「う~ん 今のところ気になるところは無いけど
ただ ニーナ・ニーナの久保さんにも話したけど
26日のオープンをする事が大事で 細かい所はあとあと直せると
伝えてはあるんですけどね そこですね
結局 細かい手直し コレは希望を含めてだけどね それを一つずつ
こなす時間は絶対にないんだよだから24日に行ったら
まず自分なりにどうか判断し25日26日と通って聞きます」
「そう山ちゃんの言う通り 例え設計図通り出来上がっても
手直しが出てきた場合 オープンに間に合わない事が発生しますし
まあ私も25日は現場もありますから お聞きしますよ」
「そうだね だけど25日は殆ど無いでしょ あれだけきちんと出来てるし
什器も良く出来上がっているし 問題ないと思いますよ」
「ええ細かい所の微調整だけです なにしろ24日夜引渡しですから」
「了解です では後2日頑張って」
「はい山ちゃんも ゆっくり静養してください」
神山は携帯電話を切ると 静かに部屋に入りベッドに横になった
隣りの亜矢子はすうすうと寝息をたてていた
母親のガンや治療費の事で 精神的に疲れたのだろう
特にホテル業は ストレスが溜まりやすいしそれに輪を掛け
リーダーだ うっぷんを晴らしたくとも 持って行くところが無い
又 ストレスが溜まる悪循環を 繰り返していたのではと思った
自分だったら どうしているだろう
ストレスに潰されてしまうかもしれない
亜矢子は 唯一神山を頼れると思っている
そんな事を考えると 亜矢子と一緒にいる時は他の事を考えずに
限られた時間を 楽しく過ごそうと思った
ある程度自分なりに答えが出たので目を閉じると 睡魔が襲ってきた
4月19日 日曜日 曇り
神山は携帯電話のアラームで起きた
昨日は祥子とカラオケに行き その後自宅で工事の話をしながら呑んだ
60インチのモニターを使って説明したが モニターの大きさに驚いていた
今朝はあいにくの曇り空で 昨日の朝のようにテラスに出て
ゆっくりする気分にはなれなかった
FAXをみてみると何も入っていなかったので 会社の仕事に集中した
7時30分頃 祥子から朝ご飯の連絡があったので 部屋に行った
「おはよう」
祥子は口を突き出しキスを求めてきたので合わせた
「あはよう」
「昨夜は 遅くまで ありがとう 助かるわ」
「何時もそばにいるのに 聞いてよ」
「でもね 何を聞いていいか 分らない時があるの
だから糸口が見つかった時に きちんと聞かないと理解できないのよ」
「そうだよね 畑違いだし 焦れば焦るほど 闇の中だよね」
「そうそう なにか掴めないの そうすると言われても なに話しているの
もう少し分りやすく説明してよって なる訳 です
だから 昨夜のように糸口が見つかった時は 自分が理解しているから
納得も出来る訳 そうすると誰かに伝える時も 失敗はないわ」
「そうだね 理解して納得をしないと伝える事って出来ないね」
「だから さっきのキスはお礼のキッスよ 分った祥子ちゃん特別よ」
「はい ご馳走様でした」
「では 朝ご飯にしましょ」
「うんそうしよう お腹がすいた」
そう言い冷蔵庫からビールを取り出しコップも用意した
今朝は昨日と同じベーコンエッグの洋食だった
サラダが日替わりで出てきて美味しそうだった
祥子のコップにビールを注ぎ 乾杯をした
昨夜の出来事などを話しながら 食事を進め食べ終わると
「ご馳走様でした」
「どういたしまして 簡単なのでごめんなさい」
「いや 仕方ないよ こうやって食べられるだけ幸せさ者さ」
「今朝は現場に行かれるの?」
「うん 祥子は?」
「私は 直接銀座に行くわ 手配した商品の確認とか
24日に届かないと アウトだもん ねぇ 夕方って6時ごろだったら
バックヤードに入れられる?」
「う~ん 丁度什器が入ってくる時間だな 予定では
逆に3時ごろとかのほうがいいと思う そうすれば荷物をよけながら
置く事は大丈夫だけど アルタがね あちらも撤収でどたばたしているし
