2012年9月30日日曜日

青葉 3 - 17 Vol. 3



開催してから30分が過ぎただろうか 市川が
「皆様 大変お待たせしました 最後のお客様が御付きになりました
お客様がご着席後 神山部長からのご挨拶を頂きます
もう暫く お待ちください」
会場は静寂し 誰が来るのだとひそひそ話が始まった
暫くして筒井社長を先頭にニーナ・ニーナの面々が現れた
神山は驚きを隠せず 池上社長に尋ねた
「うん ニーナ・ニーナの仕事をしている事を
ここに来ている取引先の人達に認知してもらいたいし
山ちゃんの仕事振りを 披露するつもりだよ」
「えっ そんな 聞いていないですよ そんなぁ、、、」
「大丈夫ですよ 私が殆ど代弁しますから」
右脇に座っているアルタの内藤が助太刀をしてくれた
筒井達は立ったままで神山に挨拶しようとしたので
慌てて神山も立ち上がると
「そのままでいいですよ」
「いえ そんな事はないですよ」
「おう そうだそうだ 起立したほうが絵になるぞ~」
倉元の言葉で社員はもとより取引先全員が起立した
「今回の受賞は鈴やだけではなく 銀座に新風を吹き込み
刺激活性剤となられた功績は 大変意義があるところです
私どもニーナ・ニーナにもお力を貸して頂き 
大変喜んでいる次第です
上原の、、、、、、、、、、、、、、、、、、、です
以上 簡単ですが 今後も鈴や そしてニーナ・ニーナを
今まで以上に可愛がってくださる事を
お願いし祝辞に変えさせて頂きます」
「ありがとうございました
次にニーナ・ニーナからお祝いの花が贈呈されます」
 案内されると筒井の後ろにいた久保が
大きなバラの花束を持って来て
「神山部長 受賞おめでとうございます
 そして ニーナ・ニーナのお力になって頂き
ありがとうございます
 このバラはニーナ・ニーナの気持ちです
本当におめでとうございます」
 久保が神山に花束を手渡すと 会場から一斉に大きな拍手が沸いた
「えー それでは神山部長に 受賞の感想を伺いたいと思います
神山部長 準備のほうは、、、」
(なんだよ 聞いていないぞ 突然に)
「はい OK」
「では 神山部長 お願いします」
「えー 今回の受賞で ご多忙の中 皆様にこのような盛大な
祝賀会を開催して頂き驚いています 御礼を申し上げます
受賞の感想を一言で言い表せば 嬉しいの一言ですが
しかしこのコンテストは、、、、、、、、、、、、、、、です
今後も 私自身も頑張りますので 鈴やを そして
ニーナ・ニーナを宜しくお願いします」
神山の挨拶が終わり お辞儀をすると銀座中に聞こえるような
大きな拍手が鳴り止まなかった
 
祝辞は続いた
神山の左側 池上店長 右側内藤社長 最後に細川社長
細川社長の祝辞が終った処で 本格的に料理が運ばれてきた
この時 市川が立ち上がって
「えー お取引の皆様にお願いがございます 出来るだけ
男女仲良く交互に座って頂けると 親睦が深まると思いますので
我こそは と 思われる方 私はとアピールされたい方
どうぞこの機会に席替えをお願いしま~す
そして お食事の後は 簡単な嬉しいゲームがございます」
市川の号令で
慣れている取引先面々は自由に席を替わっていった
 
神山は会場を見てみると 
男性のほうが多く女性は3割程度だった
みなの席替えが終った時に
造花屋の社長がデコレーターを連れ現れた
市川が早速
「皆様 すみませんでした 最後の最後お取引様がお越しです」
「市川さん すみません 遅くなりまして」
「うん しょがないよ 上座のご挨拶と奥村さんに挨拶してね
席は人数分用意してあるからさ 大丈夫だよ」
「本当に わがまま言いましてすみません」
最後に現れた造花屋『七変化』の社長 田丸昭二は先日の
全店プロモーションで使用した会社だった
池上社長の席に行き
「先日は 本当にご迷惑をお掛けしました
申し訳ございませんでした
以後気をつけますので 宜しくお願いします」
田丸はがっしりした体格だがお辞儀をすると小さく見えた
「うん 頼むよ」
店長への挨拶が終ると販促部長や奥村課長 倉元と進み
「神山部長 今回の受賞 おめでとうございます
先日の件も色々とご配慮頂きありがとうございます」
「うん ありがとう これから間違わないよう頼むね」
「はい 分りました ありがとうございます」
社長の挨拶が終ると社員のデコレーター飯星茜が
真っ赤なバラを差し出し
「神山部長 受賞おめでとうございます
これからもご期待に添うよう頑張りますので ご指導お願いします」
飯星は祝辞を終るとバラを手渡し 真剣な眼差しで神山を見据えた
神山も何時も打ち合わせに来る飯星を知っているが
今日は綺麗だと感じ
「うん これからも鈴やの為にがんばってね ありがとう」
社長が奥村をちらっと見て 封筒を差し出し奥村にサインを送った
奥村は承知のサインで頷き返した
「神山部長 これはお祝いです 納めてください」
差し出された封筒を受け取る前に奥村を見ると頷いているので
「はい ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をして受け取った その後 細川が
「ねえ 茜ちゃん どう 私の所に来ない?
私 何時も貴方の仕事振り見ているけど どう?」
細川社長から何時も誘われているのだろう 茜は
「はい ありがとうございます しかし田丸も優しいし、、、」
「そう 残念ね~」
「細川社長 そんな苛めないでくださいよ
今 飯星君に出て行かれては うちはつぶれてしまいます」
お互い造花屋とファッションデコレーションと業種こそ違うが
中味は共通している所が多いので 業界では移籍がよくある
特にデコレーター集団『スーパーデコ』は銀座の美味しい所に
全て入っているので 人手不足になっていて新しいデコレーターを
何時も採用している事情があった
七変化のメンバーも挨拶を済ませると
空いている席にばらばらに座った
会場内はみなの笑い声が混じる声で 宴たけなわになった
由香里を探すが先ほどから見当たらないので 倉元に聞いてみると
「おう 多分会計で部屋の外で計算しているのだろう」
この催事課が行うこのような祝賀会 親睦会では一人あたりの
参加費用が決まっていて その他に『気持ち』を参加費に上乗せし
みな親睦会 祝賀会に参加している

「すみません ちょっと中座します ビールばかりで」
隣に座っている池上店長に断り席を立った
「そうだな ワシも中座しよう」
二人は群がっている取引先に断り席を立った
部屋を出たところで由香里と合い 仲居と料理の清算をしていたが
「どうしたの お二人で なにか有ったの?」
「いやいや たまたま一緒さ なっ 山ちゃん」
「はい 漏らさないでね」
由香里は神山を心配していた
「しかし 山ちゃん 凄いな ご祝儀」
「いえいえ 皆さんのお力ですから 後で催事課に行きますよ」
「そうか しかし催事課はちゃんと貰っているので納めておけば」
「そうなんですか?」
「うん 昔からの慣例ですよ 大丈夫だよ」
「はい でも一応奥村課長には報告しておきます」
「うん そうだな」
「親睦会のノリは体験しているんですが 祝賀会は凄いですね」
「うん しかしこんなに集まったのは初めてじゃないかな」
「そうなんですか?」
「うん いつもここで行われるけど 
奥座敷まで利用したのは初めてだよ」
「へぇー そうなんですか」
「みな 山ちゃんに期待しているんだよ 頑張ってな
そうだ これはワシからのお祝い金じゃ」
「えっ そんな」
「いいんだよ 気持ちじゃ 少ないけどな ははは」
「それでは ありがとうございます 頂きます」
話をしていると 化粧室についた
ここは各部屋に仕切られていて 個室になっている
早速小用を済ませ手を洗うと 頂いた封筒を覗いてみた
最初はアルタの内藤10万円 スーパーデコの細川5万円
七変化の田丸5万円 店長5万円
(えっ~ 凄い 25万も、、、しかし、、、)
少し貰いすぎだと感じながらも悪い気はしなかった
神山はスーパーデコの
山崎愛からの封筒が気になったので開けてみた
びっくりした コンドームが入っていて メッセージには
【時間を作ります 素敵な夜を楽しみましょう
  受賞 本当に本当に おめでとうございますわたし嬉しいです】
神山はこれは他人に見られると絶対にまずいと思い
パンツの後ろポケットにしまい
 同じくスーパーデコの佐々木艶子から貰った封筒も開けた
【受賞 おめでとうございます 空いた時間で楽しいひと時を
あなたと過ごしたいですわ お返事をお待ちしています】
同封されていたのは 北海道の無料旅行券だった
(わぁー これも絶対にまずいな もう、、、)
神山は同じくパンツの後ろポケットにしまった
スーパーデコのあと2名も同じ内容だとまずいと思い
パンツの後ろポケットにしまった
余り長居をしていると 変に思われるので出てみると
取引先の面々も化粧室に入っていった

部屋に入る時 丁度清算を終え部屋に入る由香里をつかまえ
「ねえ ご祝儀を一杯貰ったけど 全部課長に報告しようか」
「大丈夫よ 課長はそんな事気にしないから 納めておきなさい」
「ほんと 報告なしで?」
「ええ 今までも倉さん そんことした事ないわ
ただ『取引先からご祝儀を頂きました』の報告でいいわよ」
「うん そうする 今夜分かれる時にでも」
「そうね しかしほんと凄いわ 奥座敷まで一杯になるのって
私 初めての経験よ それに初参加の取引さんも結構きているし」
「そうなんだ さっき店長も驚かれていたよ」
「さあ 部屋に入って 皆さんのお相手しなさい」
由香里がお尻を押したのでつまずきそうになると
「凄い お尻のポケットまで 一杯」
「違うよ これは、、、ちょっと、、、手紙さ、、、」
うそは言いたくなかったが しかし怪しい手紙は手紙だった
由香里はきつい眼差しで
「貴方は私のものよ わかっているでしょ」
神山はここで言い争いをしたくないので
「分っているよ さあ 部屋に入ろう 由香里先に入って」
「ええ」
今度は神山が由香里のお尻を優しくなでた
「ば~か 何するの 後ろで見られるわよ」
神山に振り向き少し口を尖らせ小声で言った

今日の由香里は淡い黄緑のワンピース姿だった
白いベルトがアクセントになっていてとても爽やかな感じがした
普段見かける事のない姿だったので見とれながら入ると
すれ違いに祥子が部屋から出ようとしていた
神山は言葉を発しないで居ると お辞儀をしながら
「今夜 お部屋で待っています 何時でも構いません」
と 小声で伝え化粧室に向かった
席に戻ると 取引さの人達が溢れていたが
今度は自分から 席に座っている取引先にお酌をして廻った
「なあ 倉さん 山ちゃん 出来ているな」
「ええ ちゃんと弁えていますね 出来てますね」
「倉さんも確かそうしていたね」
「店長も良く覚えていらっしゃいますね」
「ははは それは銀座の顔 倉さんの事だもんな」
「いやぁ 恐れ入ります」
池上と倉元はもっと話そうとしたが取引先に裂かれた
神山が順番にお酌をしていると スーパーデコの山崎愛の席に来た
「ね~え ぶちょ~お さっきの手紙読んでくれた ぶちょ~う」
普段 酒に強い山崎だが
今日はこの雰囲気で酔ってしまったのだろう
「うん まだだ 自宅でゆっくり見るよ」
そう言ってこれ以上突っ込まれたくないので
隣りにお酌をして離れた
それを見ていた倉元と奥村は
「倉さん」
「おう」
「由香里姫のライバル 増えましたね」
「おう そうだな しかし愛ちゃんだが
山ちゃんが昨年銀座に着ただろ」
「ええ」
「その前から 知っていたそうだ」
「上野時代からですか?」
「おう 何でも 愛ちゃん自身は上野担当ではないが
人が少なくて 応援で手伝いに行った時に困っていると
優しく適切なアドバイスで 仕事が早く済んだ事を言っていた」
「ほぉ~ そうするとほんと 由香里姫のライバルですね」
そんな話をしていると
ニーナ・ニーナの祥子が化粧室から戻ってきた
「しかし 奥ちゃん 大本命は彼女だろう」
「そうですね 上手く行けば筒井さんも喜びますしね」
「おう その通り」
そんな話をしている処へ神山がお酌をしにきた
「倉さん 課長 ありがとうございます 盛大にして頂きまして」
「おう がんばれよ」
「そうだよ 来年もがんばれよ」
「はい 来年はニーナ・ニーナやアルタが有るみたいで、、、」
「おう そうだったな まあ来年はオレに任せろ」
「はい そうします」
「おう しかし よくやった 嬉しいぞ なぁ奥ちゃん」
「ええ 私も鼻が高いですよ」
「ありがとうございます
ところで 実は店長を始め 皆様からご祝儀を頂きました」
「おう 良かったな 貯金しておけ なぁ奥ちゃん」
「ええ 将来の為に貯金しておきなさい」
神山は二人に対し 額が畳に付く位お辞儀をし
「これからも 頑張りますのでお願いします」
と 言うと 脇から内藤や店長 細川 筒井なども次々に
「こちらこそ 頼んだよ 山ちゃん」
激励の言葉を掛けられ 胸が熱くなった

宴たけなわそろそろお酒が廻ってきたのか 顔を真っ赤にし
男性も女性もアルコールのせいで熱くなったのか上着を脱いでいた
神山は大事なお金が入っているので我慢をして
ジャケットは着用したままだった
会場の顔色を見てタイミングよく市川が
「それでは 恒例の『お尻合いゲーム』を行います
真中のテーブルは片付けますので
お土産の方は仲居さんに申し出て下さい
くれぐれも ご自分の分だけでお願いしまーす」
(市川のスピーチは大した物だと何時も感心させられる
  今回もこのようにざわざわしているのに タイミングがいい)
「尚 準備の為 少しお時間を頂きます
商品はこちらにございますので お好きなのを選んで下さい」
市川の案内が終ると 仲井達が一斉にテーブルを片付け始め
中には お土産にするからと申し出ている様子もうかがえた
この後は〆を行うだけなので
化粧室を利用する人が部屋から出て行った
ルールは簡単
くじ引きで決まった二人が背中合わせになり お尻を突き出し
相手の足を動かせば勝だが
女性にはハンデが有り2歩動いてもOKと
とんでもないハンデがあった しかし女性同士の場合はハンデなし
昨年の親睦会ではスーパーデコの細川社長が優勝している
勝ち抜き戦だが 女性のハンデは有効だ 
「それでは テーブルも片付きましたので
対戦相手の抽選会を行います」
神山はこの時ばかりは 催事課の一員として動いた
杉田も大きな模造紙に対戦相手を書き入れていった
女性同士が当らぬよう抽選箱をわけ 
神山は女性用の抽選箱を持って
皆の所を廻り 細川女史のところに来た
「どうしようかしら私 参加 やめようかしら」
「えっ どうしてですか」
「だって これ以上勝っちゃうとお嫁に行けないでしょ」
「大丈夫ですよ 尻に敷かれる良い旦那さんが見つかりますよ」
そんなやり取りを聞いていた廻りは 笑い出してしまった

全ての抽選が終ると
「今回は 不参加者なしです 皆さん凄い元を取るため必死です」
これでまた会場は沸いた
「では 第一組目から行きます」
市川が対戦両名を呼び出し 二人を立たせ試合開始
進行も順調に進み池上店長とスーパーデコの山崎愛の戦いになった
店長がんばれの声援より愛ちゃんの声援のほうが多かったが
結果は 店長が粘り腰で勝ってしまった
「ふぁ~ 店長 かちゃったよ」
みな愛ちゃんを応援していたものだからブーイングが出た
しかし 珍しく酒に酔った状態では 戦えなかった
次は神山の出番だった 対戦相手は細川社長だった
今度の声援は 主役の神山と 女性の細川と言う事で半々だった
「こら 大輔 仕組んだな もう」
「そんな事ないよ なあ 翔」
「ええ 先輩の事 そんな事する訳ないでしょ」
二人は顔を見合わせ 笑って答えた
(まいった 仕組まれた)
「さあ ご両人 お立会いお願いします」
神山は大事なお金が入っているジャケットを着たまま
細川と背中合わせをした
「さあ ご両人準備はよろしいですか?」
神山は少し腰を落とし 細川の攻撃に備えていたが
合図の笛がした途端 細川の腰が神山のそれより下から突き出し
あっけなく動いてしまい 負けてしまった
丁度 正面には祥子が居て
円座の人を飛び越え抱きついてしまった
祥子もびっくりし
「大丈夫ですか?」
としか 言いようがなかった
円座で座っている人達は演技でない神山を見て 細川を恐れた
「は~い 細川さんのかち~ え~ 神山部長は土俵から出て
女性に抱きついたので ここで罰ゲームです」
(おいおい それはないだろ わざとじゃないんだから)
市川を睨み付けながらも仕方なく 罰ゲームを受けた
「では 罰ゲーム いきま~す」
神山はもう何でも来いとあきらめ 真中にたった
「はい 右手を挙げて 左足挙げて 右手を下げて、、、、、、、」
(そうか その手か だったら両足上げた時に派手に転べばいいや)
その通り 右足挙げて 左足挙げてが来たので 派手に転んだ
会場はやんややんやの喝采と拍手で賑わった
「神山部長 ありがとうございます
どうぞルールですから恨まないでね」
この言葉で又会場は沸いた
神山は仕事を解かれたので円座の後ろで立っていると
3人の取引先が寄ってきてお辞儀をした
「遅くなりましたが 私、、、、」
始めてみる顔だが 何時も使っている各会社の常務だった
各常務は懐から封筒を取り出し 祝辞のあと手渡しをしていった
神山も 各会社は良く知っているので 的確な言葉で誉め受け取った
ゲームが進み 祥子の出番がやってきた 対する相手は田丸だった
スタートの笛が吹かれたその後は 田丸が簡単に負けてしまった
あのがっしりした田丸が負けと番狂わせがでたので会場は賑わった
次は由香里の出番だった
由香里はハンデを上手に利用し勝ち上がった
最後にスーパーデコの佐々木艶子が出てきた
この時 神山は円座の直ぐ後ろで見ていた
佐々木艶子は ハンデを利用しないで男性と互角に戦ったが
目の前に 神山が居る事を発見すると
「ふぁ~ あっ」
と言いながら 動いてしまい 神山に抱きついてしまった
「は~い 佐々木さんの負けですが 女性に抱きつかれた
神山部長 済みませんが またまた罰ゲームです」
神山は佐々木を組み解き また真中に立った
「罰ゲームは先ほどといっしょで~す お願いしま~す」
先ほどと同じ様に 両足を挙げる事になったら
派手に転ぼうと思ったが
今度はなかなか 転ばしてくれない 
だんだんと頭も廻らなくなり 疲れてきた時に関係なく床に転んだ
その転び方が良かったのか否か 大喝采を浴びた
それからは 円座の直ぐ後ろではなくもう少し後ろで見る事にした
そうしていると 良く顔を合わせている取引先が寄ってきて
祝辞を述べた後に お祝い金を渡していったのは10社だった
神山はありがたいが貰いすぎではないかと少し怖くなった

