「そんな事無いよ 今まで通りさ」
神山は外に居る筒井に今朝の祥子の状況と自分がしかった事
祥子が筒井に何かを相談するという事を簡単に説明した
「多分 これで 一件落着だと思うけど 来たら聞きます
どうも 本当にありがとうございます」
時間は10時になっていた 神山の携帯がなった
「はい 神山ですが」
「内藤です おはようございます」
「おはようございます 昨夜は遅くに失礼しました」
「いえ とんでもないです ところで代々木ですがOKです」
「ありがとうございます よかったです」
「それで 今日上原に行きます そのときに自動ドアのカードを渡します」
「ありがとうございます 助かります」
「それで足りました?」
「ええ ぎりぎりでした 配達は27日の18時でお願いしてます」
「わかりました そうですね11時のオープンには間に合うよう行きます」
「はい お待ちしています」
神山が高橋に
「内藤社長が11時に来られると連絡があったよ」
「よかったですね オープンに間に合って」
「うん」
神山は鈴やの秘書課に電話した
「神山ですが お疲れ様です」
「あら神山さん お元気ですか みんな寂しがっているわよ」
「はい 落ち着いたら店長のお顔を拝見しに伺いますが
店長は上原に何時頃お見えになられるんでしょうか」
「ええ 11時でしょ 間に合うように伺いますよ
そうそう お土産ありがとうごさいます 美味しかったわ」
「ええ 少し休んでいなかったので温泉に行きました」
「まあ でも元気そうね がんばってね」
「ハイありがとうございます」
神山は電話を切ると催事課に電話した
「神山です」
「あっ 先輩 こんにちわ どうですか上原は」
「うん何事も無く順調だよ 課長は」
「ハイ 替わりますね 課長 神山部長からです」
「うん やあ山ちゃん どう上原は」
「ええ何も無しです ところで11時のオープンには
何方が来られますか」
「うん 倉さんが行ってくれる」
「分りました 筒井さんが居るから大丈夫ですね
それと祝賀会大変ですね」
「うん 一応出来たよ それで山ちゃんの3社も来て頂くことでOKです」
「ありがとうございます また何かあったら電話ください
済みません 翔をお願いします」
「翔 山ちゃんだ」
「違うでしょ 課長 神山部長でしょ 悪い悪いそうだな」
「はい翔です」
「うん ぼくの机の後ろに荷物があるだろう」
「ええ 山積みになってますが」
「その中に ビトロのボストンは分る?」
「ええ すぐに分りますよ こんなに高いの買って良いですね」
「仕事だよ わかった そうしたらそのバッグだけ除いて
あとは紐でくくっておいてほしいんだ お願い 頼みます」
「ええ 紐で縛っておけば良いですね」
「うん 頼みます」
「はい 了解です」
神山は電話を切ると 洋子に電話をした
「神山です こんにちわ」
「洋子です お疲れ様です」
「ねェ 洋子はバッグはビトロにするの」
「ええ折角だから そうしますが」
「そうしたら 催事課へ行ってもらって 僕の机の後ろにバッグが
あります それをもってきてほしいんだ」
「はい 分りました 上原はどうですか」
「うん ありがとう 何事も無く進んでいます」
「よかったわ では自宅を出るときに電話をします」
「うん それと ガソリンを満タンにしておいて
一応満タンで来ているはずだけど お願いします」
「はい 分りました」
神山が電話を切ると内藤社長夫妻が来ていた
気がつき挨拶をすると 内藤が呼んで
「はい カードキー 暗証番号は山ちゃんの社員番号6桁です
それと これ支度金 使って」
そう言って 茶封筒を渡された神山は
「ありがとうございます 大事に使わせて頂きます」
「はい それでマンションは会社名義で借りますが
郵送物関係で xxx号 神山でOKと言われました」
「何から何までありがとうございます
アレックスグループの時に頑張ります」
「ええ お願いします」
「アレックス氏と会うのはいつですか」
「えっ なんで極秘事項を知っているの?」
「ええ 今はちょっと」
「内緒です 30日の辞令交付後です」
「分りました ありがとうございます」
「この話は最高機密です お願いします」
