4月15日 水曜日 快晴
サイドテーブルの電話が神山を起こした
4月の朝日がさしこみ眩しくて 直ぐに目が覚めた
「桜川です おはようございます お目覚めでしたか?」
「やあ おはよう 今 起きました
亜矢子ちゃんに起こされるのいいね」
「まあ 嬉しいですけどメッセージが入っています」
「おやおや 朝から大変だ」
「はい 本日12時過ぎに御殿場でお待ちしますA.S ですって」
「はぁ 分りました そうか、、、ごめんなさい
伺いますと宜しくお伝えてください」
「はい 分りました」
亜矢子はくすっと笑い さらに
「あと田代様からですが
本日急用が出来たので先に失礼させて頂きますとの事です」
「ええっ そんな そうしたら仕事はどうするの、、、ねぇ」
「その件は 副支配人の橘が対応させて頂きます」
「それでもいいけど 本当にどうなっているの?」
「あと 内藤様からメッセージがございますのでお届けいたします」
「又 メッセージ?」
「はい 先ほどお出かけになる前に 渡されました」
神山は電話を切ると バスローブの格好で亜矢子を待った
部屋が隣りなのですぐにきた
亜矢子を部屋の中に入れると 抱き寄せ軽くキスをした
唇を離した後 いやいやをして腕をほどき
「お仕事が先です こちらが内藤様からのメッセージです」
神山は昨日と同じ茶封筒を受け取りメッセージを読んだ
【山ちゃん おはようございます 昨日はありがとうございます
ところで 田代君ですが どうしても横浜の現場に行かなければ
ならなくなり 先ほど行って貰いました
そこで お願いですが 仕事の決定は山ちゃんにして頂きたく
思っています 勝手なお願いばかりで申し訳ないです
尚 決定した後の手筈は橘さんに伝えてあります
今回の件で 少ないですが気持ちを入れてあります
お願いします 内藤 一哉】
読み終えた神山は封筒をそのままにして
「本当に困った アルタの仕事で僕が責任者だって」
亜矢子に愚痴を言うつもりは無かったが 気分を害した
「しかし あなたが頼られているからでしょ ねぇっ」
「それはそうだとしても、、、」
「いいじゃないの そんなに頼られるあなたと一緒だと嬉しいわ」
亜矢子から神山に抱きついて来た
神山も思い切り亜矢子を抱き寄せキスをした
今度の亜矢子は抵抗しなかったが
「ねぇあなた 時間無いわよ 橘と打ち合わせでしょ」
「うん そうだけど」
そう言ってロレックスを見てみると8時を廻っていた
「朝食は 亜矢子で決まり」
「何言っているんですか 私はお仕事中ですよ だめ」
「だって いいだろう」
バスローブの前を開け元気になっている下半身を見せた
「まあ りっぱなぼうやね 暫くがまんしてね」
そう言うとひざまずいて おちんちんをしゃぶった
「はい それではお昼までこのまま元気でいてね」
「亜矢子 そんな、、、」
「これでも 精一杯のサービスですよ」
「そんな、、、」
「早く仕度をして朝食を済ませてくださいね」
「分った」
「バイキングでビールを呑んで頂いても構いませんが
橘は時間に煩い人ですから 気をつけて下さいね」
「分った ありがとう」
亜矢子は神山に軽くキスをして部屋を出て行った
神山は大急ぎでシャワーを浴び頭も流し朝食バイキングに行き
レストラン入り口で部屋の番号を聞かれたので キーを見せた
「S-739 ですね 神山様ですね」
「はい そうです」
8時を回ったこの時間は レストラン利用客も満席の半分ぐらいで
料理を選ぶにも時間をかけて選べそうだった
案内係に誘導され席につくなり ウエイトレスに地ビールを注文した
地ビールが届けられるとコップに注ぎ一口飲んでバイキングしたが
誰も相手がいないので 簡単なメニューになった
それでも神山は普段食べられない洋食を中心にチョイスして
地ビールのつまみにした
一人なのでゆっくり食べていても時間が進まなかった
ロレックスを見てもまだ充分に時間があったが
亜矢子のプレゼントを買うために早めにレストランを出て