ゲームも2回戦に入り白熱してきた
細川社長や池上店長など順調に勝ち進んだ
次に祥子と由香里が対戦した
このゲームばかりは 会場の雑談が少なくなり静まりかえった
二人とも美貌と知性を兼ね備えた女性同士という事が
会場の皆も分っているのだろう
スタートしたが お互いタイミングを見ているのか
なかなかお尻を 突き出そうとしないのをみて 市川が
「さあ ご両人 ご遠慮なく美しいお尻を 突き出してくださ~い」
この言葉の後由香里がお尻を出した瞬間に祥子が下から突き上げた
この一撃で祥子の勝利となった
由香里がニコッと笑みを浮かべると祥子も笑みで返した
会場はこの時になって拍手で沸いた
2回戦も終わり3回戦では祥子と筒井の対戦になった
今回 祥子はハンデを使う事が出来るが 筒井に負けた
4回戦では細川社長など勝ちあがったが
池上店長は浜野に負けてしまった
5回戦準決勝だが ここで奥村と細川が戦う事になった
もう一つは催事課の杉田とニーナ・ニーナの浜野の戦いになった
まず奥村の戦いはやはりハンデの有る細川が勝利した
杉田のほうは上手に腰を使い浜野に勝った
「それでは決勝戦です 赤コーナー体重150ポンド 細川社長
青コーナー体重75ポンド 杉田翔君 さあ両名 お願いします
皆様 拍手でお迎えください」
細川はアナウンスされると拍手の中円座の真中に登場したが
杉田の姿がまだ現れないので ざわざわしてきた
「杉田さん 負けと分って出て来れないのかしら、、、」
などと 周りからもそんな言葉が出て来たときに
杉田はいつ用意したのか
キンキラのガウンを羽織り部屋に入って来たが
しかし少しどころではなく太った格好で登場した
「みなさ~ん 杉田選手の体重を間違っていました 訂正します
青コーナー杉田翔君250ポンド 杉田選手 どうぞこちらへ」
市川に勧められ杉田が真中に来ると
「では ガウンを脱いで 最後の戦いで~す」
杉田はガウンを脱ぐと
その格好は相撲取りのぬいぐるみを着ていた
杉田の格好を見た会場はやんややんやの大喝采で
片付け準備で待機している 仲居さんたちも 大笑いをした
勝負は簡単についた
ぬいぐるみで身動き取れない杉田があっけなく負けた
しかし会場は勝負より盛り上げた杉田に拍手をしていた
神山は商品の授与があるのでまた市川や杉田そして由香里と
一緒に並びお手伝いをする事になった
1位から4位まで参加賞とは別に商品が用意されていた
順番に授与を済ませると
「では次にナイスプレイヤーですが 4名居ます」
その中に 由香里と祥子が含まれていて 神山が手渡した
「え~ 今作ったんですが、、、」
「おいおい 商品が余ったら オレにくれ」
「そうよ わたしもがんばったのよ」
などとやじが飛んできたが 市川が一呼吸おいて
「ベストドレッサー賞 杉田 翔選手 どうぞ~」
市川は隣りに居る杉田に目配せし
神山のところで商品を受け取った
「皆さん 盛り上って下さいまして ありがとうございます」
皆に向かい商品を高く上げ 最後はお辞儀をした
「さて 最後の賞です
今回 罰ゲームを2回も受けた 神山部長で~す」
会場は神山の仕草を思い出したのか 大笑いに包まれた
全てのショーが終って 奥村が挨拶をして〆を行った    

『日本料理 四季』が有るホテル禅の出口では 催事課の面々が
取引先に対しお礼の挨拶をし見送ったが ロビーでは
アルタの内藤と筒井が話し ニーナ・ニーナの祥子も残っていた
殆ど見送ったので 奥村と神山が2人に近寄り
「今夜は本当にお忙しい所ご出席頂きまして ありがとうございます
祝賀会も無事終る事が出来ました」
神山と奥村は深々と御礼をした
「いやいや そんなに言われると困りますよ ねぇ筒井さん」
「そうですよ これからも山ちゃんには頑張ってもらわないと」
「ありがとうございます ところでまだ9時半なので、、、」
「そうですね 筒井さんも大丈夫でしょ」
「ええ 私の方は、、、」
筒井は残っている女性軍に聞いてみたが 祥子以外は帰ると言った






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2012年9月25日火曜日

青葉 3 - 17 Vol. 2



この様な斬新なアイデアを盛り込んだプランを出した
最初 旧経営陣は反対したが 一哉の熱心な意気込みを感じOKした
以前の社員寮は小田原駅よりまだ南に位置し海岸が近く
レジャーとしては良い場所だが 通勤には苦労した
駅まで徒歩かバスで着き そこから会社専用の送迎バスに乗り換える
と言う手段で通勤をしていた
昼食にしても午前中に仕出し弁当屋に注文し昼には各職場で食べていた
一哉も当然同じ環境で生活したが 作業員が喜んで
作業していない事はすぐに分った
現在 社員寮は工場敷地内にあり 食事も工場内で賄えるし
居酒屋など アルコール類も工場内にある
勤務体勢も24時間制だがフレックスタイムを取り入れ
生産効率を上げている

「そうすると 従業員の人達はどうなんでしょうか?
少し 窮屈に感じないですかね?」
「ええ 多少は感じる所は在るでしょう
しかし 食事に掛かる経費は実費だけ
それに うちのフレックスは月間の規定実働時間を
自分の都合に合わせたシフトが作れます」
「へぇー」
「勿論 今回のように仕事が詰まっている時は 
事前調整をしますがね」
「それにしても 素晴らしいですね」
神山たちが話し込んでいると 板前が
「今朝 上がったばかりの魚です
お口に合うか分りませんが どうぞお召し上がりくださいませ」
「さあ 神山さん どうぞ召し上がってください」
神山は鮮魚の盛り合わせを一口したとき 美味しいと思い
どこかで食した新鮮な味だと感じた
「凄く美味しいです」
「喜んでいただけて 良かったです」
板前がニコニコしてカウンターに戻ると 今度は日本酒を運んできた
「こちらも 喜んでいただけると思いますが どうぞ」
「えっ 日本酒ですか、、、」
これから3時に桜川亜矢子と合うのに
大丈夫かなと思いつつ口をつけると
「あれっ 美味しい しかし、、、?」
「さすが 神山さん 分りますか?」
「、、、 もしかして 御殿場?」
「そうです 御殿場グランドインの地酒です」

「へぇー 凄いですね」
「ええ 社長が大変気に入りましてね 置いてます」
「しかし こんなに美味しいと皆さんの財布はどうなんですか?」
「そこなんですが 結構みんな呑んだり食べたりしていますよ
社員は 食材料費を実費で払うだけです
それも 先月会社が支払った分だけです」
「そうすると ここで働いている板前さんなんかは?」
「ええ 勿論会社の福利厚生の一環として働いてもらっています
ですから ちゃんとお給料は出ますしね」
「へぇー 凄いですね」
「もっと凄いのは 各飲食店のランキングもあるんですよ」
「ナンですか?」
「それは どこのお店が一番人気があるかなどです」
「それも変っていますね」
「ええ この様な方法を取り入れると いろいろな部分で
切磋琢磨します 例えば 新鮮な食材探しや新しいメニュー開発など
勿論 新鮮な食材を取り入れると言っても やはり食材予算があり
予算内で美味しく新鮮な食材を探さなければいけません」
「ええ」
「そして 1ヶ月間でどこの店舗が一番売上があったかなど
データーに現れます その月の上位3位までが会社から金一封を
頂けるし 年間売上ポイントで最優秀店にはまたまたご褒美が
待っています 結局の所 安くいい食材を美味しく食べて頂く事です 
勿論 接客マナーも重要ですね
その様なシステムがあると お店側としては従来からある
従業員食堂の考え方とスタンスを考え直さないと出来ませんね
それから もっと驚かれる事があるのですよ」
「どんな事ですか?」
「これも私自身驚いたのですが
連続で同じお店で食事が出来ないようになっているのです
例えば お昼にここで食事をすると夕食事は違うお店を
利用するとか栄養摂取が偏らないよう色々と社員の健康まで
考えているのです アルコール飲酒も一日の量が決まっていて
それ以上呑む場合は 原価プラス違反料金が加算され
その違反分も上限が設定されています
分りやすく説明しますと アルコール資質指数85が限度です
この数値の出し方ですが 例えばアルコール分5%のビールだと
500ccの中ジョッキ1杯で指数25になります
ですから 中ジョッキ3杯呑むと指数75で
もう限界に近くなるわけです」
「へぇー凄いですね まあ 普段は余り呑まないとしても
飲みたいときも在るでしょ そんな時はどうされるんですか?」
「ええ 寮にある自販機を利用するのですが
それも上限が決めたれています」
「そうすると お酒好きの人にとっては
結構窮屈ではないですか?」
「そうですね この話を聞かれた方は窮屈に
感じるかもしれませんがこのシステムにしてから 
苦情はありませんし 健康面でも問題無しです」
「そのお酒の量とか 
食事の栄養とかどのように管理しているのですか」
「ええ 社員カードを店に入る時にスキャンさせます
そこで まず最初のチェックがあります
店利用が連続でないか否かOKだと入店できますが
OUTだとブザーが鳴って入店できません
更に着席すると テーブルの脇にあるカードBOXに
社員カードを差し込みます
注文はこのタッチパネル式のモニターで行い 料理が出てくる
仕組みです その時に 料理に使われた材料の栄養価や
アルコール指数なども管理され
例えば2日間野菜摂取が最低ラインを割っている人には
サラダの盛り合わせがついてくるとか 
アルコール指数オーバーの場合は
このモニターで問い合わせが来ます
【制限近し 違反しますか?】と」
「凄いですね だけど今 赤坂さんのところは何も無いですよ」
「ええ VIPの時カードは外せますが
私のデーターは全部カウンターの板前が入力しています」
「全ては社員の健康管理を基に考えられている事ですね
素晴らしいですね」 
神山はこのシステムを考えた内藤一哉を改めて感心した
「そうすると カレーが好きでも毎日はだめで 
野菜の摂取が少ないとサラダの盛り合わせが付いて来る訳ですね」
「そうですね まあ色々と考えなくともきちんと管理されているので
楽と言えば楽ですね」
「良いですね 私も少し考えます」
神山と赤坂はこのシステムや工場の事について話しながら箸を進めた

食事を終えると赤坂が
「コーヒーでも如何ですか?まだお時間は大丈夫ですか?」
神山はロレックスを覗くとまだ充分に時間が有ったので
「はい 頂きます」
赤坂は部屋を出ると一番隅に位置している部屋に入った
そこは従業員達も利用していて 半分ぐらいの席が埋まっていたが
ちょうど窓際の席が空いていたので座った
周りの社員達は工場長が居るという事での緊張は無く話しに夢中だが
挨拶だけはきちんとしていた
神山が赤坂に窓から見える景色を案内されていると若い社員が
「う~ん これはいい匂いだ 
匂いの元は後ろに座っている常務かな?」
神山と赤坂は日本酒を2合づつ呑んだだけだが 
結構匂うのかと思っていると
「そうです 私が犯人です 2合呑みました」
赤坂は詫びる事無く 後ろの若者に伝えた
「しかし常務 今夜は4月中期の打ち上げが在るのでしょ
今からそんなに指数を上げると罰金ですよ」
「うん 分っている 明日は休みなので罰金でもなんでもこい
今夜は今夜だ さあ しっかりと働いておくれ」
「は~い そろそろ出よう」
若者はテーブル席の仲間に合図をし立ち上がりこちらに振り向き
「神山様 工場見学をして頂きましてありがとうございます
今後も 我アルタをよろしくお願いします」
深々とお辞儀をしたので神山も
「いえいえ こちらこそ突然お伺いしまして 申し訳ないです
赤坂工場長から色々とお話を お伺いし皆様が羨ましいです」
「はい ありがとうございます
今後もお時間が空きましたら 是非小田原に遊びに来てください」
そう言うと若者皆で再び深々とお辞儀をしてカフェを出て行った
「赤坂さん 今時珍しく礼儀正しい若者達ですね」
「そうですね 私も驚いています」
「そんな 赤坂さんのご指導の賜物ではないですか」
「私なんかより 課長達がしっかりしているのですよ
私は飾り物です ははは」
二人は顔を見合わせ笑っているところへ
「わ~あ この方が鈴やの神山様ですか」
振り向くと今度は若い女性達がこちらに来ていた
「常務 紹介してくださいよ お願いします」
彼女達は私が最初と言わんばかり 部長にせがんだ
「はいはい 分ったから 整列してちょうだいな」
「は~い」
と言いながら何とか並んだので 赤坂が左から紹介して行った
「ありがとうございます 神山様 また小田原にお越しください
その時は 赤坂ではなく私達をご指名してくださいね
カラオケやテニスも出来ますよ お待ちしていますね」
伝えたい事を言い終えると
先ほどの若者達同様深々とお辞儀をして出て行った
「彼女達もしっかりしていますね 本当に」
「ええ やはり課長達がしっかりと教育しているのでしょう」
先ほどの若者達や彼女達を見ていると若さが羨ましかった
もう一度20代に戻ってみるのもいいかなと感じていた
カフェにはまだ10人位居るが 作業服や事務服の姿がまざり
夢中になって話し合っていた
4月の初夏に向かう陽射しが窓から差込み
若者達を更に元気にしているように見えた

神山はどうしても喫煙をしたくなり赤坂に申し出ると
「それでしたら テーブルのボタンを押してください
そうすると ファンが廻りますよ」
神山は言われた通りすると 
テーブルのセンターにある虫かごみたいなネットの中で
ファンが『ゴォーン』と唸り声をあげ回転した
「皆さんは吸われないんですか?」
「そんな事無いですよ 
吸うのも居ますがたまたま今は居ないだけでしょう」
「しかし 参りましたね 何故私の事が分ったのですか?」
「それは やはり知名度が高いからですよ
 私達の工場でも若い者は皆知っていますよ」
「そうなんですか、、、」
「どうされたんですか?」
「いえね そんなに有名だと
小田原では悪い事出来ないな~と思いまして」
赤坂と神山は顔を見合わせ笑った

ロレックスを覗くと2時を少し廻っていた
「それでは赤坂さん ありがとうございました
そろそろ お邪魔します」
「そうですか もうそんな時間ですか
こちらこそ 田舎までお越し頂きありがとうございました
熱海のお時間は何時でしょうか?」
「えっ 3時ですが、、、」
神山は高橋から連絡を受け知っているのだと確信した
「それでしたら 熱海まで車で行ってください
丁度 田代君がそちらに用件があるものですから」
「はい 分りました お願いします」
赤坂はカフェのカウンターにある電話で連絡をとり席に戻ると
「本当にお忙しい処お越しくださいましてありがとうございます
表玄関に車を用意しましたので行きましょう」
「こちらこそ 色々と勉強しました ありがとうございます
それから ニーナ・ニーナの件ですがお願いします
24日の朝一番には第二貨物が来る予定になっています」
「はい お任せてください 昨日 第二貨物さんと
連絡を取り合い 上原には夕方ごろつきます」
二人はエレベーターを使わずに階段で下る時
「神山様 これは私の携帯番号とメアドです」
赤坂は今回の秘密を共有している声で伝えメモを手渡した
「何かございましたら 遠慮なくご連絡ください」
神山はどう答えていいか分らず
「はい ありがとうございます」
と言い メモを受け取った
「それから これは内藤からの連絡です 車の中でどうぞ」
茶封筒に『神山様』と内藤の字で書かれた物を渡された
「はい分りました なんだろう?また仕事かな?」
裏にはしっかりとセロハンテープで止めてあり
「ここで破いて見てはだめなのですね」
「ええ 内藤からもその様に指示されていますので、、、」
神山はカメラバッグの中にしまった
表玄関に着くと社員達が見送りに来ていて
先ほどカフェで挨拶をした若者達も参加していた
「やあ 先ほどはありがとう これからもお願いしますね」
「はい 任せてください だいじょう~ぶです なぁみんな!」
「は~い 任せてください 大丈夫ですよ~」
神山は見送りの人達に深々とお辞儀をし車に乗った

田代が運転する車は小田原駅に向かわず山の中に入っていった
間もなく山を下ると西湘バイパス風祭ICに出た
「そうか 先ほど赤坂さんから地形を説明されたけど
箱根登山鉄道の風祭に近かったんですね」
「そうなんですよ 熱海に行く時はいつも 小田原に出ないで
この道を来るんです 近いし 信号がないし」
「なるほど さすが田代さん」
「神山さん 少しだけ飛ばします」
「はい 分りました」
神山は赤坂から受け取った内藤の茶封筒を破って手紙を出した
【山ちゃん お疲れ様でした 小田原工場は如何でしたか
  特に社員達の態度には驚かれたと思います
実はあの工場は職業訓練校も兼ねて運営をしている
  関係で礼儀正しさが自然と身に付くのだと思います
  現在200名くらい居る社員の40名位はまだ訓練生ですが
  しかし技術はどの子をとっても社員と変らない技術力でしょう
  今後も、、、、、、、、、、
  最後になりましたが 私の気持ちお納めください
  今まで休み無しで働いてくださったお礼です
  緊急時には赤坂なり私に電話くださいね
それでは気をつけて 楽しい旅行をしてください】
読み終えた神山は(なんだ 全部バレバレか、、、)と思った
茶封筒には現金20万円と何軒かホテルの無料宿泊券が入っていた
今回は予約せずに来てしまったので どこに行こうか迷っていたが
これだけ宿泊候補があると逆に行き先に悩んでしまう
当初 網代の清碧旅館でゆっくりとしようかと考えたが
まだ10日も経っていないのでどうしたものか思案していた
 (まあ 熱海で亜矢子と逢ってから決めても良いか)などと
安心すると あくびを出してしまった
一生懸命運転している田代に悪いと思ったが 遅かった
「神山さん どうぞゆっくりしてください
熱海駅につきましたら起こしますから」
「ごめんごめん ではお願いします」

