2012年11月29日木曜日

青葉 7 - 21 Vol. 3





「田所さん お化粧によって 素晴らしくいきいきしたわ
今までは どちらかと言うとお仕事柄 地味目だったの だから
思い切って 変えたんです このスーツに凄くお似合いよ
このお姿でしたら グラミー賞に行ってもひけをとりません
若返ったわ 今までのお化粧より」 
「神山さん どうですか? 若返りました?」
「もう そう言うレベルではないでしょ 美しすぎます
そうしたら 今使った化粧品をください」
チーフは 今までのは全て使えない事を伝えた
「はい 分りました お願いします」
チーフが計算して 18万円と言ったので洋子が手渡した
神山が
「チーフ大変申し訳ありませんが その商品を本社人事課安井さんまで
届けてください お願いします」
「はい かしこまりました 直ぐにお持ちいたします 安井さまですね」
神山は頷き 洋子と資生堂を後にした
店員達は洋子を振り返って見るようになった
洋子も悪い気分ではないようで しっかり背筋をのばし歩いた
「洋子 皆見ているぞ 凄いな」
「そうしたら 貴方のシャツを買いましょう」
「えっ このままでいいよ」
「ええ ですが私の言うことも聞いてください お願いします」
「わかった」

神山と洋子は2階の紳士服売場に行った
シャツコーナーに行き 洋子が
「このスタンドカラーだと素敵だと思います」
そう言っていると 店員が近づいてきて
「あっ 神山部長 いらっしゃいませ 今日は何かお探しですか?」
「うん この方がこのシャツが良いって進めるものだから」
「そうですか」 
店員は係長だった 洋子の顔をみてビックリした
「人事のいや失礼しました あっ 神山部長の あっ 次長の 
田所部長ではないですか 大変失礼致しました」
「分らなかった 私?」
「ええ どこのご婦人か分りませんでした 今までと全然違いますので
大変失礼しました しかしお似合いです」
「良かったわ これぜん~ぶ神山部長に買って頂いたの
貴方もしっかりしなさい それで神山部長にこれを勧めているの
どうかしら 私のお勧めは?」
洋子は係長に話をしていると 課長が寄ってきた
「神山部長 いらっしゃいませ」
お辞儀をすると 色々と聞いてきたので洋子が
「あなたは 他の仕事をしなさい お客さんは他に一杯いるでしょ
私はこの係長と話をしているの」
課長は なんだこの女と思い 顔をみてビックリした
「申し訳ございません 田所部長」
「なに あなたも私を分らなかった?」
「はい 神山部長が素敵なご婦人をお連れになっていたものとばかりで」
「はい 分りましたよ しかし残念ね 素敵なご婦人でなくて」
「いえ はぁ 申し訳ございません」
「ねぇ 似合うでしょこのシャツ 今の格好に」
「はい 全然いいです」
「なんだ 全然いいとは 服で仕事をしているんじゃないぞ
頭で仕事をするんだ 僕は」
怒った神山を洋子が宥めた
「課長 そう言う進め方がありますか もっと勉強しなさい分りましたか」
「はい 大変申し訳ございません」
課長は居場所が無くなり 元気なく去っていった

洋子は係長に あなたならどう勧めるか と言われ
「はい では言わせて頂きます 
今 着ていらっしゃいます Tシャツはシンプルで尚且つ活動的で
大変 着易いと思います しかしおしゃれと 言う部分では
少し物足りません そこでこのスタンドカラーのシャツを
お召し下されば おしゃれ度がぐんとアップ間違いないです
以上 ですが どうでしょうか?」
「良いわよ 99点 どう神山さん そう言う事です」
「ありがとう 課長よりましだ なんだ課長は だからホテル催事でも
何時も売上がギリギリで言い訳ばかりしているんだ 困ったもんだ」
「そうしたら これ頂くわ 着替えも含めて 5枚ちょうだい」
「カードは」
「いえ現金よ お幾ら?」
「5枚で 10万円です」
洋子はお金を渡し
「ここで着替えたほうが良いと思います」
洋子に言われ 試着室で着替え Tシャツを店員に渡した
「悪いけど これ催事課に届けてください お願いします」
「はい 直ぐに届けます」
紳士服売場を後にすると 洋子が
「素敵よ あなた」
「うん ありがとう」

洋子が靴を買いましょうと言い紳士靴売場に行った
カジュアルシューズを探していると
「あっ 神山部長 いらっしゃいませ 先日はハンドバッグの件で
大変お世話になりました ところで今日はどのような感じの
靴をお探しですか」
「うん この格好で歩ける シンプルなデザインで
出来れば 皮で軽いのがいいな お願い」
「はいかしこまりました 少々お待ちくださいませ」
係長は言われたイメージに近い靴を3足持ってきた
いろいろ説明をし
「やはり 最初に説明した靴が一番履きやすいかと思われます
自身も 使っていますが 全然疲れません 軽いのが良いですね」
そう言って3足を神山に渡し 軽くてデザインも良いので
「これ履いても良いですか?」
「はい こちらでどうぞ」
鏡がおいてある所で履くとGパンにぴったりした
「うん これにする」
「はい ありがとうございます カードは」
そこで洋子が
「あなたは 接客が上達したわ」
「あっ 田所部長 ありがとうございます しかしびっくりです
田所部長とは全然気が付きませんでした 申し訳ございません」
「いいのよ それで 接客の基本を守っているわ 
それで そちらの靴はどうなの」
「ええ お決めになってくださった 靴より少し重たいですが
逆に頑丈です 雨などの時はこちらの靴がいいと思います
こちらは 牛革で お持ちのはシープです」
「デザイン的にもいいし 2足下さい 神山さん シープを
お履きになられたらどうでしょうか
今のファッションに合っていると思うわ」
「うん そうしよう そうしたら この靴とその牛革は 
お手数掛けて申し訳ないが 催事課に届けてください」
「はい かしこまりました」
「2足でおいくら?」
「7万円になります カードは」
「いえ 現金よ」
洋子は7万円を係長に手渡し 靴売場を後にした
「ねぇ あなた あと46万円です」
「うん なんとかなるさ」
「でも そうだこのまま おじ様の所行かない ねぇ」
「うん きちんと報告しよう 喜んでもらえるな」

洋子は携帯電話で 秘書室に連絡をとるといると言われた 
「おじ様いらっしゃいます 行きましょう」
二人は背筋を伸ばして歩いていると 周りの係長や課長達が神山には
気が付くが 洋子とは気が付かず 深々と挨拶をしてきた 
「なあ 洋子 僕は分るが君は分らないらしいな この様子だと
そうすると 明日当りまた僕の噂で持ちきりになるね 困ったな」
「良いじゃない だってまだ関係してないから」
洋子はしまったと思ったが 顔を真っ赤にしてしまった
少し俯いたのが横目で見えたので 横顔を見てみると綺麗だった
神山はあえて何も言わないでいると 小さい声で
「良いでしょ もう一蓮托生よ だから 何を言われても大丈夫よ」
神山はまた黙って聞いていた
(この人 私をどう思っているのかしら こんなに言っているのに)
(まずいよな~ そんなに誘われても 困った どうしよう)
神山は何も告白できないまま 本社のエレベーターへ向かい乗った
突然洋子が神山に
「大好きです 愛しています」
そう言ってほほにキスをした そして手でマークを丁寧に落とした
神山はきょとんとし エレベーターの扉が開いても降りなかった
洋子が後ろから押して 明るい声で
「おじ様 驚くわよ きっと」
にこにこしながら 事務室に入った
事務室で最初洋子と分る人間がいなかった

秘書室に行くと
「まあ 洋子 どうしたの 凄く綺麗よ 今までより若く見えるわ
神山部長 素晴らしいですね 変身させて
あっ 神山部長も変身されたんですね 素敵です」
「うん ありがとう いらっしゃいますか?」
「ええ お待ちですよ」
二人は副社長室に入った 時田が
「おお 凄い綺麗だ どっかの女優さんかと間違えたぞ 山ちゃんも
格好いい 決まったな」
洋子が
「おじ様のおかげです 綺麗に変身しました」
「おお そうか ちょっと廻ってくれ」
洋子は言われた通り廻って ポーズを作った
「ははは どうだ山ちゃん 戦略イメージ通りになったかね」
「はい ありがとうございます 大成功です
売場を何箇所か寄ってきましたが 洋子さんと気が付く人間は皆無です
成功しました ありがとうございます」
「うん よかったよかった それとな山ちゃん さっき西野君が
車の件で来たので 買ってあげるよう伝えた」
「はい ありがとうございます 何から何まで」