ブティック「モテリコ」に行ったがパイプシャッターが閉まっていた
ウインドーを良く見てみると
先日 由香里に買ったブレスレットと同じものが飾ってあった
あの時 最後のブレスレットと言っていたのが、、、
しかし 由香里と同じものをプレゼントするのは如何なものか
由香里のブレスレットと違うものは無いか探すと
少し上品にデザインされたブレスレットが見つかった
小さなダイヤが所々に埋め込まれたホワイトゴールド仕様で
値札を見たら由香里のより高かった
神山は亜矢子がこのブレスレットを腕にはめた格好をイメージし
仕事でも使えるし プライベートでも充分利用できると思った
由香里のはデザイン性で高かったが こちらは材質で高かった
由香里のときも30万円したが こちらは80万円もした
一瞬 由香里と同じものにしようと考えたが 余裕があったので
こちらを贈る事に決め 部屋に戻った
9時前に部屋を出て3階のエントランスにつくと
観光客が精算手続きやおみやげの買い物客で賑わっていた
そんななか橘が目立つところに立ち神山を待っていた
「神山様 おはようございます」
神山が時間前に着いた事が良かったのか にこやかな顔つきだった
「おはようございます 橘さん お願いしますね」
二人は軽くお辞儀をして挨拶をした
橘の後ろには桜川亜矢子が立っていたが 同じ様にお辞儀をした
神山が頭を上げると 亜矢子は少し笑い顔で見ていたが
ここで反応すると色々と問題が生じると思い 見ていないフリをした
「神山さん 先日お話をしました サインの件ですが」
橘は先日神山がホテル内で撮影した画像にサインボードを
はめ込んだプリントを見せた
PCで画像処理されたプリントは素人では合成写真とは
思えない程の精密さできちんと処理されていた
「素晴らしい出来ですね この画像は、、、」
「ええ 私も自分のホテルにある物と錯覚してしまいました」
二人は本題に入り 取り付け位置から決めていった
大きさなど微調整を行いながら行われていったが
亜矢子が時々高さや大きさについて意見していた
橘や神山も亜矢子が言っている事は正しいと思って
調整に調整を重ね3箇所のサインボードが決まった
後は色彩の問題だけだったが 基本ラインは崩さずに考える事にした
アルタから提案されていたのは
ベースがステンレスのヘアライン仕上げに全ての文字が黒色だった
しかし アウトレットのテーマカラーが決まると果たしてどうか?
神山は今までもこのような事に何度も体験しているので
テーマ部分のカラーは差し替えできるようにしておいて
下部に付随するインフォメーションは独自性を打ち出す事を提案した
神山は簡単なスケッチをして橘に示した
「そうですね この方がアウトレットが分りやすいし
そして全体のイメージはこのホテルにマッチしていますね
そうしましょう このデザインで行きましょう」
神山は更に文字の色も黒ではなく 少し明るい藍紺に決めた
夜は照明によって黒っぽく見えるが 朝は太陽光にさらされて
綺麗な紺色に見えるからだった
橘は色彩についても神山の意見を取り入れた
早速 デザイン提案書に神山の言った事を書き入れようと思ったが
「神山様 私が記入すると間違えるかも分りませんので
どうかここは神山様に ご記入頂けませんでしょうか?」
「ええ いいですよ」
神山は デザイン提案書を受け取ると先ほど決定した事柄を記入し
補足説明もホテルの便箋を利用してきめ細かく指示をした
橘は神山の的確なすばやい決定にほれ込んだ
「神山様 今日は本当にありがとうございます
私の考えではとうてい出来ない事でした」
「そんな事無いですよ 普段の仕事と変りませんから、、、」
「しかし ご判断が的確で早いです 驚きました」
「そんな、、、」
「椿支配人がほれ込んだ意味が分ります」
「そんなに誉めないで下さいよ 恥ずかしいでしょ」
「すみません 早速アルタ様にFAXしてきます
暫くお待ちください 桜川君 何かお飲物で寛いで頂きなさい」