そうだな アルタの高橋さんに話すわ 午前中に電話するけど大丈夫?」
「ええ 大丈夫よ」
神山と祥子はマンションを少し早めに出ると
普段見かけないサラーリマンが駅に急いでいた
祥子を駅まで見送ると 現場に入り高橋と挨拶をした
「やあ おはようございます」
「山ちゃん おはようございます 早いですね」
「うん まあ ところでさ 悪いけど照明を点けてもらえる
この曇り空で どのように見えるか ちょっとね」
「ええ ちょと待ってください」
高橋はバックヤードの脇にあるスイッチを入れた
「おお 良いじゃないですか この曇り空だと期待以上ですね
しかし柔らかい光で 雰囲気造りにも最高だね うん いいよ」
「ええ 先ほど確認したんですけど 山ちゃんが喜ぶと思っていました」
「うん いい」
「よかったですね 効果が出ていますよ」
「ところで 孝ちゃん 24日のバックヤードだけど 勿論忙しいのは
分っているけど ニーナ・ニーナ 何時に入れられるかな?」
「そうですね、、、第二貨物さんは早くて3時と言っているんですよ」
「そうか 第二貨物次第か 何時に空きますか?」
「ええ 一応お昼前には全て綺麗にしようと思っています
10時過ぎに床の掃除やワックスが入ります 乾くのは13時だったら
大丈夫だし 10時までには荷物を出しますよ
別に大きな物はないですけど 残材が13時しか来ないんです
だから それまで動けないと思っていたんですが
残材は 少し早く来て 外に纏めましょう そうすれば使えますね」
「うん そうしたらニーナ・ニーナからオーナーさんに断ってもらおう」
「そうですね まあ通行の邪魔にはなりませんが その方が安心です」
「了解です では後でニーナ・ニーナに連絡します ありがとう
やっぱり工程表どおりにはいかないね 外が絡むと」
「ええ 自分の所だと 調整つくんですが 難しいですね 外部が絡むと」
「今のところは そのくらいかな 孝ちゃん何かある?」
「壁面のスリットの棚受け金物が品番違いが来て 合わなくて
困っているんですが 什器の方が別のスリットを使っていないか
今 小田原工場の返事待ちなんですよ 什器はもう変更きかないし
こちらの壁面スリットを替えなければいけないし 金物もその後
取り寄せになります 大きいのはその位ですね」
「わぁ大変だ 図面はどうなっているの」
「ええ ここに使っているスリットが正解です」
「小田原が間違わなければ良いね」
「ええ 実は横浜と一緒なんです 同じ部屋で同じ様な什器を作っていて
今 寸法を測り割り出しをしています」
「そうか 横浜も同じような什器か」
「そうですね 固定棚より移動棚のほうが 使い勝手良いですからね」
「そうだね 金物も丈夫なつくりになったしね」
そんな話をしていると高橋に電話が入った
スリットの品番を確認したところここで使っている品番と同じと言ってきた
棚受け金物も聞いてみた 小田原は図面どおりだと言ってきた
「山ちゃん 大丈夫だよ 小田原は 図面どおりだって」
「良かったね 助かったよ だって什器が合っても もしかして
間に合わないかもしれないしね」
「うん ぎりぎりだと踏んでいた 良かった~」
高橋は不安が払拭されたのか 安堵した
神山は時計を見ると9時になっていたので祥子に電話した
「神山ですが」
「は~い わたし」
「うん バックヤードの件ですが 13時から使えます
だけど その前に空いているけど 床はワックスをかけるから
やはり 乾いてからの13時からがいいと思う」
「ふぁ~ ありがとうございます 手配しますね」
「うん それと残材を13時まで出しておくので オーナーさんに
一言断ってもらうとありがたい」
「ええ 24日は搬入搬出がありますって事で 一応話はしてあるけど
今一度 残材の事を伝えておきますね ありがとうございます」
神山は高橋に祥子との事を伝えた
「24日夕方までいないけど 何かあったら携帯電話までね」
「大丈夫ですよ 大きいミスはその位で 今は順調です」
