「では 行きましょう 久保君がご一緒しますが よろしいですか」
「ええ 大歓迎ですよ」
「よかったら 私がご案内しましょうか」
「ええ 内藤社長にお任せします」
(まいった~ 二人一緒か~)
話がまとまり 奥村が課員に
「これから内藤さんと食事だが みな大丈夫か?」
すると市川が
「僕は呑めないので ここで失礼します」
「おう そうか わるいな」
「じゃあ 由香里姫と倉さん 翔と山ちゃんと僕か 5名だな」
内藤が奥村に近寄ってきて
「今 車2台用意しました 暫く待っていて下さい」
「そんな ありがとうございます」
車が付くまでみんなてんでんばらばらに話をしていたが
祥子と由香里の会話はなかった
暫く話し込んでいると
黒塗りのハイヤー2台が車付けに着たので分乗した
神山は内藤 筒井 祥子 と一緒の車に乗った
内藤は運転手に青山のお店を告げると手帳を取り出し
会社に電話していた
真中に座った神山は祥子とは話さず筒井と話すよう心がけた
祥子もなるべく話さないようしているが それでも内藤から神山の
仕事内容とか色々と言われると
筒井を意識しながらぎこちない応答をした
そんなぎこちない話をしていると 青山のイタリヤ料理店に着いた
先日3丁目の『イタリアンレストラン スパ』を利用したが
ここ2丁目の『ざ いたりあん』も良く女性週刊誌などに
取上げられている有名店だった
外観から内装まで全て木を使っているので ログハウスの感もあり
中に入ると 飾り付けがなくシンプルで落ち着くお店だった
内藤が入り口を入るとマスターと話し 2階へと案内された
簡単な仕切りの奥には 内藤夫人と若い女性が座っていたが
内藤を見ると立ち上がり 神山などを迎えた
一同が席に座るとビールが運ばれ 内藤が改めて立ち上がり
「え~ 本日は祝賀会 皆様ご苦労様でした
改めましてここで 祝賀会の2次会とニーナ・ニーナの完成祈願と
言う事で席を設けさせて頂きました
どうぞ心置きなくごゆっくりと楽しんで下さい
今夜は神山部長の祝賀会に出席できなかった妻と本社受付の
小谷 美佳も みなさまのお仲間に加えさせて頂きました
宜しくお願いします」
内藤の挨拶が終ると今度は奥村が立ち上がりお礼を述べ
その後に 内藤 真奈美が立ち上がり
「神山部長 受賞おめでとうございます 今後も鈴やさんと
ニーナ・ニーナさん そしてアルタと頑張って行きましょう
神山部長受賞祝賀とニーナ・ニーナさん完成祈願でかんぱ~い」
全員が立ち上がり 乾杯の儀式を行った
10人掛けの円形テーブルに料理が運ばれてきた
隣に座っている内藤社長のところに真奈美が割って入ってきて
「ねえ 社長 お席を替わってくださいな」とおどけた
神山の右側に祥子が 左側に真奈美が座る事になった
真奈美が早速神山に乾杯をして
「久保さん 良かったわね こんな素晴らしい方に会社の仕事を
見て頂いて 安心してお仕事を任せられるわね」
「ええ 上原も順調に いえそれ以上のスピードで進んでいます」
真奈美と祥子の話が続いているので祥子と席を入れ替わろうとした時
一瞬であったが真奈美の顔が寂しそうな暗い表情になった
向かい側でも 女性同士が真中を占めて話していた
神山は隣りの杉田と色々と話をしたが 祥子や由香里
真奈美の事が気になり うわのそらで返事をしていると時々
ちゃんと聞いていますかと 怒られた
神山に時々小谷や由香里から厳しい話を振られると
隣りの翔も話題に割り込んできて 楽しく盛り上げ神山を助けた
小谷も杉田の話が上手なので何回も笑いこけて
笑い涙が出ている時も有った
祥子と真奈美は先日会ったばかりなので 話が弾んでいる様子だった
内藤も筒井と話が弾んでいたし 奥村と倉元も話が弾んでいた
宴酣なった頃 内藤夫妻が退場する事になった 真奈美が
「部長 おめでとう わたしからの気持ちです」
と 言うと神山のほほに軽くキスをした
みな あっけに取られていると
「あっ ごめんなさい 冗談ですよ皆さん
ここに居る お美しい女性達に取られてしまうのが怖いから
でも 本当のプレゼントはコレよ」