「はい 何にされますか?」
亜矢子は 嬉しそうな顔をして神山に聞いてきた
「そうしたら 美味しい地ビールをお願いします」
「ハイ 少々お待ちくださいませ 今 ご用意させて頂きます」
「では 神山様 私はFAXを済ませてきますのでお待ちください」
「橘さん アルタのどなたに送られますか?」
「ええ 内野 誠二 係長 宛てですが、、、」
「ああ 内野君か、、、分りました」
「なにか、、、」
「いや 内野君は良く知っていますから、、、」
「では 送ってきます お待ちください」
橘が席を立つと入れ替わりに亜矢子が地ビールを運んできた
「ご苦労様でした 本当にありがとうございます 感謝しています」
「いや 普段と同じ事をしているだけさ 特別ではないよ」
亜矢子がコップにビールを注ぎどうぞと言った
神山は亜矢子にウインクをしてビールを呑んだ
亜矢子は嬉しいのか くすっと微笑みながら神山の姿を見ていた
神山も呑みながら亜矢子の目を見て微笑んでいると橘が戻ってきた
「神山様 今FAXを送らせて頂きました ありがとうございます」
「いえいえ しかし橘さんも大変ですね」
「そんな事は無いですよ 桜川君をはじめ
優秀なスタッフに囲まれていますから」
神山はホテルのスタッフを誉め 自分の部屋でゆっくりとしたかった
カウンターを覗いてみると11時を少し廻っていたので
「では橘さん 失礼します 部屋で少しゆっくりしてきます」
「はい分りました お帰りは何時ごろになりますか?」
「そうですね 12時少し前に出ます」
「そうしましたら お時間に車をご用意させて頂きます」
「そんな いいですよ 駅までですから」
神山は申し出を断ったが 利用させてもらう事にした
席を立ちお辞儀をすると 橘が
「神山様 こちらは椿総支配人からのメッセージです」
少し厚さのあるホテルの封筒を渡された
封筒を受け取り部屋に戻るとき亜矢子も付いて来た
エレベーターの前で亜矢子は
「今日は本当にありがとうございます 助かりました」
深々とお辞儀をすると これから後少しで触れる綺麗な乳房が覗いた
扉が開くと先に乗ったが亜矢子はこちらを向いてお辞儀をしていた
扉が閉まるときに
「亜矢子さん」
と声を掛けると 笑顔で答えてくれた
部屋に戻ると 先ほどのメッセージを読んでみた
【神山様 本日はありがとうございます 本当に助かります
今回の仕事では橘君と桜川君が精一杯仕事をしています
ご迷惑をお掛けしたと思いますが それも情熱だとご理解ください
さて 昨日の件ですが 内藤さんからもお話があったと思いますが
私どもも容認していますが ご内密にお願いします
お仕事の気持ちとしては少ないですが同封させて頂きました
これからも よろしくお願いします 総支配人 椿 秀介】
あと封筒からは50万円が出てきた
神山は 今朝内藤から受け取った封筒も見ると50万円が入っていた
昨日の内藤から頂いた分と合わせると120万円になった
神山はこんなに貰ってどうしたらいいものか考えたが
事情が事情だけに倉元にも話せないし困った
ご婦人達の淫行に対する口止め料としては貰いすぎだと思ったが
昨夜同様 気にしない事にした
神山は冷蔵庫から地ビールを取り出し呑みながら
これからの亜矢子との事を考えていた
昼食はどこに行こうとか考えていると携帯電話がなった
「はい 神山ですが」
「杉田です 今 大丈夫ですか?」
「うん どうした?」
「造花の件ですが 全て上手く行きました
ありがとうございます ほんと良かったです」
「それは良かったな」
「実は先ほど池上店長がお見えになり
不揃いを指摘されたのですが 丁度 倉元さんがそばにいて
説明をして頂いたんです 助かりましたよ」
「よかったな 明日説明より、、、しかしなぜ店長が?」
「ええ 何でも銀座会の特別な打ち合わせだとかで来られていました」
「分った 倉さんはいる?」
「ええ 替わりますね 倉元さん 先輩です」
「おう 山ちゃん元気か こちらの造花は店長には説明しておいたぞ」