神山は段々と出来てくる現場を隅々まで見て廻った
昨日も同じ様に廻ったが 時間が有れば廻る事にしている
バックヤードに来た時 少し考えた
「孝ちゃん 2つあるけどいい? 空いてる」
「ええ」
高橋は神山に呼ばれバックヤードに行った
「まず 照明だけど 天井にないし 暗くならないかな
排煙ルーバーからの採光だけでは暗いな 特に今日みたいな時」
「そうですね 天井に付けましょうか」
「大丈夫 間に合うかな?」
「ええ まだ電気は入りますから」
「わかった 久保さんにレイアウトを聞いておきます 効果的な場所に
つけてあげましょう それと この床だけど どう」
神山は売場からバックヤードに入るところの床を指した
売場から見るとバックヤード入り口の間口幅で奥までフローリングが
敷かれているが 斜めから見るとフローリングの脇が既存床になっている
「そうですね、、、同色に近いパンチカーペットでも敷きこみましょうか」
「うん レベルには気をつけてもらって、、、」
「今 在庫とか聴いて見ますね」
高橋は何箇所か電話をしたが OKサインをだした
「大丈夫ですよ 山ちゃん 在庫もあるし今日施工する
だけど ほら 複雑な切り込みは勘弁してくれる?」
「それはそうさ でも消防法の件があるから 材料費は精算に入れてよ
そんな高くないでしょ」
「ええ 店舗で使った1800ロールの残りなんですよ」
「だったら ありがたいが、、、」
「ええ 寸法を伝えそれを持ってくるので 大丈夫ですよ」
「何時頃来るの」
「ええ 帰りに寄ってくれると言う事ですので 3時頃だと思います」
「そうすると 徹夜明けなんだ」
「ええ」
「よかった では照明の件 聞いてみますね」
「ええ お願いします」
神山は祥子にバックヤードの照明をどうするか聞くと
祥子も気になっていたが 後から付けようと考えていたと言った
電気屋が入るので大丈夫だと伝えると
バックヤードのレイアウトが出来ているのでFAXするといった
「孝ちゃん レイアウトが出来ているって よかったよ」
「そうですね さすが久保さん それで」
「うん僕のところにFAXするそうだ だから戻って取って来ます」
「了解です」
神山は自分に部屋に入ると祥子からFAXが送られていた
よく計画されたものだった
スチールのストック棚 H2100とか作業テーブル H750とか
高さまできちんと記入されていた
最終確認をする為に祥子に電話した
「ありがとう 届いています そこで確認ですが
このストック棚は不動?それと服を掛けておくハンガーバーも不動?」
「ええ ストック棚は不動ね 作業テーブルも不動
だから そう考えていくと ハンガーバーもそんなに動かせないわ」
「そうだよね 動かすとすれば 大胆に替えていかなければいけないしね」
「ええ そうしたら ストック棚から壁の間につければ効果的だし
あと 作業テーブルの上につければ良いね そうそう
作業テーブルの所は天井じゃなく 壁に付けよう」
「ええ そうしてもらうと助かるわ」
「では 高橋さんにつけてもらうよ」
「はい お願いします でも、、、工事代って高くなるの?」
「うん 器具代だけだから 大丈夫だよ」
「は~い 分りました 助かったわ」
神山は電話を切ると 現場にもどり高橋に祥子の図面をみせた
「すごいね Hが入っているよ 山ちゃんが教えたの」
「いいや 教えていないよ 僕も驚いた」
神山と高橋はFAXを見ながら取り付け位置を確認した
作業場は動かさないので排煙ルーバーの下にカバー付きをつける
照明は 基本的に排煙ルーバーの下で設定 上下可能で考える
「そうしたら 天井照明は可動式の金物にする?」
「どうしようか 多分バックヤードの光は店舗側にもれないと思うけど
そうだ孝ちゃん 懐中電灯持っている」
「ええ 持っていますよ」
高橋はバックヤードに脚立つを持っていき昇り 懐中電灯を点けた
ルーバーの所とか高さを変えたりして 神山に確認を取っていた
「ありがとう 大丈夫だよ 孝ちゃん」
