ大切にしない 浜野君」
「ええ 早く来る予定だったんですが 昨夜あれだけ準備をして
あと仕事は事務所の整理だけだったんでゆっくりしよって事ですが
悪いですか」
「掃除は」
「ええ チーフが私がやるって言うので任せてます」
「君はそれでいいと思うか」
「神山さん 部長さんだからと言って そこまで言われるんですか」
「うん これは役職抜き にんげんとして言っている
ぼくは工事を一杯見てきた その中で チーフが言ったから
遅く出てきました という話は今まで聞いた事がないし初めてだ
この店舗が非常に大切なところに位置している事はわかっていると思う
それだったら 例え応援でも 自分が何とか力になれないか
そうやって考える事が大切だと思う 昨夜どれだけ準備出来たかなんて
それは自己満足だ 仕事は探せば転がっている
君のような腐った考えの人間はこのニーナ・ニーナでは必要と
していないだろう だからと言って 他で働いても
今の考えを直さなければ 同じ事の繰り返しで
仲間に迷惑をかけるだけだ 僕は人間としてあたりまえのことを
言っている この事は筒井さんにもきちんと話をする
そして君の言動が影響してニーナ・ニーナが可笑しくなったら
僕達の仕事が無くなる そしたら君は皆にどうやって
償いをしてくれる」
浜野は俯いて泣いていた
「済みませんでした 私が悪かったです 済みません」
「だめだ そんな事では 僕に謝るんじゃない 君が引き連れてきた
仲間にちゃんと謝って仕事をするのが本筋だろう 違うか」
「はい 分りました」
浜野は 遅く来た仲間全員に頭を深々と下げ
「みなさん ごめんなさい 私が間違っていました
このお店は私たちが造ったお店です 力を合わせましょう
神山さん 先ほどは大変失礼申し上げました」
「あとは」
浜野はきょとんとしているので
「チーフに何故謝罪しない 君の上司だろ ふざけるな」
また浜野は泣いた
「僕に謝るより チーフ 君の上司に謝るのが先だ
そうやって上下関係をばらばらに考えているような人間も
ニーナ・ニーナでは必要としていない ふざけるな 上司は僕じゃない」
浜野はもう涙で化粧が落ちて顔がぐしゃぐしゃになっていた
「いいか 上司を上司として敬う事が出来ない人間は
どんな仕事をしても同じさ この言葉を聞いて悔しかったら
上司から 浜野は凄く上司思いの子ですって言わせてごらん
そうしたら僕は君をニーナ・ニーナの一員として認める 分るか」
浜野はもう声が出ないで頷くだけだったそして祥子のところへ行って
「先輩 ごめんなさい もう二度とあんな事はしません
どうか許してください 済みませんでした」
祥子が一枚上手だった
「私は 何も知りません ここを造ってくれた人に
売上ナンバーワンと言う恩返しをしたいだけです
貴方もその仲間に入りたかったら お化粧を直して
仕事を探し オープンに間に合わせなさい わかった」
浜野は今度は声を出して泣きじゃくった
そこに筒井が来ていて
「浜野君 今出ている涙が本物か偽者かは君の努力次第だよ
わかったら チーフに言われた事をしなさい」
浜野は筒井の声を聞いて また大声でないた
筒井が他の女の子に事務所にいくよう指示した
「山ちゃん ありがとうございます 助かりました
実際 私が甘やかせたのがいけなかったのです そのために久保君を
追い込ませたのかもしれない 本当にありがとうございます」
筒井は頭を深々と下げたので
「筒井さん 頭を上げてください 僕は当たり前の事を言っただけです
それが彼女にとって新鮮だったら今まで可笑しかったんですね
まあ 荒治療でしたがここまで言わないと分ってもらえないと
思いまして 言わせて頂きました
こちらこそ お忙しい所済みませんでした」
「いや 私も聞いていて 胸に何かくるものがありました
これで 一枚岩になるでしょう」
筒井の話しが終ると祥子が神山に
「ありがとうございます 私は彼女を甘やかしたかも知れません
しかし 神山さんの話で組織が少し分りかけてきました
今後は躊躇する事無く指導をしていきます」
「うん 久保君そうだよ 私の代弁だと言っていい
部下にはズバズバと言えばいい これからそうしてくれ」
「はい 分りました ありがとうございます」
祥子はそう言って 仕事に戻った 暫くすると浜野を除き
みんなが祥子に向かって
「チーフ 済みませんでした 私もここのお店の仲間に入ります
不注意がありましたらどんどんと指摘をしてください お願いします」
「分ったわ 自分で仕事を見つけ 笑顔で仕事をしてね 笑顔よ」
神山は祥子がようやく普段に戻ったと思った
そとで見ていた高橋が
「またやったですね 山ちゃん あなたは なにほんと」
「何にもしていないさ ごくごく普通の話しさ そうだろ」
「うん まあ しかし迫力が違うな なんか 次長になるから
心構えが違ってきたのかな」
.