「ありがとうございます 良かったですね 今日会えて」
「そうだな 明日ではこうは上手く行かないだろう 良かったよ」
「すみませんでした ご迷惑をお掛けしました」
「そんな事は無いぞ 終わり良ければ全て良し
それと 遅れたが日本酒届いたそうだ ありがとう」
「どういたしまして 美味しいですよ」
「おう 今夜頂く事にするよ」
「では 明日は一番で上原によってそちらに行きます」
「おう そうか 銀座は翔が頑張っているから大丈夫だ」
神山は電話を切ると 店長にお小遣いを貰っている事に気がつき
由香里に電話をした
「はい 斉藤です」
「神山です 由香里さんですか?」
「そうよ どうしたの 改まって」
「いや 実はね 昨日店長からお小遣いを頂いたでしょ」
「ええ 10万円の事ね」
「そう だからここの日本酒を送ってあげようと思って」
「そうね いい考えだわ まってて 今調べるから」
由香里は神山が何を言いたいか感じ 住所録を取り出した
「あったわ メモ出来ますか?」
「凄いね 僕の言いたい事分って」
「普通でしょ 分らないほうが可笑しいでしょ いいですか」
由香里は愛している人の言っている事がなにを言いたいのか
分るのが普通でしょ と言いたかった
由香里は池上店長の住所を伝えると
「それでお仕事は順調ですか?」
「うん 副支配人の橘さんと桜川さんとしている」
「えっ アルタの方は?」
「誰もいない 僕が総責任者だよ」
「なにそれ? 変な仕事」
「まあ 明日ゆっくり話すから 皆には内緒だぞ わかった」
「ええ しかしそんな仕事まで押し付けるなんて 考えられないわ」
「まあまあ 僕なりにやりがいがあるから」
「明日はどうするの?」
「うん 上原によって 銀座に行く」
「はい では気をつけて下さいね」
神山は携帯電話を切ると ホテルの電話内線7200番を回した
「はい 桜川です 神山様 どかされましたか?」
「ええ 実は日本酒を送って貰いたいと思いまして、、、」
「はい では早速伝票をお持ちいたします お待ちください」
内線電話を切ってから直ぐにドアのチャイムが鳴った
ドアを開けると亜矢子が笑顔で立っていた
部屋の中に招き入れ 伝票に届け先を記入し現金を渡した
「いつもありがとうございます」
亜矢子がお辞儀をしようとした時に
「ねえ ここの地ビールも配達できる?」
「ええ 出来ますが 缶ビールだけになりますが、、、」
「うん 缶ビールでいいよ」
神山はお届け伝票に自分の住所を記入して現金を渡した
「あなた こんなに買って頂いて嬉しいのですが、、、」
「周りの人とか さしあげる分が殆どだよ」
亜矢子は24本入りのケースを5ケースも頼んだので驚いた
神山にしてみれば自宅に置いておけば都合が良かった
「ありがとうございます 宣伝して頂いて 嬉しいわ」
亜矢子がにっこりとしたので軽くキスをした
「そうしたら僕はそろそろ仕度をして先に出ます」
「そうですか まだ時間がありますよ」
「うん だけど1人では時間を持て余すしね、、、」
「はい ではお帰りの時には受け付けまで寄ってくださいね」
「うん分ったよ ありがとう 今日は普通に帰れるの?」
「ええ 少し早く出られそうです あなたのおかげよ」
亜矢子は再びキスをして部屋を出て行った
神山は帰り支度をして部屋を出て カウンターで帰る手続きをした
早速 ブティック「モテリコ」に行き
今朝見つけたブレスレットを店員に
「すみません このブレスレットをお願いします」
「はい プレゼント包装をされますか?」
「ええ お願いします」
神山は会計の時にホテルのプレミアムカードを示した
1割引の現金を用意していたが
「神山様 今回はプレミアカードの方には更に
20%OFFの価格でご提供させて頂いています」
「はあ ありがとうございます それでおいくらになりますか?」
「はい 消費税込みで58万6千ですが 58万円です」
神山は随分と安くなったのでお得な気分で現金を払った