真奈美はバッグの中から小さい箱を取り出した
「さあ 開けてみて」
神山は包装紙を開けるとロレックスの箱が出てきたので驚いた
「ふぁ~ ロレックスの時計 凄い」
テーブルの皆が立ち上がって見に来た
今度のロレックスは皮ベルトでカジュアルな時似合いそうだった
「すみません 先日頂いたばかりなのに、、、」
「いいのよ お似合いね 今日の麻のジャケットにぴったりだわ」
「ありがとうございます」
神山は深々とお辞儀をした
「おう 山ちゃん 凄いな 腕にはめて見せてよ」
「そうそう はめて見せて」
神山は腕にはめると 顔の前に持って来てポーズをすると
「ふぁ~ ほんと ぴったりお似合いです」
「奥様 それではこの時計も使わせて頂きます
本当に素敵な時計を ありがとうございます」
神山の話が済むと内藤夫妻は出て行く時
小谷を呼び何か指示をしていた
ロレックスを見てみると23時を指していたが 誰も動かなかった
暫くすると筒井が化粧室に行く時 神山が呼ばれた
「これから帰宅するが 山ちゃんはどうする」
「ええ 私も帰宅します その前に現場に立ち寄りますが」
「そうか そうしたら 私と久保君と3人で車に乗ろう」
「ええ お任せします」
神山が席に着くと由香里が不安げな顔で
「どうしたの? 何かあったの?」
と 聞いてきたので
「ナンでもないよ そろそろ出るけどどうするかって事だよ」
「ふ~ん それで」
「うん これから上原の現場に立ち寄る事にした
僕は最初からそのつもりだったがね」
「えっ これから行くの 大変ね 久保さんも」
「うん 筒井さんが一緒だし 久保さんのプランだし、、、」
「おう 山ちゃん大変だな しかしオープン近いしな、、、」
神山は皆に報告していて 気づく事があった
(そうか 祥子と隣りを知っているのは 内藤社長と筒井さんだ)
筒井が化粧室から出てくると みなの前で
「済みません 神山さんをお借りします これで失礼します
本日は 本当にありがとうございました」
お辞儀が終ると祥子も皆に挨拶をして筒井の後についた
「では そう言う事ですので 私もおさらばします
今日は 祝賀会 とても嬉しいです ありがとうございます」
神山は抱えきれない荷物を持って出口に行こうとしたが
杉田が荷物を半分もって出口まで来てくれた
外に出てみるともう直ぐ5月だがまだ肌寒かった
この麻のジャケットがまだまだ必要だなと感じていた
「先輩 僕はもう少し倉さんにお供します」
「うん 頼んだよ」
言い終わると丁度タクシーが着たので 筒井が前に乗り
荷物の多い祥子と神山は後ろに乗り込んだ
筒井達が乗ったタクシーは上原の現場に着いた
現場では24日の午前中に仕上がるよう遅くまで作業していた
この上原では通常天井工事は行わないが
今回のブティックの性格上行われた
今夜は壁面が出来ている事だと思った そうすれば片付き次第
バックヤードに商品を納品する事は可能だが 果たしてどうか
「やあ 夜遅くいらっしゃい こんばんわ 山ちゃん
あっ筒井さんも 久保さんも」
3人を見た高橋は揃ってきたので多少驚いた
「山ちゃんが来る事は 内藤から聞いています」
「えっ 話していないけどな まあ 現場見ないとな」
「山ちゃん だいぶ出来てきたね」
「そうですね このような現場を見ると 昔を思い出しませんか」
「うん 上野店ではお世話になったよな いや今もだけど」
二人は顔を見合わせ笑ったが祥子も一緒に笑った
「孝ちゃん 天井の穴あけは予定通り?」
「ええ 少し早めになり 明日午前中から入ります」
「助かるね どんどん早くなるね」
「そんな でもその位しないと間に合わないですよ」
バックヤードの事を考えれば早く進め残骸を搬出した方がいいので
高橋も早め早めに手を打っているのだろうと考えた
高橋が奥から出てきて神山に
「遅くなりましたが 受賞おめでとうございます」
ペコリと お辞儀をした
「いや 大変だった みなに振り回されたよ」
「どうですか 駅前で」
「僕はOKだけど 筒井さん行きましょう」
「うん そうだね 久保君もいいだろ」