洋子は時田に近寄り
「そこでおじ様お願いがあります 軍資金が無くなりました」
「なに 全部使ったか?」
「はい あと 40万です 今回だけご支援願います」
「うん わかった 200で足りるか」
「はい ありがとうございます」
時田は引出しから 200万円をだし洋子に渡した
「山ちゃん頼んだぞ それとさっき頂いた 鯖寿司だが連れて行ってくれ
だめだ あんなに美味しいと もう1回食べたい 頼む」
「はい しかし大将も言ってましたが 逸品は難しいそうです」
「ならば 今夜だ どうだ仕事は空いているだろ」
「そんな おじさま だめよ今 上原の現場 大変ですよ」
「山ちゃんがいないと出来ないか?」
「分りました ちょっとお待ちください」
神山は駅前寿司に電話をすると女将が出たので 大将に替わって貰った
「あっ 大将 先ほどはクーラーBOX ありがとうございます
そこで しめ鯖ですがまだ残っていますか」
「ええ 夜の分残しています」
「分りました そうしたら 美味しいの1尾買いますので お願いします
今夜 BOXをお返しに伺います」
「えっ 1尾も買われるんですか」
「ええ お願いしますね」
「はい 美味しいのを とって置きます」
電話を切ると 時田が
「やはり 並じゃないな なあ洋子 そう思わんか」
「ええ しっかり計算できています 例え余ってもお寿司にできるし
そうすれば明日も頂けるし 美味しく食べている時 
無くならない様 確保する 大変参考になります」
「うん 凄いなワシより切れる すごいの一言だ スーパーマンだ」
「ところがおじ様 スーパーマンは 先が見えるでしょ」
「うん」
「神山さんは 私が見えないんですって わたし悲しくて」
「なんじゃ 山ちゃん 見えんのか こんな美女を」
「また洋子さん 昨夜も話したでしょ もおう
実は洋子さんとも話したんですが まだ会話が足らないので
それで 色々と見えないところがありますって事です もう」
「うん それもそうだ まあ仲良くやれ 
山ちゃん 何時にするかな」
「副社長のご都合は?」
「うん 今日は何も無い」
「洋子さんも一緒で良いですね」
「うん勿論だ」

神山はロレックスを覗くと16時30分を指していた
催事課で やらなければいけない事は無いがもう一度ロレックスで確認し
「では 6時に伺います 宜しいでしょうか」
「うん わかった 6時に下で洋子と待っている 頼んだぞ」
「はい 分りました」
「山ちゃん ロレックス似合うな」
「はい 先日ウインドーコンテストで1位をとったご褒美です」
「もしかして 女か?」
「はい アルタの社長夫人からです」
「おお 内藤さんの奥さんか 以前ゴルフを2,3回したが上手だ
それに 明るくて 楽しい人だ いい人に見込まれたな うん
スーパーマンはいい女が寄ってくるもんじゃ 洋子気をつけなさい」
「は~い 早く中を見て頂いて 知って欲しいですわ」 
「うん じゃあ 6時に」

二人は挨拶をして 部屋を出た
部屋の人間はようやく洋子と分り みなビックリしていた
洋子は少し笑みを浮かべ挨拶に来る同僚に挨拶していた
エレベーターに向かっていると 下の階にある本社経理部の係長が
箱から出てきた 洋子とすれ違っても分らず 人事に行き伝票を渡し
帰るかと思ったが そこで話し込んだ 女の子は仕事が出来なく
困っていたが なかなか帰らなかった 手のつけられない男だった
洋子はその係長の傍により
「何をしているの?」
「おっ 係長のお出ましか 綺麗になって 何も悪い事していませんよ」
「仕事の邪魔をしないで下さい」
「邪魔はしていませんよ 話しているだけですよ」
「それが邪魔をしている事でしょ」
「そんな 偉そうに」
「ええ 私は本日付で 部長です」
「うそいえ 聞いていないぞ 第一こんな時期に命課があるわけない」
見かねて 神山が
「私は神山です 現在部長です 田所さんは 本日部長になり
私も30日にここの次長になります この鈴やで働きたかったら
態度を改め 言葉を慎みなさい わかったか」
きょとんとしていたが 神山の噂は本社中に知れ渡っていると見え
「あなたが あの神山部長さんですか 大変失礼を致しました
以後気を付けますので お許しください お願いします」
「まあ この場は逃れても 後日同じ様な噂を聞いたら 左遷です
今の鈴やには あなたを働かせる余裕は無いはずです わかったか」
係長は深々とお辞儀をして出て行った

人事の女の子が寄ってきて お辞儀をした
「神山部長 ありがとうございます 助かります」 
「よかった 又 何か有ったら 洋子さんに連絡しなさい わかったね」
深々とお辞儀をして 席に戻ると 人事課の女の子が全員立ち上がり
「ありがとうございます」 
そう言い お辞儀をした
エレベーターに乗ると洋子が
「あの人は悪い人じゃないの 頭も良いし だけどああ言う態度をとるのね
上には媚びうって 部下や女性には見下すわね だけど効きましたよ
あなたは 何をしても凄いのね 頼もしいわ」
箱が1階に付いたとき 洋子が
「ねぇ 日産ギャラリーに行きましょうか?」
「うん パンフだけでも貰うか」
神山は言ってしまった
「こんな素敵な人だったら ずっと手を握りたいもんだ」
今度は洋子が耳を疑った こちらを観たのでウインクをした 
「そう言う気持ちだよ」

洋子は嬉しかった そんな思いで歩いていると日産ギャラリーについた
入った瞬間に神山の背中に電流が流れた そこに飾られていたのは
新車のフェアレディーZだった 曲線が綺麗でまさに『貴婦人』だった
洋子に
「これにする どうだい」
「私もこれにする」
「二人で乗るんだし ツーシートでいいと思う 運転しやすいし」
「ええ 馬力もあるし これなら充分だわ 戦略的にも」
洋子はそう言って神山の手を遠慮深くちょこんと握り
「ねえ 早速 西野さんにこのパンフを持って行きましょう」
善は急げでパンフを5冊貰って 本社に戻った
途中洋子と 3000ccで良いことや 色はオフホワイトでいい事などを
決めたとき お互い共通点あることを確認した
本社の西野理事に会いに行くと
「おう 洋子ちゃん 綺麗になった いい上司が出来て良かったな
ところで 車か 決まったか」
「はい この車です」
そう言い パンフレットをだして説明した
西野理事は説明がきちんとしていれば全然怖くなかった 話が出来た

「わかった 手配する それで 会社の車だけど駐車場はどこにする
外商などと同じ パーキングで良いか?」
「はい それも考えましたが 24時間使える所が良いです」
「うん そうだな 近場で24時間で屋根付きか?何処か無いかな」
「理事 ホテル禅の地下駐車はどうでしょうか あそこは24時間
営業していますし 警備員がしっかり見張っています」
「わかった そうすると 目の前だし便利だな 決めた
会社で借りる 保険も会社にする 楽しみにしていなさい」
「ありがとうございます メンテは」
「日産に見てもらう 故障の時は代替車も契約しておく」
「何から何までありがとうございます」
「うん 分ったが 何があった 山ちゃん 今も副社長が来て
車はどうなった と言っていたぞ 私はまだ本人達から
何も聞いておりません と答えたら 早く欲しいだろうから
来たら直ぐに手続きをしなさい と大変な剣幕で怒られた なぁ」
「さあ 分りません アルタの一件じゃないですか?」
「そうだな それから遅れたが アルタの担当常務だってな 凄いな」
「そこが分らないんですよ 僕は」
「おお そうか さっき内藤さんに聞いてみたんだが 山ちゃんの
おかげで 何十億も入ってくると言っていた それだな
しかし なんでそうなるんだ」
神山は昨日の朝からの出来事を話した
「そうだな 私も気にして新聞に目を通しているが記事になかった
だから 内藤さんが何を言っているのか分らなかったんだ
そうか 例のアレックスグループか」
「はい」  
「完全に権利をアルタに持っていかれた CM制作 イベント計画など
全てだ 勿論 商標は別だぞ あくまでも御殿場の話じゃ それでか
わかった 頑張れよ 私も応援する 何かあったら来なさい」
「はい ありがとうございます」
洋子も一緒にお辞儀をした

西野理事席を離れると 洋子に
「催事課に付き合って欲しい」
「はい 分りました」
「昨夜の結果を皆に見てもらう いいね」
洋子は何も言わず頷いた
少し歩き 催事課に入るとみんな揃っていた
洋子が入ると 皆 驚きの声をあげた
由香里が
「どこの女優さんが来たのか 一瞬分らなかったわ 綺麗よ」
「うん ありがとうございます」
「おう 洋子ちゃんじゃない 部長 ほんとだよ どっかで見たけど
どこの女優さんかなって 昔のカーちゃんを見ているようだった」
また大笑いである
「田所さん 美しくて綺麗です 昨夜の作戦当りますね」
「いえ当りました」
「えっ」
「ええ 神山さんも違うでしょ」
「うん 格好いいです 決まっていますよ」
「実は 売場で私と分らないでニヤニヤしていましたよ ねぇ」
「ええ 紳士服課長はわざわざ怒られに近寄って着ました」
「そうか 大成功か」
「ええ 資金も約200万掛かりました」
「えっ 200万円」
「今は 130万円です 二人の変身代」
「えっ 130万円 ふぁ とても偉くなろうと思わない
今のままで良いや 秘書や自分で変身して 130万円 由香里姫?」
「私は 奥ちゃんに早く理事になってもらい 秘書にしてもらって
130万円どころではなく1千万円位掛けたいわ」
「へぇ~ 1千万円 もう止めて 頭が痛い」
みな大笑いだった