プレゼント包装されたブレスレットを受け取り店内を見渡していたが
祥子に似合うバングルを見つけた
よく見るとホワイトゴールドに誕生石が埋め込まれていた
祥子の誕生月は2月なのでアメジストだった
シルバーの色に良くあった紫色が輝いていたが
値札を見てみると60万円と書いてあった
神山は店員にこちらの商品も割引になるか尋ねると
「はい 限定商品ですが割引をさせて頂きます」
販売員の女性は押し付けがましいスタンスではなく
尋ねられた事に関しては顧客平等に親切な対応をしていた
神山はこちらのバングルも購入する事にした
「こちらのバングルも頂けませんか プレゼント包装でお願いします」
「はい かしこまりました 少々お待ちくださりませ」
カウンターで販売員がプレゼント包装をしているときに
「神山様 こちらはカードの割引の後30%OFFとさせて頂きます」
「そうするといくらになりますか?」
「はい 消費税込みで37万8千ですが 37万円でお願いします」
「そんなに安くして頂いて 大丈夫ですか?」
「ええ このように何回も来て下さるお客様には特別です、、、」
神山は銀座の店舗には行ったことが無いが こんなに安くなるならば
これからここを利用しようと思った
神山が商品を受け取った後に女性客が会計をしていたが
別に割引の事は話していなかった
やはりプレミアムカードの威力かと思って店を出たが
12時にはまだ時間があったので他のブティックも覗いた
昨夜からの謝礼金はお酒やブティックの収支を考えると
丁度プラスマイナス0になった
愛している人に自分の気持ちを伝えるのに
ある程度の金額が必要だと思ったが 果たして、、、
いくら金額ではないと言っても 贈った物に差がついた事を考えた
亜矢子が80万円 祥子が60万円 由香里が30万円
果たしてこんなに差別をしていいのか否か、、、
しかし 済んだ事だから気にしない事にした
神山はブランド名を知っているブティックもあり楽しくなり
ウインドーショッピングをした
一通り見て廻ると12時10分前になったので玄関に行くと
橘と矢田部 愛が見送りにきていた
ホテル側で用意したタクシーで御殿場に行く事にした
車に乗ると橘と矢田部がお辞儀をして見送ってくれた
神山は車の中から二人に軽く会釈をした
タクシーが御殿場駅に着くと亜矢子はすでに来ていて待っていた
「ごめん 遅かったかな」
「いいの 早めに出ないと 出る機会を逃してしまうから、、、」
「ありがとう ところでお昼はどうしますか」
「考えていないの あなたはどうされますか?」
「うん 先日の叔母さんの所は時間が近すぎるしご迷惑かなと、、、」
「そんな事ないわ 叔母さん喜んでいたわ」
「亜矢子はあそこでもいい?」
「ええ 全然構わないわよ」
「それとも お肉どうかなと思っているんだけど、、、」
「焼肉ですか?」
「うん ステーキを一緒にどうかなとも考えていました」
「う~ん うちのホテルより美味しい所は、、、 ありますよ三島に」
「えっ ほんと そうしたら今日は三島のステーキで決定だ」
亜矢子は微笑み頷いた
早速 御殿場線沼津方面のホームに行くと電車が入ってきた
乗っている人はまばらで ボックスシートを2人で独占した
「では これ」
神山は キオスクで買った地ビールを亜矢子に渡し乾杯をした
亜矢子は神山の目を見ながら嬉しそうにビールを呑んだ
この間同じ様に呑んでいた時と全然顔色が違った
12日には由香里が同席していた事もあり
それにまだ男女の関係になっていなかったから
当然と言えば当然であった
今日が15日だからたった2日しか空いていないのに
長い間逢っていないような気もするし 昨日逢った気もした
このままのペースで亜矢子に逢えるとは思っていなかったが
しかし亜矢子と直ぐに結婚をする事を考えてはいなかった
「ねぇ どうしたの さっきから聞いているのに、、、」
亜矢子は神山が考えている時に 昨夜の事を尋ねていた
