2012年7月22日日曜日

若葉 3 - 10 Vol. 1



「由香里 そろそろ寝ようか」
由香里と神山はテレビで天気予報を放映していたので見ていたが
明日も晴れと予報が出たので安心した
「良かったわ 晴れで」
「だけど 御殿場では分らないから 余り安心は出来ないな」
「そうね あなたビールを呑みますか」
「そうだね では頂きますか」
由香里はテーブルにコップを用意しビールを注ぎ
「今日は ありがとうございます」
由香里は神山にお辞儀をしながら言った
「どうしたの 由香里姫」
「だって いいの、、、 私 洗濯するから見ないで」
「洗濯って 着替えは持ってきているでしょ」
「ば~か あなたが使えないようにしたのでしょ」
「なにを?」
「下着ですよ」
「あっ ごめん 僕が洗濯するよ」
「ば~か 何考えてんのよ 変態」
「そんな お詫びの気持ちを素直に表現しただけだよ」
「分ったわ 変態さん じゃましないでね すぐに終るから」
由香里は新幹線の中で一回履き替え 
旅館に来てもすぐに履き替えたので
予備が少なくなってきたので仕方なく洗濯をした
久しぶりの愛している人との旅行ともうすぐ生理からか
体調が不安定になっている事もあり下着を汚してしまった
由香里が部屋の中にある洗面台から戻ってきた
下着をバスタオルで挟みぱんぱんと両手で押し タオル掛けに干した
「ごめんなさい お待たせしました」
テーブルに戻ってくると ビールを呑んだ
「由香里の大事な処を覆っている物があんなに小さいのか」
神山はタオル掛けにちょこんと干されているショーツを見ていった
「そうよ 可愛いでしょ」
「うん 由香里が穿いた下着だと余計に可愛いな」
「何言っているの」
「今は 何色穿いているの?」
「ば~か 後で調べてください」
「あっ 忘れ物がある ちょと待っていて」
神山はアルタから渡された茶封筒を鞄からだしテーブルに置き
何も知らない事にして由香里を驚かせ喜んで貰おうと思った
由香里はきょとんとした顔で茶封筒をみた
「これはね アルタが撮影手当てでくれたものだ」
「撮影手当て?」
「そう 先日も話したが 御殿場の写真をアルタに提供するだろ」
「ええ 現場の写真は私 興味ないからフイルムごと渡すわ」
「アルタはその写真で色々と商用に活用するわけだ」
「そうすると私のフイルムを買ってくれる訳ですね」
「そう 購入分だけではなく 撮影代金も含まれていよ」
「いくら入っているの?」
「いや 僕はまだ数えていない しかし由香里のものだよ」
「えっ そんな 困ってしまうわ」
「だけど ここの分は引かせてくれ」
「ええ 構わないわよ」
由香里は茶封筒から一万円札を取り出し数えた
「凄いわよ 50万円入っているわよ」
「えっ そんなに入っているの 驚きだね」
「だけど 私は頂けないわ」
「だって 由香里が撮影したフイルムをアルタが買うのだよ」
「だけど プロの写真家じゃないし そんな期待されても困るわ
それに あなたと一緒だからでしょ このお金」
「そんな複雑に考えんなよ」
由香里は目の前の大金に対し困惑していた
「そうしたら 10万円は受け取りなさい」
神山は由香里が受け取りそうな額を提示した
由香里は10万円なら受け取ると言い素直に受け取った
残金を封筒に戻し御殿場の宿泊チケットを出した
由香里はチケットを手にとって見ると又 驚いた
「どうしたの ここのホテルでスイートって 凄いわ」
アルタが用意したホテルは
『GOTEMBA GRAND IN』だった
この『ゴテンバ グランド イン』は
客室こそ300室余りと少ないが
普通のゲストルームでも100㎡を超える広さが売り物のホテルだ
ゲストルームは4階がグランドホールになっていて
15階建てのホテルはくの字に建てられ壮大な白亜の姿は
御殿場の新しい名所になっていた
「凄すぎるわ ここに宿泊できるなんて」
このホテルは予約制で電話やインターネットでも受付しているが
なかなか予約が取れないことが人気に輪を掛け
お正月前後の宿泊は2年先まで予約で埋まっているほどだった
普段でもゴルフ場などスポーツ施設が近い事や