4月17日 金曜日 夜
「ごめんね 返事が遅くなって」
神山は銀座の店を退社する時 祥子に連絡をとった
「大丈夫よ それでバックヤードに置く事OK?」
「うん 大丈夫だよ アルタから先ほど最終的に返事が来た」
「ふぁ~ 嬉しいわ これで準備も本格的に進められるわ」
「良かったね 本当に」
「ええ 貴方のおかげよ 助かったわ」
「しかしオープニングセレモニーの件だけど印刷物は間に合った?」
「ええ なんとか大丈夫よ 本当は見切り発車していたの、、、」
「えっ?」
「実は14日の夜にアルタの高橋さんと食事に行ったの」
「うん」
「その席上で私が筒井に招待状の件を話をしていたの」
「うん」
「そうしたら 高橋さんが25日には引渡しが出来ますと
仰ってくださり4月26日日曜日オープンで筒井も喜んでいたの」
 (そうか 14日には話していたんだ
だから16日のうなぎ屋で困っていたんだ だけど全てOKだ)
「ねえ 聞いている ごめんなさい 勝手に走って」
「ううん 違うよ 全て良い方向で進んだから良かったと
考えていた所だ」
「それでね 先ほど届いたDMを皆で宛名書きしているの」
「そうか 手伝いに行こうか うちにも居るよ達筆な人が」
「ううん 大丈夫よ
それより店長さんはご出席してくださるかしら?」
「伝えてある? だれかに?」
「ええ 筒井から話が行っていると思いますけれど、、、」
神山は奥村課長が居たので尋ねてみると
「ああ ごめん 山ちゃんにはまだ伝えていなかった?ごめん
店長は出席してくださるそうだ 先ほど連絡があった」
(そうゆう肝心な事 早く知らせてよ 本当に、、、)
「ごめん 今 奥村課長に確認したら OKです 良かったね」
「そうですか 念のため筒井に報告しておきますね」
「分りました お願いしますね ところで今夜の予定は?」
「ええ もうすぐ宛名書きが終るわ その後筒井も一緒にご飯です」
「そうか そうすると一人で食べるね」
「はい分りました 余り呑まないでね
多分遅くならないで帰宅できるわ ごめんなさい、、、」
「うん 分った 連絡を下さい」

神山は夕飯をどうしようか考えながらタバコを弄んでいると
「先輩 今夜皆で行きましょうよ 久しぶりだし」
祥子との会話を聞いていたのかタイミングよく翔が話し掛けてきた
「そうだな この頃御無沙汰だしな」
「え~ 皆さん 神山部長 今夜OKで~す」
(なんだ おい なにやっているんだ???)
「おう 山ちゃん そうと決まったら 早く出よう」
「そうよ 待っていたんだから 分らない?」
「えっ なんですか?全然わかりませ~んが、、、」
「よし 早く出よう みんな」
「どうしたんですか 課長まで、、、」
「いいんだ 翔 早速連絡をしてくれ」
「はい 今OK貰いました」
「では 出よう」
今夜はどうした事か 催事課全員が揃っていた
部屋の出口で市川に
「なんなんだ これは、、、」
「秘密だよ もう直ぐ分るよ」
と言いながら ニヤニヤしていた
(なんだ 市川 ニヤニヤするな 教えろよ)
 
奥村課長の先導で『ホテル禅地下 日本料理 四季』に入った
一番奥の部屋に案内されるが 靴が何足か置かれていた
奥村が襖を開けながら中に入ると 取引先会社の社長が並んでいた
「山ちゃんは あそこの真ん中ね ちゃんと座っててな」
杉田や由香里 市川などに頼んだぞと言った
神山自身 このお店は何回か利用したが 大広間は初めてだった
訳が分らぬまま『まな板の鯉』状態で居ると 倉元が
「この間のウインドーコンテストの件だよ」
「ああ そうですね すっかり忘れていました」
「おう それで本人に早く楯を渡そうという事でこうなったんだ」
「はぁ」
「だから今夜しか空いていなかったんだよ
山ちゃんの仕事を考えると それで皆待っていたわけさ」
「はぁ そうすると今夜は空いていると推測された訳ですね」
「まあ そんなところだ」
「しかし 店を早く出て上原に行ったら、、、」
「そこもきちんと考え 手を打ってある」
「はぁ 凄いですね 参りました、、、」
「おう 今夜の為に 皆で根回したんだ 挨拶だけは頼むな」
「はい わかりました 倉さん いつもありがとうございます」
「おう 若いもんはいいな なぁ奥ちゃん」
「何言っているんですか 一回りも違わないじゃないですか」
「どう言う事 それ」
「だから 倉さんもまだまだ若いですよ」
話題で盛り上がっているとビールや食べ物が運ばれてきた
由香里や杉田も仲居さんに混じって運んできた
川の字型に配列されたテーブルの上にどんどんと
料理が並べられていく
ざっと勘定をすると40名から50名位入りそうだった
由香里がこれから来る人達の事を考え
「すみませんが ご自分の靴は出来るだけ下駄箱にお入れください」
(そうか まだ20名位しか来ていないから
これからまだ来るんだ 由香里 ありがとう)
「さあ 準備も出来たし 皆さんお待ちかねなのではじめましょ」
奥村課長が祝賀会を仕切った
「え~ 今夜はお忙しいところご出席頂きまして
ありがとうございます 心より御礼申し上げます
ここに居られる方々にはお話をさせて頂いていますが
今回 ぎんざ通り連合会 ウインドーコンテストにおいて
私ども鈴やの神山部長が最優秀賞を受賞されました
そこで お取引の方々との親睦を深める事も兼ね
神山部長の祝賀会を開催させて頂きたいと思います
それでは 倉元部長 お言葉をお願いします」
「おう え~ 山ちゃん 受賞おめでとう 私も参加していたが
今回はだめだったよ なにしろ一位になられたのは
素晴らしい事だと思うし 普段から積極的に仕事に取り組む姿勢が
この様な結果に現れた結果です 今後も精進してください 以上」
「倉元部長 ありがとうございました
尚 今回 倉元部長は僅差で2位との事です
どうぞ来年は ご遠慮なさらずに1位をとって下さい
そして この様な盛大な祝賀会が開けることを期待しています」

「神山部長 おめでとうございます」
取引先の面々が挨拶に来た
「ありがとうございます しかし私一人の力では有りません
それよりこれからも鈴やの為にお力添え お願いします」
「はい こちらこそ宜しくお願いしますね」
倉元を見てみると取引先とわいわい楽しく呑んでいた
(両脇 だれが来るのかな 座布団が用意してあるし)
そう考えていた時 池上店長が内藤社長と現れた
神山は立ち上がって両名にお辞儀をすると
「いや やったね山ちゃん おめでとう」
池上はそう言うと奥村の勧めで神山の左側に内藤は右側に座った
「ほんと 山ちゃんおめでとう」
内藤が祝辞を述べながら握手を求めてきた
そして皆に分らぬ様
テーブルの下に手を導き反対の手で茶封筒を手渡し
「これ お祝いです 皆には内緒ですよ」
「はい いつもありがとうございます」
気になり左脇の店長を見てみると
知ってか知らぬかそ知らぬ顔をしていた
店長が脇に座った事でまた取引先が挨拶に来た
「おいおい 今日の主役はワシじゃないぞ 山ちゃんだよ」
と 言いながらも勧められるビールを美味しそうに呑んだ
池上店長やアルタ内藤社長と話していると
「え~ 皆様 今回の受賞で大変お世話になられた方が
来られましたので拍手でお迎えお願いします」
市川の案内でみな拍手で迎えた
デコレーター集団『スーパーデコ』の面々だった
社長の細川女史は名前負けしたのか 3Lサイズの体型だ
ゆっさゆっさと体をゆすりながら内藤の右に座り
「山ちゃん おめでとうございます 良かったわ1位で」
「いえいえ 社長のおかげです ありがとうございます」
「一位は一位よ それも倉さんを抜いたんだから ねぇ倉さん」
「おう そうだ 一番は一番さ」
そう言うとまた取引先の面々と面白おかしく話しこんだ
細川社長が内藤の背中越しに 小さい声で白い封筒を差し出し
「これ お祝いよ 納めて」
これにはどう対処し様か迷ったが 廻りもあるので
「はい ありがとうございます こちらこそお願いします」
そう伝え ジャケットの内ポケットに納めた
神山の席にデコレーター達が寄ってきて ビールを勧めた
「凄いわ 初参加で1番なんて 私こんな経験初めてよ
良かったわ これからも神山さんの仕事頑張るわね」
「おう オレを忘れないでくれよ 年寄りを大切にな」
「そうですよ 僕なんかより 倉さんが銀座の顔ですから」
「おいおい なにもでないぞ そんなに誉めても ハハハ」
そんな話をしていると 奥の襖が開けられ 更に会場が広がった
市川や由香里が奥村に相談したり 慌しくなた
倉元にどうしたのか聞いてみると
「おう 参加人数オーバーだと ハハハ いいことだよ」
それを聞いていた池上店長は倉元に
「倉さん そろそろ世代交代ですかね ねぇ」
「おう またまた まだまだ現役ですよ 店長」
みなで笑っていると細川社長が
「はい 皆さん 席に戻ってね 山ちゃんを独占してはだめよ」
そう言われるとデコレター達4名が先ほど開かれた奥座敷に戻ったが
残った中で 山崎 愛が封筒を差し出し
「おめでとうございます 私のメッセージが入っています」
こちらの顔を見つめながら神山に手渡した
それを機に他の3名も同じ様に ラブレターだと言って差し出した
この4名は今回のウインドー制作で特に神山の力となり支えてくれた
アルタの内藤と細川は仕事の話だけではなく冗談も話していた






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2012年9月20日木曜日

青葉 3 - 17 Vol. 1



4月22日 水曜日 快晴

「それでは 孝ちゃん行って来るよ」
「はい いい話を待っていますよ」
神山は上原の現場で高橋と別れるとタクシーで東京駅に向かった
先週 亜矢子と約束をした熱海旅行だが
周りに悟られずに出かける事がいかに難しい事かと思った
東京駅に着く時間が長く感じられた
それでも思ったよりは早く着き余裕が出来た
新幹線 朝8時のプラットホームはビジネス客で溢れかえっていたが
所々に家族連れやカップルも目に付いた
これから行く旅先の話をしているのだろうか 
楽しそうに話をしている
時計を見てみるとまだ時間が有ったので亜矢子に電話をした
「神山ですが」
「はい 亜矢子です」
「これから 小田原に行きます 今 東京駅です」
「はい 分りました」
「昨日も伝えたとおり 熱海の駅で待っていて下さい」
「はい 何かありましたら お電話くださいね」
「分りました では」
神山は1週間ぶりに合う亜矢子の笑顔を思い浮かべながら話した
新幹線こだまの乗車が始まり指定席に着くと地ビールを出し呑んだ
小田原まで僅か40分足らずの時間だが目をつぶってしまった

この1週間が頭の中で走馬灯のように廻った
祥子との話や由香里との話しなど 
今までこんなに苦労をして言い訳をした事がなかった
考えている間に 眠ってしまった


4月16日 木曜日
店に着いた神山を待っていたのは23日の銀座会の打ち合わせだった
銀座会は銀座1丁目から9丁目までの商店が参加している
販売推進と親睦を目的にしている会で銀座鈴やは理事になっていた
銀座通りで統一された季節ごとの飾付けやイベントなど
すべてこの銀座会で決められていた
勿論 みゆき通りや他の筋でも同じことが言える
今回 4月23日の会合は10月に行われる銀座祭りの
初回打ち合わせで 新規参加者などとの顔合わせが主であった
「しかし 課長 その話は全然聞いていなかったですよ」
「そうなんだよ 本来ならば 販促部長が出席するはずだったんだが」
「だめですよ 課長」
「しかし 山ちゃんが昇進した事もあって 部長がぜひともと言って」
「分りますが 実はその日に 上原の什器を確認しに行くのですよ」
「そうか、、、どうしてもずらす事は出来ないか」
「ええ 一番大切なときですからね」
「そうだよな 運送の手配まで何とかしたしな、、、」
「そうですよ それに今回は顔合わせでしょ」
「うん」
「それでしたら 今までのように販促部長でOKでしょ」
「うん、、、」
「そうしましょ ねっ 課長」
「そうするか」
「そうですよ 実は24日も休ませて頂きます」
「えっ」
「だって ここ暫く休んでいないのですから」
「そうか 仕事は大丈夫だよな」
「勿論ですよ 来週は大きな催事がありませんから」
「そうか」
「それに 翔が頑張っているし 大丈夫ですよ」
「分った 23日の件は販促部長に出席してもらおう」
「ありがとうございます」
神山は銀座会の打ち合わせを欠席する事になったが
それを聞きつけた由香里は
「何故 出席しないの もったいないじゃない」
「うん それはそうだけど 上原のほうが大切だし」
「だって その次の日もお休みでしょ 怪しいわ」
「由香里姫 僕だってゆっくりとしたい時がアルのです」
神山が由香里に責められているのを見かねて 倉元が
「おう 由香里姫 もう勘弁してあげなよ
山ちゃんも ここのところ休んでいないしさ なぁ」
「それは分るけど だったら私も一緒に行こうっと」
「だけど 銀座会の補佐をしなければいけないじゃないか」
「そんなの大丈夫よ 販促にも人材は豊富よ」
「おう 由香里姫 23日に仕事があるぞ」
「えっ なに 倉元さん」
「おう 数字を出さなければいけないだろ」
鈴やでは毎週木曜日には今までの個別累計経費を出したり
月の予算に対しプラスマイナスを計算する大事な日だった
「そうですね 倉元さん 神山部長どうぞお気をつけて」
由香里は倉元と神山に聞こえるように言い自分の席に戻った
由香里の後姿を見た杉田が
「大丈夫ですか 先輩?」
「うん? 何が」
「だって 怒っていますよ」
「分るけど しょうがないだろ 怒らせておけ」
「へえー 先輩 強気ですね」
「ばーか 何言っているんだよ」
「だって 由香里姫を怒らせると大変じゃないですか」
「大丈夫だって 心配しないで来週の火曜日頼むぞ」
「任せてください 大丈夫ですよ」
神山は杉田と話し終えると倉元に語りかけた
「倉さん ありがとうございます」
「おう 気をつけていって来い」
「はい」
「お土産は 熱海の温泉饅頭かな」
「ええ 由香里姫の分も買ってきます」
「おう そうだな 頼むぞ この頃機嫌悪いからな」


「お客さま 切符を拝見させて頂きます」
神山はどこから声が聞こえてきているのか分らなかった
最初は由香里の声に聞こえ なぜ起こすのだと思い
その次には亜矢子がわざと起こしているように思えたが
もう一度はっきりした声が聞こえた時に目を覚ました
自分は今 新幹線で小田原に向かっている事に気がつき
目を開けると車掌がそばでこちらが切符を出すのを待っていた
眠たい目で切符を出し検札が終ると又 目を閉じ眠ってしまった


4月21日 火曜日 朝 上原のマンション
「では 気をつけて行ってきて下さいね」
「うん 祥子もたくさん友子ちゃんと遊んできなさい」
「はーい」
今週 祥子は火曜日の仕事が終ってから名古屋に帰ると言って来た
先週16日の夜に自分の苦悩している事を神山に話してからは
毎日が機嫌がよくなり仕事に熱中していた
通常は土曜日の夜 会社が終って名古屋に帰るのが普通だったが
今週と来週の週末は上原の仕事が有り
今回は火曜日に帰る事になった

4月16日 木曜日 夜 銀座築地寿司屋いせ丸
「実はね 浜野由貴に上原の件を
任せて良いものかどうか迷っているの」
「どうして?」
「ええ この頃 私に反発をするの」
「それは仕方ないだろ 若いし やる気あるし」
「ええ それなら 私も全然構わないわ
しかし 今の彼女は天狗になっているの 分かる?」
「うーん、、、、」
「前にも話したけど 自分の感覚で商品展開をするの」
「うーん 困ったな、、、」
「そうでしょ 本部フランスの意向を取り入れようとしないの」
「しかし祥子が注意すれば済む事ではないのかな」
「そうなの 注意をすると 持論を持ち出すんだけど
その持論がまるっきり外れている訳ではないので 躊躇するの」
「逆に 彼女に何もかも任せてみれば、、、」
「大丈夫かしら、、、」
「何を心配しているの?」
「ええ だって 彼女 その事で少し天狗になっているから」
「そうか、、、 そうすると少し難しいかな、、、」
「そうでしょ」
祥子と神山は しばし言葉がなくなった
神山は祥子をこの寿司屋に早いうちに連れてきたいと思っていた
いつも 祥子の知っている所とか駅前などなど
自分で『ここはいいお店だから 一緒に食事をしよう』と
誘う時間がなかった
神山は自慢できる築地に誘えてよかったと思っていた
暖簾をくぐって奥座敷に行く時
「ここすごく 雰囲気が良いわね」
祥子は喜んでいた
プライベートな話などにはもってこいの隠れ家であった
座敷に上がると 仲居がいつも通りビールとコップを用意し
何も聞かずに襖を閉めて下がった
「ねえ 何も注文しなくいいの?」
祥子は不思議そうに神山の顔を覗いた
ビールを呑んでいると襖が開き 鮮魚の盛り合わせが来た
お盆には冷酒が入った花器が乗っていた
普段は生け花に使われるであろう花器に氷と冷酒がセットされていた
紫陽花の花びらと冷酒の器が美しい色彩をかもしだしていた
「この紫陽花と器の調和ってここに合っているわね」
祥子は食材だけではなく食器類でも満足をしていた
神山も祥子がここの雰囲気に満足した事に喜んだ
ビールの後に冷酒を花器から取り出し冷酒グラスに注ぐと
日本酒の誘う香りが漂ってきた
紫陽花の花器と日本酒の香りで初夏を感じていた