「大丈夫です 僕にとっても、、、、まあ 明日頑張ります」
「どう クラブ 大丈夫?」
「ええ バランスが僕にピッタリです ただ調子良すぎると
スコアが悪くなるみたいなので気を付けます」
「うん あそこはピンポイントで責めれば大丈夫だよ」
「はい ありがとうございます」
神山はお辞儀をすると 内藤真奈美に挨拶をした
「本当は一緒に行きたかったの 残念ね 今度ご一緒させて」
「はいありがとうございます 教えてください お願いします」
「はい 色々とね」
内藤真奈美と挨拶を終ると次々偉い人がきた
神山は祥子のところに行き
「ねえ 鍵が閉まる引出しはある」
「ええ あるけど なにか?」
「うん 少しの間預かってもらいたい」
わかったと言って事務所の机に鍵が掛かる引出しがありそこに預けた
「鍵は祥子だけ 持っているのは?」
「ええ そうよ 滅多に空けないからお貸ししましょうか」
「うん ありがたい」
そろそろ11時か皆集まってきた
神山は写真を撮ってあげれば喜ぶと思って 駅に駆け足で買いに行った
コンパクトカメラだが ないよりましだった
そろそろ11時になった 何処から用意したのかマイクとスピーカーが
入り口前にセットされた
周りを見ると池上店長や倉元も来ていた
11時になると マイクの前に筒井が立って 女性社員は筒井の後ろに
整列していた
筒井の挨拶が始まった 神山はみんなで並んでいるカットを3枚
筒井の写真など撮影した
挨拶が終ると道路に溢れている関係者や招待客から拍手が沸いた
客が店舗内に入ると入りきれなかった 神山が筒井に
「入場制限しないと危険です 私も手伝います 大至急しましょう」
「うん わかった やろう」
筒井が 後から入ろうとしている招待客を駅と反対方向へ3列で
並べた それでも他のお店まで行ってしまい 神山は迷惑の
掛かっている店主に謝って廻った 知らない間に倉元や池上店長も
人員整理をはじめていた 神山は催事課の奥村課長に電話をして
事情を説明し杉田を大至急応援に来て欲しい事を伝えると
直ぐに行かせると返事を貰った その事を筒井に話をした
神山はここまで招待客が来るとは思わなかった
最後尾を確認すると少しづつだが伸びていた
神山は筒井に一回のお買い物時間は30分で客を総入れ替えに
しないと後ろが伸びているので苦情になると進言した
筒井は直ぐにここのお客様は11時30分で一回出て頂きます
お店の外にまだ並ばれています 再度お買い物される方は
列にお並びくださいと アナウンスした
神山は客がどんどん伸び迷惑のかかる他のお店の店主に 謝って廻った
あとは商品が持つか この調子だとすぐになくなりそうだった
神山はバックヤードに行くと祥子がダンボールの開梱作業をしていたので
手伝い 商品を店に出すよう指示した
筒井がマイクを持って11時30分になったから入れ替えですと言って
招待客の総入れ替えをした 店舗から出た客は半分位が列の後ろに並んだ
そこへ翔が応援で駆けつけてくれた
「先輩 なんですか バーゲンじゃないですよね」
「うん そうだよ それと翔 これお駄賃だ」
神山は翔に5千円あげた
「今後ろで池上店長が整理されているから 挨拶をして替わってくれ」
「はい 分りました」
神山は少し余裕が出来なにが出ているか観察すると
平均して売れているように見えた
池上店長が
「山ちゃん凄いな しかし的確な判断だったな」
「あっ 店長ありがとうございます 済みません私のミスです
考えていませんでした 申し訳ございません」
「うん どうだね 回転は」
「ええ 今観察しましたが平均に出ています」
「う~ん わかんないな 安い訳じゃないだろ なのに分んない」
「ええ 世界七不思議が一つ増えました しかしこの購買力だと
あと1時間持つかどうかです バックヤードはありません
かといって この混雑に商品を搬入する事は不可能です
そうだ 銀座店に廻す方法があれば なんとかなるかな
どうでしょうか ここで完売になった後銀座店に廻す事は」
「うん 筒井君に聞いてみよう しかし車はどうする」
「ハイ 今当ります」
「うん頼んだよ」
神山は上野店流通センターに電話をした
「神山です ご無沙汰しています」
