2012年10月30日火曜日

青葉 5 - 19 Vol. 2



「う~ん 今のところ気になるところは無いけど
ただ ニーナ・ニーナの久保さんにも話したけど
26日のオープンをする事が大事で 細かい所はあとあと直せると
伝えてはあるんですけどね そこですね
結局 細かい手直し コレは希望を含めてだけどね それを一つずつ
こなす時間は絶対にないんだよだから24日に行ったら
まず自分なりにどうか判断し25日26日と通って聞きます」
「そう山ちゃんの言う通り 例え設計図通り出来上がっても
手直しが出てきた場合 オープンに間に合わない事が発生しますし
まあ私も25日は現場もありますから お聞きしますよ」
「そうだね だけど25日は殆ど無いでしょ あれだけきちんと出来てるし
什器も良く出来上がっているし 問題ないと思いますよ」
「ええ細かい所の微調整だけです なにしろ24日夜引渡しですから」
「了解です では後2日頑張って」
「はい山ちゃんも ゆっくり静養してください」
神山は携帯電話を切ると 静かに部屋に入りベッドに横になった
隣りの亜矢子はすうすうと寝息をたてていた
母親のガンや治療費の事で 精神的に疲れたのだろう
特にホテル業は ストレスが溜まりやすいしそれに輪を掛け
リーダーだ うっぷんを晴らしたくとも 持って行くところが無い
又 ストレスが溜まる悪循環を 繰り返していたのではと思った
自分だったら どうしているだろう
ストレスに潰されてしまうかもしれない
亜矢子は 唯一神山を頼れると思っている
そんな事を考えると 亜矢子と一緒にいる時は他の事を考えずに
限られた時間を 楽しく過ごそうと思った
ある程度自分なりに答えが出たので目を閉じると 睡魔が襲ってきた


4月19日 日曜日 曇り
神山は携帯電話のアラームで起きた
昨日は祥子とカラオケに行き その後自宅で工事の話をしながら呑んだ
60インチのモニターを使って説明したが モニターの大きさに驚いていた
今朝はあいにくの曇り空で 昨日の朝のようにテラスに出て
ゆっくりする気分にはなれなかった
FAXをみてみると何も入っていなかったので 会社の仕事に集中した
7時30分頃 祥子から朝ご飯の連絡があったので 部屋に行った
「おはよう」
祥子は口を突き出しキスを求めてきたので合わせた
「あはよう」
「昨夜は 遅くまで ありがとう 助かるわ」
「何時もそばにいるのに 聞いてよ」
「でもね 何を聞いていいか 分らない時があるの 
だから糸口が見つかった時に きちんと聞かないと理解できないのよ」
「そうだよね 畑違いだし 焦れば焦るほど 闇の中だよね」
「そうそう なにか掴めないの そうすると言われても なに話しているの
もう少し分りやすく説明してよって なる訳 です
だから 昨夜のように糸口が見つかった時は 自分が理解しているから
納得も出来る訳 そうすると誰かに伝える時も 失敗はないわ」
「そうだね 理解して納得をしないと伝える事って出来ないね」
「だから さっきのキスはお礼のキッスよ 分った祥子ちゃん特別よ」
「はい ご馳走様でした」
「では 朝ご飯にしましょ」
「うんそうしよう お腹がすいた」
そう言い冷蔵庫からビールを取り出しコップも用意した
今朝は昨日と同じベーコンエッグの洋食だった
サラダが日替わりで出てきて美味しそうだった
祥子のコップにビールを注ぎ 乾杯をした
昨夜の出来事などを話しながら 食事を進め食べ終わると
「ご馳走様でした」
「どういたしまして 簡単なのでごめんなさい」
「いや 仕方ないよ こうやって食べられるだけ幸せさ者さ」
「今朝は現場に行かれるの?」
「うん 祥子は?」
「私は 直接銀座に行くわ 手配した商品の確認とか
24日に届かないと アウトだもん ねぇ 夕方って6時ごろだったら
バックヤードに入れられる?」
「う~ん 丁度什器が入ってくる時間だな 予定では
逆に3時ごろとかのほうがいいと思う そうすれば荷物をよけながら
置く事は大丈夫だけど アルタがね あちらも撤収でどたばたしているし
そうだな アルタの高橋さんに話すわ 午前中に電話するけど大丈夫?」
「ええ 大丈夫よ」

神山と祥子はマンションを少し早めに出ると
普段見かけないサラーリマンが駅に急いでいた
祥子を駅まで見送ると 現場に入り高橋と挨拶をした
「やあ おはようございます」
「山ちゃん おはようございます 早いですね」
「うん まあ ところでさ 悪いけど照明を点けてもらえる
この曇り空で どのように見えるか ちょっとね」
「ええ ちょと待ってください」
高橋はバックヤードの脇にあるスイッチを入れた
「おお 良いじゃないですか この曇り空だと期待以上ですね
しかし柔らかい光で 雰囲気造りにも最高だね うん いいよ」
「ええ 先ほど確認したんですけど 山ちゃんが喜ぶと思っていました」
「うん いい」
「よかったですね 効果が出ていますよ」
「ところで 孝ちゃん 24日のバックヤードだけど 勿論忙しいのは
分っているけど ニーナ・ニーナ 何時に入れられるかな?」
「そうですね、、、第二貨物さんは早くて3時と言っているんですよ」
「そうか 第二貨物次第か 何時に空きますか?」
「ええ 一応お昼前には全て綺麗にしようと思っています
10時過ぎに床の掃除やワックスが入ります 乾くのは13時だったら
大丈夫だし 10時までには荷物を出しますよ 
別に大きな物はないですけど 残材が13時しか来ないんです
だから それまで動けないと思っていたんですが
残材は 少し早く来て 外に纏めましょう そうすれば使えますね」
「うん そうしたらニーナ・ニーナからオーナーさんに断ってもらおう」
「そうですね まあ通行の邪魔にはなりませんが その方が安心です」
「了解です では後でニーナ・ニーナに連絡します ありがとう
やっぱり工程表どおりにはいかないね 外が絡むと」
「ええ 自分の所だと 調整つくんですが 難しいですね 外部が絡むと」
「今のところは そのくらいかな 孝ちゃん何かある?」
「壁面のスリットの棚受け金物が品番違いが来て 合わなくて
困っているんですが 什器の方が別のスリットを使っていないか
今 小田原工場の返事待ちなんですよ 什器はもう変更きかないし
こちらの壁面スリットを替えなければいけないし 金物もその後
取り寄せになります 大きいのはその位ですね」
「わぁ大変だ 図面はどうなっているの」
「ええ ここに使っているスリットが正解です」
「小田原が間違わなければ良いね」
「ええ 実は横浜と一緒なんです 同じ部屋で同じ様な什器を作っていて
今 寸法を測り割り出しをしています」
「そうか 横浜も同じような什器か」
「そうですね 固定棚より移動棚のほうが 使い勝手良いですからね」
「そうだね 金物も丈夫なつくりになったしね」
そんな話をしていると高橋に電話が入った
スリットの品番を確認したところここで使っている品番と同じと言ってきた
棚受け金物も聞いてみた 小田原は図面どおりだと言ってきた
「山ちゃん 大丈夫だよ 小田原は 図面どおりだって」
「良かったね 助かったよ だって什器が合っても もしかして
間に合わないかもしれないしね」
「うん ぎりぎりだと踏んでいた 良かった~」
高橋は不安が払拭されたのか 安堵した

神山は時計を見ると9時になっていたので祥子に電話した
「神山ですが」
「は~い わたし」
「うん バックヤードの件ですが 13時から使えます
だけど その前に空いているけど 床はワックスをかけるから
やはり 乾いてからの13時からがいいと思う」
「ふぁ~ ありがとうございます 手配しますね」
「うん それと残材を13時まで出しておくので オーナーさんに
一言断ってもらうとありがたい」
「ええ 24日は搬入搬出がありますって事で 一応話はしてあるけど
今一度 残材の事を伝えておきますね ありがとうございます」
神山は高橋に祥子との事を伝えた
「24日夕方までいないけど 何かあったら携帯電話までね」
「大丈夫ですよ 大きいミスはその位で 今は順調です」
神山は段々と出来てくる現場を隅々まで見て廻った
昨日も同じ様に廻ったが 時間が有れば廻る事にしている
バックヤードに来た時 少し考えた
「孝ちゃん 2つあるけどいい? 空いてる」
「ええ」
高橋は神山に呼ばれバックヤードに行った
「まず 照明だけど 天井にないし 暗くならないかな
排煙ルーバーからの採光だけでは暗いな 特に今日みたいな時」
「そうですね 天井に付けましょうか」
「大丈夫 間に合うかな?」
「ええ まだ電気は入りますから」
「わかった 久保さんにレイアウトを聞いておきます 効果的な場所に
つけてあげましょう それと この床だけど どう」
神山は売場からバックヤードに入るところの床を指した
売場から見るとバックヤード入り口の間口幅で奥までフローリングが
敷かれているが 斜めから見るとフローリングの脇が既存床になっている
「そうですね、、、同色に近いパンチカーペットでも敷きこみましょうか」
「うん レベルには気をつけてもらって、、、」
「今 在庫とか聴いて見ますね」
高橋は何箇所か電話をしたが OKサインをだした
「大丈夫ですよ 山ちゃん 在庫もあるし今日施工する
だけど ほら 複雑な切り込みは勘弁してくれる?」
「それはそうさ でも消防法の件があるから 材料費は精算に入れてよ
そんな高くないでしょ」
「ええ 店舗で使った1800ロールの残りなんですよ」
「だったら ありがたいが、、、」
「ええ 寸法を伝えそれを持ってくるので 大丈夫ですよ」
「何時頃来るの」
「ええ 帰りに寄ってくれると言う事ですので 3時頃だと思います」
「そうすると 徹夜明けなんだ」
「ええ」
「よかった では照明の件 聞いてみますね」
「ええ お願いします」
神山は祥子にバックヤードの照明をどうするか聞くと
祥子も気になっていたが 後から付けようと考えていたと言った
電気屋が入るので大丈夫だと伝えると
バックヤードのレイアウトが出来ているのでFAXするといった
「孝ちゃん レイアウトが出来ているって よかったよ」
「そうですね さすが久保さん それで」
「うん僕のところにFAXするそうだ だから戻って取って来ます」
「了解です」

神山は自分に部屋に入ると祥子からFAXが送られていた
よく計画されたものだった 
スチールのストック棚 H2100とか作業テーブル H750とか
高さまできちんと記入されていた
最終確認をする為に祥子に電話した
「ありがとう 届いています そこで確認ですが
このストック棚は不動?それと服を掛けておくハンガーバーも不動?」
「ええ ストック棚は不動ね 作業テーブルも不動
だから そう考えていくと ハンガーバーもそんなに動かせないわ」
「そうだよね 動かすとすれば 大胆に替えていかなければいけないしね」
「ええ そうしたら ストック棚から壁の間につければ効果的だし
あと 作業テーブルの上につければ良いね そうそう
作業テーブルの所は天井じゃなく 壁に付けよう」
「ええ そうしてもらうと助かるわ」
「では 高橋さんにつけてもらうよ」
「はい お願いします でも、、、工事代って高くなるの?」
「うん 器具代だけだから 大丈夫だよ」
「は~い 分りました 助かったわ」

神山は電話を切ると 現場にもどり高橋に祥子の図面をみせた
「すごいね Hが入っているよ 山ちゃんが教えたの」
「いいや 教えていないよ 僕も驚いた」
神山と高橋はFAXを見ながら取り付け位置を確認した
作業場は動かさないので排煙ルーバーの下にカバー付きをつける
照明は 基本的に排煙ルーバーの下で設定 上下可能で考える
「そうしたら 天井照明は可動式の金物にする?」
「どうしようか 多分バックヤードの光は店舗側にもれないと思うけど
そうだ孝ちゃん 懐中電灯持っている」
「ええ 持っていますよ」
高橋はバックヤードに脚立つを持っていき昇り 懐中電灯を点けた
ルーバーの所とか高さを変えたりして 神山に確認を取っていた
「ありがとう 大丈夫だよ 孝ちゃん」
高橋は出てきて
「大丈夫でしたか」
「うん 今度は僕が蛍光灯をやってみるよ」
そう言い脚立つに昇り 懐中電灯を色々動かし高橋の感想を聞いた
「壁に近づくと気になりますが 離れれば問題ないですね」
「うん 僕もそう思った そうしたら天井から吊るしましょう」
「電気屋は明日きます その時に吊るして貰います」
「うん 出来ればWを使ってもらいたいな そうすれば遠めで見た時
ルーバーが綺麗に光を出して目立つんじゃない どうだろう?」
「そうですね それにバックヤードが明るいし そうしましょう」
「蛍光灯は店内と同じ品番を使えば違和感がないよね」
「了解 器具と管はこれから指示しておきます」
「ちなみに 照明と床で10万も見ておけば大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ 半分で」
高橋は神山にウインクして OKサインをだした
「そうしたら 筒井さんに連絡するから待っていてください」
「了解」
神山は筒井の自宅に電話をした
「はい 筒井でございますが」
「何時もお世話になっています 鈴やの神山です」
「まあ ご昇進おめでとう それと受賞もおめでとうございます
凄いわね 聞いたわよ 主人も鼻が高いって」
「そんな事ないですよ お元気ですか」
「ええ ちょっと待って 主人を呼ぶから あなた神山さんよ」
「筒井です ご苦労さん どうされました」
「お寛ぎの所 すみません」
神山は今朝現場を見て 今判断すれば間に合う追加工事を伝え 
金額は5万円程度ですむ事も話した
「どうもありがとう スタッフも喜ぶよ 5万円は安いよ
照明で明るくなり それで仕事に集中できるからありがたいよ 頼むよ」
「はい ではアルタに発注します すみませんでしたお寛ぎの所」
「ははいいですよ そうゆう前向きな話だったら 楽しみにしています」

神山は電話を切ると高橋に
「筒井さん OKだ 頼みますよ」
「はい これから指示を出します」
神山は祥子に電話をして筒井に話した事 承諾を貰った事を話した
「ふぁ~嬉しいわ ますます頑張らないと筒井に怒られるわね」
「うん 怒られるな あんなに喜んでいたから」
「ええ ありがとうございます」
「では又 銀座に行ったら電話します」
神山は祥子との電話を切ると高橋に
「彼女 凄く喜んでいたよ 宜しくって」
「良かったですね 喜んでもらって」
「この工事が30万円とか掛かると いらないと言われるだろうけどね」
「そうですね 難しい所ですね」
「そうしたら 孝ちゃん 一旦家に戻るよ」
「ここの?」
「ええ 上原の作業場ですね 何かあったら 電話ください」
「了解です」

神山は部屋に戻った 中元装飾はほぼ出来たし 2日の店外催事が
どう進んでいるか確認する為 会社に電話した
「はい 催事課です」
「神山です おはようございます」
「あっ先輩 おはようございます」
「翔 昨日の造花の件だけど伝えてくれた?」
「まだ出勤していないんですよ 倉さん」
「分った あと2日の赤坂センターだけど 進んでいる?」
「ええ 先輩が昨年作った看板類を使いますから予算余ります」
「そうか わかった どの位うく?」
「ええ 約10万です」
「うん わかった この話誰かに言った?」
「いえ 先輩が初めてです」
「おりこうさん 黙っていてくれ 今日3時頃に行った時話しをするよ」
「は~い了解です」
「本当にもれはないね」
「ええ 3時までもう一度調べます」
「うん 昨年の資料を見て つき合わせてみてね 頼んだよ」
「あっ 先輩 倉さん着ましたが どうしますか?」
「うん替わってくれ」
「おう おはようさん どうした」
「おはようございます 実は今 翔と話したんですが、、、、、、」
神山はホテル催事の予算が余る事 中元で使う造花が 七変化で
準備できず上野で使っていた造花屋 浅草大正堂のサンプルが来る事
イメージどおりであれば そこから購入する事 などを説明した
「おう いいじゃない サンプルは今日中に届くんだろ」
「ええ もう一度確認をしますが」
「あとは枠だな 店外催事で入らないだろう」
「ええ 3時すぎに行きます その時 翔の予算もチェックします」
「おう もれて蓋を開けたらマイナスじゃ 笑いもんだ」
「ええ それと中元ですが 翔と私の分は机に置かせて頂きました」
「おう いっぱいあるな で準備はどうだ」
「ええ POPやINFなど色関係は大丈夫です 垂れ幕の発色も
翔が工場で確認をしてきてます」
「おう 懸垂幕はいい色を出していると言っていた わかった 3時に」
「はい お願いします」
「何言っているんだ こちらこそお願いしますだよ 聞いたぞ
みやま運送の件 やったな アルタにひとつ貸しが出来た」
「まあ 困っている時は 何とかって言うでしょ」
「まあな それと上原はどうだ」
「ええ 先ほどまだ間に合う追加工事がありまして 筒井さんに
承諾頂きました」
「ほお なんだ?」
「ええ バックヤードの照明と床です だから器具代と材料費だけ
考えてくださいと伝えたら 大変喜んでいました」
「おう 良かったじゃないか まあ では来てから聞くな」
「はい 造花屋は確認します」
神山は電話を切ると 造花屋 大正堂へ電話をした
「私 鈴やの神山と申しますが 須藤専務さんはいらっしゃいますか」
暫くして
「神山ですが 昨日はありがとうございます サンプルは何時ごろ着ますか」
「宅配に頼んで朝一だよ もう付いていると思うよ 催事課に送ったから」
「ありがとうございます 金額は入っていますか」
「見積もりを付けてあるよ ただ早くしないとなくなっちゃうんだよ」
「いつまでに返事すればいいの」
「う~ん ここ1週間くらいかな」
「分りました」
神山は電話を切ると催事課の直通に電話した
「はい 催事課です」
「神山です」 
「なあに みんな居るわよ 日曜日なのに」
「うん 造花屋さんから サンプル届いていない?」
「うん まだよ」
「そしたら 倉さんに替わって」
「おう どうした」
「ええ サンプルの件で電話しました所 朝一で届くように手配をして
催事課宛に送ってくれたそうです それと見積もりも付いてます
多分 午前中には部屋に届くと思いますよ」
「おお なんか来たぞ 宅配だよな」
「ええ そうです」
「会社は 大正堂か?」
「ええ そうです」
「きたぞ 見ておく」
「ありがとうございます では」

