2013年3月4日月曜日

薔薇 3 - 28 Vol. 1



神山は駅前寿司屋を出ると洋子と別れ 上原のマンションに帰った
部屋に入るとボストンの中から洗濯物を取り出し洗濯機の中へ入れた
FAXを見るとアルタの田中から明日7時に次長室に伺いますと
書かれた物だった 受信時間が18時になっていたので
時間変更依頼をする前の物だと判断した
神山は23時を少し廻っているが祥子に電話をしたが出なかった
留守電に
【明日は早く出勤する為 朝食は不要です 今日はこれから寝ます】
とメッセージを残した
神山はシャワーを浴びて浴槽のジャグジーで疲れを取った
髪の毛を洗い流し浴室から出て冷蔵庫からビールを出し呑んだ
テーブルに置いた携帯が鳴ったので出てみると祥子からだった
「ごめんなさい 遅くなりまして 今 帰るところです
メッセージは聞きました」
「うん」
「それと昨日のショップの件 大変ありがとうございます
助かりました」
「それはそうと なんで直ぐに出られない?」
「ええ ごめんなさい なるべく気をつけているんですけど」
「明日 早いから今夜は寝ます」
「ごめんなさい ほんと では お休みなさい」

神山は電話を切るとタバコを吹かしビールを呑んでいると携帯が鳴った
「はい 神山ですが」
「亜矢子です 夜分にごめんなさい 実は相談があって電話したの いい」
「うん 大丈夫だよ」
「この間のお金だけど 何か良い使い道無いか考えたんです
それで病院の近くに私と同じ境遇の方たちの為に
老人ホームを作ってあげようかなって考えたんです」
「うん 良いけど 運営するに当って資格とかいるんでしょ」
「ええ 私は母と一緒に母屋で生活できれば良いわ
運営自体は信頼できる人に任せるわ」
「うん そうか そうすると 大きな建物を建てて
お母さんと一緒に暮らす部分と 老人ホームの部分と合体した
建物が良い訳なんだ」
「ええ そうすれば母も一人じゃないし 楽しく生活できると思うの
どうでしょう それともあのお金じゃ足りないかしら」
「わかった 調べるよ 今日は何時まで起きているの」
「ええ もう直ぐ仮眠です」
「う~ん そうしたら明日の夕方逢って泊まりは出来る?」
「うれし~ 出来ます」
「わかった 17時に熱海でどうですか」
「分りました うれしいわ~ 楽しみにしています」
「うん わかった その病院の名前を教えて」
「ええ ちょっとまってね 御殿場xxxxx病院よ」
「出来るだけ近い所に建てたいんだね」
「ええ」
「今のゴテンバ グランド インとは近いの」
「ええ そんなに遠くは無いわ そうそう今日いかれた
ゴルフ場の辺りよ」
「そうしたら 環境がいいね 空気が美味しかったよ」
「そうでしょ だから母をいい環境に移したいの 
ごめんなさい 長話をして では明日17時にお待ちしています」
「はい では」
神山は祥子に電話をした
「はい 私です」
「神山ですが 遅くてごめん 実は今 急に決まった事だけど
明日仕事で出かけますで29日の夜帰ってきます」
「そう お仕事 何処?」
「御殿場方面さ 又電話します」
「はい 気を付けて お休みなさい」
神山は明日の仕度をしてベッドに入った

4月28日 火曜日 
目覚まし時計のベルの音で神山は飛び起きた
シャワーで躰を引き締め ビールを持ってテラスに出た
今朝は快晴ではないが うっすらと日が差していた
タバコを吹かし雲の形を見ているとぼんやりと出来たが 
今日 やっておかなければいけない事を頭に叩き込んだ
神山はまさかと思ったが昨夜干した赤いパンツを穿いて仕度をした
アルタから貰った支度金500万をカメラバッグからだし
ビトロのボストンに入れ部屋を見渡し後にした
一応祥子に携帯に
【神山です おはようございます これから行ってきます】