「筒井さんはなんと言っているの?」
「まだ話をしていないの、、、」
「そうか、、、」
神山にはどうしたら良いものか最善策が浮かんで来なかった
「そうだ シュミレーションをしてみれば」
「なあに それ」
「うん だから浜野さんが本当の店長をするのさ」
「えっ」
「ほら 消防署とか警察署で一日署長があるでしょ」
「ええ」
「だから 本当の店長をしてもらうのさ
しかし お客さんはこちらで準備をしておくのさ」
「良く分らないけど、、、」
「実際の職務を体験してもらう 本当の店長なので
お客さんの苦情処理や 商品在庫の確認や全て行ってもらう訳です」
「う~ん、、、」
「要は商品の販売に長けていても全体をまとめる力があるかどうか
総合力のテストをするわけですよ」
「ええ その話は分るけど、、、」
「どうしたの?」
「彼女の総合力判断テストでは私と同じくらいのレベルなの、、、」
「えっ そうか そうでないと祥子としても店長候補として
上原を任せられないものな、、、」
「そうでしょ だから余計に困っているの、、、」
「しかし 浜野さんは本部の販売政策と外れている訳だろ」
「ええ」
「そうしたら その部分を筒井さんに話をして
本人が納得をして改善してくれればいいんじゃない」
「上手くいくかしら」
「大丈夫だよ 筒井さんの事だから 安心して」
「そうしたら 明日にでも筒井さんに相談するわ ありがとう」
「僕は上手く行くと思うよ 筒井さんのことだから」
「分ったわ ありがとう なんかすっきりしたわ」

神山と祥子が一つ問題を解決した時に襖が開き
「お待たせいたしました」
仲居が鮮魚の盛り合わせを持ってきた
祥子は捕れたての魚をみて
「凄いわ まだ動いている」
神山も美味しそうな鯛などを見て満足していた
「さあ いただきましょう」
「ええ 本当に美味しそうね 頂きます」 
二人は冷酒を味わいながら 鮮魚を口にした
楽しく話し食べて一段楽した時に
「祥子 実は今度の水曜日に小田原出張です」
きょとんとした祥子に神山は説明した
4月25日土曜日引渡しの件や什器の確認などを説明した
「だけど 24日までそんなに長いの?」
「う~ん 小田原だけでなく 御殿場もあるから、、、」
「ふ~ん」
「うん 御殿場で誘われているのです」
神山はうそを言いたくなかったが 心の中で謝っていた
「そうすると 22日から24日までお出かけなの?」
「什器の確認が終ったら 温泉です そして又 確認です」
「大変ね、、、」
「まあ 急いでいる時は監督者が見るのが一番だよ」
「そうね しかしその話だけど 筒井は知っているの?」
「いやまだだよ 最終引渡しの話も今日決まった話だからね」
神山は引渡し日の経緯をかいつまんで話し
4月22日の什器確認の必要性を納得してもらった
「引渡しの日がそんなに早くなったなんてうれしいわ 本当よ」

祥子は神山の出張より上原が早くオープンする事に興味を持った
勿論 ニーナ・ニーナでも4月25日の引渡しを前提にし
商品手配や人員配置などを進めてきたが
4月24日に什器が入ってくるとすれば
商品などは24日の夜には配達を済ませておきたいと祥子は思った
「ねえ 24日の夜に商品のダンボールは置けるかしら」
「うん 置けないことはないけど 最終的に25日の引渡しだからね」
「そこを何とかできないかしら、、、」
「う~ん」
「ねっ お願いだから 何とかして」
神山はアルタの高橋と電話連絡をとった
「今ね ニーナ・ニーナの久保さんと打ち合わせをしているんだけど」
神山は24日夜の引渡しが出来るか否かを相談した
「ええ 何とかしましょう しかし什器については
現場での微調整など出てきますから 実際の飾りつけは
25日の朝からにしてもらうと 大変助かります」
「了解です」
神山は祥子に24日の引渡しと
飾りつけは25日朝から出来る事を伝えた
「わ~ぁ 嬉しいわ ありがとうございます
早速 これから筒井に連絡をしますね」
祥子は携帯電話で筒井と話した
勿論祥子は喜んでいるが雰囲気からして筒井も喜んでいた
「よかったわ 筒井が貴方に ありがとうございますと言っていたわ」
「しかし 什器が搬入される前にダンボールがあると辛いな」
「そうね、、、何とか考えるわ お仕事の邪魔にならないように」
「そうだね 僕も24日夜には上原に帰ってくるよ」
「わ~ぁ ほんと 助かるわ お願いします」
祥子は上原の件が決まった事が嬉しいのか 上機嫌であった
神山は引渡しまで何があるか分らないので
祥子のようにもろ手で喜べなかった
しかし この一件で小田原や御殿場出張の話題からはずれた
祥子は多少なりとも不信感を抱くかもしれないが
大義名分が出来た事に間違いはなかった

翌日 祥子から電話があり
「昨日話をした浜野の件だけど、、、」
「どうなった?」 
「ええ 筒井が浜野を本社まで呼び出し 忠告をしたわ」
「そうなんだ それで、、、」
「ええ 結局 浜野が筒井に謝罪をして一件落着です」
「よかったね さすが筒井さんだ」
「ほんと 私も気が楽になったわ」
「よかった これで上原オープンに本腰を入れられるね」
「はい ありがとう 助かったわ」
「うん」
「それから 上原の件だけど 今良いですか?」
「大丈夫だよ」
「商品ダンボールなどをバックヤードには置けないかしら?」
「うん 大丈夫だと思うけど 確認しておく」
「そうすると助かるわ」
「また後で連絡をします」
「はぁ~い 待っています」
浜野の件が一件落着したことにより 声が明るくなった
時々見せるくらい表情を見る神山自信も辛かった
筒井のジャッジで以前の祥子に戻った事が神山には嬉しく思えた


4月22日 水曜日
「次の停車駅は小田原です、、、」
車内の案内アナウンスで目がさめた
もうすぐ小田原駅到着なのか 新幹線のスピードが遅くなり始めた
身の回りを確認し出口に行き到着を待つと
ビジネス客や家族連れなども降りる準備を始めた
こだま号がホームに着き扉が開くと 家族連れも結構多く降りた
この先には 箱根登山鉄道を利用すれば温泉が多く頷ける 
神山は 指示されたバスロータリーで待っていると 
正面から 体格が良く日に焼けた顔の40代の男が寄ってきた
「すみませんが 神山さんでしょうか?」
「はい」
「初めまして 私はアルタ小田原工場の赤坂と申します」
「こちらこそお忙しい時に申し訳ございません」
赤坂が名刺を神山に手渡しながら挨拶をした
まだ4月の朝9時なのに陽射しが強かったが
夏の陽射しとは違い気持ちよかった
太陽に照らされた赤坂の顔はアウトドアスポーツマンだった
「さあ 神山さん こちらの車です」
赤坂はロータリー脇に止めてある車に案内した
「工場まで20分位ですが 暫く我慢してください」
「はい 分りました」
神山は赤坂の運転する車で工場に向かった
運転している赤坂から
「しかし 実際にお会い出来るとは思ってもいませんでした」
神山は赤坂が何を言おうとしているか分らなかった
「実は 鈴やさんの仕事で 唯一
『神山さんの仕事には間に合わせる』と社命があるのです
そんな神山さんに お会いできるなんて幸せです」
「そんな そんな事ないですよ」
「いえいえ わが工場では有名ですよ」
「どのようにですか?」
赤坂は少し考えて
「都内で仕事が出来る一番の人だと」
「それは ありがとうございます しかしそんな事ないでしょ」
神山は否定をしながらも心の中では嬉しかった
都内の百貨店に殆ど入っているアルタから評価を受けたならば
話半分でも嬉しい事だった
「特にですね 神山さんの場合決定が早いですよね」
赤坂は神山の仕事を過去から見ていたのか話が進んだ
神山も過去の仕事を思い出しながら話をしていた
赤坂の話を聞くうちに自分を良く監察していると思った
「そうでしょ だから私たち小田原では神山さんの
現場には絶対に穴をあけないようにしていのです」
「そうですか ありがとうございます」
「そうですよ 都内で一番の設計者とお会い出来るのは光栄です」
「ちょっと待ってくださいよ 僕は設計者ではありませんよ」
「まあ なんでも同じ事です」
赤坂は笑い飛ばし運転した

笑いながら話をしているとアルタ小田原工場に着いた
工場は小高い丘の上にあり相模湾を見渡せる所に有った
玄関の車寄せに着くと数人の出迎えがあり
その中に横浜の田代 純一が笑顔で迎えてくれた
車から降りて田代と挨拶を交わすと
「ありがとうございます こんな田舎まで、、、」
「どうしたの? 田代さん」
「ええ 神山さんの仕事だけではなく他の所の納品もあるので」
「あっ そうか 大変だね、、、」
「ええ 丁度仕上がりチェックが重なったものでして、、、」
田代は詫びれずに言った
神山もそんな田代に
「しかし 忙しいのに塗装の件はありがとうございます
助かりました」
「いえいえ その件は赤坂の仕事ですから、、、ねぇ所長」
「はい 実は神山部長さんのお仕事だけではギリギリだったのですが
丁度 塗装工程があいたので先に仕上げました」
「そうなんですか ありがとうございます」
神山は赤坂に深々とお辞儀を済ませると 工場に入っていった
天井が高いその建物は 今まで見たことがない大きさだった
ここでは金属加工からプラスティック製造 そして木工加工まで
言ってみれば何でも作ってしまいそうな工場だった
大げさに表現すればマンションを発注しても
ここの工場だけで造る事も可能な設備を持っていた
余りの大きさに感心していると
「さあ ここが神山さんの部屋です」
案内をする赤坂が扉を開けると 100畳位の部屋だった
そこには神山が発注をした什器や建具があり
工員達が観音扉などの取り付け寸法を間違わないよう
鉛筆で印をつけたり金物を取り付けているところだった
什器制作も最終段階に来ていると安心した
神山は殆ど完成した什器に歩み寄り 色々な角度から観察していると
自分が思った色と違う出来栄えに首を傾けていると
「神山さん 仕上げの色が違うと感じているのでしょう」
田代が後ろから言ってきたので
「うん そうなんだよ」
「ご安心下さい ここは自然光が当らないので少し暗く見えますが
塗装現場では自然光を当てながら色合わせをしています」
「そうですか 安心ですよ」
制作途中の什器や建具など一通り点検した神山は
「さすが アルタさん 完璧ですね 感謝します」
「あいがとうございます」
赤坂と田代は顔を見合わせ安堵の表情をした
「しかし 気になることがあるのですが、、、」
「ああ あちらに在る什器ですね」
「ええ もしかして横浜分?」
「はい お察しの通りです」
「本来ならばここで制作しないのですが 場所が無くなり、、、」
「うん そうでしょう あれだけの大きさですからね」
この時期 横浜の百貨店開店準備で
どこのメーカーでも大忙しだった
首都圏では久しぶりの大型百貨店で横浜の
『みなとみらい21計画』と連携している大プロジェックトの
一連工事なので メーカーや下請けは皆力が入る
現在は横浜駅西口が商圏とし地域活性の源だが
東口に『みなとみらい21』の出先が出来ると西口既存店の刺激
そして隣りの桜木町までを一つにした大商圏が出来あがる
神山の鈴やも足元を救われないよう
気を引き締め対応策を考えている

「それでは神山さん 工場の中をご案内します」
「はい ありがとうございます」
「それでは 私は横浜が在りますので これで失礼します」
「はい わかりました 頑張ってください」
「ええ それでは」
田代は神山と赤坂に深々と礼をして 別の部屋に入っていった
赤坂に各作業場を一通り案内され見学が終わると12時になっていた
「神山さん 少し早いですが お昼にしましょうか?」
「はい そうですね」
神山はここから小田原に出て食事をするなら
丁度いい時間だと思ったが果たして
(小田原駅周辺に美味しい処はあるのだろうか)と疑問符が付いた
(まさか 工場周辺の定食屋ではないよな)とも、、、
赤坂が案内したところは工場の3階にある海鮮居酒屋だった
驚いている神山に
「さあ どうぞ こちらです」
赤坂はまだ準備中の札が出ている部屋を案内した
中に入ると料亭の雰囲気でとても居酒屋とは思えなかった
窓側の席に着くと小田原の町が一望でき先に駿河湾が見えた
「凄いですね 会社の中に居酒屋って」
「ええ 社長のお気に入りなんですよ」
「それにしても 普通は考えられないですよ」
「そうですよね 私も最初はびっくりしましたよ」
二人が席に座り落ち着いた所で 生ビールが運ばれてきた
「さあ 神山さんに最終チェックOKと言うとで」
赤坂はそう言うとジョッキを神山の前に出し乾杯をした
「でも 工場内に居酒屋さんは 凄い 初耳ですよ」
「ええ 驚かないで下さい この他に焼き鳥 ラーメン
日本そばなど まだまだ在りますよ」
「へー 、、、」
驚いている神山に
「実は社員食堂が無いんですよ」
「えっ?」
「ええ 社員達は皆 この工場内で食事をするんです
神山さんの会社だけではなく普通 社員食堂で昼食を取りますよね」
「ええ まぁ」
「でも毎日同じ味だと飽きてきて時々外食などもされると思います
例えば コンビニでお弁当を買ったりとかも」
「そうですね」
「そこで 社長は社員の余計な出費や時間を
無駄にさせたくないと考えたのです」

ここ小田原工場は内藤一哉が40歳の社長就任時に建て替えられ
赤坂もその時に工場長として任命された
母親が社長時代はまだ工場も今のように食事をする所も無ければ
社員寮も離れていて生産効率が悪かったし士気にも影響していたし
遅刻や給料の前借や色々と問題があった
内藤は『社員が安心して住める場所 安心して食する処』を考え





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2012年9月15日土曜日

青葉 2 - 16



『次は東京 終点東京です』
神山は車内のアナウンスで起こされた
三島駅を出た後 うとうとと寝込んでしまった
今日一日 どこからも連絡が無かったので落ち着いたが
逆に何も連絡がないと心配をしてしまった
東京駅に降りた時に杉田に電話をしてみると
「神山だが」
「杉田です お疲れ様です」
「どうだい 飾りつけは?」
「ええ 先ほど終了して 今 食事です」
「良かった 問題なしだな?」
「ええ 倉元さんも一緒ですが、、、代わりましょうか?」
「うん 代わってくれ」
「おう 山ちゃん 大変だな 聞いたぞ」
「早いですね それはそうと造花はどうですか?」
「うん やはり取替えが必要だな」
「そんなに目立ちますか」
「おう なるべく目立たないようにはしたが やはり無理があるな」
「そうですか、、、 残念ですね」
「おう しかし山ちゃんの責任じゃないからな 気にするな」
「それで 交換はいつですか?」
「おう 明日の閉店後に行う」
「そうすると残業は、、、」
「おう 杉田君が立ち会う事になっている」
「分りました いつもすみません 杉田君に代わってもらえますか」
「おう 山ちゃんも頑張れよ おう翔 部長さまだ」
「はい 杉田です」
「大変だけど 明日の晩は頼むな」
「はい 任せてください ところで明日はどうされますか?」
「そちらには午後になるな 何かあったら携帯に連絡を頼む」
「了解です では気をつけて下さい」
神山は電話を切ると祥子に連絡をとった
「はい 久保です お疲れ様です」
「やあ 今帰りました 今夜はまだ残業?」
「はい まだ仕事をしています」
「どのくらい掛かりそうですか?」
「まだ時間が読めないわ」
そして 小声で
「このあと 皆で食事を計画しているの、、、だからごめんなさい」
「そうか 大変だな 呑みすぎるなよ」
「はい それでは失礼します」
神山は一人になると 今夜はどこで食事をするか考えた
由香里を呼ぶにしても7時を過ぎているしどうしたものか考えた
現場で仕事をしているアルタの高橋に電話をした
「神山ですが」
「やあ 山ちゃん お疲れ様 今お帰りですか?」
「うん 孝ちゃんはまだ仕事?」
「もう直ぐ終わるけど、、、現場に来る?」
「うん 直ぐに行きます」
「了解 待っています」 

神山は東京駅を出るとタクシーで上原の現場に向かった
渋谷に近づくとネオンがまぶしく 
つい先ほど三島で見た光景と同じ様に若い男女の姿が多くなってきた
今日も暑いのか半そで姿の格好が目立った
渋谷を抜けると今度は静かな街中に入った
現場で降りると 仕事帰りの人たちで駅周辺は活気づいていた
「やあ 山ちゃん お帰りなさい お疲れ様でした」
「ほんとしんどかったよ」
神山は昨日最終点検した現場に入り
「どう 何か問題点は出てきた?」
「全然無いですよ 完璧!」
「それは良かったよ ニーナ・ニーナも喜ぶでしょ」
「ところで夕飯は?」
「まだ食べていないです」
「そうしたら 何処か食べに行きましょう 何にしますか?」
「孝ちゃんは?」
「そんな 山ちゃんに合わせますよ」
「駅前の寿司屋にでも行きますか?」
「はい 了解です」
二人は直ぐ傍にある寿司屋に入った
この頃良く通っているので 奥の座敷を案内された
「凄いね 孝ちゃん こちらが何も言わないのに案内されたよ」
「そうですね 良く来ていますからね」
二人はビールを注文し鮮魚の盛り合わせを頼んだ
ビールが直ぐに来てお疲れ様の乾杯をした
今回の仕事内容は高橋にも伝わっていて 神山の仕事を誉めた
橘副支配人から送られてきたFAXを内野と一緒に検討した高橋は
【さすが 神山さん 仕事が違う】と誉めた事を伝えた
「しかし孝ちゃん
今までの事を考えればそんなに苦労はしていないよ」
「だけど ホテル側では喜んでいるわけでしょ」
「それはそうだけど、、、」
「それだったら 結果いい仕事をしている訳でしょ」
「まあ そうかな」
「そうですよ 山ちゃん 山ちゃんのレベルが違う うん違うよ」
「なにそれ?」
「結局の処 頭の構造が違うのですよ
例えば 先日の床材選定にしても 普通の感覚ならば
床材の色と壁面の調和 或いは什器との調和を考えるけど
山ちゃんは 外光が差し込むことまで読んで決めているでしょ」
「うん そんなの当たり前だと思っているけど」
「ところが 分っていても出来ない所があって
後になって 修正をしなければいけなくなる事が多いわけ」
「だけど 孝ちゃんのように百戦錬磨でもそうな訳?」
「ある部分では 後で修正と言う事が有りますよ
時間があれば考えられる所を それを瞬時に決められる
山ちゃんの考え方の素晴らしさは 一級品ですよ」
「そんなに 誉めていただいても何もでないよ」
「いやいや ほんと 鈴やではもったいない
と 皆言っていますよ 特に社長は」
「しかしね そんなに言われても、、、
逆に僕が失敗をしたときは どのようになるのか怖いですよ」
「まあ その時は一過性の過ちと考えるでしょう」
「うーん 失敗が続けば 或いは失敗でなくとも会社の政策と違った
方向性で話が進んだ場合は僕の見方が違って来るでしょう」 
「それは有り得ない話では無いです」
「だから 今のように使い勝手がいい状態が良いのではないの?」
「まあ そう言われてみればそうですね」
神山と高橋はお互いの意見を尊重しながら話し 箸をすすめた
「ところで山ちゃん 明日の朝は現場にこられる?」
「うん 時間は取ってあるよ」
「よかった 明日朝に床が入ってきます」
「早いね 予定だとあさってでしょ」
「そう それが在庫があって早くできる事になったのです」
「へぇ ニーナ・ニーナも喜びますよ」
「そうしたら 明朝お願いしますね」
アルタの高橋と神山は明日の約束をして寿司屋を出た