杉田も市川も 見とれているだけだった 神山が
「昨日のお借りした分 お返しいたします お騒がせしました
お陰様でこのように二人とも大変身しました ありがとうございます」     
神山は 倉元に20万円 奥村に5万円返した
洋子を見てみると手帳になにやら記入し 奥村に
「ここにサインをお願いします」
「分った おっ英語で書かれているね うん 分った」
倉元にも同様にサインを求め 倉元もサインをした
「おう もう立派な秘書だな たいしたもんだ 上司もいいし幸せだろ」
「はい 鈴やだけでなく どこ探してもいませんわ
こんなに素晴らしい人にお会いできて お仕事が楽しくなります」
「あ~あ 先輩いいな~ もう自信なくしました 男として」
「大丈夫よ 99点だから」
また大笑いだ 神山が洋子に
「今日は色々と協力をしてくれありがとう 大変な一日だったが
これが 僕らの仕事だ いいね」
「はい 分りました」
「うん 僕はここで仕事します 洋子さんは人事に戻って頂き
引継ぎを漏れの無いよう行ってください」
「は~い では皆さん失礼します」
神山は洋子と部屋を出た 洋子が神山に30万を返した
「サインは?」
「あなたの場合は無いでしょ」
「そうか それで 明日は?」
「ええ 今日と同じです 何か?」
「次長室の件で細かい所を決める時 洋子がいた方がいいと思って」
「はい お電話ください 携帯でも内線でも構いません」
「では 6時に本社に行きます」
「はい おじ様と待っています」
「うん では」

神山は洋子と別れると部屋に戻り席に座った 由香里が
「ねぇ 本当に綺麗になったわ 彼女 どうしたの?」
「昨夜の戦略のコマを進めただけですよ
例えば昨夜の話はスーツだけだったでしょ 僕は顔も変身させないと
駄目だと思って 資生堂でメイクをしてもらったですん
あと考えているのは ヘアースタイルだけど こればっかりは
今日 出来ないので 後日です」
「なるほどね 随分と変ったから 誰だか分らなかったわ」
奥村が
「山ちゃん 凄く格好いいよ 超一流デザイナーにぴったしだよ」
「ありがとうございます 何も出ないですよ」
「ところで アルタの話はなんなの?
みんな分らないんだ 教えてよ」
神山は西野理事から聞いた話を皆に伝えた
「ただし これは極秘情報です 漏れると私が首になります
ですから絶対に守ってください 例え店長でも お願いします」
奥村が 皆に
「神山部長が言った事守ってくれ そうしないと山ちゃんだけではなく
おれまで首になる 西野理事はここまでは許してもこの部屋の外は
絶対に許してくれない 頼んだぞ」
全員が 分りましたといった
「しかし アルタは凄いね 結局山ちゃんの情報か う~ん 恐ろしいな」
「おう 俺みたいなちんぷんかんぷんは分らないな
しかし 情報って そんなに価値があるって事分ったよ
そうすると ほうれんそう などと言っていられないな
これからは ほうれんそうの二乗 いや四乗だな」
みんな納得したので 仕事をした

神山は一区切りついたので 店内に行った
屋上にある園芸用品だった 白い砂を見ていたら 綺麗な砂があったので
聞いて見ると珊瑚が潰れて砂状になっていると言った
大きさも一定でなく 結構使えそうなので 一袋開け使用量を見てみた
神山が考えていたより少ないので もう一袋開けた 一箇所で
2袋利用 7箇所だと14袋になる 金額は一袋400円だった
20袋買ったが少し重たいので一袋だけ手持ちにして後は
理由を話し催事課に5時45分まで届くようお願いした
「神山さん カードは」
「いや現金だ」 
神山は8000円渡し お願いしますと言って おもちゃ売場にいった
ビー球を探していると 係長が寄ってきて
「神山部長 何をお探しですか?」
「うん 綺麗な色したビー球を探している」
そう言われ 売場係長は案内して
「こちらにございます」
神山はネットに入ったビー球や袋に入ったビー球を真剣にみて
種類を決めた これも20袋買った 結構重たかったので
先ほど同様 一袋だけ持って あとは催事課に届けてもらった
あと足りない分はグラスだがどのレベルを買うか決めていなかった
確かに昨夜は一個500円でいいかと思ったが どうしたものか
考えながら売場に行くと 課長がいたので説明し尋ねた
「そうですね いくら飾り物でもどうでしょうか
神山部長は光の事を言われてましたよね」
「うん」
「そうすると やはり安くても1000円位なりますね
余りと言うか ガラス自体が厚みがあると 綺麗では有りません」
「うん そうだね」
「あっ ちょっと待ってください 倉庫にいいのがあります」
課長は売場倉庫に行って 探し出してきた
「どうです 綺麗でしょ 透明感も有るし」
神山は売場で見ていた物とは違うと感じ
「ちょっとかしてください」
そう言ってそのグラスを照明のほうに照らした
綺麗な光線が反対側のガラスから出ていた
「これにします お幾らですか?」
「これは 1500円です 今まで5000円で出していたんですが
数が無くなりまして 出せないんです あと10個です」
「わかりました 10個全部頂きます そうすると15000円ですね
現金で買います 5000円のニーナ・ニーナ宛て領収書と
1万円のレシートでお願いします」
ここでも一つだけ手持ちにして 残りは催事課に5時45分まで届くよう
依頼した 課長は直ぐに届けますと言ってくれた

部屋に戻ると頼んだものが届いていた
さて自分一人で持てるか試したが あと手が一本あれば何とか持てた
困っていると 杉田が
「先輩 じゃない部長 どうされたんですか?」
「いいよ 先輩で」
翔に訳を話すと それは大変ですねと言って一緒に考えてくれた 
「翔 今夜 一緒に運んでくれるか」
「ええ 今夜は大丈夫です」
「課長 今夜 翔を借ります 飾り物が多く 一人で運べないんです」
「うん 翔 仕事は大丈夫か」
「はい 先輩のお仕事でしたら 例え火の中水の中 大丈夫です」
「おう 翔 ご馳走になってこい 今日はきちんとしていけよ」
「はい 何時ものように清潔爽やかに行きます」
「おう あたふたするなよ」
「はい」
「倉さん 知っているんですか 時田さん」
「さっき電話があってなオレがでたんだ オレもびっくりさ
あんな偉い人から それで話を聞くと 今夜の件早く行こうって
催促だったんだ オレは今 店内ですって言っても なかなか聞いて
くれないで 困ったが 向こうが分った 5時45分に待っているから
席に戻ったら伝えてくれと頼まれたんだ しかし副社長 
何回も山ちゃん 山ちゃんって言っていたぞ 凄いな
良く味方につけたな ほんとびっくりだよ
電話取ったら 山ちゃんかだろう 違いますがと言ったら 山ちゃんの
電話だろ だれだ だ なんだこいつはと思って 掛けてきた方が
自分の名前名乗るのが当たり前だろってやっちゃた そうしたら
時田だがときた そこでこちらは まあ自分が悪くないけどな 
済みません と言ったら笑っていたよ 催事課はいいなって
訳が 分らないままに 言付かったわけさ なにがあった」
「ええ 今日は上原の現場でまあお昼はビールが入りますよね
洋子さんも一緒で次長室の図面を確認しながら仕事を進めたんです
そのあと時田さんの所にいってお礼を申し上げようと そうしたら
いい匂いだ と言われカチンと来たんです そこでやっちゃたんです
ただ お昼のお店で美味しいしめ鯖が有ったので それを手土産で
持っていったんですが クーラーBOXをみて また怒られた
まあ こんな経緯です」
神山は時田と田所が親戚は伏せた
「なんだ やちゃったんだ あの人は普段怖いけどな いい人だよ
催事課のことも良くご存知だ まあ 山ちゃんの熱意に負けたんだな」

そんな話をしていると
「おう 少し早めがいいぞ」
「ありがとうございます 翔 行くぞ 翔はその一番重たいの持ってくれ」
「はい ほんと重たいです」
「では倉さん ありがとうございます 行ってきます」
「おう 翔を頼むな」
「洋子さんが 一緒です」
「だったら なお安心だな」
「課長 行ってきます 翔は今夜直帰でお願いします」
「わかった 邪魔すんなよ 翔」