と 留守電メッセージを入れておいた
車を拾って代々木のマンションに着くと洋子は先に来ていて
「おはようございます」
「うん おはよう 疲れはとれた?」
「ええ ぐっすりよ どうしたの ボストン持って」
「うん 泊まりで御殿場周辺に行く」
「えっ お仕事?」
「うん まあ そんなとこです」
「なんか大変ね」
「うん 有料老人ホームの下話しさ」
「老人ホーム 貴方が?」
「うん まあ まだ白紙だよ 何も決まっていない」
「それで お出掛けするんだ 大変」
洋子は神山から鍵を受け取るとバンで銀座に向った

催事課の入っているビルに着くとアルタの田中幸三がすでに来ていた
「幸三ちゃん おはようです 早いじゃない」
「神山さん おはようございます 高橋から聞きましたが
早く来ちゃいました」
「うん ありがとう では早速部屋に入りましょう
だけど このビルの鍵を警備室に取りに行かないといけないな」
「大丈夫ですよ ご安心下さい このドアのここにこのカードを
こうやってスキャンさせ暗証番号をここのボタンで入力すると開きます」
「これでいいの 暗証番号は」
「神山さんの会社の個人番号を逆さから入れてください」 
「後ろからだと え~とっ これでいい訳だ」
「はい ほら開きました ここを開けると警備室のパネルに
青ランプが点灯します スキャンをすると点滅です それから
スキャンをして30秒以内に暗証番号が合致しないと最初から
やり直しになります このシステムは次長室のドアも一緒です」
「凄いセキュりティーシステムだね」
「ありがとうございます では行きましょう」
部屋の前に着くと素晴らしく格好のいい壁が出来上がっていた
「幸三ちゃん すごいね どこか別世界に来たみたいだ」
「ええ 昨夜も催事課の皆さんに誉められました」
「誰か入った?」
「いいえ 入りたがった方はいらっしゃいましたが お断りしました」
「うん ありがとう」 
神山はカードをスキャンさせ暗証番号を入力しノブを下げると
まさに圧倒される別世界だった
「素晴らしい 普通じゃ考えられないし造らないよ」
「ええ 私も喜んでいます 奇抜だけど飽きの来ないデザイン 
勉強させて頂きました」
神山は床の出来上がりが想像以上の出来だったので嬉しかった
早速次長席に座り感触を楽しんだ 洋子が
「素晴らしいわ 配色も素晴らしいし もう120点ね」
3人は大笑いした
「幸三ちゃん ここの引出しの鍵は?」
「ええ 先ほどのカードで金色の部分を引き出しの金色部分に
あわせてください」
神山は言われた通りにするとカチャと音がして少し出てきた
「凄いね これも幸三ちゃんが考えたの 素晴らしいね」
「ええ 何とか出来ました」
「そうすると このカードは2枚あって 洋子さんの引出しも開くんだ」
「ええ そうです 何かあったときは 暗証番号を変更できます」
「ありがとう そうすると 作り付けの扉についている金色も
このカードで開くんだ」
「ええ デザイン的に全部に付けてあります」
幸三は扉を開け タバコの箱より小さいBOXのスイッチを差し
「ここのスイッチをオンにすると電気が流れカードを当てないと
開かない状態に出来ます」
「そうすると 自分で都合が悪い所はONにしておけば
僕と洋子さん以外は開けられないんだ」
「ええ そうです」
「格好いいわね お客さんが来た時 カードを当てて扉を開けるなんて
素敵よ ありがとうございます ねぇ 神山さん」
「うん 戦略OKだね」
この後 電話の設定やインターホンの設定を聞いた
この部屋は 神山と洋子が在席している時 来客するとまず
電話器インターホンで話し 中でドアを自動で開けることが出来る
リモコンがあり 不在時は本社の営業時間ないなら秘書課に繋がり
営業時間外は留守電にセットされる あと営業時間内であっても