神山は電話連絡を終えると一安心しビールを呑んだ
時計を見るとまだ11時だったので 中元の資料作りを集中的にした
出来上がったので倉元宛てにFAXした 今回は予算が有るので
予算関係だけは パソコンを使って課長にメールを出した
暫くすると電話が鳴ったので出てみると奥村課長だった
「やあ しかしよく計算されて分りやすいよ」
「いえいえ 計算はパソコンですから」  
「そうだな こんど皆にもこのフォーマットで記入してもらおうかな」
「ねぇ 分りやすいでしょ プラマイの事由も」
「うん このフォーマットだけ送れるか?」
「ええ しかし 市川が居れば簡単に作りますよ 彼も得意だし」
「そうか 市川君は出勤しているから作ってもらうよ」
「では 3時過ぎに行きます」
「うん それと造花綺麗で ぴったしだよ 今回の中元に」
「良かったです 楽しみです」
「うん 倉さんも気にっていたよ あとはお金だな」
「ええ それも行ってから」
「了解」

神山はゆっくりとビールを呑んだ
滅多にPCを見ないが Web新聞を開いた
日経Webに[御殿場アウトレット来年平成11年4月4日(日)オープンか]と
出ていた 記事を読むと
【アウトレットのオープンは当初10月になっていたが 道路の
整備事業の前倒しを行う事が決定した コレは周辺の土地買収
が予想外に早く進んだ事がいい結果となった 懸念されていた
駐車場の土地買収も早く終わり工事着工が早まる可能性が
出てきた  4月19日 11時】
神山はすぐに取り掛からないと間に合わないと感じた
この記事をプリントアウトして 会社やアルタに見せてやろうと思った
神山はインターネットはこんなに早く情報が掴めるのかと改めて感心し
暫く記事を読んでいるとアルタの高橋から電話が入った
「山ちゃん お昼ですよ~」
「了解です 今行きます」
神山はそのまま銀座に行くつもりで出かけた

「お待たせしました」
「さっきの照明と床だけどOKです 床やは3時でOK
さあ今日は、、、駅前にする?」
「うん 美味しいし」
「でも良く飽きないよね」
「孝ちゃんだって飽きないでしょ」
「うん まあ」
高橋はシャッターを閉めて待っていたので直ぐに寿司屋に向かった
「だけどあのシャッターいいよね 閉まっていても中見えるし」
「そうですね ただ高いのがねー」
「うん そうだね そこがネックだよね もう少し安くなれば
ブティックはみな利用するよね」
「そうそう 利用すると思うよ 綺麗で上品だもの」
神山と高橋がそんな話をしていると寿司屋に着いた
いつものように奥を案内され ビールが出された
女将がビールを置くと
「昨日は済みませんでした なんかお騒がせして」
ぺこりとお辞儀をしてカウンターに戻った
「どうしたの 孝ちゃん」
「新宿の件 あれ僕が動けないから 最終的に田中君にお願いしたんだ
それで 親戚のオーナーさんに会って 話を聞いたら 
予算が全然 合わなくて じ えんど でした」
「そうなんだ」
「どう安く見ても 7百万はいくんです それが半分以下だとねぇ」
「そうすると 他でもっと安く出来た話を聞いているんだ」
「そうだね 2,3百万で出来る話を 困るねぇ 安かろう悪かろう」
「そうだよねぇ それで女将が謝っていたのか」
「うん 多分」
ビールが美味くお代わりを頼むと
つまみの鮮魚の盛り合わせとビールを持って来て
「今日はご馳走させて頂きますから どんどん頼んでください」
女将は笑みを浮かべ言って お辞儀した
「しかし どんどん食べてと言ってもねぇ」
「そうそう食べられる訳じゃないし」
二人は顔を見合わせ笑った

神山は忘れかけていた 御殿場アウトレットの記事を高橋に見せた
高橋は 驚いて
「山ちゃん 凄いね よく発見したじゃん」
「うん たまたまですよ」
高橋はごめんなさいと言い 内藤に電話をし神山が発見した記事を伝えた
話が進むと高橋は真剣な顔つきに変り話しに頷いていた 終ると
「社長 喜んでいたよ 明日 例のアレックスグループの統括責任者と
会う事になっているんだって 情報時代だから先に集めたほうが勝ちです」
「良かったね 役に立って」
「うん 社長 これから会社に出るって そしてデザイナーも呼ぶってさ」
「凄いじゃない でもそんなに違うの アルタで決定したでしょ」
「ところがこうゆう情報を生かし戦略を進めるわけですよ
こちらが主導権とるか否かで全然違うからね 優位になると
色々な事柄がアルタ主導で話が進められるわけなんです」
「よく分らないけど 社長が喜べばいいよね」
神山と高橋が話していると高橋の携帯が鳴った
内藤社長からで 裏が取れ オープンは記事どおりだと言った
神山に替わって欲しいとの事で神山が出ると
「やあ 山ちゃん やったね ありがとう 
実はオープンの時期が早まる事は皆知っていたんだが
はっきりした時期が特定できなかったんだよ 今 裏を取れたから
明日の話し合いはこちらが有利 優位に話を進める事が出来ます
本当にありがとう」
電話を切ると高橋が
「社長 余程嬉しいんだよ あんな声 滅多に聞かないよ」 
「良かったじゃない これで本格的に稼動だね」
「あとは 人材の確保だけだ それも大変だよ」
神山と高橋は御殿場アウトレットの話が弾み時間がすぎた
一通り食べると2時30分になっていた
今日の高橋は3時まで戻ればいいのでゆっくりしていた
神山は3時に銀座に行くので寿司屋を出た

催事課の部屋に入ると 由香里が神山に近づき





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2012年10月25日木曜日

青葉 5 - 19 Vol. 1



「ねえそうしたら時間だし そろそろ食事に行こうよ」
「そうね行きましょ」
「今度はカード持ってきてね」
「は~い ねぇこのままで大丈夫?」
「なにが?」
「だってお化粧もしていないし VIPのお連れ様に相応しい?」
「全然平気だよ 僕はすっぴんの方が好きだなどちらかと言えば」
「またお上手ね よし貴方がOKならばこのまま出ましょ」
亜矢子は腕を組んで エレベーターにホールにいった
エレベーターが来て扉が開くと 何組か出たので乗り込み
3階のボタンを押したが 上の8階に行ってしまった
神山と亜矢子は顔を見合わせ笑ってしまった
行き先階のボタンを押しなおすと 扉が閉まりゆっくりと下降した
途中止まらないで3階に着いた
探す事なくレストランがすぐわかり入ると
カウンターで受付嬢がニコニコして出迎えた
「お名前様とお部屋番号をお願いします」
神山はカードキーを見せて神山と名乗った
「神山様ですね はい ただいまお席までご案内いたします」
受付嬢はカウンターから出て奥の窓際の席に案内し
亜矢子の椅子を引き着席を促し神山にも同じ事をした
「お飲みもは何になされますか?」
「うんビールを下さい」
「はいかしこまりました 少々お待ちくださいませ」
そう言うと 厨房に伝え戻ってくると
「只今準備をさせて頂いていますので 少々お待ちくださいませ」
そう言うとお辞儀をして カウンターに戻っていった
亜矢子と外の夜景を見ていると
若いウエイトレスがビールを持ってきて
「お待たせしました こちらが今夜のお品書きです」
そう言って先付けを置くと 二人のグラスにビールを注いで
「あとのお料理は直ぐに お持ちいたしますのでお待ちください」
お辞儀をして厨房カウンターに戻り 各テーブルを見渡していた
亜矢子がビールグラスを持ち 神山もグラスを持った
「では VIP様お疲れ様でした 乾杯」
「うん乾杯でもVIPは やめてよねぇ お願いします」
「だめ だって電車の中でなんと言ったか 覚えていますか?」
「えっ」
「赤パンを何回も言ったでしょ お返ししたからすっきりした」
亜矢子は よっぽど楽しいのか楽しくしようと振舞っているのか
普段になく明るく そして輝いていた
亜矢子の顔を見ていると
「ねぇやっぱり可笑しいお化粧してこようかしら」
「誤解だよ綺麗で輝いていて 見とれていたのさ」
「ほんと大丈夫?」
「うん ほんとうだよ 綺麗だよ」
亜矢子はようやく納得したのか ビールを美味しそうに呑むと
神山も同じ様にグラスを空けビールを注いだ
ビール瓶が空いたので 手を挙げると先ほどの
ウエイトレスがやってきて
「はい どうされましたか?」
「うん ビールをもう一本お願いします」
「はい かしこまりました 少々お待ちくださいませ」
ウエイトレスは厨房脇に在る冷蔵ケースから
ビールを取り出し持ってきた
「お待たせいたしました」
「うん ありがとう」
彼女が立ち去ると 入れ変りに前菜が運ばれてきた
先ほどの女の子の先輩か 前菜の説明をされたが
神山は分らずに頷いていたが 説明が終わり帰った後亜矢子に
「分った今の説明?」
「ええ わかったわ」
「全然分らなかったよ ちんぷんかんぷんさ」
「まあいやだ 彼女かわいそうよ 分らなかったら
聞いてあげないと」
「そうなんだ でもちょっと恥ずかしいじゃん」
「私はあなたが頷いているので 判らない事は後であなたに
聞いてみようと 口を挟まなかったのに もう」
亜矢子はそう言いながらも
「美味しそうね いただきましょ」
「うん いただきます」
「いただきます」

亜矢子は 口にすると素晴らしいお味よ凄く美味しいと
何回も言いながら箸を動かした
ゆっくりと食べているつもりだったが器が空いてしまい
次が来るまで間があいた
お品書きを見てみると
一、先付け 二、前菜 三、吸い物 四、刺身 五、煮物 六、焼き物
七、揚げ物 八、酢物 九、ご飯 十、留椀 十一、香物 十二、果物
と書いてあり バランスよく出されると思った
「そうよねこうやってみると バランスいいわよね」
二人で眺めていると吸い物が出てきた 説明があり今回は分った
「わかったよ今回は」
「誰だって湯葉くらい分るわよ ふふふ」
直ぐに刺身が出てきた 今度は別々に盛られ丸い器と2種類が来た
ウエイトレスが丸い器が 特別料理だと言い説明され
ビールが空いたのでワイン注文した
ウエイトレスは分りましたと言いさがった
「なるほどコレが特別料理か、、、美味しそうだね」
「ええここの板前さん結構腕いいと思いますよ
食材が綺麗に切られているし 盛付けも綺麗だし」
「そうか叔母さんは鮮魚店だものね 分るかやっぱり」
「ええ 今はそんな事聞かないけど 昔教えられたわ」
「あとは新鮮かどうかだね」
「ええ だけどホテルだから 滅多な物は出せないでしょ」
亜矢子はそう言い まず自分の所にある切り身から口に入れた
「美味しいわ叔母の所と同じ さすが良い魚を使っているわ
食べてみて美味しいから」
神山も自分の器から箸を進め
「うん うまいほんと美味しいよ」
「ねぇ この中トロを頂いてみて 私分るわ絶対あなた 
うまいって言うわ」
神山は亜矢子が自信をもって言うので中トロを口にした
「ほんとだ うまい」
「でしょ 私ここの板さんすきよ 包丁さばき上手よ」
「なんで分るの?」
「うん ほら魚ってすぐに油が廻る魚と 少し時間がかかるのと
あるの 例えば鯛は切って直ぐに頂いても 美味しいけど少し
時間が経つと 油が廻る前だけどその時が充分に美味しいわ
だから鯛から頂いたの」
「そうか おなじ鯛でもそうすると 美味しさが違うのか」
神山はそう言って 今度は鯛を食べた
確かに亜矢子の言う通り美味しかった
「そうすると 鮮魚じゃないと美味しさが 分らないわけだ」
「そう だからおじさんも鮮魚には 拘っているわ」
話していると ワインが用意され
神山は氷入りのチェイサーを頼んだ
下駄の器はすぐに食べてしまった
「そうすると 活き造りはみなでつつくから時間が経っても
良いように 刺身にしてすぐに盛付けをするんだ」
「ええ あと切る魚の順番ね それも影響すると言っていたわ」
「さすがよく知っているね 勉強になるよ僕なんかそこまで考えて
食べていないから こんどそうゆう食べ方をしてみるよ」
ワインに口をつけながら聞いていた亜矢子は
「そうよ貴方はお魚が好きだから 食べ歩きをしてみたらいいわよ」
「そうだねそうしよう」

神山は上原の寿司屋のことを話した
いつも新鮮で毎日食べても飽きない
「今 現場の直ぐ近くに寿司屋が在ってね 2日に一回或いは
3日続けて食べているけど 美味しくてそれに安いんだ」
「羨ましいわね 美味しいお店が直ぐ近くなんて」
「何言っているんだよ 自分だって叔母さんの所あるじゃない」
「うん でも親戚のところは そうちょくちょくねぇ」
「そうだね 高校生くらいまでなら毎日通っても 今わね」
そう言っていると 活き造りも美味しく食べ 残り少なくなった時
次の焼き物が運ばれてきた 焼き魚に牛肉の朴葉焼きだった
「こちらはさげて よろしいでしょうか?」
「うん~ いやまだ残っているから悪いけど このまま残して」
亜矢子はくすっと笑いながら
「わたし 貴方のように正直に言っている人 大好きよ」
「ありがとうしかし 笑っていたじゃん」
「ごめんごめん」
「この朴葉焼きが特別料理だって よく出てくるね特別料理」
「そうね プラスのところで特別なんじゃない」
神山は刺身が残ったのを食べたり ワインを呑んだりした
朴葉の味噌がぐつぐつといってくるといい香りがした
亜矢子も朴葉をめくり香りを楽しんだ
「美味しそうね 香りも凄くいわ」
神山はワインボトルを見てみると空になっていた
ウエイトレスを呼びメニューを見てみると分らないので
「ねぇ亜矢子はどれにする どれが美味しい?」
「そうね 今のが美味しいけど高いわよいい」
「うん大丈夫 でいくら?」
「15000円」
神山は同じワインを頼んだ
「あなた だけどここのホテル良心的よ
普通このワインいくらだと思う?」
「さあ見当がつかないよ」
「うちでも2万円で出しているわ 安いほうよ
普通2万5千円を割らないと思うの こんど調べて」
「へぇ そんなに違うんだワインって
でも亜矢子が言うように良心的だね よかったよ」
「そうね絶対ここのホテル人気あるわよ 私もファンになったもん」
「おいおい料理が美味しくてワインが安くて まあ僕もファンだ」
二人は顔を見合わせ笑った

今まで気が付かなかったが 廻りの客はスタンダードなのか
魚の盛り合わせも無ければ朴葉焼きも テーブルに並んでいない
そのことを亜矢子に言うと
「そうね 仕方ないわよね私たちが恵まれているのよ
そう考えたほうが色々と 価値が分るんじゃないの」
神山は 朴葉焼きを食べたり焼き魚を食べたり 忙しかった
しっかりと味わい プロの亜矢子が居るので楽しく食べたれた
照り焼きがあったが
「こうゆうの食べると熱いご飯が 欲しくなっちゃうね」
「ええ私もよく食べたわ 熱いご飯と一緒に」
「照り焼きって なぜこんなに美味しいんだろ 
つまみでOKだし ご飯でもOKだし ねえ」
「そうね醤油などに漬けることが 出来て味が出るからじゃない」
「そうか そのままじゃなくて漬けるから 保存が利くんだ」
「そう余りお勧めは出来ませんけどね 大抵2日か3日でしょ」
「西京漬けも同じだね 真空パックは1週間とか大丈夫だけど」
「新鮮さは無くなって来るでしょ だからおだしで勝負じゃない」
揚げ物が来て説明されると 神山は頷いた
次に酢の物がテーブルに来た
やはり出したいが テーブルが一杯で片付けたいけど言えないし
そんなところだろうと 亜矢子に聞いてみると
「そうね 片付けだけで来るホテルではないと思うわ
お客様のことを考えてい るホテルだと思うわ 
教育もしっかりしているし ねぇ厨房カウンターで女の子達
私語が一つも無いでしょ 私ねぇ注意していたのよ笑い声は
たまに有るけど許容範囲内でしょ
辛い職場の事考えたら 私語が無しは素晴らしいわ」
「そう言われればそうだね 私語がないね」
楽しく話をして食べていると 自然と入っていく
揚げ物を食べると 今度はご飯などセットで出てきた
亜矢子も残さずに食べ白いご飯も全部食べ終わると
「ふぁ よく食べた」
「私も久しぶりよ 普段食べられる量じゃないもん」

二人が食べ終わったのを見ると 果物が出てきた
このフルーツが また亜矢子の気を引いた
小さ過ぎず 綺麗に形を作り芸術品だった
この手は喫茶店でも見ないし コンビニなどでも買った事が無い
しかし綺麗に可愛らしく作られた フルーツ達を食べたくなった
亜矢子は笑みを浮かべながら フォークを口に運んでいた
神山も一口食べたがさらりとした 甘さで充分いけた
二人とも時間を掛けて 味を堪能した
「おなかいっぱいよ わたし」
「うん僕も一杯だ ご馳走様でしたしかしワインが
半分位残っちゃった」
「そうしたらここでキープしてくれないかしら 聞いてみるわね」
亜矢子はウエイトレスを呼んでワインの ボトルキープを聞いてみた
「ええ出来ない事は無いですが お味が変わる事を了承して頂ければ」
「そうどうされますかあなた?」
「そうしたら部屋に持っていこう 直ぐに呑んじゃうよ」
「そうねごめんなさい忙しい所 部屋に持っていきますね」
ウエイトレスは 笑みを浮かべお辞儀をした
「さあ お部屋にかえりましょ あなた」
「うんそうしよう」
二人が立ち上がると
ウエイトレス達は皆深々とお辞儀をし見送った
「ありがとうございました」

「ごちそうさま あなた」
「いえいえ久しぶりですよ あんなに食べたのは」
神山と亜矢子は ソファーに沈んで寛いでいた
帰って来る時レストランの時計が21時20分を指していたので
2時間強 ゆっくり食べていた事になる
亜矢子は 先ほどのホテル案内を見ていたが 何かを見つけたのか
「あなた大きいお風呂に行きましょうよ 屋天風呂ですって」
「うん 僕もさっき気にしていたんだ行こう」
「では45分くらいかな?」
「そうね髪を流したいから では10時15分くらいね」
「うんでも待っていなくていいよ
多分りっぱな待合は無いと思うし」
「そうね 椅子があったら少し待っているわね 5分くらい」
「うんそうしよう 風呂場には大抵時計があるからね お願いします」
神山がTシャツを脱ぎ ベッドに置くと亜矢子が丁寧にたたんだ
浴衣に丹前を羽織って 部屋を出ると腕を組ん歩いた
エレベーター前に着き ボタンを押すとすぐ箱が来て乗ると
亜矢子が唇を突き出してきたので 神山は軽く合わせた
箱が2階に着くと 目の前が露天風呂の出入り口になっていて
ガラス戸を開け入った
男湯と女湯の紺地に白抜きの暖簾が掛かっていた
入り口間に椅子が無いので出た時 居なかったら部屋に戻る事にした
「じゃあね」
「うん」
亜矢子はニコニコと手を振り暖簾をくぐり消えた