神山はマンションへ向かう間まだ一ヶ月も経っていない間に
自分の周りが変化している事に戸惑っていた
3人との女性関係がこのまま続くとは思っていないが
果たして流されるのか 流すのか、、、
どこまで踏み込むのか否か、、、
考えれば酷い話だと思った
急に自分の周りに魅力的な女性がいっぺんに現れることは、、、
できれば順番に現れてくれれば良いのに、、、
神山はお酒の酔いも手伝って
都合のいい考えをしながらマンションへ戻った
部屋に戻ると22時を廻っていたので先に風呂に入り疲れを取った
ジャグジーを使い心地よくなったので
冷蔵庫から御殿場の地ビールを取り出し浴槽で味わった
浴室からは夜空に星が輝き神山の疲れを飛ばしてくれた
ジャグジーで心地よくなったので浴室から出て
FAXや仕事用の留守番電話などに対応した
殆どの内容は今までの携帯電話連絡で済んでいた事だった
神山はまだ帰っていない祥子に連絡した
「はい 私です」
「こんばんわ 祥子悪いけど 今夜は早く寝ます ごめん」
「ほんと 寂しいわ 相談したい事があったんだけど」
「えっ どうしよう そうしたら 待っていようか?」
「だけど まだスタッフと一緒だから、、、」
「急ぎじゃなければ 明日でもいいかい?」
「ええ では 明日お願いします」
「では 明日また起こしてくださいね お願い」
「は~い それではおやすみなさい」
神山は久しぶりに24時前に床に付いた
考えてみれば ここ2週間で始めてのことだった


「あなた 宝くじが当ったわ、、、それも2等、、、」
神山は上原の現場に居る時に携帯で亜矢子から知らされた
「えっ 本当ですか?」
「ええ 本当よ 凄いわ 嬉しい」
「良かった 本当に良かったね」
「ええ あなたが買ってくれたから当ったのよ」
亜矢子はこれ以上ない笑顔で神山に抱きついて来た
神山も亜矢子をしっかりと抱きしめキスをした
ホテルでは椿総支配人などが皆でお祝いの拍手をしていた


4月16日 木曜日 曇り  
「ねえ あなた起きて お願いだから」
祥子は神山の携帯電話を鳴らしながら部屋の前で起こした
聞こえてくる声は亜矢子ではなく椿の声でもなかった
神山は遠くから聞こえる祥子の声で夢から覚めた
昨日はアルコールを控えたのだがぐっすりと寝込んだようだった
「ごめんごめん 今 そちらに行きます」
神山は玄関を開けると片手に携帯電話を持った
ルームウェアー姿の祥子が立っていた
「もう 何回起こしたら 起きてくれるの?ほんとうに」
神山は眠たい目をこすりながら
「ごめんごめん ぐっすりとしてしまった」 
「もう 心配させないで 起きて来ないんだから、、、」
祥子は神山の返事を待たずに自分の部屋に戻った
神山はそのままの格好で顔を洗って祥子の部屋に行った
祥子はいつになく機嫌が悪く
「なんで そんなに遅くまで寝ているの?」
神山は答えようがなく黙っていると
「昨夜は本当に寝ていたの?」
またまた攻撃である
神山は携帯電話で言った通りだと説明したが
「だけど 何回も連絡を入れたのよ ほんとうに」
神山自身もここまで言われると流石に気になり
「そんなに言われても事実だからどうにもならないでしょ」
今度は祥子が黙ってしまった
神山もこんなにきつく言わなければ良かったと思ったが
いつまた同じ様に言われるのか考えると
言っておいて良かったと思った

「ねえ 本当に大丈夫? いくら起こしても起きて来ないんだから」
「うん 大丈夫だよ」
祥子はいつものように和食のメニューを用意していた
「祥子 今日の現場だけど 床材が入ってくるけど、、、」
「ほんと すごいわ 見に行きたいけど、、、」
「用事があるなら無理する事ないさ いつでも見られるよ」
「でも あの床材がフローリングになるのでしょ 見たいわ」
「今朝は本社?それとも銀座?」
「ええ 銀座なの」
そう言うと祥子の顔は暗い表情になった
「どうしたの うつむいて」 
「ええ 今夜お話ししますね」
神山はそれ以上聞いても答えが返ってこないと思った
「では 今夜は何処かで食べようか?」
ようやく祥子の顔が普段の笑顔がもどり
「そうしたら どこか銀座で美味しいところが良いな」
「何にする?和食?中華?、、、」
「お任せするわ」
祥子の笑顔を見ながら話していると現実を忘れる思いだった
ここに居る事も現実を忘れさせているし、、、
しかし 今の時間を大切にする事については
祥子も神山も同じ考え方だった
「そうしたら 電話をするよ」
「ええ お願いね 待っています」
「しかし 終日銀座なの?」
「ええ 今日は一日銀座店にいますよ」
「分った 連絡をしますよ」
祥子と神山は今夜の約束をしながら朝食を食べた
今朝のメニューには納豆がなかったのでキスが出来た

神山は祥子と別れると自分の部屋で上原の仕度をして
祥子の部屋で仕度を待った
「お待たせしました さあ行きましょうか」
今日の祥子は紫陽花をイメージした彩りだった
「祥子 素敵だよ」
神山は素直な思いを告げた
色白の肌にパステルパープルのジャケットが良く似合っていた
上原の駅に向かうまでいつものように腕を組んで歩いていた
駅前のブティック現場前に着くと 
「では 先に銀座に行っていますね」
「うん 改札口まで送るよ」
神山は現場を過ぎ改札口まで祥子を送った
祥子はこちらに見える程度に可愛らしく
小さく手を振りながらホームに消えていった
神山は見えなくなったところで改札口を離れ現場に向かった
歩いている間 祥子の昨日の話や今朝の態度が気になった
現場の進捗状況は良好だし 筒井さんとの仕事上の事か?
神山は自分の女性関係が知られたのか、、、
色々と考えている間に現場についた
「おはようございます」
「、、、」
「山ちゃん? おはよう」
「、、、」 
「どうしたの ねえ 山ちゃん」
現場の前で待っていた高橋が 
うつむいて歩いてくる神山を見て挨拶をするが 返事がなかった
神山が現場を通り過ぎようとしたので 腕をつかんで
「どうしたの 山ちゃん?」 
「あっ ごめんごめん」
「本当に 夢遊病者だったよ 何があったの?」
「あっ うん なんでもないよ」
「そうか 仕事のし過ぎかな」
「うん ちょっと考え事をしていて ごめん」
「山ちゃん 大丈夫?」
「うん 大丈夫だよ」
「もう 床材が来ていて 敷き詰めているよ」
「ほんと 早いね」
「今 丁度 自然光が綺麗に入っているから見てください」
神山は高橋の案内で店舗の外から床材を眺めた
床材が少しだけ敷き詰められた場所を見たが納得した
やはり自分が思ったとおり自然光に対応した色を
選択した事に間違いはなかった
神山は今まで構築した物が役立ったと思った
段々と自信が表に出てきたのか明るい顔に戻ってきた
現場の中はまだ床材の糊があったりで入れない状態だったが
神山は高橋に什器の提案をした

「ねえ 孝ちゃん 柱周りの什器だけど」
「うん?」
「アクセントでメタリックを使ってみない?」 
「えっ? どのように?」
「うん 今考えたんだけどさ 柱の所にもう少し立体感を出す為に」
「具体的には?」
「うん この床材を生かす為に 什器の立ち上がり面に
メタリック塗装を施すと 多少でも反射して奥行きが出るでしょ」
「うん そうですね それはいい考えですね しかし、、、」
「うん 僕がこれからニーナ・ニーナに連絡を入れます
什器の塗装はまだ 大丈夫でしょ」
「そうですね どちらにしても メタ塗装は最後になりますから」
「分りました」
神山は祥子に携帯で連絡を入れた
しかし まだ地下鉄に乗っているらしく出なかった
今度は筒井と連絡をとった
「おはようございます 神山です」
「やあ おはよう いつもありがとう」
「ところで 筒井さん 現場の柱巻き什器の件ですが、、、」
神山は筒井が納得するよう塗装変更について説明をした
「分った 山ちゃんの考えたとおりに進めてください」
「ありがとうございます」
「ただし 余り予算をオーバーしないようにお願いします」
「分りました 久保さんには後で連絡をします」
「うん こちらからも一応しますがお願いします」
神山はメタ塗装が決まったので高橋に頼んだ
高橋は直ぐに小田原工場の塗装部門に変更の連絡を入れた
「山ちゃん 大丈夫だよ 間に合ったよ」
「それは良かった 孝ちゃん 予算の件だけど、、、」
「大丈夫ですよ このぐらい 何とか成るでしょう」

神山は高橋と床材の件や壁紙の事で話をしていると
これから出勤する女性達が
どんなブティックが出来るのか話をしていた
「素敵なお店ね オープンしたら来て見たいわ」
「そうね 私も覗いて見ようかしら」
「なにか自然な感じで 明るいわ 楽しみね」
この時間の出勤なので近場の新宿辺りか
渋谷辺りの女性達だろうと察した
果たして渋谷や新宿の女性達が振り向いてくれるか否か
銀座鈴やに並んでいる商品郡で太刀打ちできるか
神山は少し心配になってきた
このブティックのコンセプトはあくまで
アンテナショップであり 販売が主ではない
しかしいくらアンテナショップであっても
情報が偏ってしまうのではないかと危惧していた
通常の営業時間帯では遅い時間帯の人達からの情報が集められないし
どのように運営をしていくのか筒井に聞いてみようと思った
床材が敷き詰められた頃 丁度お昼時間になった
「なかなか綺麗で 明るくて落ち着いた雰囲気になったね」
「やっぱり 山ちゃんが居てくれるからでしょ」
「いやいや そんな事はないよ」
「ところでお昼ですが もう少し待ってくださいね」
「うん?」
「ええ のりを乾燥させるので換気のためシャッターを
閉められないので もう直ぐ応援部隊がきます
それまで待っていてください」
「了解ですが 誰が来るの?」
「田中君が来ますよ もうすぐ来ます」
「内野君は?」
「ええ 御殿場のホテルに行っています」
「そうか 御殿場は内野君が担当ですよね」
「ええ 10時の打ち合わせなので早めに出て行きました」
「それは大変だ、、、」
「しかし 御殿場は最終確認なので楽ですよ」
「椿支配人も喜ぶでしょう」
「そうですね 何しろ内藤がほれ込んだ山ちゃんの仕事だから」
「またまた そんな事はないですよ」
二人が話していると田中が駅の方から走ってきた
「すみません 遅くなりました」
「やあ 幸ちゃん ご苦労さんです」
「すみません 神山さん 遅くなりました」
3人で挨拶をしていると もう一人後ろから付いてきた
神山に対し深々とお辞儀をし
「神山部長 私 アルタの梅崎と言います」
「神山さん 田中君のグループで働いている梅崎君です」
「やあ 神山です よろしく」
「神山さん 梅崎君は今年多摩美を出たばかりの子です」
「そうすると ご夫人と同じ出身校ですね」
「ええ 期待されていますよ」
「そうか 頑張ってください」
「はい ありがとうございます がんばります」
梅崎淳一は神山に対し 再び深々とお辞儀をした
「それでは 田中君 頼むよ」

高橋は田中に対し留守番を頼み神山と出た
「山ちゃん 今日はどこにしますか?」
「うん 別にどこでも良いけど」
「駅前は毎日通っているし どこか場所を変えましょうよ」
「そうですね、、、」
神山は表参道のうなぎ屋に行ってみたくなり
「そうしたら 表参道のうなぎ屋おおたに行きましょうか」
「ええ あそこは美味しいですよね 行きましょう」
神山は早速携帯電話で予約を入れる
受付によると30分ほど待つ事になるといわれたが了承した
高橋と神山はタクシーを拾って表参道に向かった
表参道に着いた時には まだ時間が充分在ったので
ウインドーショッピングをしながら店に向かった
行き交う人のファッションを眺めていると
おしゃれな若者達が多かった
女性達も何処か高級感を漂わせ表参道を飾っていた
ゆっくりと歩いていると『うなぎ屋おおた』についた
店の外にはいつものように縁台に緋毛氈が敷かれて
順番待ちで座れなくなっていた
神山は高橋と少し離れて 亜矢子に電話をした
「神山ですが、、、」
「私です 昨日はありがとうございます」
「どういたしまして ところで亜矢子さん」
「はい」
「連休の件はどうなりましたか?」
「喜んでください」
「えっ」
「あのね」
亜矢子は回りに気を使っているのか小さい声になった
「22日から24日までお休みが取れたの」
亜矢子は細々とした声だったがはっきりと伝えた
直ぐ傍で話をして居る時の笑顔が浮かんだ
「よかった そうしたら24日まで連休しましょう 合わせます」
「だけど 本当に大丈夫ですか お忙しいのに、、、」
「大丈夫 そんな事より 22日まで元気でね、、、」
「ええ あなたも、、 又連絡を下さいね」
「わかった 連絡をします」

神山は携帯電話をしまうと高橋の所に近づき店内に向かった
店内の受付に行き名前を告げると 奥の席に案内された
4人がけのテーブル席だが隣りとは衝立で仕切られていた
二人はビールを頼み うなぎの骨をから揚げしたおつまみも頼んだ
うなぎ屋だが簡単な鮮魚のおつまみもありそれも一緒に注文した
「それでは 床材の成功で乾杯」
高橋が 神山に向かってジョッキを突き出し神山と乾杯をした
床材に対してとりとめのない話をしていると 鮮魚のおつまみが来た
たこ えび いか あわび 鯛の切り身 などなど
「凄いですね 山ちゃん こんなにたくさん、、、」
「そうですね それに色も良いし 美味しそうですよ」
「では 頂きましょう」
「そうですね 頂きましょう」
神山と高橋は 美味しい鮮魚に満足し箸を進めた
「ところで孝ちゃん 上原の受け渡し日はいつになったの?」
「うん それがやはり4月25日土曜日におおむね決定です」
「ニーナ・ニーナには 連絡をしてあるの?」
「うん、、、」
「どうしたの?」
「実は 25日だと夕方になってしまいそうなんですよ」
「そうか でも一日でも早いほうが先方も喜ぶでしょ」
「そうですよね、、、」
高橋はいつになく暗い表情になっていた

「何が心配なの?」
「什器の搬入が遅い為一日ずらそうか考えているのです」
「製作がぎりぎりなんだ」
「そうではなくて、、、」
「なんだよ 孝ちゃん ちゃんと教えてよ」
高橋は神山に見つめられ事実を話す決心をした
「什器の製作は充分間に合います 配送の手配が上手くいかなくて」
高橋はそこまで言うとうなだれてしまった
「そうか だけどなんで?」
「ええ ちょうど横浜の百貨店とバッティングしていて、、、」
「そうか 横浜と当っているのか」
神山は 横浜東口に今度出店する百貨店を考えた
「ええ 車さえあれば25日の朝に引渡しが出来ます」
「そうすると 24日の夜に搬入か」
「ええ 本当に車がないんですよ 横浜に取られています」
「このような場合は フリーの業者まで横浜に行くものなの?」
「ええ 色々当ってはいるのですが
なかなかまとまった台数がなくて」
「孝ちゃん そうしたらさ 僕がこれから車を当ってみるよ」
「ええっ そんな」
高橋は神山に言われても自分の裁量ではどうすることも出来なかった
神山は銀座の倉元に電話をし確認すると神山の意見に賛成した
結局 リース.レンタル什器専門で
大手の吉本が使っている運送業者に頼む事にした
吉本はもともとファッションマネキンの大手だが
この頃は店内改装を手がけるほど大きくなってきていた
物流に関してはいつも使っている第二貨物がメインであった
神山は吉本に訳を話し第二貨物を借りる事にした
吉本のほうも横浜に納品があり渋っていたが神山の熱意に負け
「分りました しかし少し割高請求になりますがいいですか」
「うん 絶対に24日の金曜日は抑えてくれ」
「はい 神山さんのお願いだと断れないですよ」
「うん ありがとう 恩に着る」
「では 請求書関係は又後で 直ぐに抑えます」
神山は高橋に吉本で使っている第二貨物を動かせる事を伝えた
「ええっ では24日の金曜日に搬入できるのですか」
「うん 多分 大丈夫だよ」
高橋は神山を信じられない眼差しで見ていた
「どうしたの そんな なにか付いている」
「いや だって やっぱり凄いや 山ちゃん
一つの器でしか動かせないから、、、 凄いよ」
「そんな事ないさ 吉本も動いてくれるし
第二貨物の常務を知っているから
例えば吉本がだめでも第二の常務に連絡すれば何とかなるさ」
高橋は改めて神山の大きさを知った
神山は携帯電話で銀座の奥村課長に連絡をして
事の経緯を説明し理解納得してもらった

