「それはね 上野から入ってくるのよ 上野でも大騒ぎよ」
「へぇー そうしたら僕が行くと サービス課の女の子は
みんな僕のところに 来るね」
「ふふふ そうよ その中から選べばいいわ」
「いやぁー 亜紀ちゃんより 美人は居ないよ ねえ旦那は」
「ごめんなさい 今ねちょっと買い物に出ているんですよ」
「そうか そうしたらさ また伺うよ 絶対に」
「いいわよ 電話をくださいね お待ちしています」
電話を切ると祥子はちょっと 嫌な顔をしていたが
「大変ですね 色々なところから 祝辞の挨拶で」
「うん でも飲み屋からは架かって来ないから大丈夫さ」
みんなが大笑いし おつまみを食べる事にした
食事が終わると神山が高橋に現場を見たいといい祥子が
「それでしたら 一緒に行きましょうか」
5人で歩いて直ぐにある 店舗に出向きシャッターを開け
がらんとした店内に入った
神山は入る時にすぐに気が付いたのが 床の傾斜だった
ファザードに緩やかな傾斜があり そのまま真ん中の柱まで
続いていた
「結構広くて 展開しやすいし いいところですね」
「ええ 私も アンテナとしては充分な広さだと思います」
神山は店内を一回りすると高橋に
「これだったら 5月の半ばにオープンできるよ ねえ考ちゃん」
「ははは 参ったなぁー お見通しで うん 出来るよ」
「考ちゃん この外に面しているガラス面を上手に生かそうよ
そうすると 床が問題だね」
高橋は図面を広げて 神山と祥子に説明を始めた
祥子も一生懸命 高橋の説明を聞いているが分からずに
「この高さって どこで見るんですか」
など 図面の見方が全然分からなかった
神山は高橋に
「ねえ考ちゃん 頼みがあるんだけれど スケールモデルを
造ってもらえないかな 什器は動かせるようにして どう?」
「うん 早速作るよ その方がわかり易いものね」
「うん お願いします それからね この床だけれど 入り口で
ステップにすると つまずきが出て危険だから止めようよ
中に倒れるならいいけれど 外に倒れた場合 このお店の
責任になるでしょ だからスロープにしようよ」
「そうか そうだね お店と違うからね 分かりました」
「それから久保さん このバックヤードの奥行きですが
実際 どのくらいの奥行きか分かりますか?」
「ううん 全然分からないんです」
神山は祥子を連れて バックヤードのパーテーションが
立つ位置を教えて 既存壁との奥行きを確認させた
「どうですか 少し狭くないですか?」
「ええ 少し狭いかしら」
「多分 この奥行きは 百貨店のバックヤードの寸法を基準に
考えられていると思います しかしこの店舗は バックヤードは
ここしかなくて ここに全部集約しないといけないんです
百貨店のように キャパがオーバーしたのでちょっと貸してが
出来ないところなんですよ」
「そうですよね 私もう一度 ここの寸法を測ります」
「細かい寸法は微調整するとして 80cmがいいのか1m20cmが
いいのか そこら辺で 考えてください」
「はい 分かりました」
「考ちゃんのほうも まだ大丈夫でしょ」
「ええ 全然大丈夫ですよ」
「どうだろう ここだと2週間かな」
「うーん 天井が入るでしょ やっぱり2週間少しかかるかな」
「うーん 天井を先に決めたいね」
「ええ 配線やダクトが決まれば 先に入れますからね」
「そうすると 床とバッティングしないよね そうだよな
ねえ 天井の解体だけ先に行おうか どうだろう」
「うん 横浜との兼ね合いなんだ 手があれば直ぐにでも出来るよ」
「その線で 進めようよ なにしろ解体だけ先に進めれば
楽は楽でしょ」
「分かった そうしたら 早速聞いてみるよ 墨は後でも出来るし」
「うん 壊して何が出てくるか楽しみだし」
「ははは それは無かったようだよ 裏に上がっているから」
「ははは そうなんだ 残念でした」
現場での確認が終わると 高橋は神山に
「そうしたら帰って スケールモデルや天井解体を進めます」