神山は入ると直ぐに 貴重品預かりのロッカーが有ったので
部屋のカードキーとロレックスを預け 暗証番号を入力した
脱衣籠に脱ぎ捨て 風呂場に入った
入浴客は少なくゆっくりする事が出来ると感じた
自慢の屋天風呂に行ってみた
部屋のテラスで見たように 海を眼下に見ることが出来る
真っ黒な海に 月の光が反射していて 安らいだ気分にしてくれる
国道134号線を走る車のヘッドライトが
ミニュチュアを見ているようだった
ここだけ世界が止まったように 静寂な空間だった
心地よいさざ波の音 海風が防風林にささやく音 聞こえてくる音は
それだけだったが 静かな音楽を聞いているようだった
先ほど入浴していた人が出たのか 男湯全部が静かになった
打たせ湯の音ジャグジーの泡の音 こちらも水の音楽を奏でている
外の暗さに慣れてくると 小波が月の光を動かして
水平線の向こうは 少し明るく感じた
夜空には 星が零れんばかり輝いていた
東京で見るのと違い こちらの方が比較にならないほど星が多く
輝きも比較にならなかった
こんな素敵な空間を独り占めしていると 思うと幸せだった
(そうだ祥子は新幹線かな一応連絡してみよう)
神山は夜空を見ていたら 祥子を思い出してしまった
急いで髪の毛を洗い 簡単に体を洗うと脱衣所の時計は10時だった
部屋に戻ると テラスにでて携帯電話で祥子に電話した
携帯電話は直ぐにつながり祥子が
「わたしよ こんばんわ どうですか温泉は」
「うん 気持ち良いよ 久しぶりの温泉だし疲れが取れるよ」
「それはよかったわ」
「ところで 今どこですか」
「ええ東京駅ですよ 丁度新幹線の改札を出たところよ」
「ああ それで直ぐ繋がったんだ」
「ええ切符をバッグに戻した瞬間ですもの びっくりしたわ」
「わるかったびっくりさせて それで小田原工場だけど」
「うん どうでした」
「順調です 仕上がりも思っていた以上で 大丈夫です
特に棚什器は見るとびっくりするくらい綺麗に仕上がっているよ」
「それはよかったわ ありがとうございます」
「一応筒井さんにも 報告しておきました」
「どうもありがとう 明日連絡があるわね きっと」
「うん そうだと思うよ」
「私は明日から大変だわ 勿論あなたも大変だけど」
「うん 先日も言ったけど 陳列してオープンに間に合わせる
それが一番大切だよ 細かい所は夜、夜でも補修は出来るからね」
「ええありがとうございます 心強いわあなたが居て」
「うん では24日現場で」
「は~い待っています 休養してくださいね」

携帯電話を切ると10時10分だった
神山はさてどうしたものか考え 冷蔵庫を開けるとビールが無いので
階段を使って6階の 自販機まで買いに行った
部屋に戻ってみると 亜矢子が戻っていたのでびっくりした
「早いね亜矢子」
「ええお風呂ひとりぼっちなの 夜空を見ていたら寂しくなって
少し早めに出てきちゃった ふふふ」
「僕も綺麗な星空をみたよ ただ見ていて連絡する所を思い出した
それで早めに出て連絡をとったよ」
「大変ねこんな遅い時間に でもあなたのお仕事 時間関係ないわね」
「うん 工事している時は24時間お仕事ですね
しかし亜矢子だって同じじゃないか ホテルは24時間生きているし
夜勤は大変だって 前報道していたよ」
「ええ そう言われればね」
「さあ今 冷たいビールを買ってきたから 呑もうよ」
「ええ 頂きます待っていてね」
亜矢子は 髪の毛がまだ乾いていないので タオルをちょこんと巻き
「さあ頂きます」
「ねぇ今日遅れた 理由って出来れば聞きたいな」
「そうね 話してなかったもんね」
亜矢子によると病院の支払いの為 当った宝くじを換金しようと
三島の銀行に行ったが 取り扱いできず静岡の銀行まで
行く事になり それで遅くなってしまった
「ごめんなさい 事前に調べておけば こんな事にならなかったのに」
「いいよ 僕も熱海の街並みを見ながら ぼんやり出来たし」
神山は病名を聞くと 辛くなるだろうと思ってあえて聞かなかった
亜矢子は 下を向いてしまい 暗い表情になったが自分から
「母は 肺がんなのだから心配なの」
そう言うと 泣き崩れた
神山は 亜矢子を抱き寄せ
「だけど医者は大丈夫って言ってくれたんだろ」
「しかし 心配よ」
「だけど大きい病院だから 手当ては万全だし
任せておけばいいよ 亜矢子がくよくよするとお母さんも辛いよ」
「そうね、、、」
亜矢子は 少し気を取り直したのか元気になった
「よし露天風呂を聞いてみる」
神山はフロントに確認すると 直ぐに利用できると言った
「ねぇ直ぐ利用できるって 行こうよ」
「ええ貴方と 一緒なら寂しくないわ 行きましょう」
二人はビールを持って 部屋を出た
屋上の露天風呂は2回目だが 夜はファンタジックに演出されていた
埋め込みにあるライトアップ 浴槽のライトアップなど
二人を夢の世界に導くのに 時間はかからなかった
神山はビールをちょっこと 口につけ亜矢子に
「ちょうど美味しくなっているよ」
亜矢子は 差し出されたビールを呑んだ
「ふぁ 冷たいでも美味しいわ 正解ね」
神山は食事から戻ると ワインを空いたビールの缶に注ぎ
冷凍庫で冷やした
亜矢子が何をしているの まずくならないのと聞いてきたが
大丈夫 美味しいよと言って冷凍庫に入れた それを持って来ていた
「こう 冷たいとジュースみたいで呑めるわ」
すこしシャーベットになっているので 呑みやすかった
亜矢子は その缶を離さずちろりちろりと味わっていると
「亜矢子そんなに呑むと後で効くよ」
「は~いあなた」
ワインは日本酒と同じアルコール度数14度なので ぐいぐい呑むと
冷酒と同じで後から効いてくる
神山はワインの缶を受け取るり 少し含み唇を亜矢子の唇に合わせた
亜矢子は 美味しそうに神山から送られる ワインを呑んだ
「あなたから貰うワインは味が 美味しいわ」
亜矢子は唇を合わせた

ライトアップの演出 自然な夜空の演出とワインで酔ったみたいだ
亜矢子は神山の上に乗り向き合う格好になった
湯の中で元気の無い坊やをみて亜矢子は触ってきた
神山は何も出来ないでいると 唇を合わせたまま手を上下に
動かし始めた 硬さが充分になると 肉棒にまたぐ格好になり
自分の秘所を当て 前後に動き始めた
「あぁー いいわぁー すてきよぉー あぁー」
息苦しいのか唇を離すと息遣いが荒く上体を反らせたので
片手で背中を支えながら乳首を柔らかく噛み転がした
亜矢子はすっと腰をあげ手で肉棒を掴み秘所の中へ導いた
ぬめりとしていて スムースに挿入出来たが上下運動は
水の抵抗があり 普段のスピードで動かす事が出来なかった
亜矢子は立ち上がり 神山に湯船の縁に座るよう言って自分は
湯船の中と同じ格好で導いた
「いいわぁー あなたー あぁー あぁー」
水の抵抗が無いので 亜矢子の好きなスピードで運動する事が出来た
段々と膣が窮屈になってきたので 神山はそのまま後ろへ寝た
亜矢子は完全に上に乗ることが出来 上下だけではなく左右に
動かしたりして
「ねぇ気持ちいい?」
「うん もうすぐだよ我慢できない」
「だめよ そしたらこれは」
今度は クリトリスを押し付ける格好で前後に動いた
「うん効くよ」
神山は揺れている乳房を 鷲づかみし乳首をいじると亜矢子は
「だめ い、く、わ い、く」
先ほどまで 無言だった荒い息遣いだった亜矢子が
腰の動きを上下運動に戻し スピードを速めてきた
膣がますます窮屈になり
「だめ いくわあなた い、く あ、あ き、て ああ、、、」
亜矢子は がくんと首を折 そのまま神山の上に乗ってきた
神山はまだ昇天していなかったので そのまましたから突き上げると
「だめねぇ休ませてお願い」
神山は亜矢子の申し出を無視して 下から突き上げると
「あぁ またいきそう」
下からの攻撃で亜矢子は第二波の快楽が押し寄せていた
神山はスピードを上げると 亜矢子は
「だめ いく いくわあなた」
膣をきゅんを窄めてくると 神山も我慢が出来ず果ててしまった
「あぁ きたぁー あっ、、、」
亜矢子は果てると 完全に力をなくし 神山の上に被さった
少し落ち着いたのか亜矢子は 薄目を開け
神山に抱きつき耳元で
「おちんちん 本当に元気ね嬉しいわ 大好き」
キスをしたが
「どっちが? 僕? おちんちん?」
「ば~か 両方に決まっているでしょ もう」
向き合っていると 時間を忘れるくらい幸せだった
亜矢子は このまま時間が止まって神山を 独占したかった
夜空から星が零れ ファンタジックな世界に酔い浸っていた
暫くすると神山が
「そろそろ時間だと思うよ さっと入って出ようか」

脱衣室で小さくなったおちんちんを
「ほんと 普段は可愛らしいのに大きくなると 凶器だわあぁ怖いわ」
そう言いながら 手で持ち上げ軽くキスをした
亜矢子は 下着を着けていなので 神山が裾を割って手を入れると
「だめよもう 出ないと早く仕度をして」
神山は下着をはかないで 浴衣を着て丹前を羽織った
時間はぎりぎりセーフだったが 果たして次の入浴客がいるか
扉を開けてみると誰もいなかった
ただ隣 の女湯でがさがさ音がしたので 
顔を見合わせ静かに戸をしめた 階段を降りて自分のフロアに来ると
「ねぇ あなた このままフロントに行くの」
「うん そのつもりだよ」
亜矢子は おちんちんを叩いて
「ねぇ ここ出っ張っているわよ それでもいいのすこしHよ」
「そうかな」
「そうよ」
神山は 誰もいない事を確認してパンツを穿いた
「うんでも出っ張っているわ でもはいたもんね」
亜矢子は 笑みを浮かべ安心した様子だった
神山は そのままエレベーターを待ち 亜矢子は部屋に戻った
神山はかぎを返し エレベーターのほうに行くと ほんの僅かだが
歌声が聞こえた 先ほどは気が付かなかったが気になるので
フロントで聞くと カラオケBOXがあり25時まで営業していると
教えて貰い フロントから部屋に電話し亜矢子に聞いた
「ええ いいわよ」
フロントに何階にあるか聞いてみると2階との事
「そしたら 2階に行っているよ」
「ええ 直ぐに行くわ」

2階は先ほどの屋天風呂と同じフロアだった
ここに そんな施設があるとは思わなかった
指定された カラオケBOXを通り過ぎると 扉が開いている部屋が
いくつか有ったので覗いてみた
マージャンや卓球 一番端はタタミ敷きの大広間があった
ここは屋天風呂を 日帰りで利用した人の休憩室になっていて
売店も用意されていた
カラオケBOXは 5部屋あるが使われているのは2部屋だけだった
夏休みや週末などは 結構順番待ちで大変だろうと思った
「ごめんなさい」
亜矢子はお化粧をしてきたのか輝いていた
「あまり時間は無いけど 亜矢子の歌を聞かせてよ」
「そんなに上手ではないわ 私 でも楽しいわ」
ちょこんとキスをした
神山はキスの感触で分った リップを塗っているので綺麗になったと
亜矢子は先ほどのワインを持って来ていたが 美味しいと言って
独り占めしていた
最初は景気付けに神山から歌った ジュリーの勝手にしやがれだった
亜矢子も途中から 雰囲気に乗って立ち上がり 手拍子をとっていた
歌い終わり座ると
「すごい かっこよかったわ すてきよ」
亜矢子は またキスをしてきた
「ありがとう 古い歌でこのくらいしか 自信なかったんだ」
「ううん 歌詞に気持ちがこもっていたわ 素敵よ」
亜矢子が 選んだのはユーミンの歌だった 2曲連続で歌った
神山は手拍子をとっていたが つい先日祥子が歌った曲だったので
ちょっとばかり複雑な思いをした
「ごめんなさいね 最初から静かな曲を歌って」
「ううん 綺麗な声に聞きほれていた 上手だよ高い声も無理なく
伸びていたしさ 低い声も綺麗だったし ほんと」
亜矢子は 素直に喜びワインをちょこっと口にした
神山はビールの自販機が この部屋の外にあったので買い求めた
「さあ次はあなたよ」
「古い曲ばかりで悪いから 英語の歌でも良いかな下手だよ」
神山はリストから 英語の曲を2曲選び歌った
そこでも亜矢子は笑みを浮かべながら 真剣に神山を見ていた
歌い終わり ビールを呑むと亜矢子に 次は何を歌うか聞くと
「そうね ドリカムにしようかしら」
そういって リストが開かれているところから選曲し
「ねぇ 3曲でもいい?」
「うんOK その間探せるし」
亜矢子は リモコンのスイッチを押すとメロディーが流れ
字幕がでると 殆ど見ないで歌っていった
神山は選曲しようと思ったが 亜矢子の姿に見とれてしまった
二人は交互に歌っていると 楽しく時間を忘れた
神山が歌い終わると スクリーンに25時終了の案内が出てきて
「わぁ 折角盛り上がったのに あなたフロントに言ってきて」
「なんて?」
「うん 朝まで歌わせろって」
「それは幾らなんでも 無理でしょ」
「では帰りましょ なぁーんだ もう つまらないなぁー」
亜矢子は立ち上がる時 神山の大事な所をポンと叩き立ち上がったが
ちょっとよろけた
「大丈夫? 相当呑んだもんな」
「大丈夫よ では帰りましょう」
亜矢子の顔が赤く染まり色っぽさが増した
気持ちいいのか 自分の歌った曲を鼻歌で歌っていた

「あなた ほんと上手よ大好き」 
部屋に戻ると そう言い寝てしまった
唇を合わせても反応が無く 乳房を触っても反応が無かった
神山は秘所を触って 起こしても機嫌を損ねるだけだとして止めた
テラスに出てタバコを吹かしビールを呑んだ
ビールが美味しく直ぐに1本を開けてしまった
カラダを動かしたので 汗が気になり亜矢子を起こさないよう
静かにシャワーで 汗を流し再びテラスに出た
夜空に輝く星を見ていて 上原はどうしているか気になり電話した
「神山ですがこんばんわ」
「こんばんわ 高橋ですどうされました?」
「うん今 夜空を見ているんだけど気になって現場はどうですか?」
「大丈夫ですよ もうすぐ上がりますよ それより山ちゃんは」
「うん大丈夫ですよ 小田原の件は筒井さんと会社に連絡しました
喜んでいたよ 筒井さん」
「分りました あと何かありますか?」






.

2012年10月20日土曜日

青葉 4 - 18 Vol. 3



ここからの眺めは 山側に新幹線を見ることが出来るが
反対側は山になっていて 海を見ることは出来なかった
それでも 南西の位置に海を望めるが 遠かった
町並みを一望できるので 注意すると人がまばらだった
メインストリートは屋根がありはっきりしないが
歩道が露出している所には 観光客らしき人の姿は見えず
この頃では観光客が少なくなってきていると聞くが事実だった
もっとも まだ3時過ぎなので
夕方 夜になれば観光客などで賑わうだろうと思った
この時期熱海はこれといった観光が無いので客が少ないのか
年が明ければ熱海の梅園で梅が咲き賑わい桜の時期まで
観光客は一杯になり ホテルも旅館もフル回転になる
夏は夏で海水浴客が来るので この時期もリゾートホテルは
満室になる そう考えると 今は春でなく夏でも無いので
一番空いている時期だった

暫く街並みを見たあと 小田原工場の報告をしようと携帯を出した
最初は由香里に電話をした
「神山です」
「はい 私です どうしたの?」
「うん 小田原工場だけど順調です 明日皆に伝えて」
「いいけど どうして?」
「朝一番に電話できなかったら 心配するでしょ だから」
「わかったわ」 
「温泉饅頭って 食べる?」
「ええ 好きよ 食べるけど?」
「意味は無いよ お土産さ 買っていくよ 待っててね」
「は~い 待っています 気をつけてね」
神山は電話を切ると筒井に電話した
「神山ですが」
「おお 筒井です こんにちは」
「こんにちは 今 アルタの小田原工場を見学しました
上原の什器類ですが 綺麗に仕上がっています 順調ですよ」
「そうか 山ちゃんが言うのだから大丈夫だな」
「ええ 大丈夫です 24日はこちらから直接上原に行きます」
「確か休みだろ 大変だな」
「大丈夫です 明日はゆっくり静養し鋭気を養いますから」
「ははは、、、 久保君には僕から連絡しておこうか?」
「ええ お願いします 忘れると大変ですから」
「わかった では気をつけて」
神山は大切な電話を終ると安心したが 亜矢子が心配になった
携帯電話をポケットにしまおうとした時にベルが鳴った
「はい 神山です」
「亜矢子です ごめんなさい 遅くなって もう直ぐ熱海です」
「分った では改札口の傍に立っているよ」
「は~い ほんと今 トンネルに入り、、、、、、」
電話が切れてしまった 神山は大急ぎで階段を下り駅まで走った
改札口に着くと入線が終っていて 改札口に向かってくる人が多く
果たして亜矢子は分るだろうか 危惧をしていた
目を凝らし探していると 亜矢子が手を振って小走りに来た
「やあ 久しぶり」
「ええ ごめんなさい 遅くなって」
「いいよ 熱海の街並みを見ていたから」
神山はデパートの屋上を指差し 亜矢子に言った  
亜矢子はにこっと笑みを見せほほに軽くキスをした
神山は今夜の宿を決めていなかった
どこかで亜矢子と相談したかった
亜矢子は蒸気機関車が飾ってある所に行き座って神山を手招きした
「そうよね あなた忙しすぎるもの」 
「う~ん まあ そうだね ゆっくりとは検討できないしな」
神山はホテルの無料宿泊券を見せた 驚いた亜矢子は
「どうしたの こんなに それに有名なホテルばかり、、、」
「うん 仕事の関係で手に入ったんだ どこに行きたい」
亜矢子はどこのホテルも甲乙つけがたく 迷っていた
「そうしたら 連泊がいいか 日替わりにするか?」
「それは連泊の方が落ち着くわ でもほんと 迷うわ」
「そうしたら 伊豆高原にするか?」
「そうね 私 1回行きたかったの」
「それだったら 早く言えばよかったじゃないか こら」
神山は亜矢子のおでこを 人差し指でちょんと触った 
亜矢子は逃げずに受けて くすっと笑った
よく見るとスリムGパンに白のTシャツ 麻のジャケットと
神山と一緒で 神山自身 驚いていた
Gパンの色も形も一緒でリバイスのスリムだった
麻のジャケットは 神山が淡いモスグリーンで
亜矢子はホワイトベージュだった
襟の格好からポケット縫製までそっくりだった
「多分 貴方はこんな格好だろうなと
想像してジャケットは買ったの 似合っているかしら 大丈夫?」
「うん 気がつくのが遅かった ごめんね 似合っているよ」
神山はいじらしい一面を発見した
伊豆高原にある赤沢ホテルに電話をすると 満室になっているが
スイートだとまだ空きがあるけれども 宿泊券の種類で追加料金が
発生する事があります それでも宜しいようでしたらご予約を
お願いしますと言われ 予約を入れこれから熱海を出ますと伝えた
「よし 行こう 伊豆高原へ」