春夏秋冬の自然が満喫できる為 いつも満室状態だった
ここのオーナーは椿 秀介といい
アルタの内藤 一哉と慶応大学時代の同級生で
テニス部でも一緒に行動していた親しい仲だった
その様な個人的な繋がりの関係もありアルタはホテルの
内装工事を行い法人株主になっていた
神山はアルタの佐藤部長から聞いた話を伝えた
「それにしても 凄いわ」
「まあ 明日を楽しみにしましょう」
由香里は席を立ち神山に抱きついて来た
「由香里 向こうにいこう」
二人は抱き合ったまま布団に倒れこんだ
神山は旅館に来てから何回か発射していたが 大きくしていた
由香里が上になり元気になった肉棒を探り当て
「あらっ パンツはどうしたの」
「うん もう寝るだけだから 穿いていないよ」
「ふ~ん」
そう言いながら 肉棒を触りながらキスを繰り返した
神山も手を由香里の大事な処へ持っていくと
由香里もショーツを穿いていなかったので
「由香里も穿いていないよ」
「そうよ 嬉しいでしょ」
「うん すぐに触れるし」
由香里は上半身を起こし体勢をかえ神山の肉棒を咥えこんだ
神山の目の前には浴衣の乱れた所から由香里の秘所が覗いていた
由香里は膝を立て神山の口に秘所を押し当てた
「ねぇ いっぱいなめて」
頷く替わりに舌で可愛らしく覗かせているクリトリスを愛撫した
由香里は時々肉棒の上下運動をやめ苦しそうにあえいだ
口を離したときは指を使い上下運動をされると
神山も我慢出来なかった
「由香里 ほら下になって」
神山は由香里を優しく反転させ下にした
由香里は神山の顔を見ながら両手を上げ向かい入れる格好をした
神山は由香里に対し最初はゆっくり次第に早くしていった
由香里は何度めかの快楽を迎えるとぐったりとなった
神山も数回の発射をしていたので由香里に併せ横になった

11日 土曜日 快晴
波の音と差し込む朝日で目を覚ました
隣に寝ているはずの由香里がいないので 
浴衣を羽織 居間の座椅子に座りタバコを吸った
多分 化粧室に入っているのだろうと思っていたが
なかなか出てこないので見に行ったが居なかった
用を足し出ると物音が聞こえたのか
「おはようございます」
由香里の声が外の露天風呂から聞こえた
「おはよう 早いね 今 行くから」
「はい 待っています」
露天風呂には由香里が朝日を浴び気持ちよさそうに浸かっていた
羽織っている浴衣を脱ぎ由香里の目の前に行き
「あらためて おはよう」
「すわって あなた」
神山は言われる通り 縁に座ると
由香里が肉棒を湯で洗い流した
「はい いいわよ」
神山は由香里の隣に腰掛け湯に浸かった
「天気がいいと 気持ちがいいね それに一緒だと」
「ほんと あなたと一緒だと会社の事忘れるわ」
そんな話をしていると 部屋から
「おはようございます」
由香里が答えた 
「おはようございます 今 お湯を使わせて頂いています」
「ありがとうございます 熱かったら お水を足してください」
「はい 大丈夫ですよ」
「只今 朝食のご用意をさせて頂きます」
「はい 分りました」
「暫くお待ちくださいませ」
若女将はそう言って部屋を出たかと思うとすぐに朝食の準備をした
「早いね 朝食」
「なにを仰るの もう7時を過ぎていますよ」
「僕にとっては早いよ だけど来るタイミングがいいね」
「私が連絡をしたの」
「そうか ありがとう」
「だって 気持ちよさそうに寝ているから 起こせなかったわ」
「うん 昨夜は頑張りすぎたかな」
「そうね 私も凄く満足したわ あ・な・た」
神山は由香里の乳房を愛撫しようと触ったが ぴしゃりと叩かれた
「痛いな どうして」
「聞こえたら恥ずかしいでしょ」
由香里はわざと口を尖らせ ふんと言って横を向いてしまった
「神山様 朝食の準備が整いましたので
お食事の時にはベルを鳴らしてください」
「はい分りました どうもありがとうございます」
「それでは失礼します ごゆっくり浸って下さい」
若女将は襖を閉め出て行った

神山は由香里の乳首を優しく愛撫した
由香里は目を閉じこちらを向き 唇を突き出してきたので
神山は唇を合わせ抱き寄せた
由香里の両手は神山の首にまかれ体勢を変え
神山の上に乗る格好になった