「うん お願いします」
高橋たち3人は傘をさして 駅に向かっていった
「祥子さん これからどうしますか」
「ええ 会社へ行って バックヤードの詳細を見直しします」
「そうしたら 車で送っていくよ 僕も催事課に行きます」
「わぁー ほんと 嬉しいなぁー」
神山はタクシーを拾うと運転手に 青山3丁目経由銀座と伝えた
「ねえ スケールモデルってなあに」
「まあ言ってみれば 小さな店舗ですよ」
「わぁー 小さい頃良く遊んだ あの小さなおうちが出来るの?」
「ははは そうですよ まあ多少割愛はしますがね」
「助かるわ ありがとうございます」
「ほら 目線を変えると お店の中がわかり易いでしょ」
「そうか そうですね なるほど 神山さんって やっぱり凄い」
「特に あのように外に面している所では 大切なんですよ」
「なるほど 分かるような気がします」
「今夜はどうされますか? 雨が降っているし」
「ねえ 神山さんピザ宅にしようか
実は私 今夜は少し遅くなると思うの だいたい8時ごろには
帰れると思うんです だからそうしませんか」
「そうしたら 会社を出たら電話をください 注文しますから」
「わぁー そうね そうするわ じゃお願いしていいかしら」
「いいですよ それまで僕は部屋で仕事をしていますから」
「今日は何時ごろ戻られるんですか」
「多分 6時頃には戻れますよ」
タクシーは青山3丁目の交差点で止まると祥子が
「ねえ ここで降ろして ここから直ぐだし」
「うん 運転手さん 一人降ります」
ドアが開くと 祥子は降りて歩道に渡ると神山に手を振った
神山が催事課の部屋に戻ると斉藤由香里が
「お帰りなさい 部長」
神山の目を見て笑顔で話すと
「ほんと 1日に何回も往復すると大変だよ」
「はい これ」
由香里はカードを渡し
「これ 地下鉄のプリペイドカードよ 使って」
「ありがとう 助かるよ でも大丈夫なの?」
「ええ 先ほど部長の交通費請求で購入したのよ」
「へぇー 凄いね 部長って」
「だから部長っていいでしょ」
二人が笑っていると 奥村が
「山ちゃん お帰り 少し前にアルタの内藤さんから
お褒めの言葉を頂いたよ 早速ありがとうございますって」
神山は何のことについて 褒められたのか検討がつかず
「はぁ 普通の事ですよ」
「ほら ニーナ・ニーナの久保さんの件や 天井解体の件
大変喜んでいたぞ 適切な指摘だって」
神山は言われて分かったが 当たり前のことなので
「まあ 期間が少なければそう考えますよ 当たり前です」
「まあまあ 先方は喜んでいるんだ 当たり前でも凄いじゃん」
「おう 店長も喜んでいたぞ」
「あっ 倉さん 本当ですか」
「おう 先ほど来られてな 嬉しそうな顔して 褒めていたよ」
「参ったなぁー そんな大げさな事じゃ無いのに」
「まあな でも周りが喜んでいるんだ いいじゃないか なっ」
神山は由香里から貰ったカードをバッグに入れると由香里が
「ねえ ちょっと話があるんだぁ いいかな」
「うん 大丈夫だよ ちょっと待っていてね 置いてくるから」
由香里は神山と催事課の部屋を出ると喫茶レイに入った
二人はウエイトレスにコーヒーを注文すると由香里が
「ねえ 市川君の事知っているでしょ」
「ああ 先日もあいつと話したよ なんでも出来ちゃったと言っていた」
「それでね 私にも相談があったのよ」
「えっ いつ?」
「さっきよ」
「なんで?」
「ほら 中絶の事なの」
「えっ 中絶?」
「そう 彼女がどうしても産みたいという話で 中絶するとしたら
時期的にどうだろうかって」
「なんでまた由香里に? 奥さんが居るだろうに」
「うーん そうね でも話しにくいんじゃないの それで私に
このような状況だけれど どうでしょうって聞きにきたのよ」
「そうか しかし3ヶ月って言っていたよ」
「えっ4ヶ月よ もう直ぐ5ヶ月だわ」
「えっ 4ヶ月、、、」
「だから中絶するとしたら4ヶ月がぎりぎりで それ以降に