「ところで 孝ちゃん お願いがあるんだけど、、、」
「うん?」
「ちょっと私用で来週の22日から24日まで
行方不明になりたいんだ」
「、、、」
「何か いいアイデアないかな」
「、、、」
「出来れば熱海とかがいいんだけど」
「いいよ なんとかする」
「ありがとう 助かるよ」
「ところで どんな女性?」
「うん 実は御殿場のホテルで知り合ったんだよ」
「えっ 早いね、、、でっ どうなの」
「うん 純情で可愛らしく 今のところ順調です」
「しかし 山ちゃん 久保さんも居るだろ 大丈夫?」
「えっ 何故知っているの?」
「だって 傍目で見ていても分るよ 彼女の動きを見ていれば」
「そうか これは内緒だよ お願いだからね」
「はい了解 ところで具体的にはどうするの?」
「うん アルタに迷惑を掛けたくないし、、、かと言って催事課には
内情を知られたくないし、、、」
「なるほど、、、」
「そうなんだよ、、、」
「そうしたら 山ちゃん」
高橋は残っているビールを一息で飲み干し
「ねえ うちの小田原工場見学はどう?」
「小田原工場?」
「今度のニーナ・ニーナ什器製作は小田原工場が担当なんですよ」
「うん それで」
「だから いつでも良いでしょ 見学日は」
「そうか だけど上手く行くかな?」
「大丈夫だって 工場長にそれとなく話しておくから」
「うん そうしたら実際に行きますよ そのほうが良いでしょ」
「時間はあるの?」
「うん そうしたら22日の午前中に伺いますよ」
「だけどその後は、、、」
「うん 自由行動で なんとかするさ」
「そうですね 頑張ってください」
神山と高橋は一応の結論が出たところで卓にある鮮魚を食べた
しかし高橋が久保との事をどこまで知っているかは別として
抜き差しならぬ仲と見抜いたのには驚いていた
今回の旅行には色々と煙に巻かなければいけない人物が頭をよぎった
浮かない顔をして箸を勧めていると高橋が
「どうしたの 嬉しくないみたいだね」
「そんな事はないけど なにか、、、」
「スーパーマンでも 弱点はあるのですね」
神山と高橋はお互いの顔をみて笑った
ようやく二人の不安が払拭されたので箸が進み
鰻の蒲焼定食を運んでもらう事にした
ここ うなぎ屋おおたで使っている鰻は
特別に愛知県の三河で獲れる天然鰻を出していた
養殖でないので身が引き締まっていて柔らかく
更にあぶらも適度にあり最高に美味しかった
タレは関東人に合わせあまり濃い味ではなく食べやすかった
神山はメニューを見てみると美味しそうなお土産があったので頼んだ
二人は卓に並べられた鰻を綺麗にし後にした
「ごちそうさまでした」
「いえいえ こちらこそ 山ちゃんはどうするの これから」
「うん 銀座でお仕事してきます 何かあったら携帯まで」
「了解です」
「では 22日の件 お願いします」
「ええ 住所などは後でマンションにFAXしておきます」
「了解です お願いします」
神山と高橋は別々のタクシーに乗り別れた






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2012年9月10日月曜日

青葉 1 - 15 Vol. 2



お客さんと楽しそうに話しながら調理をしているコックが居た
「やあ 亜矢子ちゃん いらしゃい ゆっくり食べていってね」
「はい 今日も美味しいお肉をお願いしますね」
亜矢子はまず地ビールの生ビールを注文した
「地ビールの生は余り他では置いていないの 美味しいわよ」
「そうだよね ホテルでも置いてくれるといいんだけど、、、」
「私も何回か進言したけどだめだったわ」
「へぇー しかし美味しい物はどんどん出すべきだよね」
「そうでしょ だけど支配人の考え方は 又 違っているの
ホテルでは主になるものを主体で販売提供しなければいけない
と こういった考え方で 生ビールは置いてくれないんです」
「凄い考えだね それだけ地ビールに自信があるんだね」
「ええ だからホテルでは地ビールの生は置かないんですって」
亜矢子が口を尖らせながら神山に話していると地ビールの生が届いた
中ジョッキーより少し小さいジョッキーを二人でカチンと合わせた
美味しい 神山は今までそんなに気にしていなかったが
地ビールを生にするとこんなに美味しくなるのかと亜矢子の顔をみた
「ねっ 美味しいでしょ 素晴らしいでしょ」
「本当に 美味しいよ」
二人が顔を見合わせていると 車えびの焼き物が出てきた
神山はホテルと何処か似ている事を亜矢子に尋ねた
「ここの設計はアルタさんで ホテルと一緒の創りなんです
だから似ているでしょ 椅子とかテーブルや 照明なんかも」 
「そうか アルタの設計か、、、」
「そう コック長は、、、
実はホテルのコック長のお兄様なの ねぇコック長」
「まあ そんな訳でして はい」
「だからか、、、なるほど、、、
入ったときホテルのステーキ屋さんに来た感じだったよ」
「いいでしょ だからお肉は最高よ」
亜矢子と居るこのステーキ屋は『すてーき はやし』と言った
店名文字どおり 和の食材を大切に調理し提供していた
地元で取れる魚介類をはじめ野菜類も地元調達だった
車えびの後にはマグロのとろが出てきた
これも塊を鉄板で少しだけ焼き
調味料を振りかけたものだったが美味しかった
神山が美味しそうに食べているのを見て亜矢子は嬉しかった
ビールが無くなると赤ワインを頼んだ
同じ銘柄のワインだがホテルより数段安かった
「ワインが安いね 嬉しいよ」
「ええ ここのお店は直ぐ傍に在る安売りのお店から仕入れているの
だから デパートの価格より全然安くて呑めるわよ」
「そうなんだ 凄く安いよね いいね」
神山達二人は出される焼き物を美味しく頂きおなかを一杯にした
「凄く美味しいわ ねぇ店長 ご馳走様でした」
「そんな いまデザートを出しますから」
亜矢子と店長が親しそうに話しているので聞いてみた
「別に 何も無いわよ お休みのときに食べに来て色々と
話している内に 私の素性が分って店長も教えてくださったの」
「そうなんだ 了解しました」
二人は顔を見合わせて笑った
デザートを食べ終わると店を出た

マンションに向かうとき亜矢子はしっかりと
神山の手を握って離さなかった
歩いて5分もしないうちにマンションに着いた
玄関のドアを開けると部屋を締め切っているせいか
亜矢子の匂いが漂っていてむせるほどだった
二人は玄関を閉めるとどちらかとも無くキスをした
亜矢子の体から段々と力が無くなり 神山が抱えるようにした
「ねぇ だめよ 早くお部屋に入りましょ ねぇ」
まだ靴を脱いでいない亜矢子は神山から躰を離して靴を脱いだ
神山も靴を脱ぎ捨て亜矢子を抱えるようにしてベッドに入った
「ねぇ シャワーを浴びたいわ お願い 一緒に浴びましょ」
神山は自分も 今朝簡単に流しただけだったので
「うん 一緒に浴びよう」
そう言っても二人はなかなか離れず 愛撫を繰り返していた
神山がパンツ姿になった時に亜矢子が跪き 下半身に愛撫をしてきた
神山は 布地の上からの愛撫には別な感触を感じていた
触られているがじかに触れられていないもどかしさ
神山はどんどんと充血をしてきて透明な体液を漏らしてきた
亜矢子は嬉しいのか 愛撫に変化をつけてきた
早くこすったり 唇でかんだり 色々と試してきた
亜矢子自信はまだブラジャーとショーツを着けていたが
神山の愛撫を中断すると自分で脱いだ
神山がパンツを脱ごうとすると
「だめ 私が脱がせるわ」 
亜矢子はパンツを下げたときに肉棒が元気よくはねたので喜んだ
そのまま亜矢子の唇は肉棒を離さなかった
先日同様ぎこちないが一生懸命に愛撫を繰り返していた
神山は我慢できなくなったので
「ねぇ 入りたいよ 亜矢子の中に」
亜矢子はすんなりとベッドに横たわり 神山を待った
神山は隣りに横たわり 秘所を触ってみると体液が溢れ出ていた
「ねぇ 入ってきて お願い」
神山は亜矢子を下にして ゆっくりと挿入した
「ああ 気持ちいいわ あなた ほんとよ 気持ちいいの」
少しづつ最初はゆっくりと動かしていった
亜矢子も膣の中が感じてきたのか腰を使い始めた
二人の腰の使い方がリズム良くなってきた時 亜矢子が
「だめ あなた いくわ」
神山が亜矢子のリズムを壊し早くすると
「ああっ だめよ そんなに ほんと」
神山も段々と昇天が近づいてきて
速さをそのままにストロークを大きくすると
「だ・め いく ああっ い・く・わ、、、、」
亜矢子は躰を反らしてピクピクとした時に神山も昇天してしまった
神山がぐったりと亜矢子の上にかぶると
亜矢子の手が神山を抱きしめた
神山が少し元気になったときに 膣から肉棒を抜くと
「ああっ 出て行く だめ 出て行かないで」
亜矢子は余計に腕に力をこめ 足も神山の腰を離さなかった
「ほら シャワーを浴びる事が出来ないぞ」
「いいもん このままで」
神山は隙間から亜矢子の秘所を触った
そこは二人の愛液でぐしょぐしょだった
触られた亜矢子は気持ちいいのか腰を動かし始めた
しかし 亜矢子自信もシャワーに入りたかったので 我慢をしていた
「ねぇ お願いだから 今度こそはシャワーを浴びましょ ねぇ」
「分ったよ さあ浴びようか」
まず神山がベッドから立って 亜矢子を起こしてあげた
「ねぇ あなた お願いがあるの」

「なあに」
亜矢子はまだ元気なおちんちんを握って
「他の女に使わないで ねぇ お願いだから」
神山は急に言われたので戸惑ったが
「分ったけど 大きくなったら どうしたらいい?」
「大きくしないで」 
そう言って くすっと笑った
二人はバスルームでお互いにしゃぼんを付け合い洗った
神山の下半身がずっと元気なのを見て
「こんなに元気なの 男の人は、、、 びっくりよ」
そう言うと亜矢子はボディーソープを良く泡立て触ってきた
いつも同じ愛撫なので
「亜矢子 その手を時々くるくると回すようにすると気持ちいいよ」
亜矢子は言われた通り上下だけではなくて少しひねってみた
「うん その調子 凄く気持ちがいいよ」
「ほんと 嬉しいわ」
「時々 もっと強く握ってくれるといいな」
「どう 痛くない 大丈夫?」
「うん 力加減が丁度いいよ 大丈夫、、、」
亜矢子は自分が愛撫している事が愛している人に最高と言われたく
一生懸命に行っていた
「亜矢子 だめだ 出ちゃうよ 我慢できないぞ」
それでも亜矢子は止めなかった
本当に自分の行為が相手に
気持ち良くなってもらえているのか確かめたかった
「だめだ 出ちゃうよ 我慢できないよ」
亜矢子はスピードを上げ 少し力を入れた
肉棒の先から乳白色の精液が出たとき
亜矢子は急いで口を開き受け止めて飲み込んだ
少し石鹸の味がしたが神山の大切な分身を貰ったと嬉しかった
神山は立ち上がらせると今度は亜矢子のクリトリスを愛撫した
亜矢子は直ぐに昇天してしまい躰をがくがくさせた
「ねぇ よかった 気持ちよかった?」
亜矢子は初めて愛している人の指示で行った行為が気になった
もっと力の入れ具合や スピードの感じや聞きたかったが
「うん 凄く気持ちよかった」
「ほんと?」
「だから すぐに出ちゃったじゃないか よかったよ」
神山は亜矢子を抱き寄せキスをした
亜矢子も抱かれながら下半身を神山に摺り寄せていた
神山はこのままではゆっくりと味わう事が出来ないので
「さあ 亜矢子出ようよ ゆっくりとしよう」
「ええ そうね ここ狭いし」
二人は石鹸を流しながら又 お互いを触りながらシャワーで流した
ベッドに戻るときに
亜矢子の携帯電話が着信を知らせるランプが点滅していた

「あなた ごめんなさい」
亜矢子は留守電を聞いてみたら 今夜の出勤が指示されていた
神山は亜矢子の顔がだんだんと暗くなっていくのが分った
「ねぇ ごめんなさい 今夜出勤になりました
だから 遅い時間まで一緒に過ごせないわ ごめんなさい」
「いいよ そんな 仕事が第一優先だよ 今日は、、、」
「だけど 寂しいわ ゆっくり出来ると思っていたのに、、、」
「亜矢子ちゃん 僕も寂しいけど仕方ないよ だけど どうして?」
「ええ 夜シフトの子が体調を崩して出勤不可能なんですって」
「その位は何とかなるでしょう わざわざ亜矢子が行かなくても」
「ええ しかしその子は矢田部と同じサブなのでそのクラスの
責任者が何人も居なくなると困ってしまうの」
亜矢子は冷蔵庫から地ビールを出し二人で呑みながら説明をした
亜矢子のようにグランドマネージャーは山側と海側で
各一人ずつ配置されその棟の最高責任者で
その下に3フロア毎管理するサブマネージャーが各棟配置されている
今日会った矢田部はその下のサブという事を説明された
矢田部の下にもフロアマネージャーが居るが見たこと事は無かった
亜矢子は当然でしょ と言って
椿総支配人のご友人関係は全て私たち
上のクラスが応対する事になっている事をつげ
あなたが来られた時は本当にVIPの接客なんですとも言った
今日は 山側のサブがどうしても夜の出勤に間に合わなくて
要請が来たと言った
自分達のシフトより山側のシフトで何とかならないかと
ホテル側では検討をし山側のマネージャーと話をしたが
どうしても欠員が出てしまうために亜矢子に廻ってきた
亜矢子にしても時々山側に助けられている事もあり
ここは普段どおり夜出勤しようと考えた事を伝えた
「僕だったら 今の亜矢子が言うと通りだと思うね」
「ごめんなさい ゆくっり出来なくて、、、」
「いいよ そんな事より 何時に出ればいいのここを?」
「ええ 8時ですから 6時半で充分です」
「じゃあ まだ充分に時間があるでしょ ねぇ亜・矢・子」
神山はロレックスを覗いて見るとまだ3時になったばかりだった
「本当にごめんなさい こんど埋め合わせをします」
神山は埋めるのはこちらが専門だと 言って亜矢子を笑わせた
地ビールを飲み干したのでお代わりを注文した

亜矢子が冷蔵庫に立った時に
バッグからブレスレットを取り出しガラステーブルに置いた
亜矢子が座りビールを注いだ後
「これ 亜矢子さんにプレゼント、、、 どうぞ受け取って」
亜矢子はホテルに入っているブティックの包装紙を開けた
「わあ これ 欲しかったんです いつも眺めていたの、、、」
「よかった 喜んで貰えて」
「でも 本当に私でいいの こんな高価な物、、、」
「そんな 亜矢子さんに似合うと思って選んだんだよ、、、」
「ええっ ほんと 嬉しいわ ほんと欲しかったの」 
亜矢子は嬉しい顔をしながら涙を流してきた
「どうしたの 亜矢子 悪かったかな」
「違うの 本当に欲しかったの だけど、、、ごめんなさい」
亜矢子の涙はこのブレスレットが原因でないと分った
神山はブレスレットを亜矢子の左腕に掛けてあげた
「嬉しいわ ほんとよ あなた ほんと、、、」
又涙ぐんだ亜矢子をベッドに抱えていった
亜矢子を寝かせると 反対に寝かされ
「ねぇ 私 教えていただいた事を精一杯しますから、、、」
亜矢子は言うが早いか行動のほうが早かった
神山に教えられたとおり
肉棒の上下運動 そして捻り 唇の技などなど
いままで亜矢子は教えられた事を実践した
神山は やれば出来るじゃないかと言う気持ちと嬉しさの気持ちで
考えれば考えるほど 下半身の反応が鈍くなった
「ねぇ さっき言われた通りにしているけど、、、だめ?」
亜矢子は全然元気にならない肉棒に訴えた
「ごめん 嬉しすぎて 本当にごめん 直ぐに元気さ」
神山は色々な事を考えないよう下半身に神経を集中した
亜矢子もだんだんと固くなってくる肉棒を改めて見ていた
「ねぇ 凄く大きくなってきている すごい 色も変わっているよ」
「亜矢子 そんな 当たり前だろ」
「だって いままで こんなに真剣に見たこと無いわよ いいわ」
亜矢子は神山の肉棒を愛撫しながら形の変化や色の変化を楽しんだ
「真中のところから透明の液が出てきているわ」
亜矢子は亀頭をゆっくりと触りながらその体液を触ってみた
「わあぁ~ ねばねばしている~ いやらし~ あなた」
今日はどうしたものか まな板の鯉状態で何もいえなかった
「ほんとはね 私のあそこもねばねばです 入っていいですか?」
「うん お願い 入りたいよ 早く」
神山は下から亜矢子のおっぱいを愛撫しながら言った
亜矢子は肉棒を支えながら腰を落とし ゆっくりと動いた
最初は自分のクリトリスに刺激があるように前後の動きだったが
「ねぇ 亜矢子 腰を上下に動かしてごらん」
亜矢子は言われたとおり動かし始めたがぎこちなかった
「ほら 上手に動いているよ 凄く気持ちいいよ」
「私も気持ちいいわ あっ ほんと」
亜矢子は自分の動かし方が分ってきたのか 上手になった
ブラジルのサンバのように激しく腰を動かす事を知った亜矢子は
「ねぇ もう だめ いきそう ねぇ、、、」
神山は下から同じリズムで上につついた
亜矢子は膣をきゅんと閉めながら躰を反らして
「あなた い・い・ ほんとよ いいわ だめっ、、、」
亜矢子はさらに上半身を反らして昇天した
神山も亜矢子の乳房を鷲づかみして発射してしまった
亜矢子が神山の上にぐったりと倒れこみ
「ほんと あなただけ ほんと 嬉しいわ私、、、」
亜矢子は又涙を見せながら神山にキスをした
神山もいじらしい亜矢子を思う気持ちがだんだんと大きくなった
亜矢子は自分から神山から降りて横に寝た
「あら まだ元気なのね 頼もしいわ 大好きよ」
亜矢子は元気な肉棒を触り楽しんだ
「ねぇ 亜矢子さん お願いだから 少し休ませて」
「そう そんなに元気ないの」