留守電にセットできるようにもなっている 
逆に営業時間外でもこの受付に直接繋がるようにセットできた
メッセージの音声調節の細かい事はマニュアルに書いてあった
神山は
「じゃあ 今は 営業時間外でしょ そこへ僕が来たとしよう
洋子さん 設定をしてね 1分後に受話器を取りますから」
「はい 分りました」
神山は一回部屋の外に出て待ったが
壁には もう神山次長のプレートが貼ってあった
1分が過ぎたので受話器を取ってみると
「おはようございます 神山次長席です どちらさまでしょうか?」
「神山です おはようございます 開けてください」
神山は開けてくれると思ったが開かないので
「おいおい開けてくれ」
「カードはどうされましたか」
神山はカードをスキャンさせ暗証番号を入力すると開いた
「まいったな こら」
3人はまた大笑いした
「神山さん この扉自動扉のばねが可笑しくなったら
こちらの機械係で治せませんので私にお電話ください」
「わかった ありがとう しかし仕事が楽しくなるね ねぇ洋子さん」
「ええ ほんと今まで体験した事無い事ばかりです」
幸三は今度は空調機や電気関係を説明した
神山と洋子は全ての説明を聞き終わると 
「なにか異常が有ったときは幸三ちゃんに電話をすればいい訳だ」
「ええ この電話機の3番に僕の携帯が記憶されていますから
#押して3を押して頂ければ私の携帯に繋がります」
「そうか 幸三ちゃんの3か 分りやすくていいね」
「順番を変える事や電話番号や住所 名前などの登録も
このマニュアルに書いてあります」
「わかった ありがとう 助かったよ」
幸三は完全に引渡しを終えたので
「では失礼します」
「うん ありがとう」
神山は幸三が部屋を出たあとモニターを見ると幸三がエレベーターで
帰るところが映し出されていた

「ようやく 出来たね」
「ええ お仕事の環境も良いですし 最高ですね」
洋子は神山に近づきキスをした
神山は思い切り抱きしめたが自重した
「さあ 洋子さん PCなど色々と点検して直ぐに動くようにしよう」
「は~い 分りました」
「洋子 この電話でも留守番設定できるんでしょ」 
「ええ 大丈夫です 最後に設定したのが生きます」 
「そうするとさっきはそっちの電話で設定していても僕がこちらで
設定すれば この設定が生きるんだ」
「ええ そうです」 
神山は留守電にして音声を小さくし時計を見るとまだ8時だった
「洋子 今朝は食べてきた?」
「いいえ まだです」
「うん そうしたらコンビニでサンドイッチでいいかな」
「ええ 私 行って来ます」
「うん お願いするね あとコーヒーも」
神山は洋子に
お使いを頼み部屋で足りない物を次長席で書いていた
アルタの計らいでモニターにTVチューナーが付いていたので
TVを見ることにした 上原にはTVチューナーが無いので
TVは見なかったがここと代々木で見られることになった
声を少し大きくして部屋の外に出て聞いてみたが全然音漏れは無かった
そこに洋子が帰ってきて
「なにやっているんですか?」
「うん 音漏れの検査さ 今 TVの音を大きくしているんだ
聞こえないだろう」
「ええ ぜんぜん聞こえないわ」
神山がドアを開けて見ると大きな音が耳を襲った
「ふぁ~大きい音 これだけ大きくても大丈夫なんですね」
神山は音を小さくしながら
「うん 幸三ちゃん完璧に作ったね」
そう言って神山は持ってきた500万円をだし
「昨日話をした分です ここから今日100万持って行き 残りは
引き出しに入れておく いいね」
「私も持ってきました 390万あります これはそうすると」
「うん 洋子の引き出しに入れておいてください
で 上原に約150万おいてあります さあ食べよう」
「頂きま~す」
神山と洋子はTVを見ながらサンドイッチを食べた
