2012年10月15日月曜日

青葉 4 - 18 Vol. 2



しかし田代が
「しかし 車があっても 内野君一人では出来ませんよ」
高橋は人差し指で 自分の顔を指し
「忘れていませんか 私を ねぇ山ちゃん」
「そうそう 孝ちゃんがいたよね」
「だって 高橋さんは久しぶりの休みじゃないですか」
「うん いいよ 御殿場に行くぞ」
高橋はコブシをつくり手をあげた神山は高橋を見てにこっと笑った
「そうだ 内野君に連絡しよう」
高橋は内野に携帯で事の成り行きを説明し理解してもらった
「高橋さん 大丈夫ですか 内野君と2人で?」
「田代さん 山ちゃんにも行って貰うよ どうですか神山部長?」
「そうですね 車の件もあるし現場も見たいし 行きましょう」
「ねっ だから大丈夫です」
高橋が会計をするので 先に出たが田代だけ呼ばれ残った
現場に置いてある車まで田代は残念がっていたが
高橋に宥められ 
「次もありますからね その時はご一緒しましょう」
そう言って 元気を取り戻した
高橋にお礼を言うと 高橋のほうが深々とお辞儀をした
挨拶を済ませると バンは横浜に向かった

高速を利用して横浜に着くまで 田代は御殿場の話をしなかった
神山もあえてゴルフの話題は避け 若い二人と雑談をした
田代は高速をおり 神山に確認をしながらマンションに着いた
「はい 神山さん 着きました お疲れ様です」
「どうも ありがとうございました」
田代はそう言うと車から降りて来て
「今度 ご一緒お願いします」
ゴルフのグリップを握る仕草をして言った
「はい 今回はすみません 御殿場が進めば行けますよ」
「ええ そうしましょう」
神山と田代は握手をして別れたが 車の中から若い二人が
「ありがとうございました 宜しくお願いします」
神山は皆に手を振り車を見送った
部屋に入ると4月5日に出て行ったままになっていて
窓を開けたり 換気扇を回したりした
郵便物が溢れているので 管理人室まで聞きに行くと
大抵はゴルフ場の勧誘だったり 緊急を要する手紙類は無かったが
一応確認の為 全てを部屋に持ち帰り 整理をした 
26日夜の御殿場工事について奥村に連絡した
「神山です」
「おお 昨日はご苦労様 今少し前内藤社長から電話があったよ」
「えっ 例の車ですか?」
「うんそうだ 大変喜んでいたよ」
「ええ アルタの人手不足などを考慮したり 御殿場の仕事を
考えると あの方法しかなかったのです
出すぎたかもしれませんが すみません」
「う~ん 少し問題はあるがしょうがないな
ところで 今 どこに居るの?」
「ええ 横浜の自宅で整理しています 何しろ10日振り
なので 郵便物が多くて一応全てに目を通している所です」
「そうか 10日振りか 換気扇は回している?」
「ええ 窓を開け 換気扇を回しています」
「うん 大変だな それで何時ごろ来れる?」
「多分 夕方としか言えませんが、、、何か?」
「いや大した事ではないけど
けさ ホテル催事で翔が陳列した オープン棚があるだろ」
「ええ 指示しましたが それが何か?」
「先方が偉く気に入って 売場でもあのような方法で出来ないかとか
イベントの時は あの方法がいいとか うれしい悲鳴さ
そこで 山ちゃんに経費を掛けないで 効率のいい陳列方法を
あの部長さんに 教えてもらいたいんだよ」
「えっ それは良いですが 翔でも出来る事でしょ」
「うん しかし翔はお茶をご馳走された時 山ちゃんの名前を伝え
少し大げさに紹介してしまったんだと ほんとうに困ったよ」
「えっ 大げさに僕を、、、名前までだした、、、
なんで、、、考えられないアホですね」
「うん 喜んでもらうのは良いが 経費は掛けられないし
例え安く済んでも 催事課の予算ではないからな」
「そのように 突っ張れないんですか」
「うん 一回話したが だめだった そこでご本人が登場ですよ」