亜矢子は挑発するように言いながら肉棒を触った
神山はどうする事も出来ずに 任せるしかなかった
神山とのひと時を亜矢子は大切にしている
そしてそれ以上にもっと愛している事を表現したいと思っている
神山はそんなふうに考え 亜矢子に尽くした
亜矢子と神山はお互いの躰を優しく時には激しく愛撫をくりかえした
神山は亜矢子を返し裏返しにした
「何するの ねぇ」
神山は無言で亜矢子の背中から腰に掛けて愛撫を始めた
「凄く気持ちいいわ」
おしりのとがっている部分から秘所の隣りに在るアナルに指をかけた
「だめっ そこは 絶対だめっ 変態 いやよ」
しかし神山はアナルには近づいたが愛撫に終わり
ありの門渡りをを攻めた
10本の指で秘所の周りを攻められた亜矢子は
ねばねばした体液を溢れさせた
「ねぇ もうだめ 早く何とかして お願い」
それでも神山はそのまま秘所の周りを攻め立てた
時には強く 時には柔らかく クリトリスを触られつづけ
時々指をヴァギナに挿入され 出し入れをされると
亜矢子はこの世に存在しないような声を発して昇天してしまった
ぐったりなっている亜矢子の腰を引き上げ 後ろから挿入した
亜矢子は直ぐに快楽がよみがえり 腰の運動を合わせて来た
神山はウエストを掴みながら前後に動いていると
今度は亜矢子自信が腰を前後に動かしてきた
二人の運動がリズム良くなってきた時に神山は片方の手で
亜矢子のバストを愛撫すると
「ねぇ 本当に気持ちいいわ また いきそう、、、」
神山はもう片方の手でクリトリスを愛撫し始めた
「ねぇ だめっ だめっったら お願い いくわ お願い」
神山はそれでもクリトリスとバストの愛撫を止めず
挿入している肉棒の運動を段々と早くしていった
亜矢子の膣がきゅんと締め付けてきたとき
「ああぁ いくわ あなたも、、、ああぁ、、、」
「亜矢子 僕もだめだ 我慢できない、、、」
「ねぇ きて ねぇ、、、」
亜矢子はそこで昇天してしまった
神山もそれを合図に昇天してしまった
ぐったりしている亜矢子から肉棒を抜き出すと
「あつっ だめ、、、」
神山が完全に出ると亜矢子は
ようやく快楽から開放されたようにぐったりとなった
神山は亜矢子の横に寝て 腰を触っていると
「ねぇ あなた 少し休ませて お願い」
うつ伏せになった亜矢子の顔には汗がびっしょりだった
髪の毛が汗で顔につき激しい運動を行った後の
たとえ様が無い美しい顔だった  
神山はこの顔が亜矢子の本当の『顔』ではないかと思い 
しかっりと脳裏に焼き付けた

「ねぇ あなた起きて、、、」
神山は女性の声で目を覚ましたがここがどこだか一瞬分らなかった
いつもの空気と違い 天井も違う それにまだ薄日が差していた
「ねぇ 起きて 本当に、、、」
「う~ん、、、」
神山は目を開くとようやく亜矢子のベッドと悟った
「ごめんごめん すぐに起きるよ そんなに寝てしまったかな」
「ううん 違うの、、、 だけど起きて」
神山は言われるまま躰を起こしロレックスを覗いた
6時30分にはまだ充分時間があったが 亜矢子の言う通りにした
「どうしたの まだ早いでしょ、、、」
「ええ しかし 一緒にお布団の中にいられないの、、、」
「えっ なんで?」
亜矢子は自分の下半身を両手で隠すようにして
「おんなの人になっちゃった」
亜矢子は恥ずかしさと残念さを隠し 笑顔で言った
神山は なんで同じ時期に生理になるのだ と考え
来週の泊りがけのことも考えた
「だけど 今日始まりだったら 来週は大丈夫じゃないか」
「そうね この娘が納まってくれる事を祈るわ」
「僕もテルテル坊主を作るよ、、、」
二人は顔を見合わせて笑った
「亜矢子 そうしたら4月22日はどこで待ち合わせしようか」
「私 ここを離れたいわ」
「そうしたら 3時ごろに熱海ではどう?」
「ええ 熱海なら、、、」
「じゃあ そうしよう」
神山は裸のまま冷蔵庫からビールを出して二人のコップに注いだ
亜矢子は自分の気持ちを抑えるのに必死で
「ねぇ あなた 何でも良いから 隠して お願い、、」
神山は立ち上がって 両手で下半身を隠して おどけた格好をした
「どう こんな感じですか?」
亜矢子は口に手を当てて笑いながら
「やめてよ、、、 本当に、、、 イメージが悪くなっちゃうわ」
どうしても笑いを抑える事が出来ずに
隠している両手にピッシャと打ったが 神山はめげずに色々な
ポーズをとると 亜矢子は笑いきれずに涙を流した
そんな姿を見た神山はまだ大きくない下半身を亜矢子の口に当てた
「だめでしょ 大きくなっても 大きくしないで、、、」
神山は亜矢子の言葉とは反対に どんどんと大きくしていった
「なんで 大きくするの だめったら だめ、、、」
しかし 亜矢子は目がうつろになり 肉棒を咥え始めた
神山は亜矢子の献身的な行動に心を打たれ
「バスルームに行こう」
亜矢子は黙って頷き立ち上がったが肉棒を離さなかった
自分から浴室に向かい
「では 先に入っていて お願い」
亜矢子は神山を浴室に入れると ドアを閉めた
神山はシャワーを出して亜矢子を待った
「ねえ あなた 本当にだめなの」
そう言いながら全裸になった亜矢子が浴室に入ってきた
唇を合わせ 抱き合った
亜矢子は今まで以上に強く抱きしめてきた
神山も強く抱き返し亜矢子の愛に答えた
亜矢子は腕を組み解きしゃがみこんで肉棒を咥えこんだ
「ねぇ 私のこと愛している?」
神山は勿論だと言う事を肉棒で示した
どんどん大きくなる肉棒を亜矢子は頼もしげにしゃぶった
神山に言われたとおり手の愛撫も充分だった
神山は亜矢子に対し 後ろ向きになるよう求めると
「私 上になりたいの だからここに座って、、、」
神山は浴槽の縁に座ると亜矢子がこちらを向いて座ってきた
このままの格好では動けなかったので
亜矢子は浴槽の縁に足を掛け腕を神山の首に回した
腰を上下に動かし始めると感じてきたのか膣がきつくなってきた
しかし神山はこの体勢だと動く事も出来ず
上に乗っている亜矢子を支えるのに精一杯だった
亜矢子はますます感じてきたのか 上半身を反らすようになった
神山は腰の動きを亜矢子に合わせてあげると
「ねぇ だめ きもちいいわ だめ、、、」
神山はふちから降りると亜矢子を抱きかかえるようにし
亜矢子の片足をバスタブの縁に乗せ下から攻めた
亜矢子は縁に乗せた片足でリズムを取りながら絶頂を迎えた
ぐったりした亜矢子を抱きながら
緊張からほぐれてくる膣に対し最後の抵抗をした
亜矢子も神山も体力を使う体勢だったのでぐったりとした
神山の太ももに生暖かいものが感じられシャワーで洗い流した
「あなた 先に出ていて お願い」
「うん 分ったよ」

神山はバスルームを出ると冷蔵庫からビールを取り出し呑んだ
亜矢子はバスタオルを胸に巻き出てきた
「そんな格好で大丈夫?」
「ええ 下はちゃんと穿いているわよ だから大丈夫」
神山はロレックスを覗くと6時を指していたので
「そろそろ仕度をしようよ 遅れるとまずいし」
亜矢子もチェストの時計で時刻を確認した
「そろそろ 仕度をしますね」
亜矢子は神山の前でバスタオルを脱ぎ
「私を忘れないでね お願い」
ショーツ1枚の格好で神山に抱きつきお願いした
「分ったよ 忘れないように頭に叩き込んだ」
「そうしたら 窓のほうを見ていて いいと言うまで」
「なんで 恥ずかしい事ないだろ」
「いやよ お願いだから あっちを向いていて」
神山はビールを持ち窓際に移り外の景色を眺めた
夕焼けが綺麗な空だった
下を見てみると歩道では会社帰りのサラリーマン達が
仲間と居酒屋に入る姿が在ったり
これからお仕事であろう女性のお尻を追いかけている男たちもいた
東京の銀座とは比べ物にならない三島銀座だが
華やかさでは負けても 男と女は元気そうにみえた
男は女を自分の物にしたいし 女はいい男にめぐり合いたい
東京だろうが三島であろうが 
地域や国が違っても男と女の根本的なところは同じだと思った
神山が外の景色に見とれていたので
「ねぇ どうしたの 私が言った事で怒っているの、、、」
神山は余計な事を考えさせてしまったと思って
「いいや 全然そんな事は無いよ
今 外の景色見ていたら考える事があって、、、」
「そう 良かったわ 怒っているかと思って、、、」
神山が振り返るとすっかり仕度が出来た亜矢子が居た
「あと もう少し お化粧をします また 向こうを向いていて」

神山は言われたとおり 窓の外を眺めた
相変わらず男と女の世界があった
化粧が濃い女に男が声を掛けていたり
少し派手身なりのな男女が無言で歩いていたり、、、
これから大人の 女と男の時間が始まることを告げていた
果たして亜矢子はどうかと考えた時
本当に自分を考えてくれているのか否か、、、
現時点では考えてくれていると考えたほうが良いのか、、、
「どうしたの あなた?」
「えっ なに?」
「だって 少し前から呼んでいるのに 答えてくれないから、、、」
「あっ ごめん 気が付かなかった ごめんなさい」
「そうしたら 私は準備出来ましたので あなたの番よ」
「うん すぐに仕度するよ」
神山はブリーフを穿きTシャツを着ると
「ねぇ あなた お願いがあるの、、、」
「なに?」
亜矢子はチェストから真っ赤なショーツを取り出し
「これはまだ穿いていないの ねぇ 穿いていって」
「しかし 綺麗な色だね 鮮やかな色だよ」
「そうでしょ だから 穿いていって」
「なんで そんなに拘るの?」
「、、、 お守りよ それと 運があると言われるわ」
神山は亜矢子から渡されたショーツを穿いたが
そんなにきつくなく 収まり具合も充分な機能だった
「いいじゃん きつくないし ゆるくも無いし」
亜矢子に下半身を見せつけると
「可笑しくないわ 大丈夫よ 格好いいわ」
亜矢子は神山の傍に来て下半身を優しくなでて
「本当に お守り、、、よ」
「分った ありがとう 大切にするよ」
神山も身支度を整えるとそろそろ6時30分に近くなっていた
二人はマンションを出ると行き交う女と男に紛れ込んだ
三島駅に着くと二人は廻りの人を気にせずに抱き合った
神山は亜矢子の肩越しに見えた宝くじ売場に行った
「亜矢子 さっきの、、、 運試しをしてみようか」
亜矢子は腕を組んだまま胸を押し付けてきて
「そうね 間違いないわよ 買いましょ」
神山はその場で分る『スクラッチ宝くじ』を買い 削ってみると
「わぁ 当りよ 他の4枚は、、、」
神山は1000円の投資で1万円を獲得した
亜矢子は神山にもう一度5枚買うことを言った
果たして1000円の5枚で又 1万円を当てた
「凄いわ 私こんな事初めて 凄いわ、、、」
亜矢子は神山のほほに軽くキスをした
「ねぇ そうしたら こちらの宝くじを買いましょうよ」
神山は獲得した2万円で宝くじを買った
地方の宝くじで1等が4000千万円の宝くじを亜矢子に全部渡した
「あなた 半分ずつにしましょうよ」
「いいよ 僕はこのショーツの凄い事が分ったから又の時に、、、」
「本当にいいの? だけどこの宝くじ当ると良いわね」
二人は顔を見合わせて笑った
神山は新幹線の切符を買うと亜矢子と別れた
亜矢子は御殿場に向かう為 新幹線の改札口まで来て
「寂しいけど 我慢するわ 連絡を下さいね お願いします」
「分った 出来るだけ電話しますよ」
亜矢子の乗る電車の入電が告げられたので 互いに手を振り別れた






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2012年9月5日水曜日

青葉 1 - 15 Vol. 1



4月15日 水曜日 快晴

サイドテーブルの電話が神山を起こした
4月の朝日がさしこみ眩しくて 直ぐに目が覚めた
「桜川です おはようございます お目覚めでしたか?」
「やあ おはよう 今 起きました 
亜矢子ちゃんに起こされるのいいね」
「まあ 嬉しいですけどメッセージが入っています」
「おやおや 朝から大変だ」
「はい 本日12時過ぎに御殿場でお待ちしますA.S ですって」
「はぁ 分りました そうか、、、ごめんなさい
伺いますと宜しくお伝えてください」
「はい 分りました」
亜矢子はくすっと笑い さらに
「あと田代様からですが
本日急用が出来たので先に失礼させて頂きますとの事です」
「ええっ そんな そうしたら仕事はどうするの、、、ねぇ」
「その件は 副支配人の橘が対応させて頂きます」
「それでもいいけど 本当にどうなっているの?」
「あと 内藤様からメッセージがございますのでお届けいたします」
「又 メッセージ?」
「はい 先ほどお出かけになる前に 渡されました」
神山は電話を切ると バスローブの格好で亜矢子を待った
部屋が隣りなのですぐにきた
亜矢子を部屋の中に入れると 抱き寄せ軽くキスをした
唇を離した後 いやいやをして腕をほどき
「お仕事が先です こちらが内藤様からのメッセージです」
神山は昨日と同じ茶封筒を受け取りメッセージを読んだ
【山ちゃん おはようございます 昨日はありがとうございます
ところで 田代君ですが どうしても横浜の現場に行かなければ
ならなくなり 先ほど行って貰いました
そこで お願いですが 仕事の決定は山ちゃんにして頂きたく
思っています 勝手なお願いばかりで申し訳ないです
尚 決定した後の手筈は橘さんに伝えてあります
今回の件で 少ないですが気持ちを入れてあります
お願いします 内藤 一哉】
読み終えた神山は封筒をそのままにして
「本当に困った アルタの仕事で僕が責任者だって」
亜矢子に愚痴を言うつもりは無かったが 気分を害した
「しかし あなたが頼られているからでしょ ねぇっ」
「それはそうだとしても、、、」
「いいじゃないの そんなに頼られるあなたと一緒だと嬉しいわ」
亜矢子から神山に抱きついて来た
神山も思い切り亜矢子を抱き寄せキスをした
今度の亜矢子は抵抗しなかったが
「ねぇあなた 時間無いわよ 橘と打ち合わせでしょ」
「うん そうだけど」
そう言ってロレックスを見てみると8時を廻っていた
「朝食は 亜矢子で決まり」
「何言っているんですか 私はお仕事中ですよ だめ」
「だって いいだろう」
バスローブの前を開け元気になっている下半身を見せた
「まあ りっぱなぼうやね 暫くがまんしてね」
そう言うとひざまずいて おちんちんをしゃぶった
「はい それではお昼までこのまま元気でいてね」
「亜矢子 そんな、、、」
「これでも 精一杯のサービスですよ」
「そんな、、、」
「早く仕度をして朝食を済ませてくださいね」
「分った」
「バイキングでビールを呑んで頂いても構いませんが
橘は時間に煩い人ですから 気をつけて下さいね」
「分った ありがとう」
亜矢子は神山に軽くキスをして部屋を出て行った

神山は大急ぎでシャワーを浴び頭も流し朝食バイキングに行き
レストラン入り口で部屋の番号を聞かれたので キーを見せた
「S-739 ですね 神山様ですね」
「はい そうです」
8時を回ったこの時間は レストラン利用客も満席の半分ぐらいで
料理を選ぶにも時間をかけて選べそうだった
案内係に誘導され席につくなり ウエイトレスに地ビールを注文した
地ビールが届けられるとコップに注ぎ一口飲んでバイキングしたが
誰も相手がいないので 簡単なメニューになった
それでも神山は普段食べられない洋食を中心にチョイスして
地ビールのつまみにした
一人なのでゆっくり食べていても時間が進まなかった
ロレックスを見てもまだ充分に時間があったが
亜矢子のプレゼントを買うために早めにレストランを出て
ブティック「モテリコ」に行ったがパイプシャッターが閉まっていた
ウインドーを良く見てみると
先日 由香里に買ったブレスレットと同じものが飾ってあった
あの時 最後のブレスレットと言っていたのが、、、
しかし 由香里と同じものをプレゼントするのは如何なものか
由香里のブレスレットと違うものは無いか探すと
少し上品にデザインされたブレスレットが見つかった
小さなダイヤが所々に埋め込まれたホワイトゴールド仕様で
値札を見たら由香里のより高かった
神山は亜矢子がこのブレスレットを腕にはめた格好をイメージし
仕事でも使えるし プライベートでも充分利用できると思った
由香里のはデザイン性で高かったが こちらは材質で高かった
由香里のときも30万円したが こちらは80万円もした
一瞬 由香里と同じものにしようと考えたが 余裕があったので
こちらを贈る事に決め 部屋に戻った