亜矢子はけらけら笑いながら 着いて来た
乗車券を買って改札口直ぐ左の階段を上って待っていると
伊豆急下田行きが直ぐに入線する タイミングが良かった
乗車し席に着くと 発車が4時5分なので
急いでビールとおつまみを買った
神山が後ろの車両を見るとロイヤルボックスと書かれた車両が
連結されているので 車掌に聞いてみると 800円追加すれば 
利用できると教えてくれた
席に戻った神山は亜矢子にロイヤルボックスに移る事を伝え
移動した この車両は座席数が極端に少なく
JRのグリーン車よりゆったり出来た
窓際 特に海側に座席が向いていて 車窓からの風景は横に流れる
山側は 4人掛けのボックスシートになっている
海側に座った二人は 同じ格好なので目立った
ホームを歩いている人が車内を見れば この席は目が合う
でも亜矢子は気にしないで 神山に寄りかかってきた
神山はビールのプルトップを開け 亜矢子に手渡した
「ほんと 丁度1週間ぶりだね 再会にかんぱあ~い」
亜矢子もビールを一緒に呑んで一息つくと
「私ね この1週間いろんな事があったの 疲れたわ
だけど 今日あなたに会えたら疲れが何処かに行っちゃったわ」
神山は 自分も忙しかったけど 亜矢子の話を聞くことにしたが
電車が動き始め 最初はトンネルだが 網代を過ぎると海が
見え隠れするようになる
亜矢子の話は 宝くじ2等1千万円が当って 驚いた事と
母親の病状が良くならないので大きい病院に移したらもう少し
こちらに来るのが遅かったら だめになっていたなど
夜勤をしている亜矢子にとっては 辛い事が重なったと思った
「それでね 当選金なんだけど 半分あります ごめんなさい」
亜矢子は500万円の小切手を出した 驚いた神山は
「いいよ 亜矢子が使えば 僕はいいよ」
「でも 買ったのはあなたでしょ だから半分 
ごめんなさい 全額お渡しするつもりだったの 
だけど母に使ったの 本当に ごめんなさい」
亜矢子は俯き涙を流しごめんなさいを何回も言った 神山は明るく
「でも 赤パンは亜矢子の赤パンじゃないか だから亜矢子のだよ」
少し声が大きかったのか 亜矢子は顔を真っ赤にして
「恥ずかしいでしょ いわないで いじわる」
今度は 笑うのをこらえて 涙を流した
「ねぇ 受け取らないんだったら 赤パンの話 止めないからね」
「やめて もう いじわる」
ますます赤くなり 可愛らしかった
「わったわ だけど本当にいいの? 私は助かるけど、、、」
「うん さっきから言っているように 大丈夫
あれば 車を買うけど 亜矢子と一緒だと美味しい地ビール
呑む事出来ないジャン お母さんに使って 赤パンの魔力だよ」
「もう ばか 言わないって約束でしょ」
亜矢子は 嬉しくなったのか 顔を涙でぐしゃぐしゃにして
神山の胸を 叩いてきた
「ほら こっちを向いてごらん」
亜矢子は最初はいやいやしたが 神山に顔を向けた
「ほら マスカラがとれて パンダだぞ」
亜矢子は鏡を見て ティッシュで綺麗にふき取った
「ねぇ 可笑しくない 平気?」
亜矢子のすっぴんは初めてではないが さらに綺麗に見えた
「大丈夫だよ 化粧無くても充分 いや充分以上さ」
「だめよ 誤魔化したって そうしたらこの小切手頂きます」
「うん しかし あの あ・か・パ・ンの魔力は凄いな」
「ねぇ そう赤パン 赤パンって言わないで お願いだから
あのショーツは 友人が話していたの それで買ってみたの」
「そうなんだ そうするとその友人にお礼を言わないとねぇ」
「ええ だけどそんな事したら ねたまれるから言わないわ」
「あっそうか そんな事で関係が壊れると嫌だよね そうだね」

話が一通り済むと車窓に海が見えてきた
車内を見渡すと 二人だけで女性の車掌は扉の向こう側にいた
時々こちらを観ているみたいだが 席には来なかった
ビールを呑み終わると なんだか物足りなくなったので
車掌を呼んでみると
「はい こちらにメニューがございます」
そう言われ 神山は恥ずかしくなった
アルコールメニューが目の前にあって
『ご注文は赤いボタンを押してお待ちください』と書いてあった
神山はウイスキーの水割りセットを頼み亜矢子も同じ物を頼んだ
「ふぁ~ ここにメニューが有ったなんて 知りませんでした」
「そうね 私か気が付けばよかったわね ごめんなさい」
亜矢子は自分のせいで神山の精神状態を混乱したと思い謝った
「そんなこと無いよ 僕が気が付かなかっただけさ」
神山は亜矢子のほほに口を近づけようとした時 女性の車掌が
「お待ちどうさまでした」
と 水割りセットを持ってきた
小さいサイズのミネラルウォーター 紙コップに氷 
ミニュチュアサイズのウイスキー コレがワンセット
神山も亜矢子もびっくりして 
「もう少し 大きいかと思ったわ しかしホテルに置いているのも
このサイズだから しかたないでしょ ねぇ あなた」
亜矢子はそう言いながら 神山のセットを作り 
「はい 出来ました ウイスキーの水加減わからないので 
ごめんなさい」
亜矢子は自分のを作ると さあ呑みましょと誘った
「ねぇ 話し変るけど 教えて」
「なにを?」
「うん 今夜の赤沢ホテルだけど スタンダードが満室で
スイートに泊まるんだけど」
「えっ スイート 凄いわ すごすぎる」
「うん そこで この券だともしかして追加料金が
発生するかもしれないんだって 資金は大丈夫だけど
実際 あのクラスだとスタンダードの倍見ておけば大丈夫かな?」
「そうね そんなとこだと思います だけどそこまでしていいの?」
「うん それは大丈夫だけど ほら何も知らないと
価値が分らないから」
「そうだけど すごいわ ほんとよ 部屋が取れないので有名よ」
「へぇー じゃあ凄いとこに行くんだ~ やったね 亜矢子」
「嬉しいわ 夢見ているみたい」
「夢じゃないよ ほら」
そう言って 亜矢子のほほに軽くキスをした
亜矢子は真っ赤な顔になって
「収まりましたので 今夜は可愛がってください」
神山に顔を向けず俯いたまま 小さい声で伝えてきた
「わかった 分ったからこっち向いてごらん」
亜矢子はまた泣いているのか 何も言わずに顔を胸に付けてきた
優しく髪をなでてあげると リンスの甘い香りが漂った
ほほを両手で優しくはさみ 顔を上げると目が潤んでいた
亜矢子は目をつぶり口を少し出し神山と唇を合わせた
僅かな時間だったが 昨日のように1週間前の情事が思い出された
目を開けてみると こちらを向いていた女性車掌と目が合い
彼女は気まずさそうに 目をそらした
神山は女性車掌にウインクをし 亜矢子の髪をなでた
亜矢子は目を開き 嬉しいと言った

神山はウイスキーを呑むと亜矢子も呑み 明日の観光を話し始めた
「どこに行きたい? 時間はたっぷり有るしどこでも行けるよ」
「そうね 迷うわ 会社では休みになったら どこどこに
行きたいって思う事が あるんだけど、、、」
「う~ん 天気が良さそうだし 近場で遊ぼうか?」
「ええ あなたに任せます お願いします」
神山と亜矢子が話していると伊豆高原駅に着いた
駅前からタクシーを利用しホテルに着くと
チェックインの手続きをした
「先ほど 予約した神山ですが、、、」
受付にそう言ってチケットを渡すと
「神山様 このチケットはどこのお部屋にお泊り頂いても 
追加料金は発生しません ご安心下さい」
受付嬢は笑みを浮かべ答えた
「そうしたら 一番よいお部屋をお願いします」
「はい このチケットのご利用は当ホテルの最上クラスを
ご用意させて頂いてます お部屋をお調べいたしますので
少々お待ちください」
受付嬢が空き部屋 それも最上級クラスを探しあて 神山に
「お部屋をご案内しますので ここにご記入をお願いします」
連絡先などが書き込む用紙に 神山の連絡先を記入し
亜矢子のところで迷っていると
「お名前さまだけで 結構です」
神山は同伴者のところに亜矢子と記入し 用紙を返した
部屋まで案内という事で その受付嬢がカウンターから出てきて
「お荷物を お持ちいたします」
亜矢子の荷物を持ち 神山も勧められたが 
断り自分で持つ事を伝えた
受付嬢は歩きながら 
「そのチケットは 最高級のVIPチケットです
ですから チケット1枚で5名様までOKで何泊でもできます」
「そうすると 夏休みなんか利用できますね」
「はい しかしシーズンインは最大で2週間のご利用なんです」
「それでも2週間はいいね ねぇ亜矢子」
「そうね 素晴らしいわ」
話をしているとエレベーターで7階に行った
一番奥まで進み
「こちらのお部屋でございます 別館スイートルームでございます
尚 このカードがお部屋の鍵になっておりますので
大切にお取り扱いを お願いします
紛失のさいはフロントまでご連絡下さい
あと ご宿泊は本日と明日の2泊3日でよろしいですか」
「ええ お願いします」
「ご宿泊延期の場合 お部屋が変わることもございます
ご容赦ください」
「食事は部屋で頂けるの?」 
「申し訳ございませんが 3階のレストランをご利用となります
おタバコは お吸いになられますか?」
「はい 吸います」
「では ご夕食は7時からご用意させて頂きますのでお願いします」
「はい わかりました どうもありがとうございます」

神山はカードを受け取り部屋に入りカーテンを開くと 
海がすぐそばまで迫っていて景観は最高だった 亜矢子を呼び
二人でテラスに出て 海を暫く見ていた
「私のホテルからも 駿河湾が見えるけど こんなに近くないわ
凄いわ 気にいちゃった」
亜矢子が下を見てみると 10M位有る崖の上に建てられていた
「ねぇ あなた下を見て 道路の向こうは直ぐ海よ」
神山も一緒になって下を覗いて見た
「凄いね こんな所に建てるなんて」
部屋に戻り浴室を覗いて見ると
シンプルに造られ思ったより広かった
テーブルに置いてあるホテル案内を見ていると『貸切露天風呂』が
載っていた 亜矢子を呼ぶと冷蔵庫からビールとコップを取り出し
神山の所へ来た コップにビールを注ぎ終ると
「さあ ようやく二人きりになれたわ 乾杯」
神山はビールを呑みながら『貸切露天風呂』の事を指した
「いいわね 行きましょうか まだご飯まで時間有るでしょ」
「うん 有るよ」
フロントに電話をすると 今利用中なので6時からの利用に
なることとフロントに鍵を取りに着て欲しい事を告げられた
「ねぇ あなた 利用時間が30分って書いてあるわ」
「まあ 30分も浸かっていたら のびちゃうよ」
神山はそう言うと 亜矢子にキスをすると亜矢子は
唇を薄く開け答えた 亜矢子が立ち上がり
ジャケットをクローゼットにしまった
「ねぇ あなたもジャケットを 脱いで着替えましょう」
神山はジャケットを脱ぎながら Gパンも脱いで亜矢子に渡すと
「そのTシャツ 明日も着る?」
「ううん 着替えは持ってきているから」
神山は亜矢子の手を自分の元気になった所へ導くと
「だめでしょ これからお風呂に行くんだから
私だって我慢しているのに ほんと元気なんだから」
そう言って神山の大事なところをポンとたたき 
「ねえ 海を見ていて」
神山は用意してある浴衣を着て テラスのほうに向かった
海の向こうには まだ日が沈みそうもないが 
確実に時間を刻んでいた
テラスに出ていると 亜矢子も出てきて 一緒にながめた
フェンスに寄りかかった神山に亜矢子も同じ格好をして
「ねぇ ほんとに私でいいの?
それにこんなに素晴らしいところを?」
神山は亜矢子が何を考えているのか分ったが 正直な気持ちは
「うん きみがいい だからこうやってきたんだよ」
と しか言えなかった
亜矢子は説明不足を非難しなかった けど今を大切にしようと
いつも考えているので それだけで充分だった
逆に『大好きです 結婚しましょう』と言われる方が
もっと辛くなるだろうと 考えた
亜矢子は気を取り直して
「ねぇ 時間大丈夫ですか?」
時計を見るとあと5分ほどで6時になる
「よし フロントに行こう」
神山と亜矢子は部屋を見渡し出た

フロントで鍵を受け取ると 丁度先客が出てくる時で
軽くお辞儀をし 貸切露天風呂に入った
普段は男女別々の露天風呂としてあるが 
夕方5時から深夜24時まで貸切露天風呂として開放されていた
朝6時からは 男女別々の露天風呂となる
神山は浴衣を脱ぎ簡単にたたむと亜矢子が慣れた
手つきでたたみ直し乱れ籠に入れてくれた 
亜矢子も浴衣を脱いだが下には何も着けていなかった
神山は自分が下着を付けているのを恥じ 急いで丸めて籠に入れた
ガラス戸を開けると簡単な洗い場があり その向こうには
タタミ12畳ほどの広い露天風呂があった
神山と亜矢子は広い湯船の端で抱き合った
「いいわ~ こんな経験初めてよ ほんとよ」
「僕も初めてが多くびっくりしているよ」
神山は疑問だった浴衣の下に何もつけていないのを聞いてみた  
「だって 電車の中であなたに助けられたら それだけで、、、」
「なにかしたかな?」
「まだ素性も知らない 私に大金をくれたでしょ」
「うん まあ元々亜矢子のもんだし」
「そんなあなたに ジーンと来て、、、それとキスしたでしょ」
「うん」
「わかって」
「そうか それで顔だけでなく パンツもぐちゃぐちゃ?」
「そうなの だから早く脱ぎたかったの」
「だけど 着替えはあるんでしょ」
「ええ 余分に持ってきているわ だけどあなたと居ると、、、」
「えっ」
「何枚あっても足りないわきっと だから脱いじゃったの」
亜矢子は神山に唇を向けてきたので 合わせた
せがむように亜矢子の唇は動いた
神山も空いている手で乳首を触ると
唇から喘ぐ声が漏れ始め 首をがくんと後ろにそらし
「嬉しいわ あなた 待っていたのよ 今日を」 
神山はもう片方の手で背中を支え 乳首にキスをした
亜矢子はそれだけで気持ちいいのか 喘いでいた
今度は軽く噛み唇で転がすと 背中が伊勢エビのように
ぴょんとそった
「う~ん だめ 気持ちいいわ あなた だめ」
神山は空いてる手を 亜矢子の秘所に触ると 
ぬめった状態に成っていて彼女は腰を動かし始めた
「ねぇ お願い だめよ」
そう言って亜矢子は神山を制すると 
今度は亜矢子が神山の肉棒を掴んだ
「大きいわ 素敵よ ちゃんとおりこうさんにしていた」
そう言いながら 湯船の中で動かし始めた
神山は湯船の縁に座り 肉棒を亜矢子の前に突き出すと
亜矢子は咥え 教えられたとおり動かし始めた
神山も 気持ちが良くなってきたので フェラチオを止めて
亜矢子を西の太陽に向け 後ろから入った
「こんな、、、はじめて、、、すごくいいわ、、、」
亜矢子は自分で腰を動かしてきて
神山とリズムが合うようになった
「ねぇ、、、もう、いっぱい、、、だ、め、よ わたし、、、」
腰の動きが少し速くなったので 神山も我慢できなくなった
「亜矢子 オレもだめだ」
「一緒に いきましょ、、、き、て、、、、きて」 
神山は うん と力を入れると亜矢子の中に発射した
「あぁ、、、き、た、、、いくわ、、、、あ、っ、っ」
亜矢子の声は最後は聞き取れないくらいほど
小さくなったが一緒に昇天した