「はい 了解しました しかしほんと夕方としか答えられませんよ
着る物を整理して 上原に送らなければいけないし、、、」
「分った 先方には夕方と伝えよう」 
「倉さんは居ますか」
「今日は休みだけど なにかあった?」
「いや 翔をしかってもらおうと思って」
「はは だめだよ 翔は落ち込んでいて どっかに消えた」
「帰ったんですか」
「いや 帰ってはいない 翔のバッグが置いてあるから」
「了解です なるだけ早く帰ります」
「うん たのみます」
奥村との電話を終えると これからの季節に必要な洋服や靴などを
ダンボールに入れ 宅配便を扱っている店に出しに行った
部屋に戻り時計を見てみると15時になっていた
冷蔵庫からビールを取り出して呑み
横になって考えていると寝てしまった

携帯電話がなり 慌てて起きた 杉田翔からだった
「先輩 すみません 怒っていますよね」
神山は時計を見たら16時になっていた
「うん 凄く怒っている 今考えている所だ」
「すみません だけど大げさに言っていないですよ 僕は、、、」
「まあ あとでな ゆっくり聞くから」
神山は電話を切ると周りを片付けて直ぐに着る洋服類を
紙バッグにいれ 部屋の中をもう一度見回した
窓を閉め換気扇を止め部屋を出て 交差点まで来た時に
荷物があるので電車を使わず車で行く事にした
神山は上原のマンション経由で 銀座に行った
部屋に入ると 由香里が近づいてきて
「会議室で待っているわ 翔も一緒よ」
「わかった ありがとう」
いったん席に荷物を置いて会議室に行こうとした時 奥村が
「山ちゃん 頼むよ」
両手を合わせ お願いした
「分りました」
会議室に入ると翔とブティックの部長が無言で向かい合っていた
「あっ 先輩 ありがとうございます」
「どうもお待たせいたしました 神山と申します」
神山は名刺を差し出しながら 礼をした
(あれっ 何処かで合っているな、、、)
先方も名刺を出し 首をさげた 
「さあ どうぞ それから 杉田君 君はいいよ ありがとう」
「大変お待たせいたしました 今回はご迷惑をお掛けしました」
神山が挨拶をしていると 部長が 
「神山さん 上野店に居られませんでしたか?」
「ええ 上野には長く居ましたが なにか?」
「やっぱり ほら8年程前 一階の改装工事 大掛かりな
あの時にお世話になった 矢部ですよ」
「ああ うちのハンドバッグ什器を間違って本社に
もって帰り 廃棄した あの時の ああ 思い出しましたよ」
二人は8年前を思い出し笑った
上野店の改装工事の時 
ハンドバッグ売場の什器を自社持ち込み什器と
間違え 会社に持って行き 廃棄処分をしてしまった
当時 担当だった神山は出てきた什器を補修し 
他店での再利用計画の事務手続きをしていたが員数が合わず
発覚した事件だった
「そうですね あの時はびっくりしましたよ
どうしても10数台足りなくなり うちの取引業者に
間違って持って行っていないか 何度も聞きましたからね
あの時の矢部さんでしたか」
「あの時は 本当にすみませんでした ちゃんとチェックしていた
つもりだったんですがね 済みませんでした」
「それより今回は済みませんでした 間違った什器で」
「でも杉田さんに伺った処 神山部長のアドバイスとの事
コレは売場展開やイベントで使えるなと思いましたので、、、
現在 売場では上野で展開していた方法なんですが
いまいち 今日の陳列のほうが売れる気がするんですよ
現に 130%の出来です 16時〆でですよ」
「うん 分りますが 売場の設計は催事課では出来ないんですよ
勿論イベントの時はうちが担当ですがね 
しかし 矢部さんも分ってくださると思いますが
全て経費予算なんです」
「わかりました 売場に付いては一度 雑貨部長と相談します
イベントの時は 何とかなりませんか」
「はっきり申し上げますが 戻入でできます