高橋は出てきて
「大丈夫でしたか」
「うん 今度は僕が蛍光灯をやってみるよ」
そう言い脚立つに昇り 懐中電灯を色々動かし高橋の感想を聞いた
「壁に近づくと気になりますが 離れれば問題ないですね」
「うん 僕もそう思った そうしたら天井から吊るしましょう」
「電気屋は明日きます その時に吊るして貰います」
「うん 出来ればWを使ってもらいたいな そうすれば遠めで見た時
ルーバーが綺麗に光を出して目立つんじゃない どうだろう?」
「そうですね それにバックヤードが明るいし そうしましょう」
「蛍光灯は店内と同じ品番を使えば違和感がないよね」
「了解 器具と管はこれから指示しておきます」
「ちなみに 照明と床で10万も見ておけば大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ 半分で」
高橋は神山にウインクして OKサインをだした
「そうしたら 筒井さんに連絡するから待っていてください」
「了解」
神山は筒井の自宅に電話をした
「はい 筒井でございますが」
「何時もお世話になっています 鈴やの神山です」
「まあ ご昇進おめでとう それと受賞もおめでとうございます
凄いわね 聞いたわよ 主人も鼻が高いって」
「そんな事ないですよ お元気ですか」
「ええ ちょっと待って 主人を呼ぶから あなた神山さんよ」
「筒井です ご苦労さん どうされました」
「お寛ぎの所 すみません」
神山は今朝現場を見て 今判断すれば間に合う追加工事を伝え
金額は5万円程度ですむ事も話した
「どうもありがとう スタッフも喜ぶよ 5万円は安いよ
照明で明るくなり それで仕事に集中できるからありがたいよ 頼むよ」
「はい ではアルタに発注します すみませんでしたお寛ぎの所」
「ははいいですよ そうゆう前向きな話だったら 楽しみにしています」
神山は電話を切ると高橋に
「筒井さん OKだ 頼みますよ」
「はい これから指示を出します」
神山は祥子に電話をして筒井に話した事 承諾を貰った事を話した
「ふぁ~嬉しいわ ますます頑張らないと筒井に怒られるわね」
「うん 怒られるな あんなに喜んでいたから」
「ええ ありがとうございます」
「では又 銀座に行ったら電話します」
神山は祥子との電話を切ると高橋に
「彼女 凄く喜んでいたよ 宜しくって」
「良かったですね 喜んでもらって」
「この工事が30万円とか掛かると いらないと言われるだろうけどね」
「そうですね 難しい所ですね」
「そうしたら 孝ちゃん 一旦家に戻るよ」
「ここの?」
「ええ 上原の作業場ですね 何かあったら 電話ください」
「了解です」
神山は部屋に戻った 中元装飾はほぼ出来たし 2日の店外催事が
どう進んでいるか確認する為 会社に電話した
「はい 催事課です」
「神山です おはようございます」
「あっ先輩 おはようございます」
「翔 昨日の造花の件だけど伝えてくれた?」
「まだ出勤していないんですよ 倉さん」
「分った あと2日の赤坂センターだけど 進んでいる?」
「ええ 先輩が昨年作った看板類を使いますから予算余ります」
「そうか わかった どの位うく?」
「ええ 約10万です」
「うん わかった この話誰かに言った?」
「いえ 先輩が初めてです」
「おりこうさん 黙っていてくれ 今日3時頃に行った時話しをするよ」
「は~い了解です」
「本当にもれはないね」
「ええ 3時までもう一度調べます」
「うん 昨年の資料を見て つき合わせてみてね 頼んだよ」
「あっ 先輩 倉さん着ましたが どうしますか?」
「うん替わってくれ」
「おう おはようさん どうした」
「おはようございます 実は今 翔と話したんですが、、、、、、」
神山はホテル催事の予算が余る事 中元で使う造花が 七変化で
準備できず上野で使っていた造花屋 浅草大正堂のサンプルが来る事
イメージどおりであれば そこから購入する事 などを説明した