亜矢子は神山の肩に顔をあずけ 神山のおちんちんを触っていた
「ねぇ ほんとにおりこうさんにしていた?」
「うん」
「でも うそでもいいや 私の前では私のおちんちんだもの」
亜矢子は神山が例え浮気をしていても 或いは他に女がいても
自分と一緒の時は 自分の事だけを考えてくれていれば
それはそれで良いと思った
まだ 全てを独占できないと思うし
一緒の時間を楽しく過ごせれば そのほうが良いと感じた
例え遊びであっても 私にとって最高の男性だから 自分の行動に
悔いを残さないよう二人の時間を大切にしようと考えていた
暫く浸かっていると 躰が温まり汗が出てきたので
「そろそろ出ようか 次も待っているかも」
「そうね 出ましょ」
亜矢子は神山のおちんちんを掴んだまま立ち上がるリ
引っ張ると抜けて
「いゃ~ 抜けちゃった やだ~ こんなに可愛くなっている」
亜矢子は手のひらでお手玉をしながらクスクス笑った 
脱衣所で仕度をし時計を見ると 約束の30分だった
「次が来ているね きっと」
鍵を開けそっと扉を開けると 誰もいなかった
顔を見合わせ 笑みがこぼれた
「じゃあ 先に部屋に戻っていて フロントに行ってくる」
「でもカード 置いて来ちゃった」
神山は亜矢子にカードを渡すと別れ鍵をフロントへ返した
フロントで夕食事にワインを用意できるか尋ねると
「はい 神山様の場合 ホテル自慢のワイン1本無料で
ご準備出来ますよ」
「へぇ 凄いね あのチケットは」
「ええ 滅多にいらっしゃいませんよ ビールは呑み放題です」
「えっ 呑み放題 それも凄いけど
しかし何処かの居酒屋ではないし そんなにビールばかりはねぇ」
フロント嬢は笑みを浮かべながら 答えていた
「お食事も一般の方と違い特別料理をご準備させて頂きます」
「はあ 食事も、、、 だけどあのチケットはなに?」
「ええ ホテル協会の許可を頂き 一流企業様にご購入して
頂いているチケットでございます」
「そうか」
「ええ チケットに番号が入っていたと思いますが その番号で
ランクづけが分ります ホテルではスタンダードのお部屋
ご提供のみで あとご購入金額でスイートになるか
特別料理になるかなどランク分けされます
お食事はチケットのお客様は特別料理ですが
さらに上のランクがございます そのような部分を各企業様に
ご購入して頂いています」
「ちなみに 私のプラン普通にお支払いすると
おいくら位でしょうか?あっ大体でいいですよ」
「ええ 大体ですが」
そう言うと電卓をはじき
「大体ですが お一人様 約6万円ですが このホテルの会員様に
なられますと僅かな金額を追加されるだけで 本日のプランに
ご変更できます こちらがパンフレットでございます」
「はい 分りました ありがとう パンフは頂きます」
神山はエレベーターを待つ間パンフを開いて金額をみて 驚いた
(会員権が500万円 凄いな)
何回かよったら元が取れるんだろうと 計算したら二人で
利用するだけだったら166泊出来る 
しかし じじ ばば まごまご と大家族で 1週間利用となると
10シーズンで元が取れる計算になった
神山は高いものか 安い物か判断できなかった

部屋の前でベルを鳴らすと 直ぐに亜矢子が出てきて
「お帰りなさい 遅かったわね」
「うん 食事の時ワインを頼めるか聞いていたんだ」
「当然 あるでしょ それで?」
「神山様のプランは1本無料で付いていますって」
「へぇ 凄いわね 赤字にならないのかしら」
「からくりがあったよ これ」
神山はパンフを見せながらフロントで聞いたことを伝えると
亜矢子が
「そうすると あなたはそのお金を一杯出してチケットを買った
業者さんから貰った訳なんだ 凄いわねそこの業者さんどこ?」
「うん アルタの内藤社長さ」
「へぇ 凄い アルタさんも 会員制ホテル業界から
認められているんだ そして そのチケットを貰ったあなたは
アルタから認められている」
「うん まあ そこでこの会員権を買った場合に10年くらい
利用すれば元が取れる計算なんだよ」
「ええ 大体そのように設定されているわね 実はうちもあるの
リゾート部分が ただプールとかテニス場はこれからですけど」
「へぇー知らなかった と言うより聞く機会なかったし
それで金額?」
「うちは高いわよ 1200万円で販売しているけど
権売業者では 今1500万円で取引されているわ」
「えっ 1500万円 高いと言うか分らないな」
「しかし あなたも会員よ だってカード受け取ったでしょ」
「うん」
神山は免許証入れからカードを取り出し
「これが1200万円 へぇー
そうすると売ると最低でも1000万か」
「うん普通はね だけどあなたのは譲渡や売買できない会員なの」 
「なんだ でも凄いね それだけの価値があるんだ このカード」
「ええ アルタさんでは 社長が一般の会員権で
奥様 おばあちゃんや 家族の方は あなたと一緒よ」
「へぇ~ 凄いね」
「結局 正会員様に対し5枚までかな 非売のカードを作れるのは」
「まあ 一緒に居れば問題ないし フロントで告げれば問題ないけど
カードがあれば いちいち正会員に断らなくても利用できるしね」
「ええ そうゆうメリットは有るわ
だから 貴方は選ばれたエリートなの 自由に使えるわよホテルを」
「そうか いつ行ってもいつもの最上階?」
「ええ 貴方の場合は最上階よ」
「そうすると アルタはアウトレットの仕事が有るけど
どうするのかな 人数が大変でしょ」
「基本的にはスタンダードを利用して頂いくし
ベッドも増やすと思うわ」
「そうか それで僕が行くと 最上階で、、、ちょっと可哀相だね」
「仕方ないでしょ慈善事業じゃないから
アルタさんも分ってくださるわ」  
「そうすると 僕はどう言う事になるんだろう?」
「いいの あなたは 椿が認定したんだから だから同じ
VIPカード会員でも 貴方のほうが上にランクされているの
だから 最高級のVIPなの わかる?」
「いや全然」
「ほら 椿オーナー自ら認定したから上なのよ
もっと分りやすく言うとね 正会員さんはゴールドカードなの
その下がシルバーカードなの 貴方はプラチナカードでしょ
だから上なの」
「でも 譲渡が出来ない限定会員な訳だ」
「そう だから威張っていていいのよ 好きなこと出来るわ」
「もういいよ 君をゲットしたから」
「まあ だから内藤さまのお仕事でも 椿が絡んでいない時は
普通のシルバー会員の扱いになるわ この間のように
椿が絡んでいれば プラチナ会員と同じよ
まあゴールドも一緒だけど」
「うん分った これからも亜矢子の顔を見に時々行こう」
「うん 待っているわ」
亜矢子は神山に抱きつき 唇を合わせた
神山はさっきから大きな音が気になっているので
「ねぇ やけに音が響かないか まあ寝るのに気にならないけど」
「ごめんなさい わたしが使っているの お化粧室で乾かしているの
多分乾いたと思うから ちょっと待っていて」
亜矢子は立ち上がって 化粧室に入り洗濯物を持ってきた
ショーツを丁寧にたたむとクローゼットのバッグにしまった
化粧室の乾燥ボタンをOFFにすると静かな部屋に戻った
「さっき露天風呂から帰ってから洗ったの 
貴方がよごしたパ、ン、ツを」
「ごめんごめん 乾燥機の音だったんだ 乾いた?」 
「ええ ちゃんと乾いていたわ」






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2012年10月15日月曜日

青葉 4 - 18 Vol. 2



しかし田代が
「しかし 車があっても 内野君一人では出来ませんよ」
高橋は人差し指で 自分の顔を指し
「忘れていませんか 私を ねぇ山ちゃん」
「そうそう 孝ちゃんがいたよね」
「だって 高橋さんは久しぶりの休みじゃないですか」
「うん いいよ 御殿場に行くぞ」
高橋はコブシをつくり手をあげた神山は高橋を見てにこっと笑った
「そうだ 内野君に連絡しよう」
高橋は内野に携帯で事の成り行きを説明し理解してもらった
「高橋さん 大丈夫ですか 内野君と2人で?」
「田代さん 山ちゃんにも行って貰うよ どうですか神山部長?」
「そうですね 車の件もあるし現場も見たいし 行きましょう」
「ねっ だから大丈夫です」
高橋が会計をするので 先に出たが田代だけ呼ばれ残った
現場に置いてある車まで田代は残念がっていたが
高橋に宥められ 
「次もありますからね その時はご一緒しましょう」
そう言って 元気を取り戻した
高橋にお礼を言うと 高橋のほうが深々とお辞儀をした
挨拶を済ませると バンは横浜に向かった

高速を利用して横浜に着くまで 田代は御殿場の話をしなかった
神山もあえてゴルフの話題は避け 若い二人と雑談をした
田代は高速をおり 神山に確認をしながらマンションに着いた
「はい 神山さん 着きました お疲れ様です」
「どうも ありがとうございました」
田代はそう言うと車から降りて来て
「今度 ご一緒お願いします」
ゴルフのグリップを握る仕草をして言った
「はい 今回はすみません 御殿場が進めば行けますよ」
「ええ そうしましょう」
神山と田代は握手をして別れたが 車の中から若い二人が
「ありがとうございました 宜しくお願いします」
神山は皆に手を振り車を見送った
部屋に入ると4月5日に出て行ったままになっていて
窓を開けたり 換気扇を回したりした
郵便物が溢れているので 管理人室まで聞きに行くと
大抵はゴルフ場の勧誘だったり 緊急を要する手紙類は無かったが
一応確認の為 全てを部屋に持ち帰り 整理をした 
26日夜の御殿場工事について奥村に連絡した
「神山です」
「おお 昨日はご苦労様 今少し前内藤社長から電話があったよ」
「えっ 例の車ですか?」
「うんそうだ 大変喜んでいたよ」
「ええ アルタの人手不足などを考慮したり 御殿場の仕事を
考えると あの方法しかなかったのです
出すぎたかもしれませんが すみません」
「う~ん 少し問題はあるがしょうがないな
ところで 今 どこに居るの?」
「ええ 横浜の自宅で整理しています 何しろ10日振り
なので 郵便物が多くて一応全てに目を通している所です」
「そうか 10日振りか 換気扇は回している?」
「ええ 窓を開け 換気扇を回しています」
「うん 大変だな それで何時ごろ来れる?」
「多分 夕方としか言えませんが、、、何か?」
「いや大した事ではないけど
けさ ホテル催事で翔が陳列した オープン棚があるだろ」
「ええ 指示しましたが それが何か?」
「先方が偉く気に入って 売場でもあのような方法で出来ないかとか
イベントの時は あの方法がいいとか うれしい悲鳴さ
そこで 山ちゃんに経費を掛けないで 効率のいい陳列方法を
あの部長さんに 教えてもらいたいんだよ」
「えっ それは良いですが 翔でも出来る事でしょ」
「うん しかし翔はお茶をご馳走された時 山ちゃんの名前を伝え
少し大げさに紹介してしまったんだと ほんとうに困ったよ」
「えっ 大げさに僕を、、、名前までだした、、、
なんで、、、考えられないアホですね」
「うん 喜んでもらうのは良いが 経費は掛けられないし
例え安く済んでも 催事課の予算ではないからな」
「そのように 突っ張れないんですか」
「うん 一回話したが だめだった そこでご本人が登場ですよ」
「はい 了解しました しかしほんと夕方としか答えられませんよ
着る物を整理して 上原に送らなければいけないし、、、」
「分った 先方には夕方と伝えよう」 
「倉さんは居ますか」
「今日は休みだけど なにかあった?」
「いや 翔をしかってもらおうと思って」
「はは だめだよ 翔は落ち込んでいて どっかに消えた」
「帰ったんですか」
「いや 帰ってはいない 翔のバッグが置いてあるから」
「了解です なるだけ早く帰ります」
「うん たのみます」
奥村との電話を終えると これからの季節に必要な洋服や靴などを
ダンボールに入れ 宅配便を扱っている店に出しに行った
部屋に戻り時計を見てみると15時になっていた
冷蔵庫からビールを取り出して呑み
横になって考えていると寝てしまった

携帯電話がなり 慌てて起きた 杉田翔からだった
「先輩 すみません 怒っていますよね」
神山は時計を見たら16時になっていた
「うん 凄く怒っている 今考えている所だ」
「すみません だけど大げさに言っていないですよ 僕は、、、」
「まあ あとでな ゆっくり聞くから」
神山は電話を切ると周りを片付けて直ぐに着る洋服類を
紙バッグにいれ 部屋の中をもう一度見回した
窓を閉め換気扇を止め部屋を出て 交差点まで来た時に
荷物があるので電車を使わず車で行く事にした
神山は上原のマンション経由で 銀座に行った
部屋に入ると 由香里が近づいてきて
「会議室で待っているわ 翔も一緒よ」
「わかった ありがとう」
いったん席に荷物を置いて会議室に行こうとした時 奥村が
「山ちゃん 頼むよ」
両手を合わせ お願いした
「分りました」
会議室に入ると翔とブティックの部長が無言で向かい合っていた
「あっ 先輩 ありがとうございます」
「どうもお待たせいたしました 神山と申します」
神山は名刺を差し出しながら 礼をした
(あれっ 何処かで合っているな、、、)
先方も名刺を出し 首をさげた 
「さあ どうぞ それから 杉田君 君はいいよ ありがとう」
「大変お待たせいたしました 今回はご迷惑をお掛けしました」
神山が挨拶をしていると 部長が 
「神山さん 上野店に居られませんでしたか?」
「ええ 上野には長く居ましたが なにか?」
「やっぱり ほら8年程前 一階の改装工事 大掛かりな
あの時にお世話になった 矢部ですよ」
「ああ うちのハンドバッグ什器を間違って本社に
もって帰り 廃棄した あの時の ああ 思い出しましたよ」
二人は8年前を思い出し笑った
上野店の改装工事の時 
ハンドバッグ売場の什器を自社持ち込み什器と
間違え 会社に持って行き 廃棄処分をしてしまった
当時 担当だった神山は出てきた什器を補修し 
他店での再利用計画の事務手続きをしていたが員数が合わず
発覚した事件だった
「そうですね あの時はびっくりしましたよ
どうしても10数台足りなくなり うちの取引業者に
間違って持って行っていないか 何度も聞きましたからね
あの時の矢部さんでしたか」
「あの時は 本当にすみませんでした ちゃんとチェックしていた
つもりだったんですがね 済みませんでした」
「それより今回は済みませんでした 間違った什器で」
「でも杉田さんに伺った処 神山部長のアドバイスとの事
コレは売場展開やイベントで使えるなと思いましたので、、、
現在 売場では上野で展開していた方法なんですが
いまいち 今日の陳列のほうが売れる気がするんですよ
現に 130%の出来です 16時〆でですよ」
「うん 分りますが 売場の設計は催事課では出来ないんですよ
勿論イベントの時はうちが担当ですがね 
しかし 矢部さんも分ってくださると思いますが
全て経費予算なんです」
「わかりました 売場に付いては一度 雑貨部長と相談します
イベントの時は 何とかなりませんか」
「はっきり申し上げますが 戻入でできます
しかし 今回のように上野が予算を握っている時は こちらでは
どうにもできませんよ そこは分ってください」
「はい しかし今日のように 予算達成すれば会社も出しますよ」
「そうですね 戻入が絡んだ時は 私のところに直接来て下さい
こじれると ややこしくなるだけですからね」
「はい 分りました お休みのところ済みませんでした」
(休みじゃないぞ さては翔かな それともこのTシャツかな)
「いえいえ では」
お互いにお辞儀をして 部屋を出ると由香里や翔 奥村がいて
「どうもありがとうございました」
「いえ ご迷惑をお掛けしました
杉田さんどうも ありがとうございました では失礼します」
そう言うと矢部は部屋を出て行った

「山ちゃん どうしたの 凄いね」
「そうよ だってあの人お茶を出しても無口で 怖かったわ」
「先輩 ありがとうございます ほんと助かりました」
「ええ それより先に売場に電話します」
神山は雑貨部長に電話をして 事の経緯を話した
部長もホテルオートモの数字は把握していて 神山は誉められた
矢部が相談に伺う件と現状では催事予算で出来ない事を伝えた
「うん 分った しかし神山部長 有名ですね」
「そんな事ないですよ かえって有名税で振り回されています」
神山は雑貨部長に理解してもらい 皆をテーブルに招いた
先ほど会議室での経緯を話すと 
「僕も先輩と同じ話をしたんですけど、、、」
「おばかちゃんね 神山さんは 抜きん出ているの 分る ねぇ」
由香里が嬉しそうな顔をこちらに向けたので 頷いた
「しかし8年前にそんな事があったんだ 大変だったね山ちゃん」
「ええ 取引のある什器屋に全部探させましたからね
僕にとっては死活問題でしたよ 終いに改装工事に該当している
会社に当ったら 矢部さんのところで廃棄処分していた事が
分ったんです」
「しかし ほんと良かったよ 倉さんが居てくれれば 
又別の方法で 帰って貰うことが出来ただろうが 休みだしね」
由香里がうっとりして神山の顔を見ているがその時に
「ねぇ あなっ、、、あの コーヒーでも入れましょうか」
由香里がとちった事を神山以外に気が付かなかった
「うん そうしよう 翔 これで地下に行って美味しいケーキを
買ってきて ただし 1個1000円はなし 
それから1人1個で良いからな」
「どうしたの そんな あな、、、神山さんが出さなくても」
「いいから 早く行って買って来い」
「はい 買ってきます だけど1個1000円なんて無いですよ」
杉田はしぶしぶ地下食料品売場で ショートケーキをかった
部屋に戻ると コーヒーとお皿が用意されていて
みなの機嫌が直った所で 神山が奥村に
「課長 26日の日曜日 私も御殿場に行きます
一応 夕方からの仕事ですが 小田原工場に立ち寄って
行きますのでニーナ・ニーナの 仕事が終ったら 
出かける事にします」
「う~ん そうすると夜 主役が居なくなるな ねぇ由香里姫」
「仕方無いと思いますよ アルタさんに今まで借りがありますし」
「そうだね わかった それで 27日は何時になるの」
「ええ 27日はこっちでお休みにします」
神山は小さい声で ゴルフの格好をして伝えた
「うん わかった 由香里姫 山ちゃん27日は休みだ」
由香里はやっぱりと言う顔で神山をにらんだが くすっと笑った
「だけど山ちゃん 御殿場が本格的になったら こうやって
いちいち報告されても困るな、、、」
「明日 倉本さんが出てきてからでいいでしょ」
「そうだな なんと言ってもこうなる事は分っていた事だしな
それに 遊んでいるわけじゃないしな」
神山はその言葉には引っかかったがあえて反論しなかった
ケーキを食べコーヒーを飲み干すと お辞儀して売場に行った