しかし 今回のように上野が予算を握っている時は こちらでは
どうにもできませんよ そこは分ってください」
「はい しかし今日のように 予算達成すれば会社も出しますよ」
「そうですね 戻入が絡んだ時は 私のところに直接来て下さい
こじれると ややこしくなるだけですからね」
「はい 分りました お休みのところ済みませんでした」
(休みじゃないぞ さては翔かな それともこのTシャツかな)
「いえいえ では」
お互いにお辞儀をして 部屋を出ると由香里や翔 奥村がいて
「どうもありがとうございました」
「いえ ご迷惑をお掛けしました
杉田さんどうも ありがとうございました では失礼します」
そう言うと矢部は部屋を出て行った

「山ちゃん どうしたの 凄いね」
「そうよ だってあの人お茶を出しても無口で 怖かったわ」
「先輩 ありがとうございます ほんと助かりました」
「ええ それより先に売場に電話します」
神山は雑貨部長に電話をして 事の経緯を話した
部長もホテルオートモの数字は把握していて 神山は誉められた
矢部が相談に伺う件と現状では催事予算で出来ない事を伝えた
「うん 分った しかし神山部長 有名ですね」
「そんな事ないですよ かえって有名税で振り回されています」
神山は雑貨部長に理解してもらい 皆をテーブルに招いた
先ほど会議室での経緯を話すと 
「僕も先輩と同じ話をしたんですけど、、、」
「おばかちゃんね 神山さんは 抜きん出ているの 分る ねぇ」
由香里が嬉しそうな顔をこちらに向けたので 頷いた
「しかし8年前にそんな事があったんだ 大変だったね山ちゃん」
「ええ 取引のある什器屋に全部探させましたからね
僕にとっては死活問題でしたよ 終いに改装工事に該当している
会社に当ったら 矢部さんのところで廃棄処分していた事が
分ったんです」
「しかし ほんと良かったよ 倉さんが居てくれれば 
又別の方法で 帰って貰うことが出来ただろうが 休みだしね」
由香里がうっとりして神山の顔を見ているがその時に
「ねぇ あなっ、、、あの コーヒーでも入れましょうか」
由香里がとちった事を神山以外に気が付かなかった
「うん そうしよう 翔 これで地下に行って美味しいケーキを
買ってきて ただし 1個1000円はなし 
それから1人1個で良いからな」
「どうしたの そんな あな、、、神山さんが出さなくても」
「いいから 早く行って買って来い」
「はい 買ってきます だけど1個1000円なんて無いですよ」
杉田はしぶしぶ地下食料品売場で ショートケーキをかった
部屋に戻ると コーヒーとお皿が用意されていて
みなの機嫌が直った所で 神山が奥村に
「課長 26日の日曜日 私も御殿場に行きます
一応 夕方からの仕事ですが 小田原工場に立ち寄って
行きますのでニーナ・ニーナの 仕事が終ったら 
出かける事にします」
「う~ん そうすると夜 主役が居なくなるな ねぇ由香里姫」
「仕方無いと思いますよ アルタさんに今まで借りがありますし」
「そうだね わかった それで 27日は何時になるの」
「ええ 27日はこっちでお休みにします」
神山は小さい声で ゴルフの格好をして伝えた
「うん わかった 由香里姫 山ちゃん27日は休みだ」
由香里はやっぱりと言う顔で神山をにらんだが くすっと笑った
「だけど山ちゃん 御殿場が本格的になったら こうやって
いちいち報告されても困るな、、、」
「明日 倉本さんが出てきてからでいいでしょ」
「そうだな なんと言ってもこうなる事は分っていた事だしな
それに 遊んでいるわけじゃないしな」
神山はその言葉には引っかかったがあえて反論しなかった
ケーキを食べコーヒーを飲み干すと お辞儀して売場に行った

1階のニーナ・ニーナに行くと祥子が待っていて
「この札入れを用意しておきました」
今朝言っていたように紳士ものは少なく3点しかなかった