「おお山ちゃん元気か まだ早いがおめでとうございます すごいな
おれを追い抜いて ところで何か」
「ええ マイクロ2台3時間位でいいんですが貸してもらえませんか」
「どうしたの」
神山は上原の現状を説明し池上店長もご存知ですと伝えると
「分ったわ 高いぞ」
「ええ ニーナ・ニーナの筒井さんに廻してください」
「そうすると 多少のピストンだね」
「ええ 2,3回で済むと思います」
話をしているところへ池上店長がOKサインを出した
「今 池上店長と筒井副社長の話が纏まりました お願いします」
「うん分った 場所は代々木上原駅だね」
「ハイ 国道から入るとすぐです 駅に入る道が2本ありますが
国道に駅名が出たら曲がって直ぐです」
「ありがとうございます わかりやすい 30分位掛かるが いいかな」
「ええ それより12時30分に来て頂くと良いですね お願いします」
「はい 山ちゃんのお願いじゃ断れないよ では」
神山は池上店長に上野の流通センターからマイクロバス25人乗り
2台を3時間借りた事を報告した
「わかった 筒井君に話してくれ」
神山は筒井を探し マイクロバスの件を話した
「山ちゃん 本当に何から何までありがとうございます」
「しかし 請求書は来ると思いますよ」
「うん ありがとうございます」
そろそろ12時になったのか 筒井がマイクを持って総入れ替えの事を
アナウンスし始めた
神山は一息つく為に皆に見えない路地に入ると高橋がいて
「すごいね バーゲンじゃないのに それにしてもさすがだね山ちゃん
改めて ほれなおした」
神山はタバコを吸いながら
「だってあのまま営業していたらゴルフどころじゃないでしょ
棚板ガラスが割れたとか人が転んで什器を壊すとかねえ」
「ん まあ そこまで考えたの 客の事だけではなく」
「はっきり言って 客は後です 什器が先です 仕事終ろうよって」
「まいった 池上店長さんは客だと言っていたよ よくやったって」
「ははは それでしたら そうしましょうね」
神山はタバコが美味しかった
朝 むしゃくしゃしたのが晴れた気がした
「ところで内藤社長は」
「うん この人ごみでは選べないと言って帰りました」
「そうだね 後日来て頂くしかないか これじゃあ出来の良し悪しも
判らないしね」
「うん そうそう」
神山はタバコを吸ったので路地を出ようとすると倉元が入ってきた
「山ちゃん 素早い判断で皆を救ったな おめでとう 感服した」
「ありがとうございます 嬉しいです では戻ります」
神山は店舗の前に行くと列の後ろが伸びていないので
ピストンは一回で済むかなと思った
中の商品はどんどん無くなって行った
しかしこんな売上だとアンテナショップとしての資料が出来ないと思った
神山は筒井に次の現場があるので13時少し前にアルタの
高橋とここを離れる事を伝えた
筒井は何回もありがとうございますと繰り返していた
マイクロバスが来て12時30分の総入れ替えが始まったが
筒井は 銀座店にいかれるお客様にマイクロバスを用意した旨の
アナウンスをすると店舗から出てきた客は列の後ろに行かないで
マイクロバスに乗車した マイクロバスは満員で発車していった
その光景を見ていた池上店長が神山に
「山ちゃん これ少ないが ワシの気持ちです 納めてくれ」
「そんな いいですよ店長 その分を今夜催事課で寿司の方が
よろこびますよ そうしてください お願いします」
「うん 分ったわ 山ちゃんも参加するだろ」
「済みません 次の現場がありまして もう直ぐ離れます
筒井さんにも話してあります」
「そうか 分った」
「出来れば ニーナ・ニーナのお嬢様たちにどうですか」
「そうだな そうしよう」
「いつもお気に掛けてくださいましてありがとうございます」
「うん ではがんばってな」
「はい ありがとうございます」
しばらくすると洋子から電話があった
「今出ました お願いします」
「はい了解」
「あなた 又 凄い事されましたね 銀座店では大騒ぎよ」
「ありがとうございます では待っています」
神山はアルタの高橋に車の件を伝えると筒井に挨拶をしてでた
まだある列の後ろで翔が頑張っているので
「頼んだよ そしてここが終っても 筒井副社長の所に行って