1階のニーナ・ニーナに行くと祥子が待っていて
「この札入れを用意しておきました」
今朝言っていたように紳士ものは少なく3点しかなかった
色々と触ると一つだけゴルフ手袋の肌触りするのがあった
「コレは子羊で出来ているの だから柔らかくて軽いわ」
「うん決めた これでいい」
神山は値札の18000円を出すと祥子は
「家族割で25%オフの13500円でOKよ」
祥子はお金を受け取ると包装しようとしたが 神山は
「直ぐに使うからこのままでいいよ」
神山は値札やタッグを取って貰い
ポケットに入れてあったお札を入れた
折りたたんだ時のしわが出ないし シンプルで気に入った
「ご無沙汰しています」
浜野由貴が近寄り話し掛けてきた
「どうですか 仕事は?」
「ええ 先日社長から注意を受け 謙虚に進んでいます」
浜野は神山が全てを知っていると思いあっけらかんと話した
「うん 会社の販売戦略は必要だからね」
あたりさわりないよう 伝えた
「神山部長 久保さん素敵なバンドルされているのご存知?」
「ああ さっきちょっこと見たけど それがなにか」
「私も ほしいな~と思っているの」
浜野は財布にしまったお札を見ていたのか 甘えてきた
「君だって 魅力的だよ 買ってくれる人いるんだろ」
「ぜんぜん だから神山部長に頼もうかなっ~」
「はいはい 浜野さん お仕事お仕事よ」
祥子は浜野が仕事以外の話をしているので注意した
「ねぇ 内藤夫人になにかプレゼントしたいんだけど、、、」
「そうね ロレックスを2つも頂いたしね」
「今すぐでなくて良いけど 一応頭に入れておいて下さい」
「は~い 電話ください」
神山は頷き 店を出てから直ぐに電話した
「久保です」
「ああ 僕だけど」
「昨夜はありがとうございます
今夜お礼がしたいのですがお時間は?」
「ああ 上原の現場で待っています 大体7時には居ます」
「はい かしこまりました では失礼します」
神山は傍に誰かいて私語が話せなかったんだと思った
部屋に戻ると 杉田に買ったばかりの札入れを見せた
「先輩 かっこいいですよ シンプルで柔らかくて」
そう言いながら表側をじろじろと見回したが 
どこのブランドか分らず
「どこのブランドですか?」
「店内で売っているよ」
そう言って 残っている仕事を精力的にこなして
「翔 お中元のデザインはどこまで進んでいる?」
「ええ 一応先輩からFAXしてもらったのと コレです」
神山は自分のデザインを上手に利用してデザインされているので
「よしOK あと残っていないか」
「ええ 制作する物は全てOKです」
「そうすると1階メインのフラッグだけだな」
「そうですね」
「造花のサンプルとか 刷り物の色出しはどうなっている?」
「ええ 垂れ幕やPOP関係はOKです 先日工場で確認しました
あと造花が綺麗な緑が無くて探しています」
「うんそうなんだよ オレも苦労したよ 確か浅草に
1件取り扱っているところが合ったけど 
今も輸入しているかどうか?」
神山は早速電話した
お店は大きいので潰れていないと思ったが 電話は通じた
責任者も覚えていて 当時の輸入品もあることが分った
「翔 『浅草 大正堂』にサンプルを依頼した 責任者は須藤さん
それで 明日届くから 倉さんと相談してくれ いいな
ここはいまでも上野店に口座はある
取引高など詳細は由香里姫にお願いする」
「はい 了解です」
神山は奥村にお中元のデザインを報告した
造花を除いて順調に進んでいる事
造花は大正堂からサンプルを取り寄せること
などなど話し 翔も交えて詰めていった
由香里に浅草 大正堂の口座確認と取引高を確認してもらう
「神山さん 大正堂の件 大丈夫ですよ
毎年 だいたい250万位取引があります 銀座より多いわね」
「うん 正月の飾付けなどは一箇所で買うから ちょっと違うね」
最悪 大正堂で購入することもその時決まった
「そうしたら 倉さんに伝えておいて下さい 
多分ウインドーで使うし ある程度確保しないと、、、
それと倉さんにメモして置きます」
「うん そうだな 翔も気が付いたら 頼んだぞ」
「はい 了解しました」
奥村は予算を気にしていたが 予算内で収まりそうなので安心した
管理職は予算管理が主なる仕事で あとはおまけみたいなものだった
勿論 課員の動向も気にしなければいけないし管理も必要だが
余程酷い事件を起こしたとかなければ監督責任は問われない

「やあ 孝ちゃん おばんです」
「いらっしゃい 丁度よかった 照明が入りましたよ 今朝のも」
神山は18時過ぎまで催事課で仕事をし 上原の現場に直行した
「いいですね 思った通り柔らかい いい光線ですね」
「ええ 外光と調和して 商品が映えますね」
「あとは実際に陳列した時 どうかだね」
「そうですね 楽しみです」
「それから 孝ちゃん26日のゴルフOKだよ 正式に」
「良かったですね 胸を張って行かれますね」
「田代さんが可哀相だけどね 御殿場が始まったら行かれるしね」
「そうそう 今度はこちらがいかれないかもね」
ゴルフの話をしていると祥子が店内に入ってきた
「こんばんわ お世話になっています」
「やあ」
「いらっしゃい 久保さん」
「ふぁ~ 素敵なひかり やさしいひかりねっ 神山さん」
外光は青がかった色をしていて 商品が死んでしまうので
天井の照明で光の色を調整しなければならなかった
今日の祥子はベージュのパンツに白のTシャツ 
淡い藤色のジャケット姿だった
「久保さん ちょっとこっちに来て」
神山は窓際に居る祥子を壁面のほうに招き 光の色を確認した
「うん 綺麗にでるね このベージュが綺麗に出れば問題なしだね」
祥子も自分のパンツを見て 頷いた
「もしかして お店より明るいかもしれないわ」
「うん 明るさは照度と言うんだけど確かにあるね ねっ孝ちゃん」
「ええ でもほんの少しですよ 店でも光の色を考えてくれれば
もっと 明るく感じるでしょう
ちなみに今流行っているのは ピンスポットですが これは明るく
色もいいので 皆使い始めてきてますよ」
「そうだね 新宿伊勢仁とか高丸とか使っているね」
神山は祥子に気に入ってもらい満足していた
当初は もっと一般的な照明を考えていたが 日中外光を
取り入れる事に変更され 神山が提案した照明の色になった 
「孝ちゃん 晩飯は?」
「うん まだだけど どうします」
「現場は?」
「うん さっき食べたよ」
「出られる?」
「う~ん ちょっと難しいかな たまには2人でゆっくりしたら」
「そうします 明日は日曜日だけど 工程表どうり?」
「うん サインなど来ますよ 工程どおり」
「そうしたら 朝 立ち寄ります」
「朝までに綺麗になっていますよ お楽しみに」
「それでは」
神山は手を振ったが 祥子は深々とお辞儀をし店を出た
「さあ 祥子 どこに行く?」
「渋谷なんだけど 美味しい中華があるの そこでいい?」
「いいけど よく知っているね」
「ううん 貴方が御殿場に行った時 高橋さんにご馳走なったの
筒井も美味しいって 楽しかったけど 私は寂しかったわ」
神山は14日内藤夫妻 田代と4人で御殿場に行き楽しい
思いをしたが 祥子には寂しい思いをさせてしまったと思った

坂を下ると空のタクシーが来たので乗車して行き先を伝えた
二人だけで夕食するのは久しぶりなので 気分が高まった
中華料理店に入ると土曜日で結構賑わっていたが
丁度 夜景が見える窓際が空いたので 案内された
祥子が言うように店内は綺麗なつくりで 
ごてごてした飾りは無かった
神山もここはいいところだと 祥子を誉めた
神山と祥子は何にするか 決めかねていたが祥子が
「ねぇ 単品で少しづつ 頼んで 最後におそばはどう?」
「うん よし決めよう」
神山はウエイトレスを呼び 先にビールを注文した
ビールがくるまで 10品位候補を出し 彼女に注文した
料金も安く 親切なのでますます気に入った 後は味だけだった
ビールが来るとすぐ無くなるのでピッチャーも頼んだ
暫くすると テーブルの上は料理で一杯になった
少量づつ色々種類があると それだけで楽しい気分になれた
神山はなるたけ仕事の話はしないつもりだが
今日は少しだけ違った 杉田の失敗談や
アルタの配車など話していると
「あなた 疲れているのね 普段そんな話しないのに」
「そうか 疲れているのかな~ そんな事無いよ
ところでご夫人のプレゼントだけど なにかあった?」
「ええ 色々と考えたの だけど彼女デザイナーでしょ」
「うん まあファッションではないけどね」
「そうね だから難しいわ ニーナ・ニーナの商品だと」
「なんで?」
「うん もっと レベルの高いブランドよ 
だってロレックス2つよ」
「そうか 例えばシャネルとか 超有名ブランドかぁ~」
「そうね ニーナ・ニーナもパリに行けば大変有名よ
だけど日本では まだまだマイナーだし、、、」
「そうだよね 僕なりに探してみるよ」
「ええ 私も気が付いたら電話するわ」    
神山と祥子は箸が進み おなか一杯にし店を出たら22時だった 
美味しい中華を堪能した二人には まだ時間があった
祥子が
「ねぇ 久しぶりにカラオケ行かない?」
「そうだね 行こう」
二人はホテル近くにある カラオケBOXに入った
若い女の子は丈の短いYシャツでおへそ丸出しで歩いていた
夜になるとまだ肌寒いのに 見ていると自分が寒くなってくる
男の子はさすが半ズボンの格好は居ないが 
それでも真夏と間違える ファッションをしていた
会社帰りの二人連れは少なくないが 
肩を寄せ合い男性がリードして
女性は甘えるように肩に寄りかかって歩いていた


4月22日 水曜日 15時 ◎
「神山さん 着きましたよ 熱海駅ですよ」
神山はどこからか聞こえてくる声で起きた
「やあ すみません 気がつかなかった ありがとうございます」
「いえいえ まだ 3時前ですが大丈夫ですか?」
「ああ ありがとうございます」
「それは良かったです」 
「それより 26日のゴルフはすみませんね」
「いえいえ 全然気にしていませんから ほんとうに
アウトレットが始まれば いつでも出来るでしょう
それより 神山さんは 御殿場までどうやって来ますか?」
「そうだよね 毎回 田代さんとはいかないだろうし、、、」
「そうですよね 私も都合よく上原に行かれれば良いんですけどね」
「まあ その時はその時さ 兎にも角にもありがとうございました
それと24日の什器ですが お願いしますね」
「はい 了解です あっ これ私の携帯番号です」
「はい わかりました では」
神山は田代の車を降りると手を振って見送った
田代は取引先に向かうのでここで別れた
(さて 時間が出来たな さてどうしたものか
余りうろうろしてネコに見つかっても ややこしいし)
亜矢子から1時間位遅れると連絡を受けたものの
待ち時間が中途半端で動けなかった
居酒屋は開いているが 呑みすぎると夕飯の時美味しくないし
色々と考えた末 駅公舎にある喫茶店に入った
外の景色がよく見えるところで コーヒーを啜った
よく見てみると ロータリーになっているタクシー乗り場には
水曜日なのに家族連れとか若いカップルが目に付いた
小さい女の子が父親にぶら下がったり 男の子は母親に
キオスクを指差しなにかねだっている様子だ
もっと年寄りが多いと思っていたので意外な発見だった
魚屋の若者が大声をあげて客引きをしているが
なかなか寄り付かないで 知っている人は
熱海でも別なところで買っていそうだった
コーヒーも2杯飲むと3杯は飲めなかった
窓の外にデパートが正面にあるのでそこに行くことにした
地方のデパートと言っても地域一番店らしく
品揃えもしっかりしていたが 単価は安く設定されていて
結構集客はあり賑わっていた
女性客が殆どで 男性が店内をうろうろしていると変に
思われそうなので エスカレーターで屋上にでた





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2012年10月10日水曜日

青葉 4 - 18 Vol. 1



4月18日 土曜日 曇り

上原マンション
神山は携帯電話のアラームがけたたましく鳴り起こされた
昨夜は祥子にモテリコのバンドルをプレゼントし
喜んだ顔を見た後 祝賀会の疲れが出てベッドに入った
ご祝儀も確かめないといけないし 祥子より早く起きた
クローゼットのジャケットやパンツのポケットから封筒を出し
テーブルの上に置き 中味を見た
内藤社長10万円 細川社長 田丸社長 店長が各5万円
取引先が合計約60万円 合計85万円もあった
スーパーデコの朝川典子と品川鮎子のメッセージは神山の応援と
会社の宣伝が書かれていて 特に個人的特別な表現はなかった
問題は山崎愛から貰ったコンドーム 佐々木艶子の無料招待券と
メッセージをどうするか考えた
無料招待券は免許証入れにしまえば良い事だが
コンドームは普段から 持ち歩かないので困り果てた
考えた末にカメラバックにある 小さな隠しポケットにしまった
(しかし 彼女も大胆だな みんなにこんな事をしているんだろうか
少し 様子を見てみよう)
神山は貰ったご祝儀の使い道を考えたが
今のところ不自由はしていないので銀行に銀行に預ける事にした
真奈美から貰ったロレックスは神山も気に入り 皮を慣らすために
普段からはめるよう心がけた
昨日の整理が一通り終ると7時になったので 高橋に電話した
「神山です おはようです」
「高橋です おはようございます 早いですね」
「うん 昨日はありがとうございます」
「いえいえ ところで今朝は、、、」
「うん 8時を少し過ぎるが 現場に行きますよ」
「はい 了解です」
「それで 今日は夕方まで付いていなくて平気かな?」
「ええ 大丈夫ですよ なにか?」
「うん 暫く横浜に帰っていないから 行ってみようかなと」
「はい 了解です それで何時に行かれますか」
「うん 午前中の確認が終ったら行こうかなと思っているんだ」
「そうしたら 横浜の田代が来ますから帰りの車を使ってください」
「そうか そうしたら便乗するか」
「ええ 帰りは電車でお願いします」
「了解 ではあとで」
神山は由香里に電話をした
「神山です 朝早くからごめんね」
「いえ 昨日はお疲れ様でした」
「ありがとう ところで今日のスケジュールだけど」
現場状況 横浜帰宅の件で夕方出社する事を
課長に伝えて欲しいと言った
「了解したわよ それと昨夜はどうでした」
「なにが、、、」
「久保さんと一緒だったでしょ」
「仕事だよ それに筒井さんも一緒だよ 何もないよ 残念ながら」
「なによ 心配して言っているのに 残念ながらって ば~か」
「おいおい 朝から そんなに怒らないで」
「自分が悪いんでしょ」
「はいはい 僕が悪かったです」
「そうしたら 昨夜一杯貰ったご祝儀で 美味しいもの食べよっ」
「はい 了解です」
神山は由香里がまだ言いたそうだったが電話を切った
昨日 祥子と二人だけで帰ったら大変な事になっていただろう
そう思うと内藤社長と筒井の配慮に頭があがらない思いをした
(しかし 女性は嫉妬深いな)
と 思ったがそのように心を仕向けたのは自分だと反省した
FAXを確認してみると 上原の物はなく御殿場グランドイン
サイン工事が順調に進んでいる知らせと
小田原工場の連絡先が書かれた メッセージが届いていた
それを見て アルタの高橋に確認の電話をした 
「神山ですが 孝ちゃん
第二貨物には小田原の連絡先を知らせてある?」
「ええ あの日うなぎ屋から帰った後 教えて頂いた方に
連絡はして有りますが、、、 どうかされましたか?」
「ううん もれていると大変だから」
「大丈夫ですよ」
「うん 了解 では」
神山はまだ時間があるのでお中元や店外催事など
会社の仕事を集中してこなした
一通り出来たので会社にFAXし
冷蔵庫からビールを取り出し呑んだ
久しぶりにテラスに出てみると 気持ちよい風が流れていた
駅に続いている道路に目をやると
今日の事を考えているのかサラリーマンの姿が目立ってきた
(そうか 普通のサラリーマンはこんな早い時間に出勤なんだ
そうだよな 孝ちゃんもこの位の時間には出勤だよな)
神山は恵まれている環境に感謝した
(それにしても ビールを呑んでたばこを吸っていると
仕事を休みたくなちゃうな ああ気持ちいいな~)
自室のテラスでこんなにゆっくりしたのは初めてだった

ビールが空になったので部屋に戻りもう一本出し呑んでいると
携帯電話がなった 神山はもしかしてと思いながら出てみた
「翔です 朝早くからすみません」
「うん どうした?」
「ええ ホテルオートモに来ているんですが」
「そうか 現場監督 ご苦労さん」
「はい しかしバッグのガラスケースが少ないんです」
「しかし 銀座店ブティックの什器手配も上野店だろ」
「ええ 完全に手配ミスでバッグの陳列が出来ない状態です」
神山は暫く考え
「そうしたら残っている什器は何が有る?」
「ええ 棚什器が員数分残っています」
「それでは その棚什器を上手に配置して バッグを陳列する事
棚板は2枚で 下は開けておく 一番下には余った造花を置けば
なんとかならないか」
「そうですね 下は600開ければ問題ないですよね」
「そうだな 造花は余っている?」
「無いので リースのプランターを置きます」
「そうだね 天気もいいから 見た目もOKじゃない」
「ありがとうございます 助かりました」
「そんな 本来は僕の仕事だからな こちらこそ助かっているよ
それで 什器屋の手配ミスか?」
「そうですね 員数はあっていますから」
「わかった 部屋にはこの事をFAXして置く 
朝早くから 大変だ ご苦労様 また何か有ったら携帯まで」
「はい 今日は、、、」
「夕方に部屋に行く」
「了解しました では」
神山はこの出来事を由香里と倉元宛にFAXした時電話が鳴った
出てみると 祥子からだった
「おはよ~ 電話に出るの早いわね」
「うん 仕事するから早めに起きた」
「偉いわ わたし 今起きたばかりだから 30分位したら来て」
「了解です」