祥子はにこにこして 筒井にではなく神山に
「ええ お願いします」
「そうしたら 少しだけ時間下さい 大工に段取り話しますから」
「悪いね 邪魔して」
「大工も夜食だからさ 待ってて それとも先に行ってて」
「ああ 先に行ってます」
「了解です 直ぐ行きます」
筒井に話し先に駅前寿司屋に行く事にした
歩き出すと筒井が 神山に
「しかし タイミングよく3人で出られたものだ」
「えっ、、、」
「そうだろ 君たちが同じマンションなんて知っているのは
アルタの内藤社長と私だけだからね」
「そうそう 出るとき斉藤さんに理由を話していて気が付きました」
「別に皆ばらばらでも良かったが 二人一緒にタクシーに乗ると
久保君だけではなく 山ちゃんにも迷惑が掛かるからね」
「そうですね ありがとうございます 気を使ってくださり」
「ええ 私もどうしようか考えたんです 現場に夜遅く神山さんと
タクシー利用だとどうかなてぇ 社長からお話された時
本当に助かりました やましい事がなくても 由香里さんや
ご夫人もいらっしゃたし、、、
あっ それで内藤ご夫妻は早めにご退席されたんですね」
「うん 君たちが話しに夢中になっている時 社長と
段取りを決めたのさ だから内藤社長は最初から早く帰るつもりで
受付の女性を呼んでいたんだ」
「そうか 最後の清算をしなくてはいけないし そうか、、、」
「まあ あと女性の人数が少なく斉藤さんと久保君にも配慮した訳さ」
「そうですね 私も清算の事までは気がつきませんでしたが
確かに 由香里さんと私だけでは 可哀相ですよね」
筒井と神山は 祥子の肩を叩きながら笑った
「さあ 倉さん 主役が消えたところで 別の所行きますか?」
「おう そうだな ここからだと近いよな」
「ええ そうしたら 由香里姫 清算してきてください」
「あの ここの清算は私が内藤から指示されていますから、、、」
「いいのかな ねえ 倉さん」
「おう 内藤社長がそうおしゃっているなら そうしよう」
「小谷さん 私たちもう一軒行きますが 来られますか?」
「ええ 行きたいんですが 明日早いので失礼させて頂きます」
「おう 残念だな べっぴんさんとご一緒したかったな」
「また倉さん 少し酔ってきたわね」
由香里が大丈夫と聞いている時 杉田が2階に上がってきた
「おう 翔 もう一軒いくぞ」
「えっ もう出るんですか」
杉田はここで小谷ともっと話をしたかった
場所を変えるという事は 小谷とここでお別れを感じていた
清算を済ませ2階に上がってきた小谷に
「またお話ししませんか?」
「ええ 私 杉田さんのお話好きですよ 誘ってください」
「はい わかりました 必ず、、、」
二人が話し込んでいると由香里が
「はい若者 良かったね 小谷さん
この子はまだ半人前だから鍛えてね」
小谷はくすっと笑いながら 杉田を見ていた
「おい 翔 いつまでお見合いしているんだ 行くぞ」
「おう おいてくぞ」
「私 お見送りさせて頂きます」
お店を出てタクシーを待っている間 小谷は由香里と雑談をし
時々笑っていた 笑い顔が照明の灯りで一段と美しくした
車が来ると 前の座席に杉田が乗り 窓を開け小谷を見ていた
小谷も車が出るまで杉田を見て 杉田が手を振ると同じ様に答え
タクシーのテールランプが見えなくなるまで 手を振っていた
「え~ 何度も聞いて飽きたでしょが
受賞おめでとうございます 乾杯!」
「そんな 何度聞いても嬉しいですよ 一生に一回だろうから」
「おいおい 山ちゃん もっと頑張ってくれよ
来年もその次の年も永遠に ねぇ 久保君」
「そうですよ 毎年 受賞しちゃってください 私も、、、」
「うん?私も、、、 どうした 久保君」
「ええ 私も 凄く嬉しいですよ」
「それはそうですよね 銀座一のデザイナー 神山部長と一緒に
仕事が出来て そして設計を聞かれた時 胸を張れますよね
実は アルタでも山ちゃんの仕事をしていると 一目置かれるんです
その位 凄い人ですよ 山ちゃんは」
「おいおい 誉めすぎだよ そんな事ないから 久保さん」