両手で神山の顔をはさみキスを繰り返した
神山は片手で抱き寄せもう片方は大事な処を触っていた
由香里も片手を縁におきもう片方は肉棒を探し当て触った 
由香里はすぐに
「ねぇ もうだめ お願い止めて」
神山は手を止めると立ち上がり 縁に腰掛けた
由香里は目の前に聳え立った逞しい肉棒を咥えこんだ
神山は昨日あれだけ発射しているのにまだまだ元気だった
由香里の奉仕が続くと神山も我慢できなくなり
縁に両手をつかせ 後ろから交わった
由香里はなるべく声を出さないようにしているが
嬉しそうな喘ぎ声が漏れてしまう 
今までと違う喘ぎ声が神山を早くさせた
「ねぇ もうだめ 腰が動かないわ」
「がんばったもんね」
「いじわる」
由香里はようやく腰を引きその場で湯に浸かる格好になった
神山の肉棒がまだ衰えないのを見て
由香里の口が咥えこんだ
「だめだよ くすぐったいよ だめだ」
由香里は肉棒の周りを綺麗に嘗め尽くすと
「おいしい 最高の朝食よ」
「分ったから 離しておくれ」
由香里はようやく神山から離れると
「さあ お食事を頂きましょうか」

先に湯から上がるとバスタオルで躰を隠し部屋に戻った
神山も体を拭き終えると浴衣を羽織って部屋に入った
由香里は布団の傍に置いた浴衣を羽織 テーブルについた
昨夜の地元料理も豪勢だったが 朝食も豪勢だった
地元の魚から旬の野菜が並べられていた
「わぁ どうしよう 太っちゃうわ」
「凄いね 食べきれないよ」
「ビール呑むでしょ」
由香里は冷蔵庫からビールを出しながら呼び鈴を鳴らした
若女将が暫くして襖を開け入ってきた
「如何でしたか 朝のお風呂は」
「ええ 朝日を浴びながら入るのは贅沢ですね」
「夜空の星天井を見ながら入るのもよかったわ」
「それは良かったです 気に入ってくださいまして」
若女将は昨夜の小さな七輪に火を入れ
墨に火が廻るまで内輪で風を送った
火が立ち上ると下の口を少し閉じ火力を調整した
若女将は
「温かいものは お客様の前で作るのが美味しいですものね」
そう言いながら 魚を焼きはじめた
由香里が
「あの 後は私がしますから お忙しいでしょうから」
「ええ ありがとうございます お魚だけは焼いていきますね」
「すみません」
「お魚は焼き方が難しいので、、 私も失敗していますのよ」
若女将は焼き魚のほかに焼いて食べるものを
由香里に説明していた
焼きあがると 取り皿に盛付け部屋を出て行った
若女将から教えられたとおり食材に火を通していった
二人は今日の予定や御殿場の話しなどをしているうちに
朝食を食べ終えた
「そうそう 忘れる所だったわ」
由香里は自分のバッグから茶封筒を取り出し神山に手渡した
「なに」
「今回の出張前借金よ」
「なに それ」 
「部長になると出張経費が事前にもらえるのよ」
「へえ そうすると交通費とか宿泊代とかも貰えるの」
「そうよ それと部長になると出張手当てがすごいの」
「そんなに凄いんだ」
「だって 課長で7千円でしょ 部長は3万円よ」
「すごいや」
「それから宿泊代も無制限だから
といっても一泊5万円までOKかな」
「それも凄いね」
「だから 宿泊を3万円程度のホテルにしておいたわ」
「領収書はどうするの」
「結果報告書に記入するだけだからいらないわよ」
「へえ 課長と部長だと大違いだ」
「そうよ それに交通費だって タクシーが認められているもの」
「それも記入するだけでいいの」
「そうよ」
「しかし 悪用するのも出てくるんじゃないか」
「そうね あなたが銀座に来る前にやめた塩谷部長がそれで解雇よ」
「へえ そうすると 僕なんかやばいじゃん 今夜のホテル」
「ううん 大丈夫よ地域名しか書いていないから 
それに3万円だもの」
「大丈夫かな」
「私が 報告書を書くのよ 大丈夫に決まっているでしょ」
「わかった ところでいくら入っているの」
「交通費と宿泊代ともろもろで14万円入っているわよ」
「えっ そんなに貰っていいの」
「ええ だから部長さんはいいでしょ」
「そうだね ありがとう」
神山は由香里を抱き寄せキスをした
「さあ 仕度をして写真を撮りに行きましょうね」
「そんな」