神山は上原の天井図面センターテーブルに広げをもう一度眺め
照明など詳細を細かくチェックした
一箇所だけ気になる所が在ったので赤丸を付け図面をバッグに入れ
再びテラスでビールを呑んだ
下を見ると今度は小学生がわいわい言いながら
黄色い帽子があっち向いたり こっち向いたりと朝日に輝く
花のようだった
暫くのんびりしたあと 横浜で何が起きているか分らないので
20万円ほど ジャケットのポケットにしまった
神山は財布を持たない主義で お札はいつもはだかだった
小銭入れを持っているが お札入れは色々入れると太って
厚くなり扱いにくく 入れるものも無いので使っていなかった
カードは何枚も無いので免許証入れに入れておけば問題なかったが
今後 色々と付き合いがあるし お札入れを購入しようか考えた 
時計を見ると8時を少し過ぎたので祥子の部屋に行った
部屋に入るとすでに朝食の準備は出来ていて
「丁度 良かったわ 呼びに行こうと思っていたのよ」
今朝は和食ではなく 簡単な洋食だった
それでも神山はこのように準備してくれる祥子に感謝した
「美味しそうだねベーコンエッグ そうだビールは残っている?」
「ええ 呑もうか だけどあなたは呑んでいたでしょ」
「うん ちょっとだけ 呑もう」
神山はビールを呑みながら 食事をした
「今日は昼に久しぶりに横浜に行って来る」
「会社には、、、」
「うん 夕方かな」
神山と祥子が今日のスケジュールを確認し
お札入れの事を聞いてみると
「ニーナ・ニーナにも有るわよ ただ男性用は種類が少ないのよ
お店に入ったら 見に来てくれる 全部用意しておくわ」
「うん ありがとう」
神山と祥子はお札入れの事を話題にしながら食事を終え
「では 部屋で待っているよ 出かける時声を掛けて」
「は~い もう出かける準備は出来ているから直ぐ出られるわ」
「わかった まっていま~す」
神山も部屋に戻って 
準備をしていると直ぐに部屋のベルが鳴った
「早いね 食器ちゃんと洗ったの?」
「ええ 気が付かなかった 全自動の食器洗い機が有ったの?」
「うん 気が付かなかった」
「安いのがあったから買っちゃたの」
「それで早く出られたんだ」
「そうよ だから食器洗い機に感謝してね」

マンションを出てみるとテラスで見た風景と違い
いつもの静寂な住宅街に戻っていた
祥子が左腕を神山の前に突き出し 昨日のバンドルを見せながら
嬉しそうな顔をして 組んだ腕に力を入れて駅に向かった
現場に近くなると祥子に
「どうする 寄って行く?」
「ううん あなたに任せるわ」
神山は改札口まで祥子を送って行き 祥子から
「それでは行ってきま~す 夕方待っていますね」
そう言うとほほに軽くキスをし階段を上っていった
「やあ 遅くなってごめんなさい」 
「おはようございます 大丈夫ですよ」
「で 早速で申し訳ないけど」
神山は朝チェックした事を図面を出し説明した
「そうですね 山ちゃんが言う通りだけど ずらせるかな」
高橋は配線図面とここの基本図面をだし 照らし合わせた
「うん 何とかいけるでしょう 大丈夫」
神山が提案したのは棚近くにあるスポットだが移動OKがでた
「山ちゃんの言うと通り 僕自身もどうかなと思っていたんだ」
天井工事は穴あけが進んでいたが 
該当する穴開けはまだだったので 墨の出しなおしを指示した
実際ここまで工事が進むと 神山の出る幕はなく
1日中付いていなくても いい状態だが 
なにか起きた時の判断を自分の目で確認できる事が
最善だと思い現場に居る 
後は監督と雑談しながら情報を集める事もある
天井に丸い穴と四角い穴が全て開くと今度は塗装屋が入ってきた
塗装屋が準備をしている所に 横浜の田代がやってきた
田代が入ってくるなり
「おお 順調ですね」
「やあ 田代さん おはようございます」
「よう 早いじゃないですか」
「うん 本社で打ち合わせが一つ入った そうそう 例の御殿場」
「そうか なに御殿場も田代ちゃんが動くの?内野じゃないの?」
「うん 私になりそうなの」
二人の話を聞いた神山は 所長と言っても大変だなと感じた
「田代さん 大変ですね」
「ええ しかしドライブが好きだから 大丈夫」
高橋と田代が横浜に行く時間を調整していると高橋が
「山ちゃん 2時前後になるけどいい?」
「うん 僕は別に何時でも」
「そうしたら 田代さん こちらに寄ってくれる?」
「了解」
若手が荷物を運んでいたがまだ残っているので 皆で手伝った
作業が終った所で田代が神山に
「こちらの若手が 木村 譲二君 こちらが 小塚 保広君 
共に25歳のばりばりです さあ神山さんにご挨拶して」
「木村です 神山さんの事はよく聞いています 
これからも頑張りますのでお願いします」
「僕は 小塚と申します 木村が言ったように神山部長のことは
良くお耳にします がんばりますので宜しくお願いします」
「ありがとうございます 神山です
アルタさんには日ごろお世話になっています」
挨拶が終ると田代が神山に
「どうも済みません 遅くなって」
「いえいえ 仕事優先ですよ 待っています」

田代達が神山にお辞儀をしてバンをだすと
高橋は送られたものを開梱し一つ一つ丁寧にチェックした
天井埋め込み式の照明でホリゾントになっていて直接照明管が
見えない様 工夫をされている物だった
横浜の田代のところで検査はされているだろうが 現場の検査も
怠らないようしっかりと検査をしていた
「大丈夫ですね 神山さん OKですよ」
「うん いい感じだね 楽しみですよ
この照明はニーナ・ニーナでは初めてでしょ 
だから余計期待するよね」
「そうですね 夜は綺麗ですよ やわらかい光線で」
神山は仕事の邪魔にならないよう 現場の隅々を見て歩いたが
それも何回もしているので 外でタバコを吸っていると
「ファー 素敵なお店ね」
「そうね だけどまだ商品が入っていないから分らないけど」
「だけど こんな感じのお店って 無いわよ ここらでは」
これから出勤するのか 落ち着いた感じの女性の声だった
(そうか 商品が入っていないと 正直な感想はないな)
しかし神山は『こんな感じの お店ってここらでは無いわ』に
自信を持った 勿論アルタの設計だが 
神山も手を加えているからだった
天井塗装も順調に進み 器具類も収まって高橋も暇になり
「山ちゃん いい天気だね 今度ゴルフでもいこうよ」
「そうだね 御殿場だと社長に怒られるかな、、、」
「そんな事無いだろ そうだ 御殿場の工事が終ったら行こうか?」
「そうだね 取り付けに行ってそのままゴルフだ そうしよう」
「そうしよう だけど取り付けって 確か26日日曜日の夜だよ
ここのオープンでしょ 26日って」
「うん 26日の11時って聞いた」
「そうすると 関係者一同 夜まで拘束かな」
「う~ん 可能性はあるね しかし早いね 10日で制作なんて」
「うちとしては 単発は早いよ それに椿さんだし、、、」
「そうだね 内野君も張り切っているしね」
「だけど 田代が言っていた会議はその事だけかな?」
「と言うと」
「だって サイン工事だけだったら 電話で済むでしょ
だから 何か別な事で呼ばれたんじゃないかな」
「サインのデザインは決定して 概算見積りも出したんでしょ」
「ええ 内野君が打ち合わせをしていますが、、、」
「ねぇ 日曜日にさ サインを取り付けで 応援ですって言って」
「うん 内野君も出きるし 田代さんも出きるし 4人揃ったのに」
「まあ 次の機会にしましょうか 一応26日は頭入れておいて」
二人が話していると塗装屋が高橋を呼び 指示を聞いていた

神山は今後のスケジュールを確認していた時携帯が鳴った
「はい 神山ですが」
「お疲れ様です 翔です」
「うん ホテルは上手に行った?」
「ええ ありがとうございます 大成功で喜んでいます」
「それは良かった」
「ええ ブティックの部長さんが来られてこれからコレで
行くよって言って頂き 今からお茶して部屋に戻ります」
「喜んでもらって良かったけど オープン棚のほうが高いよな」
「ええ しかし戻入をちょこっとでも頂ければOKでしょ」
「うん だけど部長さんに直接言うなよ こじれるからな」
「はい 濁す言うか 責任者に聞いてください ですね」
「うん そうしよう」
「はい 了解です 由香里姫に電話しますがなにかありますか?」
「今のところ順調 そうだ携帯に電話くれるよう言ってくれ」
「はい 了解です」
神山はホテルの陳列方法ことは心配していなかったが
ブティックの部長が陳列方法を変えてくれというとなると困る
出店しているのは銀座店のブティックだが会場予算は
上野店管轄なので銀座店は口を挟めなかった
携帯がなったので出てみると由香里からだった
「どうかされましたか?」
「うん26日の日曜日だけど ニーナ・ニーナのオープンでしょ 
そこで店長も出席されるわけだよね?」
「ええ 公のスケジュールに入っていますが それが」
「うん 関係者一同 夜まで拘束されるのかなって事」
「う~ん 分らないけど 神山部長は多分無理でしょう
何考えているの 遊ぶ事ばかり考えていて 絶対無理っよ」
「おいおい 何をそんなに怒っているの? 今朝の事?」
「そうよ あの時は母がそばに居たから 許したけど、、、
はい 分りました、、、  今 忙しいから切りますね」
普段は神山の電話が最優先だがよっぽど 嫉妬しているのだろう
神山は貴重な情報を聞けず 困ってしまった
携帯電話が鳴った 杉田からだった
「今 由香里姫に電話して 報告したんですが
先輩の事 伝えたら 自分からすれば済むのにって 
凄くご機嫌斜めでしたが 電話ありましたか?」
「うん そのご機嫌斜めの声を一杯聞いて情報が掴めなかったよ」
「どうしたんですかね? 僕の話しの時は喜んでいたのに、、、」
「まあ あまり気にしないで 部長さんとお茶しなさい」  
「はい ありがとうございます では」

神山はいい部下がいて幸せだと感じた
「山ちゃん もう少しすると 梅崎君が変わりで来ますから
そしたらお昼行きましょう」
「うん そうしよう」
少し元気が無い神山を見て
「どうしたの 元気ないよ」
「う~ん 色々あって、、、」
高橋が中に入って暫くすると駅から梅崎が走ってきて
「こんにちは 神山部長」
きちんとお辞儀をして 中に入っていった
高橋が梅崎に仕事の流れの確認を終ると出てきて
「それでは 行きましょうか どうしますかメニューは」
「そしたらさ あそこの角にある とんかつ でも寿司にしよう」
「いいですよ とんかつでも そうか 寿司にしましょう」
昨夜来たばかりで12時間も経っていないので
女将さんと顔を合わせると なんか自分の家に帰った気になる
今日は土曜日なので家族づれも結構居た
席はいつものように奥座敷に案内され ビールが運ばれた
普段あまりしゃべらない女将さんが
「貴方達 あそこのお店を作っているんでしょ」
「ええ まあ」
「そう いや私は貴方達が働いている所見たこと無いけど
お客さんが そう言っていたものだから 聞いたのよ」
「、、、」
「そうそう それで私の親戚が新宿でお店を出すって言うんで
一応聞くだけ聞いてみる事になったのよ」
「はい すごいですね 新宿に出店なんて」
「それで 一応メモを渡して置きますから後で連絡してください」
「はい 分りました」
高橋は女将さんに名刺を差し出しメモを受け取った
「凄いね 孝ちゃん」
「しかし 概算でほとんど潰れるのが大半ですよ この手は」
「そうだね 素人は相場が分らないからね 
安かろう悪かろうってね」
「そうそう あとメンテも含めてね」
女将も心得たようで海鮮の盛り合わせを持ってきた
神山と高橋は女将を見て笑い 女将も笑った 

二人は御殿場の件が忘れられず話していると 
話題は自然にゴルフに移り26日が開放されるように願った
「孝ちゃんは そうすると大丈夫なんだ」
「ええ そうゆう役は社長ですから
山ちゃんも仕事だし大丈夫でしょ」
「うん そうだよな 仕事だよな、、、う~ん、、、」
「どうしたの そんなに悩んで」
「仕事だけど 翌日はどうしようかと 遅いと理由が、、、」
「いいじゃない はっきり言っちゃえばその方があとあと良いよ」
「そうだね では26日日曜日決定 しちゃおうか?」
「そうですね 僕のほうも大丈夫だし 田代さんだけです
横浜支店は 予定があって無いようなもんですから
特に支店長になると」
「そうだよね 田代さん支店長だもんね」
「ええ、、、」
しかしゴルフをしたい二人は 
あそこのコースはこうでこう攻めると
パーが取れるとかゴルフ談義に花を咲かせながら箸を動かした
今日はお互いビールが良く入るので つまみに巻物を頼んだ
以前高橋に巻物は箸でつまむのではなく 
手で食べると『通』らしいよと助言したら 
この頃は神山のまねをして手で食べるようになった
その巻物を口に持っていく時に高橋の携帯が鳴った
相手とは簡単に話が終った 
「今 田代さんからです
早く終ったのでこちらにはすぐに来るそうです」
「ほんと そしたら 早く出て現場で待っていようよ」
「まだ食事をしていないので ここに来ますから大丈夫ですよ」
「えっ ここに来るの じゃあ ゆっくり出来るね」
「ええ 慌てないで良かったです」
「留守番の梅崎クンは?」
「彼は早めしをしてきています 大丈夫ですよ」
「そうか 遅くなると おなか減るしな 若いし」
高橋は梅崎の上司 田中に電話した
内容は先ほど女将さんの新宿の件だった
メモを読み上げ 女将から聞いた事を伝えた 電話を切ると
「すみませんでした」
「いや 気にしていませんよ」
「うちも 山ちゃんが居てくれたら助かるんですが
人が居ないので」
「大変だよね 増やすって言ったって簡単なことじゃないしね」
「そうなんですよ ある程度できないと話しにならないし
もっと大変なのは 御殿場アウトレットがあるでしょ」
「そうだね あそこは大きいもんね 3,4人必要だよね
或いは 1課ごと必要かもね」
「そう ニーナ・ニーナだけなら僕だけで いや山ちゃんとで
出来るけど アレックスグループはちょっと大変ですよ
それに デザインが気に入ったらしく店舗が少し増えたんですよ」
「へぇ 凄いね ますます繁盛だ」
「ほんと 会社の繁栄は喜ばしいんですが、、正直困っています」
現在ニーナ・ニーナでも御殿場アウトレットの話は
進んでいない様子でアルタも設計が出来ない状況で困っていた
話し込んでいると 女将が田代達を案内してきた

「すみません お待たせしました」
「やあ そんなこと無いですよ 早くなって助かります」
先ほど挨拶居た二人が
「神山部長 失礼します」
と 改まって言っているので 高橋達3人は笑った
田代は運転があるので呑めないが 
小塚はまるっきり呑めなかった
木村はいける口だが 田代が呑まないので我慢した
若者2人は運ばれた定食を
味わうではなく腹につめこむ感じだった
田代が一息ついたところで高橋が会議の事を聞いた
「ええ 人員配置ですよ 高橋さんも知っているとおり
4月24、25、26日は横浜が在るでしょ そしてここの現場の
積み込みと降ろしが別れるでしょ そこなんですよ」
通常 積み込みにしろ降ろしにしろ 運転手が全て取り仕切るが
今回は全然知らない運送会社を使うので
その分人を余計に考えなくてはいけなくなった
小田原工場は良いとしても 
上原の現場ではそうも行かないだろうと 人員配置が出てきた
「そうだよね 田代さんのところで調整しているもんな
だけど今回は調整が利かないんだよね 御殿場は?」
「うん 26日の夜決定 だから余計人が居ないんですよ 困った」
「そうすると 御殿場は誰が行くの?」
「ええ 今は私ですが 横浜が居なくて、、、」
「車は?」
「ええ横浜で手配していますよ OKです」
「そうしたら 内野君を御殿場にして 田代さんが横浜はどう?」
「その案も出たんですが 車が無いんです それに彼一人では
作業出来ないでしょ」
「そうか どうにも動けないか、、、」
それを聞いていた神山は
「御殿場に行く車はバンでいいの?」
「ええ 先日使ったバンですね 大きさは」
「ちょっと待って」
神山は携帯を出してみやま運送へ電話した
「うん そう26日と27日で返しは28日の火曜日
うん 勿論 OK」
神山は高橋に OKサインをだした
「上手く行ったよ バンを26日朝から借りられる」
「えっ~ また~ ほんと」
高橋はてばなしで喜んだ 田代も暗かった表情が明るくなった
「でも 大丈夫ですか? どこですかその運送会社さんは」
「うん うちに入っている運送会社だから 大丈夫だよ
ほらお中元とか 外商がお客様に商品を届ける時に使うバンだよ」
「なるほど さすが山ちゃん また借りが出来たね」





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2012年10月5日金曜日

青葉 3 - 17 Vol. 4



「では 行きましょう 久保君がご一緒しますが よろしいですか」
「ええ 大歓迎ですよ」
「よかったら 私がご案内しましょうか」
「ええ 内藤社長にお任せします」
(まいった~ 二人一緒か~)
話がまとまり 奥村が課員に
「これから内藤さんと食事だが みな大丈夫か?」
すると市川が
「僕は呑めないので ここで失礼します」
「おう そうか わるいな」
「じゃあ 由香里姫と倉さん 翔と山ちゃんと僕か 5名だな」
内藤が奥村に近寄ってきて
「今 車2台用意しました 暫く待っていて下さい」
「そんな ありがとうございます」
車が付くまでみんなてんでんばらばらに話をしていたが
祥子と由香里の会話はなかった
暫く話し込んでいると 
黒塗りのハイヤー2台が車付けに着たので分乗した
神山は内藤 筒井 祥子 と一緒の車に乗った
内藤は運転手に青山のお店を告げると手帳を取り出し
会社に電話していた
真中に座った神山は祥子とは話さず筒井と話すよう心がけた
祥子もなるべく話さないようしているが それでも内藤から神山の
仕事内容とか色々と言われると
筒井を意識しながらぎこちない応答をした
そんなぎこちない話をしていると 青山のイタリヤ料理店に着いた