「いえ 本当の話です 例えば今度の什器搬入の配車にしても
普通考えられないんですよ」
筒井と祥子 神山は高橋の話を聞きながら箸を進めていた
「だって 配車先がライバル会社の専属ですよ
普通考えたって どう転んでも協力はしてくれないでしょ」
筒井も祥子も そこまでの事情は知らなかった
ただ 25日の什器搬入がアルタの手配したトラックだと
夕方になってしまうが 神山が何処かに頼んだ事によって
24日の夕方に搬入され 一日早くなったと
ニーナ・ニーナでは そこまでしか知らなかった
改めて 筒井と祥子が神山を見て
「そう言う事情は知らなかった 恩にきる ありがとう」
「そうでしょ そこを山ちゃんの顔で 出来ちゃんですよ
だから 私は今 会社でも一目置かれていますよ」
「なんだよ 孝ちゃん その事で一目置かれてんの?」
「いやいや ごめん 例えですよ 山ちゃんの仕事の」
「なんだ例えなら 一目置かれていないんだ」
「もう どうしたの 今日は 一目置かれています」
「まあまあ 山ちゃんは そんなに凄いんだ そうすると
これからは 気軽に『山ちゃん』と呼べないな ねぇ 久保君」
「ええ しかし、、、私は神山さんと呼んでいますよ」
「ははは そうだったね ごめんごめん」
「いやだぁ ご自分の事 私にふって~」
笑い声が店中に分るくらい大きな笑い声だった
この駅前寿司屋は最終電車が終っても安くて美味しいと評判で
家路に着く前 軽く呑み直しをする客が居るので
客を見ながら少しの間営業している
逆に給料日前など客足が悪い時は早めに閉めてしまう
今日は給料が出た後で 金曜日と重なりお客は結構多い
雑談を済ませると 筒井が
「そうすると あと1週間で出来上がりですね 楽しみです」
「はい 少し余裕があります 任せてください」
「分りました そうしたら 私はここで失礼するよ」
「えっ まだいいでしょ 筒井さん」
「いや 神山部長のように若くないから」
「そんな ねぇ 久保さん」
「いやいや ほんと帰ります では高橋さん 頑張ってください」
「あっ それでしたら この券 使ってください
内藤から 指示されていますから お疲れ様でした」
筒井はタクシー券を受け取ると 立ち上がる祥子を制して明日の
スケジュールを確認し 神山や高橋に 挨拶をして出て行った
「神山さん そんなご苦労があったなんて知りませんでした」
「いや 今までのお付き合いで お願いしただけさ」
「へぇー お顔が広いんですね」
「そうでしょ 久保さん だから凄いの 山ちゃんは」
「まあ それはそれとして オープンは4月26日で何時?」
「それは11時です 変更はありませんよ」
「そうか そうしたら 少し余裕が出来たんだ」
「ええ 25日の引渡しを先日伺った時
商品陳列などで徹夜の作業を覚悟していました」
「すみませんでした 早くできると言っておきながら、、、」
「いいよ 孝ちゃん 済んだ事だからさ」
神山と祥子は鮮魚のおつまみを食べていたが
高橋が食事をしていない事に 気が付き
「孝ちゃん 何も食べなくていいの?」
「うん もう直ぐ終るし それに夕食が遅かったから 大丈夫です」
「遠慮しないで食べてよ 今夜は僕がごちそうするから」
「そんな 内藤に怒られます だめです」
高橋は内藤から言われているのか ご馳走にならないと言い張った
「わかった そしたら ご馳走になります」
神山が仕事以外の事を話しすると
祥子も時々参加して楽しい時間が過ぎた
高橋がジャケットの袖口に 真奈美からプレゼントされたものと
違うロレックスをしているのを発見して
「どうしたの そのロレックス?」
「凄いでしょ 真奈美さんからのご祝儀」
「えっ またロレックス、、、しかしこのファッションにぴったし」
「うん また貰っちゃった」
「う~ん、、、いいな 山ちゃんは 羨ましい」
「そんな事ないよ 後が怖いよ」
神山はロレックスの事を言われ覗いて見ると
あと少しで25時になる時間になっていた
「孝ちゃん もうこんな時間だけど 平気?」