色々と触ると一つだけゴルフ手袋の肌触りするのがあった
「コレは子羊で出来ているの だから柔らかくて軽いわ」
「うん決めた これでいい」
神山は値札の18000円を出すと祥子は
「家族割で25%オフの13500円でOKよ」
祥子はお金を受け取ると包装しようとしたが 神山は
「直ぐに使うからこのままでいいよ」
神山は値札やタッグを取って貰い
ポケットに入れてあったお札を入れた
折りたたんだ時のしわが出ないし シンプルで気に入った
「ご無沙汰しています」
浜野由貴が近寄り話し掛けてきた
「どうですか 仕事は?」
「ええ 先日社長から注意を受け 謙虚に進んでいます」
浜野は神山が全てを知っていると思いあっけらかんと話した
「うん 会社の販売戦略は必要だからね」
あたりさわりないよう 伝えた
「神山部長 久保さん素敵なバンドルされているのご存知?」
「ああ さっきちょっこと見たけど それがなにか」
「私も ほしいな~と思っているの」
浜野は財布にしまったお札を見ていたのか 甘えてきた
「君だって 魅力的だよ 買ってくれる人いるんだろ」
「ぜんぜん だから神山部長に頼もうかなっ~」
「はいはい 浜野さん お仕事お仕事よ」
祥子は浜野が仕事以外の話をしているので注意した
「ねぇ 内藤夫人になにかプレゼントしたいんだけど、、、」
「そうね ロレックスを2つも頂いたしね」
「今すぐでなくて良いけど 一応頭に入れておいて下さい」
「は~い 電話ください」
神山は頷き 店を出てから直ぐに電話した
「久保です」
「ああ 僕だけど」
「昨夜はありがとうございます
今夜お礼がしたいのですがお時間は?」
「ああ 上原の現場で待っています 大体7時には居ます」
「はい かしこまりました では失礼します」
神山は傍に誰かいて私語が話せなかったんだと思った
部屋に戻ると 杉田に買ったばかりの札入れを見せた
「先輩 かっこいいですよ シンプルで柔らかくて」
そう言いながら表側をじろじろと見回したが 
どこのブランドか分らず
「どこのブランドですか?」
「店内で売っているよ」
そう言って 残っている仕事を精力的にこなして
「翔 お中元のデザインはどこまで進んでいる?」
「ええ 一応先輩からFAXしてもらったのと コレです」
神山は自分のデザインを上手に利用してデザインされているので
「よしOK あと残っていないか」
「ええ 制作する物は全てOKです」
「そうすると1階メインのフラッグだけだな」
「そうですね」
「造花のサンプルとか 刷り物の色出しはどうなっている?」
「ええ 垂れ幕やPOP関係はOKです 先日工場で確認しました
あと造花が綺麗な緑が無くて探しています」
「うんそうなんだよ オレも苦労したよ 確か浅草に
1件取り扱っているところが合ったけど 
今も輸入しているかどうか?」
神山は早速電話した
お店は大きいので潰れていないと思ったが 電話は通じた
責任者も覚えていて 当時の輸入品もあることが分った
「翔 『浅草 大正堂』にサンプルを依頼した 責任者は須藤さん
それで 明日届くから 倉さんと相談してくれ いいな
ここはいまでも上野店に口座はある
取引高など詳細は由香里姫にお願いする」
「はい 了解です」
神山は奥村にお中元のデザインを報告した
造花を除いて順調に進んでいる事
造花は大正堂からサンプルを取り寄せること
などなど話し 翔も交えて詰めていった
由香里に浅草 大正堂の口座確認と取引高を確認してもらう
「神山さん 大正堂の件 大丈夫ですよ
毎年 だいたい250万位取引があります 銀座より多いわね」
「うん 正月の飾付けなどは一箇所で買うから ちょっと違うね」
最悪 大正堂で購入することもその時決まった
「そうしたら 倉さんに伝えておいて下さい 
多分ウインドーで使うし ある程度確保しないと、、、
それと倉さんにメモして置きます」
「うん そうだな 翔も気が付いたら 頼んだぞ」