おろすと 母体が危ないし 将来的なことを考えるなら今よって
でも 私は実際に産んでいないから それ以上は分からないのよ」
「まあ そうだね しかしゆっくりしているな
課長と話したと思っていたんだけどな」
「うん 課長からも相当きつく言われ 反省していたわ」
「それで どうするって」
「うん 今はまだ分からないみたいで 悩んでいたわ」
「なに言っているんだよ 本気かよ」
「それで 貴方からも 話してもらえる?」
「だって 先日も話したし それ以上話せっても、、、」
「冷たいわね 同期でしょ ちゃんと別れさせてよ」
神山は由香里がなぜここまで市川のことで熱くなっているのか
よく判らなかったが 昨年のこともあるので
「じゃあ由香里から 話せばいいでしょ 相談されたんだから」
「まぁ 本当に冷たいわね いいわ」
由香里はぷりっとして 席を立ち喫茶レイを出て行った
一人になった神山は少し言いすぎたかと思ったが
市川に相談されたんだから 由香里も自分なりに考えて欲しかった
催事課の部屋に戻ると由香里の姿が見えなかったので
少し心配したが 自分の席に戻り仕事に集中した
「先輩 ニーナ・ニーナの林さんからメモです」
神山は翔からメモを貰うと
【ご相談したい事があります 至急連絡をください】
神山はこの内容に 上原の件が絡んでいると思ったが
デスクの電話機を握り 林の所へ架電した
「はい こちらはニーナ・ニーナです」
「私は催事課の神山ですが 林さんは在席されていますか」
「はい 少々お待ちくださいね 先日はご馳走様でした」
軽やかな口調の若々しい浜野由貴の声が電話口から聞こえた
「いや こちらこそ 何も出来なくて申し訳ない」
「今度はもう少し時間を考えて ゆっくりと呑みに行きましょう」
「はい ありがとうございます 待っていますね
あっ 林に変わりますね」
「もしもし 神山さん 少しご相談があるのですが、、、」
「えっ 僕に相談なんて言われても
出来る事と出来ない事がありますよ」
「ええ その上で お願いしたいのですが
今 そちらにお邪魔しても構いませんか?」
「ええ どうぞ 僕のほうは大丈夫ですよ 空いていますから」
「分りました 直ぐに伺います」
神山は部屋に戻ってきた由香里にニーナ・ニーナの林が来る事を告げ
会議室に人を通さないよう注意した
メモ用紙などを準備し待っていると林が会議室に入ってきた
「申し訳ございません お忙しいところ
それから 先日はご馳走様でした」
「いやいや 慌しい呑み会でしたね次回はゆっくりと呑みましょう」
挨拶を交わしているときに斉藤由香里がコーヒーを運んできた
由香里は林には作り笑顔でコーヒーを置き
神山に対しては覚めたキツイ目付きでコーヒーを置いていった
(きっと この間呑みにいったときに何かあったんだわ
いやらしい神山さんて 最低ね)
「すみません お忙しいところ」
「いえ 月曜日はそんなに忙しくないですよ 留守番ですよ」
「こちらが何時も無理をお願いしていますものね」
「まあ 出来るときは充分に飾りつけなどをさせて頂いていますが」
林が本題に入らないので少し重たい空気が流れたが
「ところでですね 私 昨日筒井から転勤を命ぜられました」
林が関を切ったように言い出した
先日 筒井が銀座店にきて林に内示を伝えたとの事だった
しかしその人事にまつわる事については一切 他言は無用であった
「はあ どう言うことですか?だって 林さんは
この銀座にはなくては成らない存在でしょ どうして?」
「まだはっきりとした時期は決まってはいないのですが
御殿場の準備室に決まりました」
(えっ なんて早いんだ だってまだ上原が開店していないのに
筒井さん何考えているのだろう)
神山は悟られないよう
「だけど 御殿場はまだ1年か2年も先の話しですよね」
「えぇ 私もびっくりしているのですよ」
「そこで 以前神山さんは筒井と親しく話が出来ると
伺っていたものですから なにか 存じ上げていらっしゃると