「何言っているの アルタのお仕事も兼ねているのでしょ」
「それはそうだけど」
「はい では仕度をしましょう あなた」
由香里は神山の手を取って立ち上がらせた
もう一度由香里を抱き寄せようとしたが くるりとかわされた
神山も着替えを始め出発する準備が整うと
由香里も薄化粧を済ませ仕度ができたと言った
部屋を見渡し 神山はタオル掛けに由香里のショーツを見つけた
「由香里 これ忘れ物」
「わぁ 恥ずかしい 何やっているの早くちょうだい」
わざと由香里の目の前でぶらぶらさせたが直ぐに返した
「嫌だわ 若女将に見られたわね」
由香里は顔を真っ赤にし俯いてしまった
(なんで 忘れたの おばかさん)
「さあ では出かけましょうか そろそろ9時だし」
神山は電話で出発する事を告げ 熱海までのタクシーも頼んだ
玄関脇にある受付で会計を済ませると タクシーがすぐにきた
若女将が 
「またのお越しをお待ち申し上げています」
丁寧にお辞儀をすると 仲居達もお辞儀をし送ってくれた

タクシーの窓を開けると海の香りがして気持ちよかった
「今日は これから三島まで新幹線でしょ」
「うん その後は沼津まで行って御殿場線で御殿場だよ」
「随分と大変な所ね 御殿場って」
「だけど アウトレットは東名高速の御殿場インターから
すぐと言っていたよ」
「そうなの」
「それに オープンしたら御殿場駅と会場は無料の
シャトルバスが1時間に何回も出るそうだよ」
「そうよね でないと集客が大変よね」
そんな話をしている間に熱海駅に着いた
神山はみどりの窓口に行き新幹線の乗車券を購入した
こだまが直ぐにあるというのでグリーン車にした
「由香里 こだまが直ぐに来る 急ごう」
「はい 分りました」
改札を入ると小走りで新幹線の改札に向かい
階段を上りきった時に入線してきた
丁度グリーン車のドアに近いところだったので
今度はゆっくりと乗車する事が出来た
普通席は昨日同様7割がた埋まっていたが
グリーン車は空いていた
席に落ち着いて座って暫くすると三島に着いた
ここで東海道線に乗り換え沼津駅で更に御殿場線に乗り換えた
熱海駅を出てから約1時間で着いた
もっとも連絡が悪いともっと時間がかかりそうで
やはり不便さは隠せなかった
「さあ 御殿場駅ですよ ここから写真を撮りましょうか」
「はい わかりました」
神山は由香里に指示すると駅売店で使い捨てカメラを購入した
「僕も参加するよ」
「わぁ 驚いた あなたも写真撮るの」
「うん なんだか由香里だけだと可哀相だから」
「嬉しいわ そのカメラも良く撮れるのよ 馬鹿に出来ないわよ」
「へぇー このおもちゃが へぇー」
二人は御殿場駅周辺を撮影し終えると 客待ちのタクシーに乗車し
アウトレットの現場に向かった
運転手が
「お帰りは どうされますか?」
「えっ なんですか」 
「ええ まだ何も無い所で バスも無いんですよ」
「凄い所に来ちゃったな」
「そうしたら タクシーも呼ばないと来ないよね」
「ええ 工事関係者の方はそうされています」
「分った では帰りに呼ばせて頂きますよ」
「では この番号に電話をしてください」
「はい それで呼んでからどの位で来て頂けるのかな」
「そうですね 車があれば2分くらいで来ますよ」
「早いですね」
「営業所を傍に作ったもんですから 早いです」
アウトレット現場までは15分くらいで着いた
会場は申し訳なさそうな小さな柵で仕切られていたが
所々に本格的な背の高い工事柵が設けられている
これから重作業機が入ってくるのか小さな柵から
本格的な作業柵に取り替え作業が行われていた
正面の工事関係者出入り口にガードマンが配置されていて
入場者のチェックをしているので
神山はアルタの会社名を名乗って入場した
全体を見渡していると由香里が
「ここから写真撮影していきますね」
「うん お願いします」
由香里と話をしていると携帯がなった
「アルタの高橋です おはようございます」
「神山です おはようさん どうしました」
「急で申し訳ないのですが 現場の仕事が増えました」
「えっ 良かったじゃない」
「そこでお願いがあるのですが いいですか」