「おう いいじゃない サンプルは今日中に届くんだろ」
「ええ もう一度確認をしますが」
「あとは枠だな 店外催事で入らないだろう」
「ええ 3時すぎに行きます その時 翔の予算もチェックします」
「おう もれて蓋を開けたらマイナスじゃ 笑いもんだ」
「ええ それと中元ですが 翔と私の分は机に置かせて頂きました」
「おう いっぱいあるな で準備はどうだ」
「ええ POPやINFなど色関係は大丈夫です 垂れ幕の発色も
翔が工場で確認をしてきてます」
「おう 懸垂幕はいい色を出していると言っていた わかった 3時に」
「はい お願いします」
「何言っているんだ こちらこそお願いしますだよ 聞いたぞ
みやま運送の件 やったな アルタにひとつ貸しが出来た」
「まあ 困っている時は 何とかって言うでしょ」
「まあな それと上原はどうだ」
「ええ 先ほどまだ間に合う追加工事がありまして 筒井さんに
承諾頂きました」
「ほお なんだ?」
「ええ バックヤードの照明と床です だから器具代と材料費だけ
考えてくださいと伝えたら 大変喜んでいました」
「おう 良かったじゃないか まあ では来てから聞くな」
「はい 造花屋は確認します」
神山は電話を切ると 造花屋 大正堂へ電話をした
「私 鈴やの神山と申しますが 須藤専務さんはいらっしゃいますか」
暫くして
「神山ですが 昨日はありがとうございます サンプルは何時ごろ着ますか」
「宅配に頼んで朝一だよ もう付いていると思うよ 催事課に送ったから」
「ありがとうございます 金額は入っていますか」
「見積もりを付けてあるよ ただ早くしないとなくなっちゃうんだよ」
「いつまでに返事すればいいの」
「う~ん ここ1週間くらいかな」
「分りました」
神山は電話を切ると催事課の直通に電話した
「はい 催事課です」
「神山です」
「なあに みんな居るわよ 日曜日なのに」
「うん 造花屋さんから サンプル届いていない?」
「うん まだよ」
「そしたら 倉さんに替わって」
「おう どうした」
「ええ サンプルの件で電話しました所 朝一で届くように手配をして
催事課宛に送ってくれたそうです それと見積もりも付いてます
多分 午前中には部屋に届くと思いますよ」
「おお なんか来たぞ 宅配だよな」
「ええ そうです」
「会社は 大正堂か?」
「ええ そうです」
「きたぞ 見ておく」
「ありがとうございます では」
神山は電話連絡を終えると一安心しビールを呑んだ
時計を見るとまだ11時だったので 中元の資料作りを集中的にした
出来上がったので倉元宛てにFAXした 今回は予算が有るので
予算関係だけは パソコンを使って課長にメールを出した
暫くすると電話が鳴ったので出てみると奥村課長だった
「やあ しかしよく計算されて分りやすいよ」
「いえいえ 計算はパソコンですから」
「そうだな こんど皆にもこのフォーマットで記入してもらおうかな」
「ねぇ 分りやすいでしょ プラマイの事由も」
「うん このフォーマットだけ送れるか?」
「ええ しかし 市川が居れば簡単に作りますよ 彼も得意だし」
「そうか 市川君は出勤しているから作ってもらうよ」
「では 3時過ぎに行きます」
「うん それと造花綺麗で ぴったしだよ 今回の中元に」
「良かったです 楽しみです」
「うん 倉さんも気にっていたよ あとはお金だな」
「ええ それも行ってから」
「了解」
神山はゆっくりとビールを呑んだ
滅多にPCを見ないが Web新聞を開いた
日経Webに[御殿場アウトレット来年平成11年4月4日(日)オープンか]と
出ていた 記事を読むと
【アウトレットのオープンは当初10月になっていたが 道路の
整備事業の前倒しを行う事が決定した コレは周辺の土地買収
が予想外に早く進んだ事がいい結果となった 懸念されていた
駐車場の土地買収も早く終わり工事着工が早まる可能性が
出てきた 4月19日 11時】
神山はすぐに取り掛からないと間に合わないと感じた