食べ終わった神山がタバコを吸いはじめたが灰皿が無かった
「あとで灰皿と空気清浄機を買おう 忘れていたよ」
「あと ごみばこも一緒に買いましょう」
「ゴミ箱が無いんだ 忘れていた 代々木は買ったよね」
「ええ 買いました」
「あ~あ 肝心な物を忘れていたよ」 
神山と洋子は笑った

時間が8時30分になったので二人は車でアルタへ向った
少し早く着いたので 受付の小谷美佳が
「神山様 こちらで少々お待ちくださいませ」
と仕切りのある待合室に案内され暫く待った
9時少し前に小谷美佳が先導して 奥にある応接室に案内された
内藤社長以下役員が数名いて神山を向いいれた
「やあ よく来てくださいました」
内藤社長が声を掛けてくれ神山も
「何時もお世話にありがとうございます 本日はまだ人事命課前ですが
色々と動き出している事もあり ご挨拶に伺わせて頂きました」
「山ちゃん 堅苦しい挨拶はそこまでで こちらから紹介しよう」
内藤社長が佐藤部長以下紹介して 自己紹介が終ると
「普段はみんな山ちゃんと呼んでいるが 神山 龍巳さんです
それと こちらが田所洋子さんです 田所洋子さんは
我社の社員になられます お願いします 役職は部長で
山ちゃんの専属秘書です 尚 この本社に席は無く
鈴やさんに次長室を設けそこで勤務します」
佐藤が
「山ちゃん 色々と聞いています 凄いとしかいいようがない
私も応援させてもらうから 頑張ってください お願いします」
「こちらこそ 今月初めのお話が無ければこのような 喜ばしい
事態になっていません 感謝をしております」 
内藤社長が皆を座らせ 受付にコーヒーを頼んだ
雑談が始まりコーヒーを飲んでいると 内藤社長が神山に
「山ちゃんちょっと」
と言って席を立ち部屋の隅で
「高橋から聞いたけど 新築するんだって?」
「ああ その件は 保留になり今 違う方向に話がいっています」 
「うん なに?」
「ええ 最初は自分の家の新築だったんですが 老人ホームを
考え始めたんです」
「山ちゃんが?」
「あっ 知人です それでアルタさんでそこまで出来るか否か と金額
で 今は老人ホームの話を詰め様としているんです」
「山ちゃんの知人が家を新築し様と考えていたが 老人ホームに
考えが変わってきたと そう言う事ですか」
「ええ」
「出来ない事無いけど 割高になるな それと幾らぐらい 予算は」
「ええ 約 2億です」
「う~ん 一般家屋なら 5千万も出せば充分りっぱな箱は出来るけど
老人ホームだと 最低4億は見ておいたほうがいいと思いますよ」
「そうですか 私も調べたら 2億できついと思っていました」
「そこでアルタと繋がりは」
「ええ 知人本人は経営に参加しないという事で こちらで
運営していくと そう考えたんです」
「そうか その手があるね うん分りました ちょっと時間を下さい」
「はい で今日ニーナ・ニーナさんの挨拶が終ったら 静岡に行きます」
「えっ そんな 相変わらずですね 貴婦人で」
「ええ 貴婦人で しかし私のは2シーターですよ 社長より
ランクが下です」
「まあ 2人分の価格でしょ 気を付けて行って来て下さいね」
「ええ 最初から飛ばすとエンジン壊れますから 程々で行きます」
「ええ お願いしますね それと代々木はどうですか?」
「ええ ほぼ揃いました ありがとうございます 代々木ホテルですね」
「良かったですね そしたらこれ今日の軍資金です泊まりでしょ」
「ありがとうございます なぜ分りますか?」
「男だったら 分るでしょ さあ」
神山は内藤社長から封筒を貰いお辞儀して挨拶をした
「それと 昨日は済みません 内野が」
「いえ 楽しかったですよ ありがとうございます」
「すごいスコアですね 驚きました」