「はい 了解しました」
奥村は予算を気にしていたが 予算内で収まりそうなので安心した
管理職は予算管理が主なる仕事で あとはおまけみたいなものだった
勿論 課員の動向も気にしなければいけないし管理も必要だが
余程酷い事件を起こしたとかなければ監督責任は問われない

「やあ 孝ちゃん おばんです」
「いらっしゃい 丁度よかった 照明が入りましたよ 今朝のも」
神山は18時過ぎまで催事課で仕事をし 上原の現場に直行した
「いいですね 思った通り柔らかい いい光線ですね」
「ええ 外光と調和して 商品が映えますね」
「あとは実際に陳列した時 どうかだね」
「そうですね 楽しみです」
「それから 孝ちゃん26日のゴルフOKだよ 正式に」
「良かったですね 胸を張って行かれますね」
「田代さんが可哀相だけどね 御殿場が始まったら行かれるしね」
「そうそう 今度はこちらがいかれないかもね」
ゴルフの話をしていると祥子が店内に入ってきた
「こんばんわ お世話になっています」
「やあ」
「いらっしゃい 久保さん」
「ふぁ~ 素敵なひかり やさしいひかりねっ 神山さん」
外光は青がかった色をしていて 商品が死んでしまうので
天井の照明で光の色を調整しなければならなかった
今日の祥子はベージュのパンツに白のTシャツ 
淡い藤色のジャケット姿だった
「久保さん ちょっとこっちに来て」
神山は窓際に居る祥子を壁面のほうに招き 光の色を確認した
「うん 綺麗にでるね このベージュが綺麗に出れば問題なしだね」
祥子も自分のパンツを見て 頷いた
「もしかして お店より明るいかもしれないわ」
「うん 明るさは照度と言うんだけど確かにあるね ねっ孝ちゃん」
「ええ でもほんの少しですよ 店でも光の色を考えてくれれば
もっと 明るく感じるでしょう
ちなみに今流行っているのは ピンスポットですが これは明るく
色もいいので 皆使い始めてきてますよ」
「そうだね 新宿伊勢仁とか高丸とか使っているね」
神山は祥子に気に入ってもらい満足していた
当初は もっと一般的な照明を考えていたが 日中外光を
取り入れる事に変更され 神山が提案した照明の色になった 
「孝ちゃん 晩飯は?」
「うん まだだけど どうします」
「現場は?」
「うん さっき食べたよ」
「出られる?」
「う~ん ちょっと難しいかな たまには2人でゆっくりしたら」
「そうします 明日は日曜日だけど 工程表どうり?」
「うん サインなど来ますよ 工程どおり」
「そうしたら 朝 立ち寄ります」
「朝までに綺麗になっていますよ お楽しみに」
「それでは」
神山は手を振ったが 祥子は深々とお辞儀をし店を出た
「さあ 祥子 どこに行く?」
「渋谷なんだけど 美味しい中華があるの そこでいい?」
「いいけど よく知っているね」
「ううん 貴方が御殿場に行った時 高橋さんにご馳走なったの
筒井も美味しいって 楽しかったけど 私は寂しかったわ」
神山は14日内藤夫妻 田代と4人で御殿場に行き楽しい
思いをしたが 祥子には寂しい思いをさせてしまったと思った

坂を下ると空のタクシーが来たので乗車して行き先を伝えた
二人だけで夕食するのは久しぶりなので 気分が高まった
中華料理店に入ると土曜日で結構賑わっていたが
丁度 夜景が見える窓際が空いたので 案内された
祥子が言うように店内は綺麗なつくりで 
ごてごてした飾りは無かった
神山もここはいいところだと 祥子を誉めた
神山と祥子は何にするか 決めかねていたが祥子が
「ねぇ 単品で少しづつ 頼んで 最後におそばはどう?」
「うん よし決めよう」
神山はウエイトレスを呼び 先にビールを注文した
ビールがくるまで 10品位候補を出し 彼女に注文した
料金も安く 親切なのでますます気に入った 後は味だけだった
ビールが来るとすぐ無くなるのでピッチャーも頼んだ