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2012年11月24日土曜日

青葉 7 - 21 Vol. 2



大変なことになった ビールやしめ鯖ではなく 記事探しだ
4人で探したが 出ていなかった
「山ちゃん そうすると 本当に凄いよ 今 この時間だと
社長はまだアレックスグループに行っているけど どうなのかな?」
「だって 社長は地主に裏を取ったんでしょ」
「うん 不動産屋ですね 確かな情報です」
4人は また沈黙をしてしまったが しめ鯖やビールは進んだ
「山ちゃん 次長室だけど 床から考えるといいかなって思うだけど」
「うん わかっている 他人の事はよく分るけど いざ自分がと言うと
これが 人間が甘いのか ここが足んないのか 分っているけど分らない」
「そうだよね どうしたいの山ちゃんは」
「うん まず来た人が少し驚く事ね それとカラーコントロール
それから、、、」
「シンプルですよね」
洋子が助け舟を出してくれた
みんな大笑いだった
「すると 造り付けが決まったから う~ん、、、そうだこうしない」
高橋は図面をだし こことここはシルバーメタ ここはオフホワイト
床はピータイルでシルバーメタ 次長席は黒のつや消しを提案した
「そうだね いいね そうしようか 造り付けの目地棒は真鍮の
ゴールドメッキでどう?」
「うん アクセントにゴールドを使おう」
「そうすると ソファーはオフホワイトのコットン生地で目が粗いの
たしかイタリアのメーカーであったはず アンコは柔らかいのが良いね
座ると沈むソファー テーブルはシンプルなガラステーブル でどう?」
「うん 凄くいいよ 幸三早速あたって調べてな」
神山は洋子に
「どうですか?ご感想は?」
「ええ イタリアのシンプルモダンは好きです お仕事が楽しくなります」
「ありがとう そうしたら決定 あとね スクリーンだけど
キャスター足だよね」
「ええ そうです」
「あとは 彼女の椅子だけど どうするか?」
「有りますよ そのラインで 座りやすいしデザインはばっちし」
「OK任せる いいね洋子さん」
「はい お願いします」
「色は黒かコーヒーブラウンかな それとも白かな」
「茶系より黒か白でしょう しかしシルバーを出していますから
黒が素敵ですよ 絶対」
田中 幸三が助けてくれた
「わかった その線でいこう いいね洋子さん」
「はい 了解です」
皆笑った 
「床なんだけど どうする あそこがたがただぞ」
「そんなに酷いんですか」
「ああ 催事課なんて でこぼこだよ」
又皆黙った 洋子は分らないので発言できなかった
神山がまた沈黙を破った
「そうしたらさ コンパネに張って 下地調整する?」
「そうですね 逆に下を剥さないでのりを乗せたほうが浮かないでしょ」
「うん 受付のハイカウンターの前はループ絨毯で黒 でカウンター端に
見切りを付けてそこからPタイルはどう?」
「それいいですね 見切りは150幅でスロープを付ければ問題なし」
「うん コンパネはなるたけ厚ければ格好つくしそうしよう それと
Pタイルは斜め貼り そうだ1200角のコンパネを置くでしょ 目地が
問題だけど 黒のコーキングで逃げる 或いはゴールドの真鍮メッキ」
「そこんとこは間に合います 実際に作って見ます」
幸三がまた助けてくれた 高橋が
「要は1200角のコンパネにシルバーのPタイルを隙間無しで貼る
その床パネルを現場で斜めに貼る 目地をどうするかですね」
「うん そのとおり 100点」
みんなで笑った
「山ちゃん ありがとうございます 仕事がやり易いよ なあ幸三」
「ええ 実は直接神山さんの仕事をしたかったんです
どこでそんなアイデアが出てくるのか 分らなくて 今でも分りません」
幸三がそう言った時 高橋の携帯が鳴った

高橋は神妙な顔つきから笑顔に変わった そして神山に替わった
「内藤です」
「こんにちわ お世話になっています」
「ありがとう うまくいったよ アレックスグループ ははは ほんと
笑い止まらないよ 今日の日経にも他の新聞でも取上げていないんだ
だから アレックスグループの統括マネージャーは慌てていた
本当にありがとう 会社には報告しておきます」
電話を切ると高橋から
「え~ やりました 内藤が勝ちました 神山部長のおかげです
ありがとうございます 内藤があんなに喜んでいるのは初めてです
皆さん改めて かんぱい」
神山は時計を見ると1時になっていた 大将のところに行き
しめ鯖寿司を頼んだ お土産だけどそのままでいいか聞いたら
そのままでいいと答えた それとおつまみに切り身を一緒に
造ってもらう 冷やしたほうがいいかと尋ねると 冷やしたほうが
美味しいと言われた 1時30分に出るのでそれにあわせ
造ってもらう事にした 神山は出来ればクーラーBOXがあれば 
借用したいと言ったら 空いているのが有るので使わせてもらった
冷酒とビールを一緒に入れてもらった
席に戻ると洋子が
「何を話していたんですか」
「うん お土産の準備さ」
「私に仰って下されば 私が手配しましたのに」
「ごめんごめん 以後気をつけます 大変失礼しました」
みんな大笑いだった 洋子は
「神山さんってまめなんですね 知らなかったです」
「そうですね まめかどうかは分りませんが 気がつきますね」
洋子は喜んで聞いていた 高橋が
「では例の巻物にしますか?」
「うん そうしましょう」
高橋が女将にねぎとろ巻きを頼んだ 大将が あいよと言って仕度した
「しかし 会社は変に思うだろうね」
「えっ 」
「だっていつもおんなじ金額でしょ」
「うん そうそうこの間 聞かれたんだ なぜ神山さんと一緒だと
金額が同じなのって だから同じ物しか食べないだからさってね」
「そうだよね だけど孝ちゃんも満足しているもんね してる?」
「ええ 大満足ですよ 田中もそうですが ここに来たいから
先輩 上原のお仕事お手伝いしますって ほんと調子良いですよ
しかし来た時はちゃんとやってくれますし 僕が居なくても
出来なければ 僕も困りますし」
女将が巻物を持ってきてくれた 神山があがりを頼もうとしたので
「大丈夫じゃないですか 内藤も喜んだし もう二本下さい」
女将は笑って戻って ビールを持ってきてくれた 神山が
作ってくださいと 言うと準備は出来ていますと言われた 
「孝ちゃん 床のサンプルは何時出来る?」
「明日夜 ここで良いでしょ でないと見る機会ないですもんね」
「うん そうしよう 明日はよる遅い?」
「ええ 何時も遅いですよ それから山ちゃん 次長室の作業届けですが
催事課に行けば作業表はありますか?」
「うん あるよ」
「今日 伺った時 幸三君が書きに行きますので 印鑑をお願いします」
「わかった ちょっと待ってて」
神山は携帯で催事課に連絡をした 奥村課長が出て
銀座店は大変な事になっているぞと言われ 分りませんと答えた
神山はそんな事ではなく次長室の件を話したかったので
強引に杉田に替わって貰った
「翔 よく聞いてくれ これから1時間位したら アルタの田中君が
君を訪ねていく 次長室の作業届だ だから君のはんこでOKなので
押してくれ わかった」
「はい 了解です しかし先輩なにしたんですか 大騒ぎですよ本社も」
「わからん とにかく アルタの件頼んだぞ 忘れると減俸だからな」
「そんな」
「そんなじゃない ここに田所さんもいてちゃんと聞いている
ねぇ 田所さん 、、、 そうよわすれないでね」
「はい わかりました 失礼いたします」
神山は洋子に
「なんか分りませんが 僕の事で大騒ぎになっているんですって」
「なんでしょうね なにも無いですもんね」
「う~ん 幸三君 杉田君が待っています 尋ねてください
そして話がこじれたら 僕の携帯に電話をしてください」
神山はそう言い番号を教えた 全て綺麗にしたので高橋が
「では 出ましょう ご馳走様でした」
会計をする時 
「お土産は 僕が払います そうさせて」
高橋は 頷いて ここの分を支払った