「いえ あれも社長から頂いたクラブのお陰です」
「そうか ぼくもあのクラブはいいと思っていたんだ そうか」
「ええ バランスが僕に合っていまして 最高です」
「そんなに良いの」
「ええ 殆ど7割方の力で フルスイングすると曲がるので
練習をして なじみます」
「あのスコア 7割がた はあ よしあれを買おう」
「ええ 良いですよ」
「あっ ごめんごめん ではどうしますかお昼は」
「ええ 次長室 あっ 次長室ありがとうございます 気に入りました」
「それは良かった 先ほど田中から報告ありました」
「ええ 次長室などまだ揃えなければいけなくて 済みません」
「そうですね では今度は30日にお待ちしています」
「はい その時は貴婦人で来ます」
「はい お待ちしています 
それではみなさん これで山ちゃんが帰ります 玄関まで行きましょう」
アルタの内藤社長と神山が話しながら玄関に来た時 洋子が小谷美佳に
「どう 翔君」
「ありがとうございます 全然いい人ですね 
まだお会いしていませんが そのうちにお会いしたいと思っています」
「そうしたら 催事課のみんなで合うからその時 いらっしゃい」
「はい ありがとうございます お待ちしています」
洋子の話しが終ると神山が皆に
「ご多忙の所ありがとうございます 失礼致します」
と挨拶をして アルタ本社を後にした 

「土地の件は?」
「うん 大丈夫だよさっき話した それで小谷さん なんだって」
「ええ 翔君を気に入ったみたいね」
「ほう 良かったね それはそれは」
「近いうちに催事課の人たちと合わせるわって約束したの」
「いいね そうすうと部下が出来て 彼女が出来て 
そろそろ僕の話題から 逸れてほしいね」 
「大丈夫ですよ 若いから直ぐに話題の中心になりますよ」
杉田の話をしていると鈴やについた 洋子を下ろし
そのままパーキングに行って バンを返した
部屋に入る時 早速インターホンを使うと 扉が静かに開いた
最初に目に飛び込むのが洋子だった 神山は洋子に
「交代しよう 外から入ってきて 僕はここに座っているからね」
洋子が外に出て インターホンを使うと扉が開き 神山が最初に
飛び込んできた
「どう思う」
「えっ」
「うん 照明がもう少し明るくても良いかなと思ったんだけど」
「そうね 逆光だからこちらから照明を当てないと暗く感じるわね」
「うん そうしたら#3で話すよ」
洋子が操作し 神山が子機を持ってソファーに座り幸三と話した
「やっぱり幸三ちゃんも気になっていたそうだよ」
「さすがね 貴方は凄いわね 驚くわ」
神山は時計を見ると10時になったばかりだった 祥子に電話した
「神山ですが おはようございます」
「私です おはようございます」
「実は 先日話したビジネススーツの件なんだけど」
「ええ あるわよ 準備はして有ります」
「今日は銀座にいるの?」
「ええ 午後から貴方のご挨拶があるので本社に戻りますよ」
「ありがとう そうしたらこれから伺います お願いしますね」
「はい お待ちしております」

神山と洋子は部屋を出て店内のニーナ・ニーナに向った
店内では神山とすれ違う社員がみなお辞儀をしていた
自身なんだか訳が分らなかったし洋子に聞いても分らないと言った
ニーナ・ニーナに着くと祥子が笑顔で迎えてくれた
「先日は色々とご手配して頂きましてありがとうございます
あの時は ここの商品も半分無くなり 買いそびれた方は
他のブティックをご覧になっていましたよ」
「そんなに凄かったの?」
「ええ 上原が無くなってからもお客様が列を作って最後まで大変でした」
「まあ 良かったね 早速 スーツを見せてください」
祥子が出してきたスーツを洋子は試着をした
「こちらの方が動きやすいわ 生地は一緒ですか」 
「ええ 一緒です 違いは袖の付け根が少し大きい事くらいです」