暫くすると テーブルの上は料理で一杯になった
少量づつ色々種類があると それだけで楽しい気分になれた
神山はなるたけ仕事の話はしないつもりだが
今日は少しだけ違った 杉田の失敗談や
アルタの配車など話していると
「あなた 疲れているのね 普段そんな話しないのに」
「そうか 疲れているのかな~ そんな事無いよ
ところでご夫人のプレゼントだけど なにかあった?」
「ええ 色々と考えたの だけど彼女デザイナーでしょ」
「うん まあファッションではないけどね」
「そうね だから難しいわ ニーナ・ニーナの商品だと」
「なんで?」
「うん もっと レベルの高いブランドよ 
だってロレックス2つよ」
「そうか 例えばシャネルとか 超有名ブランドかぁ~」
「そうね ニーナ・ニーナもパリに行けば大変有名よ
だけど日本では まだまだマイナーだし、、、」
「そうだよね 僕なりに探してみるよ」
「ええ 私も気が付いたら電話するわ」    
神山と祥子は箸が進み おなか一杯にし店を出たら22時だった 
美味しい中華を堪能した二人には まだ時間があった
祥子が
「ねぇ 久しぶりにカラオケ行かない?」
「そうだね 行こう」
二人はホテル近くにある カラオケBOXに入った
若い女の子は丈の短いYシャツでおへそ丸出しで歩いていた
夜になるとまだ肌寒いのに 見ていると自分が寒くなってくる
男の子はさすが半ズボンの格好は居ないが 
それでも真夏と間違える ファッションをしていた
会社帰りの二人連れは少なくないが 
肩を寄せ合い男性がリードして
女性は甘えるように肩に寄りかかって歩いていた


4月22日 水曜日 15時 ◎
「神山さん 着きましたよ 熱海駅ですよ」
神山はどこからか聞こえてくる声で起きた
「やあ すみません 気がつかなかった ありがとうございます」
「いえいえ まだ 3時前ですが大丈夫ですか?」
「ああ ありがとうございます」
「それは良かったです」 
「それより 26日のゴルフはすみませんね」
「いえいえ 全然気にしていませんから ほんとうに
アウトレットが始まれば いつでも出来るでしょう
それより 神山さんは 御殿場までどうやって来ますか?」
「そうだよね 毎回 田代さんとはいかないだろうし、、、」
「そうですよね 私も都合よく上原に行かれれば良いんですけどね」
「まあ その時はその時さ 兎にも角にもありがとうございました
それと24日の什器ですが お願いしますね」
「はい 了解です あっ これ私の携帯番号です」
「はい わかりました では」
神山は田代の車を降りると手を振って見送った
田代は取引先に向かうのでここで別れた
(さて 時間が出来たな さてどうしたものか
余りうろうろしてネコに見つかっても ややこしいし)
亜矢子から1時間位遅れると連絡を受けたものの
待ち時間が中途半端で動けなかった
居酒屋は開いているが 呑みすぎると夕飯の時美味しくないし
色々と考えた末 駅公舎にある喫茶店に入った
外の景色がよく見えるところで コーヒーを啜った
よく見てみると ロータリーになっているタクシー乗り場には
水曜日なのに家族連れとか若いカップルが目に付いた
小さい女の子が父親にぶら下がったり 男の子は母親に
キオスクを指差しなにかねだっている様子だ
もっと年寄りが多いと思っていたので意外な発見だった
魚屋の若者が大声をあげて客引きをしているが
なかなか寄り付かないで 知っている人は
熱海でも別なところで買っていそうだった
コーヒーも2杯飲むと3杯は飲めなかった
窓の外にデパートが正面にあるのでそこに行くことにした
地方のデパートと言っても地域一番店らしく
品揃えもしっかりしていたが 単価は安く設定されていて
結構集客はあり賑わっていた
女性客が殆どで 男性が店内をうろうろしていると変に
思われそうなので エスカレーターで屋上にでた





.