現場にもどると 田中が
「では 一旦社に戻ってから伺いますのでお願いします」
神山たちと分かれた
「じゃあ 孝ちゃん僕らも戻ります ありがとう」
「お願いします」
二人で 挨拶をし現場を後にした
タクシーを拾うと銀座鈴やと告げた 洋子が
「しかし クーラーBOXで副社長に会いにいく人見たこと無いわ」
洋子は もう笑いが止まらなかった
神山はクーラーBOXの中を確認した
しめ鯖の切り身 がり 冷酒 ビール 氷が入っているので冷たかった
そんな事をしていると銀座に着いた
本社に入ろうとした時 洋子が
「ちょっと まってください 今 確認します」
洋子は秘書室に電話し確認したら 待っていらっしゃいますとの事
それと神山さんのことで 大騒ぎになっているとの事 早く着てと言った
「あなた 何かした? 本社も大変ですって」
「いや なにもしていない」
「そうよね まだ関係ないし」
「えっ」
神山は聞いていたが 耳に入らなかった 
「さあ 行きましょう」
エレベーターに乗ると7階のボタンを押した
元気の無い神山に 
「大丈夫よ なんでもないわよ 心配する事ないわ」
そう言われても心配だった 上原のお酒が飛んだ
7階に着き 事務室に入ると
「ふぁ 神山さんだ」
と誰かが叫んだ そうすると事務員が一斉に拍手した
神山は何がなんだか訳が分らず クーラーBOXをさげ
秘書室に逃げ込んだ 洋子が理由を聞いてみた
「アルタさんから先ほど連絡があって 驚かないで 神山さん 常務よ」
「えっ 常務?」
神山はなんだか分らず 立っていると 洋子が背中を押して
「さあ 入りましょ」
「うん」
「良かったじゃない きっとさっきの件でしょ」
「そうかな」
神山はドアを丁寧にあけると 副社長に一礼し  
「催事課 担当部長 神山 龍巳 です」
挨拶すると お辞儀をした
「おお 君か 有名な神山君は」
「はい 有名税も払っています」
神山は言ってからしまったと思ったが遅かった
「そうだな 有名税は大変だよな ところでなんだ」
「はい 本日お伺いましたのは 30日の命課に対しての御礼を
申し上げたく 伺いました ありがとうございます」
「うん わかった ところでそこに置いた クーラーBOXはなんだ
ここは 釣り道具屋ではないぞ」
「はい 田所秘書に聞いた所 お食事をされないで 
お待ちいただいてると聞きましたので お昼をお持ち致しました」
「うん 分った それでは頂こう」
「はい 分りました」
神山は洋子から包み貰い クーラーBOXを開け 
しめ鯖の切り身 ビール 冷酒を差し出した
それを見ていた副社長は洋子を見てにやっと笑い洋子も笑みを浮かべたが
神山は見ていなかった 切り身の包みが上手に開かず焦っていた
それを見ていた洋子が手伝いようやく開いた
「手間取って 申し訳ございません こちらが美味しいしめ鯖です
どうぞお召し上がりください」
「うん分った がしかし 神山君 少しいい匂いがするな」
「はい 仕事です 今度におわないビールを探します」
神山はもうどうでもなれと思った
訳の分らない アルタの件があったので 普段の調子が出なかった
「そうだな ワシも欲しいな しかし 度胸があるな
お礼の挨拶の時に 酒を呑んでくるとは 初めてだ君は」
「はい 前代未聞ばかり 驚かせすみません」
又お辞儀した  なかなか頭を上げない神山だった
お許しの言葉が出るまで顔を上げてはまずいと思っていた
「おじさま もう許して 先ほども上原の現場で仕事を纏めたわ
だから もういいでしょ おじさま」
神山は耳がどうかしたのか 自分が可笑しくなったのか
顔を上げて見たかったが 頭を下げていた 暫くすると時田 清三郎が
「神山君 いや神山さん どうぞ頭を上げてください お願いします」
神山はこの言葉も本当の副社長の声なのか耳を疑った
まだ頭を下げていると 洋子が後ろから
「神山さん 時田副社長が頭を上げてくださいって」
下を向いたまま
「本当にそう言った?」
「ええ 私もちゃんと聞きました ねぇおじ様」
「おお 神山さん ワシが悪かった 許してくれ だから頭を上げてくれ」
ようやく神山は頭を上げると
「本当にすまん 悪かった 謝るよごめん」 
時田は神山に起立して丁寧に頭をさげた
今度は神山が 
「すみませんでした 私が皆に進め呑みました」
時田が座り話した
「実はな神山さん 昨日貴方の秘書を探していた 知っていますね」
「はい」
「まあ たっていないで座って そこのソファーに」
神山と洋子は勧められたソファーに座った
「その時 人選をした後 『田所』姓がワシの兄の連れ合いの姓だったんだ
そこで ここに呼んでいろいろと聞いてみたら 彼女の父親のお姉さんが
時田に嫁ぎました と言う話で分ったんじゃ ワシがこの鈴やに
入社した時 親戚一同ワシの家に集まってお祝いをしたんだよ
その時 彼女は1歳で 余りにも可愛いので抱っこしたんじゃ
血のつながりは無いが 昨日 親戚は親戚なのでおじ様と
呼びますって事になり 貴方が今日お礼を言いに来るというので
試したわけです 洋子ちゃん 大合格だ 120点か」
「だから 話をしたとおりでしょ 凄いでしょ 私 幸せです」
「おお それはいいが これ 早くいただこう」
時田は 箸でしめ鯖の切り身を一切れ口にした 
「うん 美味い こんなに美味いのはもう暫く食べていないな
いや 神山さん ありがとう 先ほどの言葉は忘れてくれ
貴方が言っていた 仕事だ さあ食べよう」
神山はようやく意味が掴め 洋子に 
「洋子さん コップを3つ用意してください」
洋子もようやく元気になった神山をにこにこしてみて
「はい 直ぐに 用意します」
洋子は秘書室からコップを3つもってきてテーブルに置いた
神山はビールを開け時田に注ぎ 洋子と自分に注いだ
「時田副社長 改めて ありがとうございます
今後も会社繁栄の為頑張りますので 応援をお願いします」
「うん わかりました 神山さん 洋子ちゃんを頼むな」
「はい 昨日も池上店長から言われました 大切にします それと
副社長 神山さんは辞めてください お尻が痒いです
山ちゃんでお願いします」
「わかった 山ちゃんで良いんだね」
「はい 倉元部長 池上店長 皆山ちゃんです アルタの仲間も一緒です」
「うん いいな ワシは幸せもんじゃ 山ちゃんのような人材を持って」
「ありがとうございます 私も良き上司に恵まれ幸せです」
「おお ありがとう しかし洋子 この男素晴らしいの 
初めて会ったのに びくついておらん わしの気持ちを動かした
ワシも頑固な事は知ってるね そのワシを動かすとは
まこと 男のなかの男だ そう思わんか洋子」
「ええ 昨夜も随分と長い時間話してました 催事課で一次会 居酒屋で
二次会 最後に二人きりで1時間ぐらい話をしましたが
聞けば聞くほど 凄い底知れない力の持ち主だと実感しました」
「おお そうだろう 男のワシだってほれるわな しかしいい男だ」
「ありがとうございます ちょっと失礼します」
神山はニーナ・ニーナの祥子に電話した
直ぐに出て あと30分ぐらいでいける事を伝えた
もう一軒電話した催事課だった 杉田がでた
「アルタさんはきた?」
「ええ 今 認印押しました 課長も居ましたので OKです」
電話を切ろうとしたが 洋子がとって
「杉田さん」
「あっ はい 先ほどは大変失礼致しました」
「そう 何時もきちんと話をしていないと だめですよ 99点」
「はい 以後気をつけます すみません 課長と代わります」
洋子が 奥村さんよといって神山に返したので
「はい 神山です」
「奥村です どうした 大変だと言っただろ こっちは」
「はい 今 時田副社長のところで ビールを呑んでいます お仕事中です」
「えっ」
時田が携帯を渡せとジェスチャーで合図したので渡した
「おう 奥村君 今な山ちゃんを借りてるぞ
本社に持って行かれるからって そんな嫉妬するな 山ちゃんの方が
よっぽど男らしいぞ ワシは山ちゃんを応援するぞ」
「はい ありがとうございます すみませんでした 失礼します」
携帯を切ると神山にかえし
「おお 早く食べないと不味くなるぞ」
「はい ありがとうございます そのお気持ちで一杯ですと
言いたいんですが 先ほど食べてきました 全て副社長の分です」
「そうか そちらは何かな」
「しめ鯖寿司です」
「おお分った しかしこれも全部ワシのか多いな」
「はい 秘書の方にもお分け下さい おやつで丁度いいかと思いました」
「そうだな 洋子 秘書誰か呼んでくれ」
「はい」
洋子は一番上の人間を呼んできた
「君 このしめ鯖寿司は 今度次長になられる神山部長からの
差し入れじゃ おやつで皆さんにと言われている 頂きなさい」
「はい ありがとうございます この度は重ね重ねのお慶び
私ども一生懸命応援させて頂きます
本日はありがとうございます 頂きます」
お辞儀をして戻った
洋子が今朝活動金を貰い忘れたので頂いてきますと言って出て行った
二人だけになったとき 時田が
「なあ だれかいないかな 彼女は頭が切れすぎて それで
男がみんな逃げていくんじゃ 困ったよ
山ちゃんはどうだ 洋子は」
「だめですよ 私の器では無理でしょう」
「先ほどから見ているが いい感じだがな」
「はい ありがとうございます その時はご相談させて頂きます」
「うん 山ちゃんでも手におえないか」
「いえ まだ そんな話していないですし これからでしょう」
「うん そうだな それから遅くなったが アルタの担当常務
おめでとう 先方からさっき電話があって 内藤さんが
今回の件で大変ありがとうございますと 言ってきた そこで
常務で迎えたい しかし出向社員の部分もあるしどうかと言ったら
担当常務なら 株主総会関係なく設ける事が出来ると言う事だった
アルタでは 山ちゃんの腕を高く評価している
それと 内藤さんはワシに逐一連絡をくれている 
ワシも山ちゃんの仕事振りは分っているつもりだ 頑張ってくれ」
そう話していると洋子が嬉しそうに戻ってきた
「副社長 活動金ありがとうございます 一杯頂きました」
「その位ないとな アルタさんもあるし アレックスグループもあるし
急にはアップできないからな 今のうちじゃ 前代未聞だな」
3人で笑った 神山が 
「それで いくらなの?」
「理事3級より上 120万円よ」
「よかった これでスーツ買えるね」
時田が
「なんだ そのスーツって」
洋子は昨日話して決めた 神山の戦略の事をきちんと伝えた
「おお 山ちゃん そこまで考えるか 凄い いやほんとだ
それに 自腹を切ってまで なんて 素晴らしい男だ」
「そんなに誉めないで下さい 当たり前ですから
建て替えて あとで戻ってくる訳ですから いい方向に
転ぶと判断しているので そうすれば会社が繁栄し最終的に
自分に帰ってきますから」
「うん 山ちゃんの言う通りじゃ でいくらだスーツは」
「はい ニーナ・ニーナで直で 44万です うちの正札は88万です」
時田は 机の引き出しを開け 100万円の束をだし
「山ちゃん 正規で買ってください 頼んだよ これを使いなさい」
神山は時田から100万円受け取り
「ありがとうございます 使わせて頂きます」
時田は涙を流していた
「我社に 山ちゃんが10人 いや7人居れば業界1位なのにな
早く買いに行きなさい」