「そうしたら これを2着でいいかな」
「ええ 2着あれば充分です」
「あと ハイヒールもご用意しました」
洋子は穿いてみて少し歩いてみて
「いいわ これいい 疲れないわ」
「同じのを3足下さい それとブラウスだったよね」
「はい このブラウスもビジネスなので
袖の付け根が少し大きい事です 見た目はあまり分りません」
洋子はブラウスも試着し腕を廻したりし
「やはり違うわね 凄くいいわ」
「これは何枚買う?」
「そうですね 3枚もれば大丈夫です」
「そうしたら 合計してください 現金で払います」 
「はい スーツが18万円x2で36万円 ハイヒールが5万円x3で
15万円 ブラウスが4万円x3で12万円で 合計63万円になります」
神山が63万円だし祥子に手渡した
「これどうしようかな まだ買うし」
「お届けしますよ」
「うん でも居ないからね」
「催事課は」
「うん もう当てにしたら怒られるでしょ」
「大丈夫ですよ 後で人事の後輩が取りに来ます」
「そうか そうしたら 30分位だけど 置いといてね」
「はい 畏まりました」
祥子は笑顔で見送ってくれた
二人は家庭用品売場へ行って部屋に合ったゴミ箱と灰皿を買って
「洋子 もう忘れ物はないよね」
「ええ 出来れば雑巾位かしら バケツも必要ね」

神山はバケツ 洋子はゴミ箱を持って部屋に戻った
洋子は早速人事に置いてあるものを後輩に頼んで持って来る様指示をし
ニーナ・ニーナにもあるので忘れないよう伝えた
神山は催事課にある分を持ってくると言って部屋を出た
催事課に行くと奥村課長しか居なかったので挨拶をすると
「山ちゃん すごいね またやったね」
「えっ」
「ニーナ・ニーナのオープンだよ お陰でこちらも大変だったよ」
「ああ 上原組のツアーですね 今聞きました」
「何しろ 普段の倍以上の売上だよ 池上店長も喜んで
夜はここで宴会さ みんな疲れたよ おれも借り出されたんだ」
「お疲れ様でした」
「筒井さんも大喜びでもう笑いが止らないんじゃない」
「そんなに 良かったですね」
「きょうは?」
「ええ 荷物の移動です」
「そうか 見せてくれるか 部屋 だれも見ていないんだ」
「内緒ですよ」
「うん わかった」
神山は荷物を持って部屋を出て受話器を使ってドアをあけた
奥村課長は入った瞬間
「ふぁ~ なんだ凄いね なんかさ鈴やじゃないよ」
カウンターで洋子が
「いらっしゃいませ 奥村課長」
「やあ 田所さん 凄いところですね なんか別世界だな」
「ええ ここから新しい世界を創造していくんです」
「はあ~ 奇抜は奇抜だけど 落ち着いているし変な雰囲気ですね」
神山が
「はい 洋子さん これで一人目 ねぇ」
洋子は頷いて OKサインを出した
「なんだ 一人目って」
「ええ 内緒です ふふふ」
「気持ち悪いな」
「ところで奥村課長 催事課が全員集まる日はいつですか?」
「えっ どうして」
「ええ 皆さんにご迷惑をお掛けしたんで慰労会をしようと思って」
「わかった ちょっと待ってくれ」 
部屋に戻って出勤簿を持ってきた
「4日の月曜日はみんな来ているな 夜 空けるよう伝えるわ」
「洋子さん 4日月曜日 何時ですか」
「うん由香里姫のタイムカードがあるしな 6時か」
「洋子さん 4日月 18時催事課と入れてください」
「は~い 分りました」
催事課の電話が鳴ったので奥村課長は
「じゃあ お願い」
「ええ 場所は後ほど」
「では ハンガーにかけて整理するか」
神山は自分の荷物を整理してジャケットを掛けるのにわざわざ
クローゼットを開けなければいけない事に不満があった
ジャケットに入っている内藤社長から貰った封筒を開けてみると
50万円入っていてそのままの状態でボストンに入れた
「さあ あなた綺麗になったでしょ」