「うん 何?」
「実はサイン関係の仕事が急に入ったので
撮影場所を増やして欲しいのですが」
「うん いいよ」
「今 どちらですか」
「アウトレットの現場ですが」
「あの~ 御殿場の駅周辺のスナップ写真と
ホテル グランド インの内外を追加して欲しいのですが」
「ああ 御殿場駅周辺は撮影したよ」
「さあすが~山ちゃん ではホテルには椿オーナーが
いらっしゃいますので聞いて頂けますか」
「ええ 分りましたよ」
「チェックインはいつでもOKだと言う事です」
「分りました ありがとさん」
「では 写真撮影 お願いしますね
それから 追加分は又 後日お渡しします」
「いいよ そんな 彼女も充分満足している」
「では いい写真をお願いしますね」
神山は高橋からの電話内容を伝えると困った顔になった
「外で撮影している分には余り関係ないけど
室内のときは三脚が必要になってくるの」
「ああ ぶれないように?」
「そうなの だけど今日は持参していないから困ったわ」
神山は由香里から言われた事を携帯で高橋に伝えた
「そうしたら ちょっと待っていてください PCで調べます」
高橋はインターネットでカメラ屋を探した
「ありました 御殿場駅の直ぐ傍に大きいカメラ屋がありました」
「おお 良かった」
「そうしたら山ちゃん 悪いけど領収書で買ってきて」
「うん分った」
「丈夫なのを選んでね」
「うん 彼女に任せるよ」
「その三脚 彼女にプレゼントする」
「分った ここの撮影が終ったら御殿場で買い物するよ」
「では お願いします」
高橋が言って来た事を由香里に伝えるとほっとした顔になったが
「だけど三脚ばかりそんなに必要ないわ」
「まあ いいじゃないか」
「まずはここの撮影を済ませましょうね」
「そうしよう」
由香里は暫く撮影するとフイルムを取り替えた
場所を移動しては周りの風景を撮影し
フイルムを取り替えて撮影作業を繰り返した
神山も自分なりの感覚で撮影に熱中していると 由香里の姿が
見えなくなり探すと はるか離れた所から由香里が手を振った
神山も小走りで由香里の居る場所まで行った
由香里は随分と撮影を行ったと言い
「もう 殆どからの場所から撮影したわ」
「凄いね 早いや ほんと」
「だって このような記録写真は基本を決めると簡単よ」
「由香里 凄いね こんど教えてくださいね」
「いいわよ あなた」
由香里は神山に軽くキスをした

神山も撮影を終えたので携帯でタクシーを呼んだ
「はい分りました 直ぐに伺います」
神山たちは正面ゲートから一番離れた所に居たので
ゲートに着いたときはタクシーが待っていた
「御殿場駅のカメラ屋に行ってください」
「はい 駅前の大きいカメラ屋でいいですね」 
神山は頷き由香里を見てみると疲れたのか頭をもたれてきた
時計を見てみると11時30分になっていた
1時間余り集中し 大変だったのだろうと優しく肩を抱き寄せた
神山も少し目をつぶっていると運転手が着いた事を知らせた
「ありがとう」
清算すると目の前には3階建てのカメラ屋があった
今朝 来た時は気が付かなかったが駅前にあった
由香里は先に店内に入り三脚コーナーを探した
三脚にも色々と種類があって
コンパクトカメラ用 35ミリフイルムカメラ用あと
中判カメラ用と揃えてあった
由香里は自分の持っている三脚がしっかりした中判用があるので
同じような三脚を購入するのは渋っていた
しかしある程度の頑丈さがないと三脚の役目を果たさないし迷ったが
由香里は『ジッツオ』の三脚を選び決めた
随分と大きいがこれならしっかりしていそうだと思った
神山は清算するときに
「領収書はアルタでお願いします」
と言い 三脚を受け取った
買い物が済むと 現像コーナーに立ち寄った 
由香里は係りの人と話を終えると神山に
「ここの現像は ポジフイルムでも4時間で現像が出来るんだって」
「うん 早いな そうしたら
由香里のポジフイルムを出しておけばいいよ」
「そうよね 失敗していたら明日があるものね」
「そうすると夜 受け取りに来なければいけないね」
「そうね お仕事だからしょうがないわよ」
由香里は今日撮影したポジフイルムと