きちんとお手伝いをするんだ 判ったね」
「はい 分りました 神山部長」
神山はポケットに手を入れると鍵が出てきて思い出した
店舗内のバックヤードに行き茶封筒を取り出し鍵を祥子に返した
「よかったね 来ないよりは」
「ほんとありがとうございます 何から何まで 助かったわ」
「僕は明日帰ってくるが遅くなる」
「えっ どこに行くの」
「ゴテンバ グランド インの仕事 前に話をしたよ」
「ごめんなさい 忘れていました 済みませんでした
気を付けてね」
「うん アルタも居なくなる 筒井さんに話はしてある 頑張って」
神山はお待たせと言ってマンションへ向かった
マンションに着く洋子と内野誠二はすでに来ていた
神山は洋子からバッグを受け取り 部屋に戻り 今朝用意した
バッグの中身を全部入れ替えた
内藤社長から貰った茶封筒を開けてみると500万円入っていた
一応 カメラバッグに入れ 所持金を100万円にしてバッグを担いで
駐車場についた
「ごめん 遅くなりました」
内野が運転する事になり高橋が前で 後ろに神山と洋子が座った
駐車場を出た車は高速に入るまで幾つかの信号があるが
今日は全然止らずに進みスムースに高速に入った
内野が
「田所さん 運転しにくいですね この車」
「ええ 変な癖がついていて 2速から3速が一番酷いわね」
「えっ 済みません 僕はそこまでわかりません」
車の中は大笑いだった
神山は洋子に
「ねぇ ガスはどうでした」
「ええ 満タンでした」
「よかった ありがとうございます」
神山は高橋と内野に聞こえないよう小声で
「内藤社長にアレックス氏の来日を聞いたのね 30日だって
辞令交付のあと会う予定です
ところが なんでアレックス氏の来日を知っているんだと
不思議がっていた だから色々と情報は集めています
そうしたら これは社内でも最高機密なので内緒ですって」
「そうすると Jrも知らない可能性があるわけね」
「うん そうだ」
「ねぇ 30日にJrも来ると面白いわね ひょとすると
アレックスジャパンが面白くなるわね」
「うん」
神山はPCで調べプリントアウトしたものを洋子に見せた
洋子は
「わぁ~ 凄い ここまで調べたんですね」
「うん Jrは不味いんだ こんな風に書かれて」
「ねぇ アレックスジャパンの買収?考えている?」
「いや そこまでは 買収ではなく 傘下に出来ればアルタと鈴やは
安泰だろう そこでどちらの傘下にするかだね
お互い利益が絡むし」
「そうね でもアルタが握って 鈴やが独占販売だったら
問題ないでしょ」
「うん やはり販売については鈴やルートだね なにか段々と
考えが纏まってきた」
「たのもしわ」
内野の運転で1時間しないうちに小田原工場についた
工場長の赤坂が出迎え
「いらっしゃい 神山さん」
「先日はありがとうございます それと第二貨物の常務からも
お礼の言葉を頂きました お昼が大変良かったと」
「ありがとうございます 早速ですが 荷物は」
高橋と内野が
「先にお昼にしましょう まだなんです」
「はい それでは」
高橋と内野が先に歩き社員食堂のフロアに着いた
赤坂が
「済みません 今日の営業はいつもの半分くらいです 何処にされますか」
高橋が神山に
「お寿司にする?」
「うん 洋子さんは」
「ええ お寿司でお願いします」
赤坂がカードをスキャンさせ暗証番号を打って入店した
今日は忙しい部署だけ出勤という事だが結構繁盛していた
5人は景色が見える席につき洋子が
「ふぁ~景色がいい所ですね 羨ましいですね」
「ありがとうございます 唯一の自慢です
高橋さん ビールは」
「うん 内野君を除いてください」
洋子が
「私が運転するわ だから皆さんで呑んで」
神山が
「では お言葉に甘え 仕事に支障が無い程度に 頂きましょう」
赤坂がテーブルのボタンでビールと鮮魚の盛り合わせを注文した
ビールが運ばれ鮮魚も運ばれ乾杯した
神山はここ数日美味しい鮮魚ばかり口にしているが
ここの鮮魚も甲乙つけがたく美味しかった
神山は赤坂に
「上原の什器 ありがとうございます 大変よく出来ていて驚いています」
「神山さんに誉めて頂くと嬉しいです こちらこそありがとうございます」