洋子と神山は 部屋を出ると秘書課に挨拶したのとすれ違いに
西野理事が副社長室へ消えた
暫くすると 西野理事が
「OKだ 何でもいいから 買ってやる」
「えっ 買うんですか」
「そうだ 今 副社長が仰られた 後は私が何とかする
早く決めなさい」
「ありがとうございます 直ぐにでも決めさせて頂きます
保険等詳細は後日 田所さんが伺います ありがとうございます」
神山と洋子はきょとんとして人事部に行った
誰かが 神山さんよ と言ったので また大拍手が沸いた 
洋子が カードの手続きをするので印鑑と引き落とし口座を渡してと
言ったので 揃えていたものを一式渡した
洋子が書類を見てみると全て整ったので 神山に見せた
「神山部長 これで間違いないでしょうか?」
「う~ん うん なし 120点」
洋子も人事事務の女の子もみな笑った

「では 印鑑を押してください ここと ここです
このカードは紛失時の保証が500万円まで付いています
それと物品汚破損保険が300万円まで付いています
年会費は10万円です」
「しかし凄いね わかった」
「はい こちらが控えですが 私が預かります」
「うん わかった」
「これでカードの件はOKで早くて1週間で秘書室に届きます
今後 会社関係のオフィシャルな郵送物は全て秘書課ではなく
秘書室に届き 配られます」
「うん わかった」
洋子が元気の無い神山を見て
「どうしたの 元気がないわ」
「うん こう短時間で自分の周りが変るので追いつかないんだ
カードの保証金額や活動費や 昨日までの僕の生活と全然違うだろ
だから 分っていても実感が湧かないんだ ごめんね」
「いいのよ それが 本当だと思うわ だけど 時間が出来たから
パリに市価調って言って行かれるんですよ これからは」
「うん わかった」
「元気だして」
そう言い人事部を出る時 カードの申し込み書を渡し
「間違いはないわ ありがとう ではお願いしますね」
今まで部下だった女の子に渡し本社を後にした

「そしたらニーナ・ニーナに行くよ」
「その前に 部屋に寄ってクーラーBOX置いてきたほうが」
「うん でも そうだ警備員のところに置いていく」
洋子と神山は店内に入りニーナ・ニーナに向かった
祥子が出迎え
「お待ちしていました こちらが神山様から伺ったスーツです」
洋子はビックリした 余り詳しくないが素人目でも最高級品と分った
「ブラウスは2点ご用意させて頂いています こちらがバッグで
ハイヒールはこちらででございます」
祥子は神山が依頼した全ての商品を丁寧に説明した 洋子は
「素人の私が見ても素敵です スーツの生地も肌触りがとても柔らかくて
気に入りましたわ」
「それでは ブラウスとスーツをご試着してください」
祥子は試着室を案内して 戻ってくると神山に
「素晴らしく均整のとれた方ですね 多分直さないで済みますよ」
祥子は廻りにみなが居るので気を使って話した 試着を終え出てくると
女優が出てきたと錯覚するくらい綺麗だった 祥子やスタッフも驚いた
「田所さん 素敵ですよ いや 綺麗だ」
「ほんと よくお似合いですよ イメージにピッタリです」
洋子は神山に 
「このスーツ 軽くて柔らかく 着やすいです 買って良いですか?」
「うん もらおう」
「では お直しが必要か確認しますね」
祥子が失礼しますと言って 上着をめくり腰のラインを確認した
「神山様 お直しする所ありません」
「田所さん そう言う事です 凄いですね パリのプロポーションです」
「神山様 今お召しのが50万です もう一着もお試しになられますか」
「うん 頼みます」
祥子は40万円のスーツを渡した 洋子はそれも試着した
「どうですか 神山さん」
「こちらのデザインも捨てがたいな ハイヒールを履くこと出来る?」
「ええ どうぞ」
そう言われ洋子はハイヒールを履き その場でくるりと廻った
「田所さん バッグを掛けてみて」
「はい 分りました」
洋子はバッグを肩に掛け ポーズを作った
ファッション誌から飛び出してきたようだった
「久保さん スーツは2点とも頂きます」
祥子は少しビックリしたが ありがとうございますと言った
「すべて直しがないならこのまま 着ていこう 初仕事です」
「はい 分りました」
洋子はこのままで行動するので バッグの中身を入れ替え 
着ていたスーツからもハンカチーフを着ているのにしまった
洋子は着ていたスーツを渡すと 祥子が預かった 洋子が
「お忙しい処 お手数をお掛けしますが これを本社人事課安井に
届けてください 分るようにしておきます お願いします     
すみません お電話をお借りします」
洋子はそう言って 本社人事課 安井を呼び説明した
「はい 分りました ニーナ・ニーナの件承知致しました」
神山は祥子に
「お会計をお願いしますが 正札で買います」
祥子がきょとんとしているので
「事情がありまして そうなりました」
「はい 分りました 合計で135万円です」
洋子は活動費の120万円と副社長から貰った中から15万円を出した
「領収書はいかがされますか?」
神山が洋子を見ると 首を横に振っているので
「普通のレシートでOKです お願いします」
清算が終ると 神山は何か足らないので考えていた

「田所さん もう一度廻ってくれる」
洋子は笑みを浮かべながら 廻ってポーズを作った
「わかった 胸のポケットチーフだ 久保さん ポケットチーフを
何点かお願いします」
祥子はポケットチーフを用意すると 洋子に
「何色が似合うかな」
そう言って神山は色々な場面をシュミレーションをしていた
20色くらい有るチーフを必要な色からセレクトした
全部で7枚選んだ 白 濃いピンク 淡いピンク 濃いブルー 淡いブルー
淡いイエローグリーン 淡いオレンジ どうだろうと洋子に尋ねると
「あと このイエローも綺麗です」
そう言ったので 胸に合わせると確かに綺麗だった
「うん わかった これを追加して 8枚正札で買います 
この淡いピンクは今 使いますから残ったのは先ほどの
スーツと一緒に届けてください お願いします」
「お会計です 4万円になります」
洋子が4万円を祥子に渡した 
「では お届けの件 お願いします いつ届きますか?」
「はい これから直ぐに伺います ご安心下さい」

神山と洋子はニーナ・ニーナを出ると
「洋子は 化粧品会社はどこ?」
「はい 資生堂ですが なにか?」
「うん このスーツに合う化粧品を買う」
洋子は神山を信じ信頼しているので 理由を聞かなかった
資生堂コーナーに来ると チーフが寄ってきて
「田所さん いらっしゃいませ 凄く素敵よ 
最初どなたか分りませんでした ほんとうっとりするくらい」
「ありがとうございます ここにいらっしゃいます神山部長 30日に
本社次長になられる方に買って頂きました お願いしますね」
チーフは深々とお辞儀をして
「ご昇進おめでとうございます」
「いや それは30日でいいですよ それより彼女は今度の人事で
私の秘書になられました お願いしますね 今後も」
「まあ 田所さんもご昇進 素晴らしわ 改めておめでとうございます」
「そこで相談があります この今着ているスーツに合う
化粧品を探しています」
「このままのお化粧でも充分お似合いですよ」
「それは分っています 私の言葉が足りませんでした すみません
イメージは 挑発的 男を魅了する しかし派手過ぎない
例えると 映画のグラミー賞などで化粧しているイメージです」
「はい 分りやすいご説明でありがとうございます
そうすると 変えなければ行けませんね 今と 分りました
では田所さん メイクしてよろしいですか 一所懸命メイクします」
「はいお願いします」
「どの位時間は掛かりますか?」
「ええ 直ぐですよ そこにお座りになって 見ていてください」
「えっ恥ずかしいわ 私」
「洋子さん お仕事ですよ お願いします」
「はい 分りました」
チーフが洋子にエプロンを掛け まず今の化粧を丁寧に落とした
神山はすっぴんも綺麗だと感じた 下地を塗り始め どんどん
進めていく この位のスピードでこなさなければ 
チーフになれないのかと思った 見ている間に出来上がり
アイラインを入れ最後にルージュをさし やはりプロの仕事は違った

見違えるようになった洋子だった
「はい神山様 仕上がりました 如何でしょうか?」
「ふぁ 凄い 洋子さんが見違えた うんこれにしよう」
洋子は手鏡をみてビックリしている






.