思いまして お尋ねました」
「うん 僕なんか 何も知りませんよ 御殿場開店は知っていますが」
果たして うそが見破られたか否か 心臓がどきどきしていた
「そうですか 神山さんだったら なにかご存知かと思いましてね」
「う~ん すみません ご期待に添えませんで」
「それと 浜野由貴が上原に移動になるんですよ」
これまた心臓の鼓動を抑えなくてはいけない言葉が出てきた
「へえ すごい人事ですね」
「ええ 私も彼女だとまだ店長は無理だとお話をしたのですが
しかし 筒井はこの人事で会社を磐石の構えにすると
言われるものですから、、、」
神山は何故にこの様な行動をとったのか腑に落ちなかった
それとも筒井になにかこの様な行動を起こさせる何かが起きたのか
林は一通り愚痴を言ったので気分が優れて来たのか
「どうもお邪魔しました お忙しいところをありがとうございました」
「いえいえ 何もお力になれませんでした また何かありましたら
お気軽にどうぞ来て下さい」
「はい ありがとうございます」
林は一礼をして催事課を出て行った
斉藤由香里が近寄ってきて
「ねえ どうしたの 今日の林さん 随分と暗い感じだったわよ」
「うん ニーナ・ニーナが御殿場のアウトレットに
出店する事は知っているだろ」
「ええ だけどそれと林さんとどんな関係があるの?」
神山は林との話をかいつまんで話した
「だけど 銀座店のベテランでしょ 林さん 大丈夫なのかしら」
「しかし はっきり言ってよその会社の人事だからね
まだ公じゃないから 少しの間は口にチャックだ いいね」
「はい わかりました」
席に戻り仕事をしていると翔が
「先輩 5月の店外ですがここが分からないんです 教えてください」
神山は図面の綴りを受け取ると
「ああ ここか じゃあっちで」
神山と翔はセンターテーブルに行くと図面を広げて説明した
「そうだ 経費の詳細もあっただろ それを持ってきて」
翔は言われたとおり 詳細を神山に渡すと
「いいか ここの売り場のハンガーラックとここの売り場の
陳列台を足してごらん」
翔は言われたとおり 図面から台数を足していくと
「ほら 経費詳細のこの数字になるだろ わかった」
「だって 先輩 陳列台が詳細に無いから どうしたのか
分からなかったし まさかサービスで入れたのかと思いましたよ」
「うん これには理由があってね この陳列台はそのまま売り場で
使って その翌週かな また催事場のバーゲンで使うんだよ
だから ハンガーラック並みに安くして貰った訳さ」
「そうですか でも詳細になぜ明記しなかったんですか」
「うん 明記すると 同じ金額で貸し出しが出来ると 知らない
人間が見たとき そうなるだろ だから分かるように
図面に →7Fと記入してあるだろ」
「なるほど この記入はその意味があったんですね 分かりました」
「ははは だって当時 担当を離れるなんて 思ってもいないしな」
「そうですね そうするとまだまだ暗号が一杯あるんですね」
「ははは 一杯あるよ 探してくださいね」
「またぁー 先輩教えてくださいよ」
「それと 金曜日に全体会議だよね」
「ええ そうです 出てくれるんですよね」
「うーん わからん」
「えっー そんな」
「図面はどうした 出来上がった?」
「ええ 出来ています」
翔は図面を神山に見せると
「この図面は書いてもいいのかな」
「ええ 大丈夫ですよ」
神山は翔が起こした図面に赤鉛筆で色々と記入していった
「まず ここの通路幅は 図面より狭くなる
ホテルから貰っている図面が違っているんだよ 30cm狭いよ」
「へぇー 凄いですね」
「まあね それから ここの柱6本は実際より細くなっている
確かWとDとも14cmくらい細いよ」
「へぇー」
「それから このチェックしてあるところ 売場係長より
メーカーの営業さんが口うるさいところだ」
「へぇー でもこの図面には書いてないですよ」
「それは覚えるんだよ 売場に行った時や 会場で覚えるさ」