神山は簡単に挨拶を済ませ又食べた
話題はもっぱら上原の爆発的なオープンで賑わった事で盛り上がった
全員が食べ終わると洋子の希望で工場を案内してもらった
鈴やに入る次長室の建具を制作している部屋に入った
洋子はパースを見ているのでイメージは出来ていたが
「ふぁ~素敵 この家具が来るんですね」
「ええ これから運び出します どうぞ触ってください」
神山と洋子 高橋と内野たちは口々に
よく出来ていると褒め称えた
神山は今度 田中幸三にあったら誉めてあげようと思った
受け付けカウンターや椅子があったのでそこに座り
「この高さはすごく使い易く疲れませんね 気に入ったわ」
神山も次長テーブルに座ったが高さがぴたりと決まり気に入った
洋子が納得するまで見学し ゴテンバ グランド インの
サインを運び出し赤坂に御礼を言って工場を後にした
運転は洋子がして横に神山 高橋と内野は後ろに座った
一行の車は有料道路から高速に入りゴテンバ グランド インへ向かった
洋子の運転は決して危なくは無いがスピードが出ていた
内野が
「田所さん 早いですね 僕なんか少し怖いですよ」
「大丈夫よ もっと出しましょうか」
そう言って スピードを上げた
限界と思われる160キロまで出すと
「この車 これが限界ね 踏み込んでいるけど 出ないわ」
ウインカーを頻繁に出して追い抜く様は男かおまけだった
神山が
「パトカー大丈夫かな」
「ええ ここらはカーブが多くて追い駆けられないから居ないわ」
神山が驚いていると 高橋と内野は洋子の運転に圧倒されていた
洋子が出したスピードだけではないが早く着きそうだった
ゴテンバ グランド インには16時過ぎに着いた
車から降りると亜矢子と椿が駆け寄ってきて椿が神山に
「よく来て下さいました ありがとうございます
では ラウンジにお茶をご用意しておりますのでどうぞ」
4人がグランドフロアにあるティーサロンに向かう時に椿が神山に
「神山様 今回地ビールの件 ありがとうございます
この事で拡張が順調に進みます これは少ないですが御礼です
お納めください 今後も色々とご指導をお願いします」
神山は頷き椿から封筒を貰いみんなが待っているサロンに行った
洋子が
「私 美味しい地ビールが欲しいわ」
亜矢子が
「はい 只今ご用意いたします」
お辞儀をしてサロンの厨房に入っていった 神山が椿に
「椿さん 簡単な工事なので出来れば早めに行いたいのですが
早めるのは難しいですか?」
「ええ 今日のチェックインの状況を見ておりますと
これから作業をして頂いて結構です お願いします」
そうと決まり 4人は手順を確認し神山が
「そうしたら 今16時15分だから 16時30分に
最初に取り付けるあの柱で待ち合わせしよう どう孝ちゃん」
「うん準備があるから 16時45分でどう?」
「うん ではお願いします」
洋子が地ビールを全部呑んだところで亜矢子と若い女性の案内で
エレベーターに乗り最上階に着いた
神山と洋子の部屋は事務室の隣りで亜矢子が案内した
高橋と内野は反対側の角部屋を案内された
亜矢子は神山と洋子を部屋に案内すると
「神山様 申し訳ございません お部屋が埋まってしまい
大変ご不便お掛けします 高橋様と内野様にもご協力お願いしています」
亜矢子が丁寧にお辞儀をしながら謝った
「ありがとうございます いいよね一緒でも」
「ええ 大丈夫ですありがとうございます」
「それでは何かご不明な点がございましたら内線の7200番に
お掛けください お願いします」
「ありがとう 早速で申し訳ないですが お届け伝票を下さい」
「はい 早速お持ちいたします」
亜矢子は丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った
洋子は
「綺麗な方ね ちょっと暗さがあって素敵」
「うん あとでここの日本酒を皆に届けます ちょっとメモいい」
「はい」
神山は亜矢子の事について 今は余り触れたくなかった
「まず日本酒は副社長 西野理事 池上店長 催事課の倉元さん
奥村課長 由香里姫 翔 市川 ニーナ・ニーナ筒井さん かな
地ビールは銀座店催事課宛 秘書課宛 販促部長席宛