「ごめん ちょっと気になったから そちらを考えていた ごめん」
「また お仕事の事?」
「うん、、、」
「ねぇ 昨夜はどこに行かれたの? あそこですか?」
「あそこって?」
「2階にあるナイトクラブですよ 知っていますよ 在る事は」
「それはそうだよね 従業員だし、、、」
「そんな事は聞いていません 行かれたのでしょ」
「うん 連れて行かれた ショーが楽しかったよ」
「それで?」
「それだけだよ 内藤夫人や椿夫人と一緒に楽しんだよ」
神山は亜矢子が二人の女性に付いてなにか知っているのか否か
「なんでそんなに聞くの? 何かあるのあそこに」
今度は亜矢子がご婦人の素性を明かすか否か考えた
神山は内藤と椿から半ば強制的に言われた事を
守らなければいけなかったので嘘を言った
「ショーは衣装を付けた男女のコミカルだがエロティックなものよ」
「本当にそれだけ?」
「どうして?」
「実は他のお客様から聞いたのですが、、、」
「うん それで」
「言いずらいけど ご婦人達が遊んでいるとお聞きしたものですから」
「だって別にショーを楽しんでいるだけだったら いいじゃない」
「それが ショーがクライマックスに近づくと
カーテンが降りて来てボックスシートが見えなくなるように
工夫されているそうです」
「へぇ 凄いね、、、」
「そのお客さんが言っていたのは カーテンが閉まった後に
男性ダンサーがそこに入り暫くすると 女性の喘ぎ声が響き渡ったと
言われていたんです だから心配で、、、」
「何が心配なの?」
「だって あなたがするはず無いと思っていても ご婦人達と、、、」
神山は亜矢子が聞いたことはまず間違いないと思うが 少し大げさに
亜矢子に伝わっていると考えた
あのホールで大きい声を出してもそんなに他人に分るわけではないし
カーテンで仕切られた空間をどのように想像してもかってだし
「まず 考えられる事は そのお客さんの嫉みじゃないか」
「なんで」
「だって カーテンで仕切られた空間で何が起きているのか
そのお客ははっきり見たわけかな それにホール全体が
大きいボリュームで 音楽が流れているのに
喘ぎ声が響いたと言うのも可笑しいよ」
「ふ~ん そうよね あなた達はカーテンが降りてきたの?」
「ううん 確かにカーテンが降りてきている所も有ったが、、、」
「そうしたら ご婦人達とは何も無かったのね」
「なにそれ?」
「だって 心配だもの あなたが素人の方と遊ぶの」
「じゃあ 商売している人だったらいいの」
「それも嫌だけど 仕方ないでしょ 素人よりましだわ」
「ふ~ん しかし何でそんな噂を信じるの?」
「ええ ごめんなさい 一人や二人じゃないのよ
だから椿支配人にも何回か言ったわ」
「そうしたら」
「うん 分った 今後誤解されないようにする と仰っていたわ」
「椿支配人も大変だな 変な噂が流れると、、、」
「ええ 私もそこが心配です」
「亜矢子はさっき僕が心配って言っていたぞ」
「それは優先順位で あなたが一番よ当たり前でしょ
だけどあそこが無くなったら
こんなおばさん雇ってくれるところ無いでしょ」
「まあ それはそうとして おばさんなんかじゃないよ まだまだ」
「そうね まだ36ですものね」
二人は笑いながら乾き物のおつまみを食べながら地ビールを呑んだ
神山はなるべく亜矢子に集中するように考えていたが
時々 昨日のご婦人達の行動がちらついた
いい方向に転ぶのか 悪い方向に転ぶのか
単なる遊び相手で終るのか否か、、、
亜矢子とおしゃべりを楽しんでいると沼津駅に到着した
三島のステーキハウスまではタクシーを利用した
丁度 亜矢子のマンションと三島駅の中間に在った
玄関をくぐると ホテルと同じ様な造りでびっくりしてしまった
先ほど御殿場駅で亜矢子が予約をしていたので
カウンター席につく事が出来た
カウンターの中で他のコックに指示をしながら
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