「そうすると 営業さんを抑えるんですね」
「うん 自分で可笑しいなと思ったら 先に手を打つんだよ」
杉田は言われた事を 図面に書き込んでいると倉元が
「おう 翔頼んだぞ 山ちゃんはたった一回で覚え 秋には
誰からも苦情が出なかったって言っていたぞ」
「そうですよね 昨年の5月と10月のバーゲンですよね
はぁー 凄いな 見習います」
そこへ由香里がコーヒーを持ってきて
「そうよ 5月の時だって 凄かったのよ 知っている」
「あの先輩が怒った事件ですか」
「そう あれだってみんなに聞けば メーカーさんが悪いわ
山ちゃんに全然非がないわよ」
「ははは 由香里姫 もういいよ 終わった事だから」
由香里は神山の行動を掻い摘んで話した
昨年5月のホテルバーゲン会場 開催日当日朝の出来事
商品陳列が終わった什器に不具合が無いか 点検していると
ある売場の什器の配置変えをしている メーカーの営業マンがいて
見ていると 扱いがぞんざいで商品を積んだまま動かしていた
神山が手伝う事を申し出て 商品を什器からおろすと
メーカーの人間が怒り出したが 神山も什器が壊されるので
同じタイプの什器に積まれている 商品を全て卸し始めた
「なんで 時間が無いのに 商品をおろすんだ 陳列するのに
時間がかかるんだぞ」
「商品を積んだまま動かすと 什器が壊れるんですよ」
「うるさい 早く商品を元通りにしろ」
「嫌です 早く什器を動かしましょう 陳列はそれからです」
二人が言い合っていると 売場係長が止めに入ったが メーカーの
営業マンは ふてくされて 何処かに消えたという事実
「へぇー そうだったんですか 先輩が悪い処って無いですよね」
「そうでしょ それで その営業マンが居なかったその一日は
今までの1.5倍の売り上げがあったんですって」
「へぇー 初めて聞きました 僕も気をつけます」
「おう 翔 さっき言っていた ホテルの図面が間違っているの
あれ なぜだか分かるか?」
「ぜんぜん まさか測ったんですか」
「おう そうだよ ご丁寧に測ったんだ それも5回かな なあ」
「ははは そうです 30m巻尺で5回位測ったよ 哲ちゃんと一緒に」
「へぇー 凄いですね」
「うん 5月の初日だけどね 寸法どおりに什器が並んでいるのに
導線が取れていないんだよ 280とか300少ないんだ
ほら消防がきた時のことを考えると 大変だろ そこで 少しずつ
つめて 通路は確保したんだ でも撤収をしたあと 哲ちゃんと
巻尺で計ったんだ そうしたらホテルの図面が間違っていたんだ
ホテルでは 壁をふかした後 修正していなかったんだ
だから この図面までは 前の図面を利用して書いていたんだ」
「そうすると ホテルの図面を修正しなければいけないですね」
「うん ただ時間が無くて 手をつけられなかったんだ」
翔は頷き 大きく図面に書き込んだ
神山は暫く仕事に集中したが
「先輩 アルタの高橋さんから電話です」
「うん はい神山です」
「山ちゃん 今 大丈夫ですか」
「うん どうしたの」
「うん ほらスケールモデルの事で今現場に来ているんです」
「ああ ありがとうございます」
「それでさ この床だけれど どうする?」
「っていうと ハツリを入れるかどうかでしょ そうだな僕は
既存のタイルの上にコンパネ入れてフローリングがいいと思うよ」
「やっぱりね そうだよな 実はね柱があるでしょ」
「うん 真ん中の柱でしょ」
「あそこさ 床が10下がっているんだよ ご丁寧に4辺とも」
「あじゃー 分かった これから大至急いくよ 待っていて」
「うん お願いします 助かるよ」
電話を切ると翔と倉元に
「翔 上原に行ってそのまま事務所だ」
「はい 分かりました なにかあったら携帯電話に入れます」
「倉さん 上原がちょっとやっかいな問題がでたんで 失礼します」
次回は6月7日掲載です
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