東京本社秘書室宛 秘書課宛 人事課宛 かな どこか漏れているかな?」
「はい 大丈夫だと思います」
「あとね ニーナ・ニーナの本社筒井さん宛 それと銀座店の
食品部長席宛でここには宣伝の意味があるので2ケース そして
手紙を添えて貰いたいな
【この地ビールは私 神山が惚れたビールです
私だけでなくこの美味しさを皆様で吟味をしてください なんて
硬いこと言わずに がんがん呑んで中元戦を頑張りましょう】
で どうだろう?」
洋子は笑いながら
「貴方らしくて はっきりしていていいわ 大丈夫よ
ただ それだけだと そうかで終るかもしれないので
【部長 大きな仕事になります お時間の空いた時に
ご相談させてください】
を付け加えるとどうかしら?」
洋子はニコニコとしながら 神山の顔を覗いた
「さすが 僕の心を読んでいますね そうなんだ鈴やでも販売する
足がかりにしたいんだ 関東では販売されていないし アルタの
販売権も御殿場アウトレットだし そうすると多少高くても
口コミで広がれば嬉しい話しさ 兎に角 女性に受けているでしょ
このままでは勿体無いしね 良い商材だと思うよ」
「ええ そうね 凄いわね あなたには いつも感心させられるわ」
「そうしたら住所など調べてくれる」
「はい 分りました」
そのとき亜矢子が伝票を持ってきた
以前も使った事のあるお届け伝票だった
「ねぇ桜川さん 手紙を一箇所だけど入れたいんだが出来るかな」
「ええ 出来ますよ 宜しかったらワープロで制作しましょうか」
「うん お願いします」
神山は先ほどのメモを渡し頼んだ 亜矢子は目を通し笑顔になった
何か言いたそうだったが洋子の手前頷くだけだった
「畏まりました 白い封筒で 神山様のお名前を入れて宜しいですね」
「ええ 宛名は伝票の部長名でお願いします」
「はい 畏まりました
伝票にお手紙つきと記しておきます」
「ありがとうございます 助かります」
「では失礼致します」
亜矢子は深々とお辞儀をして部屋から出て行った
「次長全部判りました」
「なんだよ 次長って いいよ普段通りで」
洋子は両手を上げて神山に抱きつきキスをしながら
「私が初めてでしょ こうやって呼ばれたの」
「うん そう言えばそうだね」
「これで互角よ」
「なにが」
「だって 貴方が最初」
「えっ 最初、、、ああ 最初ね」
「もう ばか 知らない 私にとってとっても大切なもんだからね」
「わかった では伝票の件は後回しにして」
神山は冷蔵庫からビールを出して洋子と呑んだ
一方 高橋と内野の部屋では
「高橋さん田所さんて 見かけによらぬドライバーですね」
「うん こっちも怖かったよ」
「しかしあんなに綺麗でおしとやかで あんな運転をするなんて
女って判らないですね ほんとうに」
「女だけじゃないよ 山ちゃんだって 人間じゃないよ
彼は現代のスーパーマンです」
高橋と内野は地ビールを呑み終わると
「さて準備しよう 車から降ろし準備しないと山ちゃんの雷が落ちるぞ」
「えっ 山ちゃんが雷をですか」
高橋は今朝上原で起こった事を内野に説明した
内野の顔から笑顔が消え真剣な口調で
「よほど見かねて 怒ったんでしょうね」
「うん ぼくも初めて見たよ あんなに怒っている所」
「やっぱ 人間じゃないですか」
「だね さあいくぞ」
「はい 早くすませて美味しいもの食べましょう」
高橋と内野はまだ時間に充分間に合ったが部屋を出て準備に取り掛かった
「さて洋子 時間は充分だけど下に行って下見をしよう」
「ええ 化粧室に行きます ちょっと待って」
洋子が浴室に消えたので椿から貰った封筒を開けると
達筆な毛筆の手紙と現金100万円が入っていた
【この度は大変嬉しいご提案を頂き家内ともども喜んでいる
次第でございます 今後もご提案ご指導を承りたいと存じ上げます
同封致しましたのは気持ちでございます お納めください
ゴテンバ グランド イン 総支配人 椿 秀介】
神山はこれからも地ビールを拡張しようと考えた
洋子が
「お待たせしました さあ行きましょうか」
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