先日3丁目の『イタリアンレストラン スパ』を利用したが
ここ2丁目の『ざ いたりあん』も良く女性週刊誌などに
取上げられている有名店だった
外観から内装まで全て木を使っているので ログハウスの感もあり
中に入ると 飾り付けがなくシンプルで落ち着くお店だった
内藤が入り口を入るとマスターと話し 2階へと案内された
簡単な仕切りの奥には 内藤夫人と若い女性が座っていたが
内藤を見ると立ち上がり 神山などを迎えた
一同が席に座るとビールが運ばれ 内藤が改めて立ち上がり
「え~ 本日は祝賀会 皆様ご苦労様でした
改めましてここで 祝賀会の2次会とニーナ・ニーナの完成祈願と
言う事で席を設けさせて頂きました
どうぞ心置きなくごゆっくりと楽しんで下さい
今夜は神山部長の祝賀会に出席できなかった妻と本社受付の
小谷 美佳も みなさまのお仲間に加えさせて頂きました
宜しくお願いします」
内藤の挨拶が終ると今度は奥村が立ち上がりお礼を述べ 
その後に 内藤 真奈美が立ち上がり
「神山部長 受賞おめでとうございます 今後も鈴やさんと
ニーナ・ニーナさん そしてアルタと頑張って行きましょう
神山部長受賞祝賀とニーナ・ニーナさん完成祈願でかんぱ~い」
全員が立ち上がり 乾杯の儀式を行った
10人掛けの円形テーブルに料理が運ばれてきた
隣に座っている内藤社長のところに真奈美が割って入ってきて
「ねえ 社長 お席を替わってくださいな」とおどけた
神山の右側に祥子が 左側に真奈美が座る事になった
真奈美が早速神山に乾杯をして
「久保さん 良かったわね こんな素晴らしい方に会社の仕事を
見て頂いて 安心してお仕事を任せられるわね」
「ええ 上原も順調に いえそれ以上のスピードで進んでいます」
真奈美と祥子の話が続いているので祥子と席を入れ替わろうとした時
一瞬であったが真奈美の顔が寂しそうな暗い表情になった
向かい側でも 女性同士が真中を占めて話していた
神山は隣りの杉田と色々と話をしたが 祥子や由香里
真奈美の事が気になり うわのそらで返事をしていると時々
ちゃんと聞いていますかと 怒られた
神山に時々小谷や由香里から厳しい話を振られると 
隣りの翔も話題に割り込んできて 楽しく盛り上げ神山を助けた
小谷も杉田の話が上手なので何回も笑いこけて
笑い涙が出ている時も有った
祥子と真奈美は先日会ったばかりなので 話が弾んでいる様子だった
内藤も筒井と話が弾んでいたし 奥村と倉元も話が弾んでいた

宴酣なった頃 内藤夫妻が退場する事になった 真奈美が
「部長 おめでとう わたしからの気持ちです」
と 言うと神山のほほに軽くキスをした
みな あっけに取られていると
「あっ ごめんなさい 冗談ですよ皆さん
ここに居る お美しい女性達に取られてしまうのが怖いから
でも 本当のプレゼントはコレよ」
真奈美はバッグの中から小さい箱を取り出した
「さあ 開けてみて」
神山は包装紙を開けるとロレックスの箱が出てきたので驚いた
「ふぁ~ ロレックスの時計 凄い」
テーブルの皆が立ち上がって見に来た
今度のロレックスは皮ベルトでカジュアルな時似合いそうだった
「すみません 先日頂いたばかりなのに、、、」
「いいのよ お似合いね 今日の麻のジャケットにぴったりだわ」
「ありがとうございます」
神山は深々とお辞儀をした
「おう 山ちゃん 凄いな 腕にはめて見せてよ」
「そうそう はめて見せて」
神山は腕にはめると 顔の前に持って来てポーズをすると
「ふぁ~ ほんと ぴったりお似合いです」
「奥様 それではこの時計も使わせて頂きます
本当に素敵な時計を ありがとうございます」
神山の話が済むと内藤夫妻は出て行く時
小谷を呼び何か指示をしていた
ロレックスを見てみると23時を指していたが 誰も動かなかった
暫くすると筒井が化粧室に行く時 神山が呼ばれた
「これから帰宅するが 山ちゃんはどうする」
「ええ 私も帰宅します その前に現場に立ち寄りますが」
「そうか そうしたら 私と久保君と3人で車に乗ろう」
「ええ お任せします」
神山が席に着くと由香里が不安げな顔で
「どうしたの? 何かあったの?」
と 聞いてきたので 
「ナンでもないよ そろそろ出るけどどうするかって事だよ」
「ふ~ん それで」
「うん これから上原の現場に立ち寄る事にした
僕は最初からそのつもりだったがね」
「えっ これから行くの 大変ね 久保さんも」
「うん 筒井さんが一緒だし 久保さんのプランだし、、、」
「おう 山ちゃん大変だな しかしオープン近いしな、、、」
神山は皆に報告していて 気づく事があった
(そうか 祥子と隣りを知っているのは 内藤社長と筒井さんだ)
筒井が化粧室から出てくると みなの前で
「済みません 神山さんをお借りします これで失礼します
本日は 本当にありがとうございました」
お辞儀が終ると祥子も皆に挨拶をして筒井の後についた
「では そう言う事ですので 私もおさらばします
今日は 祝賀会 とても嬉しいです ありがとうございます」
神山は抱えきれない荷物を持って出口に行こうとしたが
杉田が荷物を半分もって出口まで来てくれた
外に出てみるともう直ぐ5月だがまだ肌寒かった
この麻のジャケットがまだまだ必要だなと感じていた
「先輩 僕はもう少し倉さんにお供します」
「うん 頼んだよ」
言い終わると丁度タクシーが着たので 筒井が前に乗り
荷物の多い祥子と神山は後ろに乗り込んだ

筒井達が乗ったタクシーは上原の現場に着いた
現場では24日の午前中に仕上がるよう遅くまで作業していた
この上原では通常天井工事は行わないが
今回のブティックの性格上行われた
今夜は壁面が出来ている事だと思った そうすれば片付き次第
バックヤードに商品を納品する事は可能だが 果たしてどうか
「やあ 夜遅くいらっしゃい こんばんわ 山ちゃん 
あっ筒井さんも 久保さんも」
3人を見た高橋は揃ってきたので多少驚いた
「山ちゃんが来る事は 内藤から聞いています」
「えっ 話していないけどな まあ 現場見ないとな」
「山ちゃん だいぶ出来てきたね」
「そうですね このような現場を見ると 昔を思い出しませんか」
「うん 上野店ではお世話になったよな いや今もだけど」
二人は顔を見合わせ笑ったが祥子も一緒に笑った
「孝ちゃん 天井の穴あけは予定通り?」
「ええ 少し早めになり 明日午前中から入ります」
「助かるね どんどん早くなるね」
「そんな でもその位しないと間に合わないですよ」
バックヤードの事を考えれば早く進め残骸を搬出した方がいいので
高橋も早め早めに手を打っているのだろうと考えた
高橋が奥から出てきて神山に
「遅くなりましたが 受賞おめでとうございます」
ペコリと お辞儀をした
「いや 大変だった みなに振り回されたよ」
「どうですか 駅前で」
「僕はOKだけど 筒井さん行きましょう」
「うん そうだね 久保君もいいだろ」
祥子はにこにこして 筒井にではなく神山に 
「ええ お願いします」
「そうしたら 少しだけ時間下さい 大工に段取り話しますから」
「悪いね 邪魔して」
「大工も夜食だからさ 待ってて それとも先に行ってて」
「ああ 先に行ってます」
「了解です 直ぐ行きます」
筒井に話し先に駅前寿司屋に行く事にした
歩き出すと筒井が 神山に
「しかし タイミングよく3人で出られたものだ」
「えっ、、、」
「そうだろ 君たちが同じマンションなんて知っているのは
アルタの内藤社長と私だけだからね」
「そうそう 出るとき斉藤さんに理由を話していて気が付きました」
「別に皆ばらばらでも良かったが 二人一緒にタクシーに乗ると
久保君だけではなく 山ちゃんにも迷惑が掛かるからね」
「そうですね ありがとうございます 気を使ってくださり」
「ええ 私もどうしようか考えたんです 現場に夜遅く神山さんと
タクシー利用だとどうかなてぇ 社長からお話された時
本当に助かりました やましい事がなくても 由香里さんや
ご夫人もいらっしゃたし、、、
あっ それで内藤ご夫妻は早めにご退席されたんですね」
「うん 君たちが話しに夢中になっている時 社長と
段取りを決めたのさ だから内藤社長は最初から早く帰るつもりで
受付の女性を呼んでいたんだ」
「そうか 最後の清算をしなくてはいけないし そうか、、、」
「まあ あと女性の人数が少なく斉藤さんと久保君にも配慮した訳さ」
「そうですね 私も清算の事までは気がつきませんでしたが
確かに 由香里さんと私だけでは 可哀相ですよね」
筒井と神山は 祥子の肩を叩きながら笑った  


「さあ 倉さん 主役が消えたところで 別の所行きますか?」
「おう そうだな ここからだと近いよな」
「ええ そうしたら 由香里姫 清算してきてください」
「あの ここの清算は私が内藤から指示されていますから、、、」
「いいのかな ねえ 倉さん」
「おう 内藤社長がそうおしゃっているなら そうしよう」
「小谷さん 私たちもう一軒行きますが 来られますか?」
「ええ 行きたいんですが 明日早いので失礼させて頂きます」 
「おう 残念だな べっぴんさんとご一緒したかったな」
「また倉さん 少し酔ってきたわね」
由香里が大丈夫と聞いている時 杉田が2階に上がってきた
「おう 翔 もう一軒いくぞ」
「えっ もう出るんですか」
杉田はここで小谷ともっと話をしたかった
場所を変えるという事は 小谷とここでお別れを感じていた
清算を済ませ2階に上がってきた小谷に
「またお話ししませんか?」
「ええ 私 杉田さんのお話好きですよ 誘ってください」
「はい わかりました 必ず、、、」
二人が話し込んでいると由香里が
「はい若者 良かったね 小谷さん
この子はまだ半人前だから鍛えてね」
小谷はくすっと笑いながら 杉田を見ていた
「おい 翔 いつまでお見合いしているんだ 行くぞ」
「おう おいてくぞ」
「私 お見送りさせて頂きます」
お店を出てタクシーを待っている間 小谷は由香里と雑談をし
時々笑っていた 笑い顔が照明の灯りで一段と美しくした
車が来ると 前の座席に杉田が乗り 窓を開け小谷を見ていた
小谷も車が出るまで杉田を見て 杉田が手を振ると同じ様に答え
タクシーのテールランプが見えなくなるまで 手を振っていた


「え~ 何度も聞いて飽きたでしょが
受賞おめでとうございます 乾杯!」                             
「そんな 何度聞いても嬉しいですよ 一生に一回だろうから」
「おいおい 山ちゃん もっと頑張ってくれよ 
来年もその次の年も永遠に ねぇ 久保君」
「そうですよ 毎年 受賞しちゃってください 私も、、、」
「うん?私も、、、 どうした 久保君」
「ええ 私も 凄く嬉しいですよ」
「それはそうですよね 銀座一のデザイナー 神山部長と一緒に
仕事が出来て そして設計を聞かれた時 胸を張れますよね
実は アルタでも山ちゃんの仕事をしていると 一目置かれるんです
その位 凄い人ですよ 山ちゃんは」
「おいおい 誉めすぎだよ そんな事ないから 久保さん」
「いえ 本当の話です 例えば今度の什器搬入の配車にしても
普通考えられないんですよ」
筒井と祥子 神山は高橋の話を聞きながら箸を進めていた
「だって 配車先がライバル会社の専属ですよ
普通考えたって どう転んでも協力はしてくれないでしょ」
筒井も祥子も そこまでの事情は知らなかった
ただ 25日の什器搬入がアルタの手配したトラックだと
夕方になってしまうが 神山が何処かに頼んだ事によって
24日の夕方に搬入され 一日早くなったと
ニーナ・ニーナでは そこまでしか知らなかった
改めて 筒井と祥子が神山を見て
「そう言う事情は知らなかった 恩にきる ありがとう」
「そうでしょ そこを山ちゃんの顔で 出来ちゃんですよ
だから 私は今 会社でも一目置かれていますよ」
「なんだよ 孝ちゃん その事で一目置かれてんの?」
「いやいや ごめん 例えですよ 山ちゃんの仕事の」
「なんだ例えなら 一目置かれていないんだ」
「もう どうしたの 今日は 一目置かれています」
「まあまあ 山ちゃんは そんなに凄いんだ そうすると
これからは 気軽に『山ちゃん』と呼べないな ねぇ 久保君」
「ええ しかし、、、私は神山さんと呼んでいますよ」
「ははは そうだったね ごめんごめん」
「いやだぁ ご自分の事 私にふって~」
笑い声が店中に分るくらい大きな笑い声だった
この駅前寿司屋は最終電車が終っても安くて美味しいと評判で
家路に着く前 軽く呑み直しをする客が居るので
客を見ながら少しの間営業している
逆に給料日前など客足が悪い時は早めに閉めてしまう
今日は給料が出た後で 金曜日と重なりお客は結構多い
雑談を済ませると 筒井が
「そうすると あと1週間で出来上がりですね 楽しみです」
「はい 少し余裕があります 任せてください」
「分りました そうしたら 私はここで失礼するよ」
「えっ まだいいでしょ 筒井さん」
「いや 神山部長のように若くないから」
「そんな ねぇ 久保さん」
「いやいや ほんと帰ります では高橋さん 頑張ってください」
「あっ それでしたら この券 使ってください
内藤から 指示されていますから お疲れ様でした」
筒井はタクシー券を受け取ると 立ち上がる祥子を制して明日の
スケジュールを確認し 神山や高橋に 挨拶をして出て行った

「神山さん そんなご苦労があったなんて知りませんでした」
「いや 今までのお付き合いで お願いしただけさ」
「へぇー お顔が広いんですね」
「そうでしょ 久保さん だから凄いの 山ちゃんは」
「まあ それはそれとして オープンは4月26日で何時?」
「それは11時です 変更はありませんよ」
「そうか そうしたら 少し余裕が出来たんだ」
「ええ 25日の引渡しを先日伺った時
商品陳列などで徹夜の作業を覚悟していました」
「すみませんでした 早くできると言っておきながら、、、」
「いいよ 孝ちゃん 済んだ事だからさ」
神山と祥子は鮮魚のおつまみを食べていたが
高橋が食事をしていない事に 気が付き
「孝ちゃん 何も食べなくていいの?」
「うん もう直ぐ終るし それに夕食が遅かったから 大丈夫です」
「遠慮しないで食べてよ 今夜は僕がごちそうするから」
「そんな 内藤に怒られます だめです」
高橋は内藤から言われているのか ご馳走にならないと言い張った
「わかった そしたら ご馳走になります」
神山が仕事以外の事を話しすると
祥子も時々参加して楽しい時間が過ぎた
高橋がジャケットの袖口に 真奈美からプレゼントされたものと
違うロレックスをしているのを発見して
「どうしたの そのロレックス?」
「凄いでしょ 真奈美さんからのご祝儀」
「えっ またロレックス、、、しかしこのファッションにぴったし」
「うん また貰っちゃった」
「う~ん、、、いいな 山ちゃんは 羨ましい」
「そんな事ないよ 後が怖いよ」
神山はロレックスの事を言われ覗いて見ると
あと少しで25時になる時間になっていた
「孝ちゃん もうこんな時間だけど 平気?」
「そうですね そろそろ出ましょうか」
高橋がカウンターで清算している時 神山と祥子は表で待ち
「今夜 どうしても話したい事がある 少しでいいので、、、」
「ええ 着替えたら お部屋に行くわ」
「いや このまま来てください」
「は~い そしたらこのまま行きます」
「お待たせです」
「何時もすみません ご馳走様」
三人歩きながら店舗の飾りつけの話で盛り上がったが
すぐに現場に付き
「それでは 孝ちゃん お先に」
「はい 明日は8時から入っています」
「うん 僕も早めにくるよ では」
祥子は高橋に対し 深々とお辞儀をして別れた

「まいったー 今日は」
部屋に入るなり ジャケットを脱ぎ椅子に腰掛けた
「そうね お疲れ様でした」
祥子は神山の脇に来て おでこに軽くキスをした
離れると ジャケットを片付けようとしたので 慌てて立ち上がり
自分でクローゼットにしまいこんだ
「祥子 ビール呑もう」
「は~い 用意します」
クローゼットからカメラバッグを取り出し 
先日ホテル『ブティック「モテリコ」』で買った
バングルを取り出した
祥子が テーブルにビールとチーズを並べたので
「祥子 お疲れ様でした とにかく今夜はお目でたですね」
「そうね あなたは素晴らしいわ 改めて惚れました」
「そお でもね 今夜は祥子に渡したい物があるんだ」
「な~に?」
「なんでしょう」
「分らないわ じらさないで」
神山は 包装紙のままバングルをテーブルに置いた
「さあ 開けてみて」
「な~に」
祥子は包装紙を見て驚いた
「これ 銀座のブティックでしょ えっ そんな」
金額的にもっと安い物だと思ったが 『モテリコ』は有名で
祥子の給料でも手が出なかった
そんな期待で包装紙のリボンが上手に解けず ようやく開けると
「ふぁ 凄い この石 アメジスト ふぁ~ ほんと?」
祥子は夢を見ているようだった
「実はね 先週かな もう少し前だったと思うの
色々と他店を見て調査してみなければいけないでしょ」
「うん」
「その時 モテリコで発見したの だけど高くて諦めたの
だから すごく嬉しいわ ほんと ふぁ~」
祥子は箱から取り出し腕にはめてみた
「どう 似合う?」
「うん 今日の色にぴったし カンカンだ」
祥子は神山に抱きつき唇を合わせた
「ねぇ 明日からこれ付けて行っていい?」
「うん」
「ふぁ~ ほんとありがとうございます 大事にします」
「そうしたら 寝ようか 遅いし あっ別々でいいよ」
「ごめんなさい そうしますね」
「明日は どうなっているの?」
「オープンご招待のDMはOKでしょ だから銀座直行です」
「そうしたら 僕は上原によってから 銀座に行く」
「は~い ではおやすみなさい」
祥子は嬉しそうに神山の部屋を出て行った


4月22日 水曜日 
携帯電話の音がけたたましく鳴った    
どこで鳴っているのか うるさいと思った
「神山さん 起きてください 神山さん」
田代の呼びかけで ようやく目を覚ました
「誰かの携帯電話 鳴った 今?」
「ええ 神山さんの携帯ですよ」
言われて着信を見てみると 亜矢子からだった
急いで 電話をすると
「神山ですが どうされました?」
「私です ごめんなさい 1時間くらい遅れます ごめんなさい」
「うん わかった また電話ください 待っています」
神山は突然の出来事で考えたが 亜矢子の事だから
よほどの事情で 遅れるのだろうと考えた
確か以前逢っている時も 暗い表情していた事を思い出した
「大丈夫でしたか 連絡は」
田代が心配そうに聞いてきた
「うん 普通の連絡だよ」
「それは良かったですね 相当長い間鳴っていましたから」
「心配かけてすまない ごめんごめん あとどの位で着きますか?」
「そうですね  あと10分位でしょうか 
着いたら 起こしますから ごゆっくりしてください」
「わかった ありがとう お言葉に甘えま~す」
「はい」
神山は亜矢子の事を考えていると また睡魔が襲ってきた





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