2012年11月19日月曜日

青葉 7 - 21 Vol. 1



4月19日 日曜日 夜
神山は祥子の部屋から戻ると 次長室の備品関係リストを作った
食器入れ 湯沸し 着替え室 簡易下駄箱 簡易洋服掛け 来客用ハンガー 
神山は思い出す物何でも書き込んで行った
ビールを呑み終わると いつもの睡魔が襲ってきて寝てしまった


4月20日 月曜日 朝 快晴
神山は携帯電話のアラームで起きた 6時30分だった
昨夜のメモを持ってテラスの椅子に座った 冷蔵庫から
持って来たビールを一口飲んで メモの中味を吟味した
神山は次長室に造り付け出来る物と 移動可能な備品を印をつけて分けた
このテラスは朝日が当らないので
少し肌寒いが爽やかな風が気持ちよかった
一息ついたので ホテルオートモとグランドホテルの資料をだし考えた
グランドホテルは外商顧客中心のホテル催事で年2回行われる
現行品で普段店内に置いていない物を出品する催事だ
部屋は一番大きい部屋を使い 銀座店のお得意様を中心に開催される
神山はグランドホテルの開催日を確認した 9月19日20日の土日で
行われる ここのホテルでは催事会場入り口が分りづらく 顧客誘導看板に
力を入れ 毎回新しい試みをしている会場だった
神山は今回も対前年で予算が来ると思い
思いつくまま 顧客誘導看板のデザインを起こした
出来上がったものを整理し会社に 一応自分宛てにFAXした
まだ時間があったので グランドホテルの正面ファザードの壁面を考えた
こちらも対前年予算だろうと思いホテルオートモ同様思いつくままに
デザインを起こした このホテルは開催日が10月17日18日の土日で
行われる為 まだ時間はあったが 今後の事もあるので早めに進めた
こちらも出来上がったものを会社に自分宛てにFAXした

神山は時計を見てみると8時になっていたので仕度をして
祥子の部屋に行った
「おはようございます ごめんなさい 起こさなかったわ」
そう言うとキスをしてきた 
祥子は準備は出来ているので 温めるだけだから待っていてといい
キッチンに向かった テーブルの上には上原の図面があり
商品配置や数量など細かく記入していた 神山が見ていると
「ねぇ 恥ずかしいから見ないで でも考えているんだけど
もう少し そうね タタミ1枚か2枚広いと良いわね」
「そうだね 限られた空間に飾っていく事は大変だよ
特に上原はアンテナショップだからね しかし逆に言うと
昨日話した例の返品するスーツなんか 飾っても面白いかもよ」
祥子は仕度している手を休め神山のところへきてキスをした
「いい考えだわ そうだ逆に店内で売れ行きの悪い商品を出しても
良いかもしれないわ 2割か3割くらいね」
そう言うと冷蔵庫からビールを持ってきて一緒に呑んだ
神山が祥子を抱き寄せると祥子も答えた
「ねぇ今夜まで待って お願い」
祥子は今夜と言いながら テーブルの仕度をした
配膳が済むと神山を呼び 冷蔵庫からビールを出した
「今日は和食か 美味しそうだ 良く作るね時間無いのに」
「うん でも少し早く起きれば 出来るし昨夜も時間あったし」
「そうか 祥子に少し時間を上げると 手の込んだ料理が出てくるんだ」
「そうよ だから少し時間頂戴」
「うん なるべくそうしたいが 頭と躰は別物で困っている」
祥子と神山は顔を見合わせ笑い いただきますをした
神山は久しぶりに祥子の和食を食べた 美味しかった
上原の件や御殿場アウトレットの話をしているうちに食べ終わった
祥子は簡単に片付け食器類は自動洗浄器にいれ
「終ったわ 後はちょっことお化粧よ そしたら出られるわ」
「化粧って もう終っているんでしょ」
「またぁ~ ふふふ何もしていないわよ すっぴんよ」

神山は支度のために部屋に戻ると洋子から電話が入った
「おはようございます 洋子です 今大丈夫ですか」
「うん どうされましたか」
「ええ 昨夜お話ししたAEXのカードの件です
先ほど人事の友人に聞いたところ 会社宛て送付はOKです」
「おお よかったね 分った 昨夜ちゃんと準備したよ 持って行きます」
「はい では10時30分に上原の現場に伺います」
「うん それと僕のほうでも洋子のスーツを探したよ
そしたらイメージにピッタリだ 後は試着をしてOKなら購入さ」
「何から何まで ありがとうございます では失礼します」
神山は電話を切ると 今日は部屋に戻って来れないので
会社に持ってゆくものも全部バッグに入れた 印鑑関係も確認した
忘れ物がないか点検しているところへドアホンが鳴ったので部屋を出ると
黒いスーツ姿の祥子がドアに立っていた
「凄く素敵だよ 惚れ直した」
「でしょ コレもパリよ ちょっとみて」
祥子は上着を脱ぐと 後ろ向きになった 
充分なお尻が また性欲をそそった 祥子が
「なに いやらしい顔をしているの ば~か もう知らない」
と言いつつも 説明をしてくれた
腰のラインがどうしても日本人のラインに合わないと言った
「だけど 祥子の後姿は素敵だったよ」
「うん 直したのよ だけどここまでしか直せないわ」
「どうして?」
「うん これ以上詰めたりすると 生地が寄って形が崩れるの」
「そうか そんなにスカートって難しいのか、、、」
「考えていてもしょうがないでしょ 試着した後ね考えるのは
それから この商品は昨夜話した商品より下のクラスよ
だから お勧めしたスーツはもっと良いわ 生地も違うのよ」
「へぇ~そうなんだ わかった現場に行こう」
マンションを出ると風が気持ちよかった 
普段と違った祥子と歩いていると 更に気分が良かった
「ねえ 今日は会社なの?」
「ええ その後銀座なの だから電話欲しいの 勿論行くけど読めないから
出来れば1時間位前だといいかな~ って事です」
「そうなんだ もう直ぐだものね」
「そうなの」
「ねぇ 今歩いているでしょ 二人がこの格好で 可笑しくないよな」
「ええ 全然 素敵よ 貴方が綺麗にまとめているから大丈夫よ
わかった 今後の事ね 秘書さんと」
「うん そうなんだ」
「だったら 靴を変えるともっと格好よくなるわ」
「そうか 靴か ありがとう 今日見てみるよ」
「そうね 貴方はシンプルなデザインが好きだから丁度良いわ
シンプルなほうが地味だけど格好はいいわね」
祥子からアドバイスを聞いていると 現場についた

高橋が祥子をみて 少しびっくりし
「久保さん おはようございます 素敵ですよ」
「おはようございます ありがとうございます」
「おはようさん 孝ちゃん」 
「あっ 次長おはようございます 目に入らなかったです」
アルタの高橋はわざと言って 祥子を誉めた
挨拶が終ると3人は早速バックヤードに入った
高橋が脚立を動かし昇り 懐中電灯で排煙ルーバーを照らした
「山ちゃん 外から見てくれる?ルーバーを」
「うん わかった」
神山が動くと祥子も一緒に外へ出た
「ほら あそこのルーバーから綺麗な光が出ているでしょ わかる?」
「ええ 素敵ね 夜はもっと素敵になるわね」
神山は中に入ると
「孝ちゃん OKだよ 今日の光でも充分いけるよ」
「そう よかった 今日取り付けます 蛍光管の色を3種類用意します」
「だけど 今夜は読めないな」
「いいですよ 別に 置いとけますから」
「了解」
「それで ここも今よりずっと明るくなるんですね」
「ええ 店内と同系色の蛍光管を使いますから 作業はしやすいですよ」
「そうか ここでお洋服を選んで店内で見た時 お色が違わない事ですね」
「ええ まあ極端に違いは出ませんが ストレス無い方が良いですもんね」
「そこまで考えてくださって ありがとうございます」
「この発案は山ちゃんなんですよ
そとから見て頂いたように ルーバーが主張していますが
しつこくなく 店内を盛り上げようとする役割を果たしているんです」
「そうですね あまりに主張が強すぎると そればっかりに目が行って
本末転倒ですよね 良かったわ 筒井も喜びます
改めて 神山さんありがとうございます」
祥子は深々とお辞儀をした
「あとは商品を入れてどのように見えるかでしょ」
「うん 山ちゃんが言う通り 内装がどれだけ商品を盛上げてくれるか
そこんとこですよね」
「うん 御殿場アウトレットのニーナ・ニーナにも取り入れたいね」
「そうですね 早速情報を流しておきます」
祥子はバックヤードの中に入り 什器の配置を確認した
「高橋さん」
「はい」
「このスチールのストック棚なんですが ここの入り口から入ります?」
高橋は祥子の図面を見て考えた 什器にはきちんと寸法が記入してある
バックヤード入り口の間口は800で高さは2000しかない
通常高さがない入り口では寝かすように斜めにするが バックヤードの
奥行きが無く 無理をすると建具に傷を付けすし 考えた
「久保さん こうしましょう そのストックが来た時 中に入れるのは
我々で行います そのままの状態で入らなかったら分解します
それでばらばらにして中に入れ 組み立てします どうでしょう」
「ええ お願いします しかし組み立てって大変でしたよ」
「ご自分たちで組み立てですか?」
「ええ 3人がかりで 大変でした」
「はい わかりました 大丈夫ですよ 一人でも組み立てられますから」
「へぇ~ そんな」
「ええ コツが有りますがね」
「では 搬入お願いします」
「そうすると24日の日13時からですが その作業を最初に行いましょう
なので 積み込みをする時 最初に降ろせるように指示してください」
「そうですね 最後に積み込むよう指示します」
祥子は確認が済むと手帳に書き込んだ
「そうしたら私は帰ります ありがとうございます」
神山は祥子を駅まで送っていった
「ねぇ 今夜読めないって 遅いって事?」
「いや 彼にはそう言っておけば良いでしょ
例え 早く終って現場に寄っても怒られないし」
「そうね 予防線張っておけば大丈夫ね」
「しかし 今 本当に分らない 一応8時に出るつもりだよ」
「わかったわ 私もその位でないと出られないかな でも早く終るかも」
「うん 連絡とろう 時間がわかり次第 ねぇ」
「うん では行ってきます」
祥子は軽くキスをして 改札口の人ごみに消えていった