この記事をプリントアウトして 会社やアルタに見せてやろうと思った
神山はインターネットはこんなに早く情報が掴めるのかと改めて感心し
暫く記事を読んでいるとアルタの高橋から電話が入った
「山ちゃん お昼ですよ~」
「了解です 今行きます」
神山はそのまま銀座に行くつもりで出かけた
「お待たせしました」
「さっきの照明と床だけどOKです 床やは3時でOK
さあ今日は、、、駅前にする?」
「うん 美味しいし」
「でも良く飽きないよね」
「孝ちゃんだって飽きないでしょ」
「うん まあ」
高橋はシャッターを閉めて待っていたので直ぐに寿司屋に向かった
「だけどあのシャッターいいよね 閉まっていても中見えるし」
「そうですね ただ高いのがねー」
「うん そうだね そこがネックだよね もう少し安くなれば
ブティックはみな利用するよね」
「そうそう 利用すると思うよ 綺麗で上品だもの」
神山と高橋がそんな話をしていると寿司屋に着いた
いつものように奥を案内され ビールが出された
女将がビールを置くと
「昨日は済みませんでした なんかお騒がせして」
ぺこりとお辞儀をしてカウンターに戻った
「どうしたの 孝ちゃん」
「新宿の件 あれ僕が動けないから 最終的に田中君にお願いしたんだ
それで 親戚のオーナーさんに会って 話を聞いたら
予算が全然 合わなくて じ えんど でした」
「そうなんだ」
「どう安く見ても 7百万はいくんです それが半分以下だとねぇ」
「そうすると 他でもっと安く出来た話を聞いているんだ」
「そうだね 2,3百万で出来る話を 困るねぇ 安かろう悪かろう」
「そうだよねぇ それで女将が謝っていたのか」
「うん 多分」
ビールが美味くお代わりを頼むと
つまみの鮮魚の盛り合わせとビールを持って来て
「今日はご馳走させて頂きますから どんどん頼んでください」
女将は笑みを浮かべ言って お辞儀した
「しかし どんどん食べてと言ってもねぇ」
「そうそう食べられる訳じゃないし」
二人は顔を見合わせ笑った
神山は忘れかけていた 御殿場アウトレットの記事を高橋に見せた
高橋は 驚いて
「山ちゃん 凄いね よく発見したじゃん」
「うん たまたまですよ」
高橋はごめんなさいと言い 内藤に電話をし神山が発見した記事を伝えた
話が進むと高橋は真剣な顔つきに変り話しに頷いていた 終ると
「社長 喜んでいたよ 明日 例のアレックスグループの統括責任者と
会う事になっているんだって 情報時代だから先に集めたほうが勝ちです」
「良かったね 役に立って」
「うん 社長 これから会社に出るって そしてデザイナーも呼ぶってさ」
「凄いじゃない でもそんなに違うの アルタで決定したでしょ」
「ところがこうゆう情報を生かし戦略を進めるわけですよ
こちらが主導権とるか否かで全然違うからね 優位になると
色々な事柄がアルタ主導で話が進められるわけなんです」
「よく分らないけど 社長が喜べばいいよね」
神山と高橋が話していると高橋の携帯が鳴った
内藤社長からで 裏が取れ オープンは記事どおりだと言った
神山に替わって欲しいとの事で神山が出ると
「やあ 山ちゃん やったね ありがとう
実はオープンの時期が早まる事は皆知っていたんだが
はっきりした時期が特定できなかったんだよ 今 裏を取れたから
明日の話し合いはこちらが有利 優位に話を進める事が出来ます
本当にありがとう」
電話を切ると高橋が
「社長 余程嬉しいんだよ あんな声 滅多に聞かないよ」
「良かったじゃない これで本格的に稼動だね」
「あとは 人材の確保だけだ それも大変だよ」
神山と高橋は御殿場アウトレットの話が弾み時間がすぎた
一通り食べると2時30分になっていた
今日の高橋は3時まで戻ればいいのでゆっくりしていた
神山は3時に銀座に行くので寿司屋を出た
催事課の部屋に入ると 由香里が神山に近づき
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