「ありがとう 感謝しているよ」
神山は抱き寄せてキスをした 
「だめです 後輩が来ます」
「そうだね そうしたらコーヒーでも買って来ようかそこの自販機だけど」
「ええ コーヒーくらい出しても良いかな」
「じゃあ買ってくるよ」 
神山が出たとき人事の若い女性が2人で台車を押してきた
「ここの受話器で扉が開くよ」
そう言われ 後輩が受話器を取上げると田所が出たので
慌てて 人事のものですと言うと ドアが開いた
二人が台車を押しているので神山が手伝い部屋の中に入れた
「驚きました 突然先輩の声が聞こえたから 済みませんでした」
「いいのよ 悪いのは神山さんでしょ」
「ええ 受話器でドアが開くと言われたので まさかと思ったんですよ」
神山は
「じゃあ 買ってくる」
神山はほんの2,3分の所にある自販機で缶コーヒーを買い部屋に戻った
「はい これ飲んでいって」
神山はそう言って次長席に座り
鍵のついた引出しから5千円札2枚をだして
「少ないけど お駄賃 内緒だよ いいね」
「えっ~そんな 先輩頂いていいんですか」
「頂いていいわよ 内緒よ」
「ふぁ~ うれしいわ」
二人は笑顔で5千円札を握って幸せそうだった
神山と洋子は自分にもこんな時期があったな~と思い出していた
「先輩 このお部屋 誰が考えたんですか」
「神山さんよ どうして」
「ええ すごく格好いいんですよ だけど落ち着きますね
わたしもこんな感じのお部屋に住みたいなって思ったんです」
「私もです なんか圧倒されそうなんだけど バランスが取れていて
落ち着くって言うか 変な雰囲気ですね」
「洋子さん 3人目」
「そうですね」
神山と洋子は笑っていた 若い女の子達はコーヒーを飲み終わったので
「失礼しました 先輩 また用事があったら私を指名してくださいね」 
「はい」
「では 神山部長 ありがとうございました 失礼します」
女の子達が出て行くと静かになった
「やはりこの部屋は なにか特別な見る人の心が見えるようだね」
「ええ 面白いわね それはそうと4日は何処にしますか」
「近場だと 四季だけど 築地にしようか
銀座築地 寿司屋いせ丸で決定」
神山が電話しようとすると洋子が
「私がします 電話番号を教えてください」
神山が教えると9人で予約を入れ大丈夫だった
「洋子なぜ9人なの 8人だろ」
「いいのよ お楽しみって言うか アルタの小谷さんを呼ぶの」
「そうか それはいいや 話題が逸れて ありがとう
4日ってことは我々の部下になるんだ そうか まあ下を
繋いでおけば何かあったときは助かるでしょ」
「そうね 上より下ですね」
神山がソファーで寛いでいると洋子は自分のスーツを片付けたり
目の前を行ったり来たりしていた 
神山も何かやろうと思って立ち上がったが何も無いので洋子の
お尻を撫でると
「なにやっているの 私は忙しいのに もう」
そう言って神山の手をピシッと叩いた 結構本気だったので
「催事課で使っていたもの持ってくる」
そう言い退散した
神山は催事課の部屋に行き自分で使っていたデザイン用具を
ダンボールに詰め込んでいた 杉田が店内から戻ってきて
「先輩 いらっしゃいませ 先日はありがとうございます」
「うん ところで 上原ご苦労様でした」
「ああ もう先輩が帰った後大変でしたよ ここの1階はお客さんで
一杯になるし 僕なんて5時過ぎまで上原に居たんですよ
ほんと 疲れました だけどその夜 池上店長がご苦労様でしたで
この部屋で宴会でした 池上店長も歌なんか歌ってましたよ」
「そんなに喜んだか」
「ええ なにが嬉しかったのか 怖いくらい上機嫌でした」
「それで 日本酒を呑みすぎか 翔は」
「ええ 何で分るんですか 誰から聞いたんですか 僕がべろべろに
なって 足腰が立たなくなったって」





.