「そうですね そろそろ出ましょうか」
高橋がカウンターで清算している時 神山と祥子は表で待ち
「今夜 どうしても話したい事がある 少しでいいので、、、」
「ええ 着替えたら お部屋に行くわ」
「いや このまま来てください」
「は~い そしたらこのまま行きます」
「お待たせです」
「何時もすみません ご馳走様」
三人歩きながら店舗の飾りつけの話で盛り上がったが
すぐに現場に付き
「それでは 孝ちゃん お先に」
「はい 明日は8時から入っています」
「うん 僕も早めにくるよ では」
祥子は高橋に対し 深々とお辞儀をして別れた
「まいったー 今日は」
部屋に入るなり ジャケットを脱ぎ椅子に腰掛けた
「そうね お疲れ様でした」
祥子は神山の脇に来て おでこに軽くキスをした
離れると ジャケットを片付けようとしたので 慌てて立ち上がり
自分でクローゼットにしまいこんだ
「祥子 ビール呑もう」
「は~い 用意します」
クローゼットからカメラバッグを取り出し
先日ホテル『ブティック「モテリコ」』で買った
バングルを取り出した
祥子が テーブルにビールとチーズを並べたので
「祥子 お疲れ様でした とにかく今夜はお目でたですね」
「そうね あなたは素晴らしいわ 改めて惚れました」
「そお でもね 今夜は祥子に渡したい物があるんだ」
「な~に?」
「なんでしょう」
「分らないわ じらさないで」
神山は 包装紙のままバングルをテーブルに置いた
「さあ 開けてみて」
「な~に」
祥子は包装紙を見て驚いた
「これ 銀座のブティックでしょ えっ そんな」
金額的にもっと安い物だと思ったが 『モテリコ』は有名で
祥子の給料でも手が出なかった
そんな期待で包装紙のリボンが上手に解けず ようやく開けると
「ふぁ 凄い この石 アメジスト ふぁ~ ほんと?」
祥子は夢を見ているようだった
「実はね 先週かな もう少し前だったと思うの
色々と他店を見て調査してみなければいけないでしょ」
「うん」
「その時 モテリコで発見したの だけど高くて諦めたの
だから すごく嬉しいわ ほんと ふぁ~」
祥子は箱から取り出し腕にはめてみた
「どう 似合う?」
「うん 今日の色にぴったし カンカンだ」
祥子は神山に抱きつき唇を合わせた
「ねぇ 明日からこれ付けて行っていい?」
「うん」
「ふぁ~ ほんとありがとうございます 大事にします」
「そうしたら 寝ようか 遅いし あっ別々でいいよ」
「ごめんなさい そうしますね」
「明日は どうなっているの?」
「オープンご招待のDMはOKでしょ だから銀座直行です」
「そうしたら 僕は上原によってから 銀座に行く」
「は~い ではおやすみなさい」
祥子は嬉しそうに神山の部屋を出て行った
4月22日 水曜日
携帯電話の音がけたたましく鳴った
どこで鳴っているのか うるさいと思った
「神山さん 起きてください 神山さん」
田代の呼びかけで ようやく目を覚ました
「誰かの携帯電話 鳴った 今?」
「ええ 神山さんの携帯ですよ」
言われて着信を見てみると 亜矢子からだった
急いで 電話をすると
「神山ですが どうされました?」
「私です ごめんなさい 1時間くらい遅れます ごめんなさい」
「うん わかった また電話ください 待っています」
神山は突然の出来事で考えたが 亜矢子の事だから
よほどの事情で 遅れるのだろうと考えた
確か以前逢っている時も 暗い表情していた事を思い出した
「大丈夫でしたか 連絡は」
田代が心配そうに聞いてきた
「うん 普通の連絡だよ」
「それは良かったですね 相当長い間鳴っていましたから」
「心配かけてすまない ごめんごめん あとどの位で着きますか?」
「そうですね あと10分位でしょうか
着いたら 起こしますから ごゆっくりしてください」
「わかった ありがとう お言葉に甘えま~す」
「はい」
神山は亜矢子の事を考えていると また睡魔が襲ってきた
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