9時前に部屋を出て3階のエントランスにつくと
観光客が精算手続きやおみやげの買い物客で賑わっていた
そんななか橘が目立つところに立ち神山を待っていた
「神山様 おはようございます」
神山が時間前に着いた事が良かったのか にこやかな顔つきだった
「おはようございます 橘さん お願いしますね」
二人は軽くお辞儀をして挨拶をした
橘の後ろには桜川亜矢子が立っていたが 同じ様にお辞儀をした
神山が頭を上げると 亜矢子は少し笑い顔で見ていたが
ここで反応すると色々と問題が生じると思い 見ていないフリをした
「神山さん 先日お話をしました サインの件ですが」
橘は先日神山がホテル内で撮影した画像にサインボードを
はめ込んだプリントを見せた
PCで画像処理されたプリントは素人では合成写真とは
思えない程の精密さできちんと処理されていた
「素晴らしい出来ですね この画像は、、、」
「ええ 私も自分のホテルにある物と錯覚してしまいました」
二人は本題に入り 取り付け位置から決めていった
大きさなど微調整を行いながら行われていったが
亜矢子が時々高さや大きさについて意見していた
橘や神山も亜矢子が言っている事は正しいと思って
調整に調整を重ね3箇所のサインボードが決まった
後は色彩の問題だけだったが 基本ラインは崩さずに考える事にした
アルタから提案されていたのは
ベースがステンレスのヘアライン仕上げに全ての文字が黒色だった
しかし アウトレットのテーマカラーが決まると果たしてどうか?
神山は今までもこのような事に何度も体験しているので
テーマ部分のカラーは差し替えできるようにしておいて
下部に付随するインフォメーションは独自性を打ち出す事を提案した
神山は簡単なスケッチをして橘に示した
「そうですね この方がアウトレットが分りやすいし
そして全体のイメージはこのホテルにマッチしていますね
そうしましょう このデザインで行きましょう」
神山は更に文字の色も黒ではなく 少し明るい藍紺に決めた
夜は照明によって黒っぽく見えるが 朝は太陽光にさらされて
綺麗な紺色に見えるからだった
橘は色彩についても神山の意見を取り入れた
早速 デザイン提案書に神山の言った事を書き入れようと思ったが
「神山様 私が記入すると間違えるかも分りませんので
どうかここは神山様に ご記入頂けませんでしょうか?」
「ええ いいですよ」
神山は デザイン提案書を受け取ると先ほど決定した事柄を記入し
補足説明もホテルの便箋を利用してきめ細かく指示をした
橘は神山の的確なすばやい決定にほれ込んだ
「神山様 今日は本当にありがとうございます
私の考えではとうてい出来ない事でした」
「そんな事無いですよ 普段の仕事と変りませんから、、、」
「しかし ご判断が的確で早いです 驚きました」
「そんな、、、」
「椿支配人がほれ込んだ意味が分ります」
「そんなに誉めないで下さいよ 恥ずかしいでしょ」
「すみません 早速アルタ様にFAXしてきます
暫くお待ちください 桜川君 何かお飲物で寛いで頂きなさい」
「はい 何にされますか?」
亜矢子は 嬉しそうな顔をして神山に聞いてきた
「そうしたら 美味しい地ビールをお願いします」
「ハイ 少々お待ちくださいませ 今 ご用意させて頂きます」
「では 神山様 私はFAXを済ませてきますのでお待ちください」
「橘さん アルタのどなたに送られますか?」
「ええ 内野 誠二 係長 宛てですが、、、」
「ああ 内野君か、、、分りました」
「なにか、、、」
「いや 内野君は良く知っていますから、、、」
「では 送ってきます お待ちください」
橘が席を立つと入れ替わりに亜矢子が地ビールを運んできた
「ご苦労様でした 本当にありがとうございます 感謝しています」
「いや 普段と同じ事をしているだけさ 特別ではないよ」
亜矢子がコップにビールを注ぎどうぞと言った
神山は亜矢子にウインクをしてビールを呑んだ
亜矢子は嬉しいのか くすっと微笑みながら神山の姿を見ていた
神山も呑みながら亜矢子の目を見て微笑んでいると橘が戻ってきた
「神山様 今FAXを送らせて頂きました ありがとうございます」
「いえいえ しかし橘さんも大変ですね」
「そんな事は無いですよ 桜川君をはじめ
優秀なスタッフに囲まれていますから」
神山はホテルのスタッフを誉め 自分の部屋でゆっくりとしたかった
カウンターを覗いてみると11時を少し廻っていたので
「では橘さん 失礼します 部屋で少しゆっくりしてきます」
「はい分りました お帰りは何時ごろになりますか?」
「そうですね 12時少し前に出ます」
「そうしましたら お時間に車をご用意させて頂きます」
「そんな いいですよ 駅までですから」
神山は申し出を断ったが 利用させてもらう事にした
席を立ちお辞儀をすると 橘が
「神山様 こちらは椿総支配人からのメッセージです」
少し厚さのあるホテルの封筒を渡された
封筒を受け取り部屋に戻るとき亜矢子も付いて来た
エレベーターの前で亜矢子は
「今日は本当にありがとうございます 助かりました」
深々とお辞儀をすると これから後少しで触れる綺麗な乳房が覗いた
扉が開くと先に乗ったが亜矢子はこちらを向いてお辞儀をしていた
扉が閉まるときに
「亜矢子さん」
と声を掛けると 笑顔で答えてくれた

部屋に戻ると 先ほどのメッセージを読んでみた
【神山様 本日はありがとうございます 本当に助かります
今回の仕事では橘君と桜川君が精一杯仕事をしています
ご迷惑をお掛けしたと思いますが それも情熱だとご理解ください
さて 昨日の件ですが 内藤さんからもお話があったと思いますが
私どもも容認していますが ご内密にお願いします
お仕事の気持ちとしては少ないですが同封させて頂きました
これからも よろしくお願いします  総支配人 椿 秀介】
あと封筒からは50万円が出てきた
神山は 今朝内藤から受け取った封筒も見ると50万円が入っていた
昨日の内藤から頂いた分と合わせると120万円になった
神山はこんなに貰ってどうしたらいいものか考えたが 
事情が事情だけに倉元にも話せないし困った
ご婦人達の淫行に対する口止め料としては貰いすぎだと思ったが
昨夜同様 気にしない事にした
神山は冷蔵庫から地ビールを取り出し呑みながら
これからの亜矢子との事を考えていた

昼食はどこに行こうとか考えていると携帯電話がなった
「はい 神山ですが」
「杉田です 今 大丈夫ですか?」
「うん どうした?」
「造花の件ですが 全て上手く行きました
ありがとうございます ほんと良かったです」
「それは良かったな」
「実は先ほど池上店長がお見えになり
不揃いを指摘されたのですが 丁度 倉元さんがそばにいて
説明をして頂いたんです 助かりましたよ」
「よかったな 明日説明より、、、しかしなぜ店長が?」
「ええ 何でも銀座会の特別な打ち合わせだとかで来られていました」
「分った 倉さんはいる?」
「ええ 替わりますね 倉元さん 先輩です」
「おう 山ちゃん元気か こちらの造花は店長には説明しておいたぞ」
「ありがとうございます 良かったですね 今日会えて」
「そうだな 明日ではこうは上手く行かないだろう 良かったよ」
「すみませんでした ご迷惑をお掛けしました」
「そんな事は無いぞ 終わり良ければ全て良し
それと 遅れたが日本酒届いたそうだ ありがとう」
「どういたしまして 美味しいですよ」
「おう 今夜頂く事にするよ」
「では 明日は一番で上原によってそちらに行きます」
「おう そうか 銀座は翔が頑張っているから大丈夫だ」
神山は電話を切ると 店長にお小遣いを貰っている事に気がつき
由香里に電話をした
「はい 斉藤です」
「神山です 由香里さんですか?」
「そうよ どうしたの 改まって」
「いや 実はね 昨日店長からお小遣いを頂いたでしょ」
「ええ 10万円の事ね」
「そう だからここの日本酒を送ってあげようと思って」
「そうね いい考えだわ まってて 今調べるから」
由香里は神山が何を言いたいか感じ 住所録を取り出した
「あったわ メモ出来ますか?」
「凄いね 僕の言いたい事分って」
「普通でしょ 分らないほうが可笑しいでしょ いいですか」
由香里は愛している人の言っている事がなにを言いたいのか
分るのが普通でしょ と言いたかった
由香里は池上店長の住所を伝えると
「それでお仕事は順調ですか?」
「うん 副支配人の橘さんと桜川さんとしている」
「えっ アルタの方は?」
「誰もいない 僕が総責任者だよ」
「なにそれ? 変な仕事」
「まあ 明日ゆっくり話すから 皆には内緒だぞ わかった」
「ええ しかしそんな仕事まで押し付けるなんて 考えられないわ」
「まあまあ 僕なりにやりがいがあるから」
「明日はどうするの?」
「うん  上原によって 銀座に行く」
「はい では気をつけて下さいね」
神山は携帯電話を切ると ホテルの電話内線7200番を回した
「はい 桜川です 神山様 どかされましたか?」
「ええ 実は日本酒を送って貰いたいと思いまして、、、」
「はい では早速伝票をお持ちいたします お待ちください」
内線電話を切ってから直ぐにドアのチャイムが鳴った
ドアを開けると亜矢子が笑顔で立っていた
部屋の中に招き入れ 伝票に届け先を記入し現金を渡した
「いつもありがとうございます」
亜矢子がお辞儀をしようとした時に
「ねえ ここの地ビールも配達できる?」
「ええ 出来ますが 缶ビールだけになりますが、、、」
「うん 缶ビールでいいよ」
神山はお届け伝票に自分の住所を記入して現金を渡した
「あなた こんなに買って頂いて嬉しいのですが、、、」
「周りの人とか さしあげる分が殆どだよ」
亜矢子は24本入りのケースを5ケースも頼んだので驚いた
神山にしてみれば自宅に置いておけば都合が良かった
「ありがとうございます 宣伝して頂いて 嬉しいわ」
亜矢子がにっこりとしたので軽くキスをした
「そうしたら僕はそろそろ仕度をして先に出ます」
「そうですか まだ時間がありますよ」
「うん だけど1人では時間を持て余すしね、、、」
「はい ではお帰りの時には受け付けまで寄ってくださいね」
「うん分ったよ ありがとう 今日は普通に帰れるの?」
「ええ 少し早く出られそうです あなたのおかげよ」
亜矢子は再びキスをして部屋を出て行った

神山は帰り支度をして部屋を出て カウンターで帰る手続きをした
早速 ブティック「モテリコ」に行き
今朝見つけたブレスレットを店員に
「すみません このブレスレットをお願いします」
「はい プレゼント包装をされますか?」
「ええ お願いします」
神山は会計の時にホテルのプレミアムカードを示した
1割引の現金を用意していたが
「神山様 今回はプレミアカードの方には更に
20%OFFの価格でご提供させて頂いています」
「はあ ありがとうございます それでおいくらになりますか?」
「はい 消費税込みで58万6千ですが 58万円です」
神山は随分と安くなったのでお得な気分で現金を払った
プレゼント包装されたブレスレットを受け取り店内を見渡していたが
祥子に似合うバングルを見つけた
よく見るとホワイトゴールドに誕生石が埋め込まれていた
祥子の誕生月は2月なのでアメジストだった
シルバーの色に良くあった紫色が輝いていたが
値札を見てみると60万円と書いてあった
神山は店員にこちらの商品も割引になるか尋ねると 
「はい 限定商品ですが割引をさせて頂きます」
販売員の女性は押し付けがましいスタンスではなく
尋ねられた事に関しては顧客平等に親切な対応をしていた
神山はこちらのバングルも購入する事にした
「こちらのバングルも頂けませんか プレゼント包装でお願いします」
「はい かしこまりました 少々お待ちくださりませ」
カウンターで販売員がプレゼント包装をしているときに
「神山様 こちらはカードの割引の後30%OFFとさせて頂きます」
「そうするといくらになりますか?」
「はい 消費税込みで37万8千ですが 37万円でお願いします」
「そんなに安くして頂いて 大丈夫ですか?」
「ええ このように何回も来て下さるお客様には特別です、、、」
神山は銀座の店舗には行ったことが無いが こんなに安くなるならば
これからここを利用しようと思った
神山が商品を受け取った後に女性客が会計をしていたが
別に割引の事は話していなかった
やはりプレミアムカードの威力かと思って店を出たが
12時にはまだ時間があったので他のブティックも覗いた
昨夜からの謝礼金はお酒やブティックの収支を考えると
丁度プラスマイナス0になった
愛している人に自分の気持ちを伝えるのに
ある程度の金額が必要だと思ったが 果たして、、、
いくら金額ではないと言っても 贈った物に差がついた事を考えた
亜矢子が80万円 祥子が60万円 由香里が30万円
果たしてこんなに差別をしていいのか否か、、、
しかし 済んだ事だから気にしない事にした
神山はブランド名を知っているブティックもあり楽しくなり
ウインドーショッピングをした
一通り見て廻ると12時10分前になったので玄関に行くと
橘と矢田部 愛が見送りにきていた
ホテル側で用意したタクシーで御殿場に行く事にした
車に乗ると橘と矢田部がお辞儀をして見送ってくれた
神山は車の中から二人に軽く会釈をした

タクシーが御殿場駅に着くと亜矢子はすでに来ていて待っていた
「ごめん 遅かったかな」 
「いいの 早めに出ないと 出る機会を逃してしまうから、、、」
「ありがとう ところでお昼はどうしますか」
「考えていないの あなたはどうされますか?」
「うん 先日の叔母さんの所は時間が近すぎるしご迷惑かなと、、、」
「そんな事ないわ 叔母さん喜んでいたわ」
「亜矢子はあそこでもいい?」
「ええ 全然構わないわよ」
「それとも お肉どうかなと思っているんだけど、、、」
「焼肉ですか?」
「うん ステーキを一緒にどうかなとも考えていました」
「う~ん うちのホテルより美味しい所は、、、 ありますよ三島に」
「えっ ほんと そうしたら今日は三島のステーキで決定だ」
亜矢子は微笑み頷いた
早速 御殿場線沼津方面のホームに行くと電車が入ってきた
乗っている人はまばらで ボックスシートを2人で独占した
「では これ」
神山は キオスクで買った地ビールを亜矢子に渡し乾杯をした
亜矢子は神山の目を見ながら嬉しそうにビールを呑んだ
この間同じ様に呑んでいた時と全然顔色が違った
12日には由香里が同席していた事もあり
それにまだ男女の関係になっていなかったから
当然と言えば当然であった
今日が15日だからたった2日しか空いていないのに
長い間逢っていないような気もするし 昨日逢った気もした
このままのペースで亜矢子に逢えるとは思っていなかったが
しかし亜矢子と直ぐに結婚をする事を考えてはいなかった

「ねぇ どうしたの さっきから聞いているのに、、、」
亜矢子は神山が考えている時に 昨夜の事を尋ねていた
「ごめん ちょっと気になったから そちらを考えていた ごめん」
「また お仕事の事?」
「うん、、、」
「ねぇ 昨夜はどこに行かれたの? あそこですか?」
「あそこって?」
「2階にあるナイトクラブですよ 知っていますよ 在る事は」
「それはそうだよね 従業員だし、、、」
「そんな事は聞いていません 行かれたのでしょ」
「うん 連れて行かれた ショーが楽しかったよ」
「それで?」
「それだけだよ 内藤夫人や椿夫人と一緒に楽しんだよ」
神山は亜矢子が二人の女性に付いてなにか知っているのか否か
「なんでそんなに聞くの? 何かあるのあそこに」
今度は亜矢子がご婦人の素性を明かすか否か考えた
神山は内藤と椿から半ば強制的に言われた事を
守らなければいけなかったので嘘を言った
「ショーは衣装を付けた男女のコミカルだがエロティックなものよ」
「本当にそれだけ?」
「どうして?」
「実は他のお客様から聞いたのですが、、、」
「うん それで」
「言いずらいけど ご婦人達が遊んでいるとお聞きしたものですから」
「だって別にショーを楽しんでいるだけだったら いいじゃない」
「それが ショーがクライマックスに近づくと 
カーテンが降りて来てボックスシートが見えなくなるように
工夫されているそうです」
「へぇ 凄いね、、、」
「そのお客さんが言っていたのは カーテンが閉まった後に
男性ダンサーがそこに入り暫くすると 女性の喘ぎ声が響き渡ったと
言われていたんです だから心配で、、、」
「何が心配なの?」
「だって あなたがするはず無いと思っていても ご婦人達と、、、」
神山は亜矢子が聞いたことはまず間違いないと思うが 少し大げさに
亜矢子に伝わっていると考えた
あのホールで大きい声を出してもそんなに他人に分るわけではないし
カーテンで仕切られた空間をどのように想像してもかってだし
「まず 考えられる事は そのお客さんの嫉みじゃないか」
「なんで」
「だって カーテンで仕切られた空間で何が起きているのか
そのお客ははっきり見たわけかな それにホール全体が
大きいボリュームで 音楽が流れているのに 
喘ぎ声が響いたと言うのも可笑しいよ」
「ふ~ん そうよね あなた達はカーテンが降りてきたの?」
「ううん 確かにカーテンが降りてきている所も有ったが、、、」
「そうしたら ご婦人達とは何も無かったのね」
「なにそれ?」
「だって 心配だもの あなたが素人の方と遊ぶの」
「じゃあ 商売している人だったらいいの」
「それも嫌だけど 仕方ないでしょ 素人よりましだわ」
「ふ~ん しかし何でそんな噂を信じるの?」
「ええ ごめんなさい 一人や二人じゃないのよ
だから椿支配人にも何回か言ったわ」
「そうしたら」
「うん 分った 今後誤解されないようにする と仰っていたわ」
「椿支配人も大変だな 変な噂が流れると、、、」
「ええ 私もそこが心配です」
「亜矢子はさっき僕が心配って言っていたぞ」
「それは優先順位で あなたが一番よ当たり前でしょ
だけどあそこが無くなったら
こんなおばさん雇ってくれるところ無いでしょ」
「まあ それはそうとして おばさんなんかじゃないよ まだまだ」
「そうね まだ36ですものね」
二人は笑いながら乾き物のおつまみを食べながら地ビールを呑んだ
神山はなるべく亜矢子に集中するように考えていたが
時々 昨日のご婦人達の行動がちらついた
いい方向に転ぶのか 悪い方向に転ぶのか
単なる遊び相手で終るのか否か、、、
亜矢子とおしゃべりを楽しんでいると沼津駅に到着した

三島のステーキハウスまではタクシーを利用した
丁度 亜矢子のマンションと三島駅の中間に在った
玄関をくぐると ホテルと同じ様な造りでびっくりしてしまった
先ほど御殿場駅で亜矢子が予約をしていたので
カウンター席につく事が出来た
カウンターの中で他のコックに指示をしながら





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