神山の使い捨てカメラの現像をお願いした
閉店時間は20時までで 夕方持込の人は明朝渡しになると言われた
二人は今日の仕事を半分終えたので一安心し表に出た
「さてと お昼ご飯をどこで食べましょうか」
「そうね それよりホテルでゆっくりしましょうよ」
「そうだね 社長も待っていることだし」
「そうよ」

由香里がカメラの入ったリュックをさげ駅に歩き始めた
神山も由香里の後を追って駅に向かった
タクシーが並んで乗車待ちをしていたので乗り込み
「ゴテンバ グランド イン までお願いします」
「はい 分りました」
タクシーは先ほどの現場とは反対の富士山に向かった
距離的には同じようだったが早く着いた
タクシーを降りると目の前には白亜の建物が迫ってきて
入り口に待機していたボーイが丁寧にお辞儀しながら
「お疲れ様でした カウンターまでお供させて頂きます」
そう言うとしゃれた手押し車を用意し手際よく積んだ
中に入ると驚いた事に中庭があってさんさんと太陽がさしていた
吹き抜けの脇にエレベーターがあり 4階まで上った
グランドフロアに着くと正面にカウンターがあり
神山達が進むと皆お辞儀をして向かいいれた
神山はアルタから貰った宿泊券を示すと従業員が
「少々 お待ちくださいませ 椿を呼んでまいります」
カウンターボーイはすぐさま電話し
「神山様 ご一行がお見えになられました」
指示を受け頷き受話器を置くと
「神山様 どうぞこちらへお願いします すぐに椿が伺います」
そう言うと窓際の景観がすばらしいエントランスに案内された
直ぐに女性従業員がお茶と和菓子を用意した
神山と由香里は 窓から見える景色に今日の疲れを癒していた
「神山様 遅くなりました こちらが椿でございます」
神山と由香里はソファーから立ち上がり 軽く会釈をした
二人は儀式の名刺交換をした
「神山様の事は 内藤社長から伺っています」
「いえ そんな大した事はしていないですよ」
「いえいえ 部長ご昇進おめでとうございます」
「いや 早いですね」
「ええ 彼とは今でもお付き合いをさせて頂いていますから」
「そうなんですか」
「まあ お座りください お飲物は何になされますか」
「そうしたら 斉藤さんどうしますか」
「私は このままで」
「そうしたら 咽が渇いてしまったので ビールを頂けますか」
「はい かしこまりました」
椿は後ろに控えている副支配人にビールを指示した
「申し送れましたが 彼が副支配人の橘と言います」
「神山様 いらっしゃいませ 副支配人の橘です」
橘は由香里と神山に向かって深くお辞儀をした
「この度は 内藤社長のお仕事で大変ですね」
「いえいえ 私は何もしていませんよ」
「ご謙遜を 伺っていますよ 上原の件も」
「いや 参りましたね 情報が筒抜けですね」
先ほどの女性従業員がグラスビールをテーブルに置いた
神山は椿に礼をした後 ビールを口にした
「美味しいですね どこのビールですか」
「さすが 神山様ですね こちらは当社のオリジナルです」
「やっぱり ホップが利いていて咽越しがいい 美味しいですよ」
「お褒めに預かりましてありがとうございます 斉藤さんもどうぞ」
由香里は神山が美味しそうに呑んだのを見て
「頂きます」
由香里も半分くらい呑み
「凄いわ 美味しい ありがとうございます」
「お二人に誉められて 光栄です」
「いえ 本当に美味しいですよ」
「神山様 アルタの会社から追加のお仕事が有ったと思われますが」
「良くご存知ですね」
「ええ あの仕事は私どもがお願いした話なんですよ」
「御殿場駅もですか」
「ええ それで彼の会社にお願いしました
サイン関係の仕事でもトップクラスですからね」
「そうですね 安心できますしね」
「では ホテル内のサインはどこを考えられていますか」
「いま 考えている所で お恥ずかしい限りです」
「では 色々な角度から撮影しておきます」
「そうですね お願いします お昼は済ませましたか?」
「ええ まだです」






次回は7月27日掲載です
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