9時30分東京本社秘書室
「秘書 田所 洋子 人事発令 4月20日をもって命課発令  
職種 部長  役職 東京本社次長 神山 龍巳 専属秘書 以上」
東京本社秘書室では理事以上が立会い辞令交付となった
通常 行われないが 次長秘書と言う事で秘書室行われた
辞令を貰ったあと 各理事からおめでとうと言われ
お辞儀をして挨拶をした
部屋を出て行く西野理事に 洋子は
「後で 神山部長がご挨拶に伺います」
「分っているよ 車だろ 運転手付きでいいだろ」
「はい ありがとうございます しかし理事 もう少しクラスが
上でないとアルタさんにもそうですが ファッション界で引け目を
感じえません 神山はこれからアレックスグループと戦うのです
副社長の車とは申しません 予算のアップをお願いします」
「わかった それで何時に来る」
「ありがとうございます 上原の現場で打ち合わせ その後になり
15時前後だと思われます 私も同席いたします」
「わかった 欲しい車のパンフレットを用意して持ってきてくれ」
「ありがとうございます それで運転手ですが どうしても必要な時と
限らせて頂き 常時ではございません」
「うん そうだな君が付いているし 山ちゃんも飛ばすぞ いい勝負だ」
「えっ」
「うん 彼が上野に居た時 何回もゴルフに行ってな 帰りに運転手が
居なくなったんだ って言うかその車の持ち主が酔っ払っちゃって
急遽 山ちゃんに代わって貰った訳さ そしたら猛スピードで驚いたよ」
「まぁ 昨日はそんな話出ませんでしたよ」
「なに もう会ったのか」
「ええ 個人的ではないですよ 嫌だ理事 催事課の前祝です」
「おおそうか しかし彼はしっかりしている ワシの跡を継いで欲しかった
ごめんごめん では待っている 忘れるなパンフレット」
「メーカーさんは指定ございませんよね」
「おお 好きにしろ」
「ありがとうございます 神山に伝えます 喜びますわ」
「わかったから さっさと帰れ もう神山さん神山さん って」
「は~い」
洋子は西野に深くお辞儀をして見送った
理事が全員出て行った後 秘書室で 直通の電話番号を聞いた
「洋子さん おめでとうございます 凄いわ 私越されたもん 
今 西野さんから聞かなかった」
「ええ」
「あんなに長く何 話していたの?」
「ええ 車よ」
「そうね 必要ですものね」
洋子は自分の成果を見せびらかす訳ではないが
「車種はなんでもOKのお許しを 頂いたわ」
「えっ 何でもOK 凄いじゃない なんで 教えて ねぇ」
洋子は神山がアレックスグループと戦う事になると
現状より上のクラスにして欲しい旨を訴え聞いてもらった
「そうなの 神山さん喜ぶわね 初仕事おめでとう 応援するわ 
ではなくて 応援させて頂きます 部長」
「よろしい 120点」
二人は顔を見合わせ笑った
改めて副社長に会いたいと申し出て 副社長の部屋に入った
「社長 頑張りますので 神山ともどもお願いします」
「うん わかった 洋子君 内緒だぞ」
洋子はにこっと笑ってお辞儀をし
「神山は本日 色々な手続きやお願いがあってここに来ます
社長にご挨拶もしたいと申しております お時間のご都合は?」
「何時ごろ来る?」
「多分14時前後と思われますが」
「わかった めしは帰った後にする それとも一緒に行くか?」
「それが神山のスケジュールが詰まっていますのでお約束できません」
「わかった しかしもうりっぱな秘書だな うん待っている」
「ありがとうございます では 失礼いたします」
「うん」

洋子はお辞儀をして副社長室を出ると 秘書室に戻り
「ごめんね さっきの電話番号だけど」
「うん 聞いておいたわ 凄いわ 03-XXXX-2200 よ
こんないい番号って 理事でははじめてよ 凄いわ~神山さんって」
「そうでしょ 凄いでしょ 彼の力って底知れないわ」
「良かったわね 変な理事じゃなくて」
「だから ちょっかいしたら駄目ですよ 減俸です」
「は~い 分りました」
二人は笑った
洋子は急いで古巣の人事に行くと みんながおめでとうと言ってくれたが
「ごめんなさい 10時30分に上原に着かなければいけないので
ご挨拶は 改めて後で 神山と来ます」
洋子は神山のAEXカード発行手続きの手伝いをして欲しい旨を伝えると 
「分ったわ だって向こうで審査する時は理事ですもんね」
「そうなの それで この申込書を作って欲しいの
先方からの請求明細などは会社送付にしてね 次長室よ お願いね」
「はい分りました 部長」
洋子は時計を見ると10時になっていた 自分の荷物を持って
急いで車を探した 丁度 タクシーがきたので乗車して
運転手に行き先を告げた

タクシーが動き出すと さきほど交わした会話内容を記入した
それが終ると 備品類のリストに目を通し 漏れがないかチェックした
全て作業を終った時 外を見てみるとまだ4月の半ばなのに
みんな涼しそうな格好をして歩いていた
Tシャツも無地の白からイラストが入っているものまでカラフルだった
外を見ながらボケーっとしていると 上原の駅に付いた
昨夜渡されたチケットを渡し降りると 何も無く寿司屋があった
暫く歩いても見つからないので 携帯に電話すると
寿司屋で待つよう言われ待っていると 神山がにこにこしてきた
「やあ 時間どおりだね ありがとう」
「地図を貰えばよかったわ ごめんなさい 今 少し大丈夫ですか?」
「うん」
「車ですが 好きな車種を選んで頂いてOKです」
「へぇ~ 凄い 初仕事おめでとう」
「それから 直通の番号が決まりました 03-XXXX-2200です」
「へぇ~ それも凄い なんだか怖いな うまく行き過ぎて」
「副社長ですが 私たちが伺うまでお昼に行かないそうです」
「う~ん 困ったな ねぇ 副社長って 魚は好きだった」
「ええ 大好物よ」
「そうか よし ちょっと待っていて」
そう言うと 神山は目の前にある寿司屋に入っていった
「いらっしゃい あれ今日は早いですね もう少し待ってください」
「いや 後で来るけど しめ鯖は今から作って3時ごろは大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ その位だったら後でこられた時にお出しできます」
「そうしたらさ そうだな しめ鯖を3人前くらい取っておいて」
「へい 今日は築地から逸品の鯖が入り朝から仕込んでいます
ちょっと待ってください」
そう言い 冷蔵庫に入っている鯖を捌き 切り身を神山に渡し
「どうぞ 試してください」
神山は一口で食べたが いままで食べた事が無いくらい美味しかった
「大将 あとでお土産作って貰うから いいところとっておいて」
「へい 分りました」
神山は外で待ってる洋子に
「ごめん お待たせしました」
「どうされたんですか 今から寿司屋に入って?」
「うん お昼はここになるんだ 大体いつも それで僕らが食べて
副社長が食べていないと不味いでしょ だから今大将と話していたの
そうしたら美味しい鯖が有るって言う事なので お土産用に
美味しい所をとっておいて貰った」
「ふぁ~ 喜ぶわ 大好きですよ」
「うん 良かった 僕も今摘んだけど 初めてだね美味しいの」

洋子と神山は現場に行った
「なんだ こっち側だったんだ 向こうばっかり探してました」
「ここがニーナ・ニーナの上原アンテナショップだ
この仕事は実質アルタです 僕は手助けをしているだけ では入ろうか」
中に入ると高橋がきょとんとし挨拶した
「いらっしゃい 山ちゃん この人は」
「うん 昨日僕が内定した次長秘書さ 田所さん 30日にアルタで
やはり僕の秘書として命課をもらう」
「田所です 宜しくお願いします」
「すみませんでした」
「いや 仕方ないよ それで今回来て貰ったのは 次長室の備品類など
設置場所など 大枠で決めておけば 二度手間三度手間に
ならないだろうと思って 着て頂きました」
「申し訳ございません お忙しい所」
「いえいえ 田中はもう直ぐきます 少し待ってて下さい」
洋子は制作途中の現場を初めてだという
こうやって出来て来るんですねと 感心しながら見学した
分らない事があると直ぐに質問してきて なかなか熱心であった
少し遅れてアルタの田中が入ってきた
「神山次長 おめでとうございます それと常務おめでとうございます」
「幸三君 まだ早いよ 30日になってから それから紹介しておく
こちらは僕の秘書で田所さんだ 覚えておいてね アルタでも命課を頂く」
「はい 今日は朝からいい話しばかりでみんな大変ですよ」
「分ったありがとう 喜んでもらって嬉しいよ さて早速だが 田所さんに
来て貰ったのは 次長室の備品類などの設置場所の大枠を決めたい
そうすれば 連絡をとるのにも二度手間三度手間にならないだろうと
それと アルタさんがどこまで考えて居るのか その2点です」
洋子も神山の内容で説明不足がないと思い頷いた
田中が図面を取り出し広げた
高橋と神山が平面図を見ている限りでは問題なかった
立ち上げ図面を見ても問題なかった 
「幸三ちゃん この原図はどうしたの?」
「ええ銀座店の営繕課から貰いました 寸法確認と現状ですね
明日から徹夜で入ります」
「わかった 孝ちゃん どう不備は無いでしょ」
「ええ 完璧です これで造れます 大丈夫です」
「ありがとう 幸三ちゃん それでは本題です
孝ちゃんもメモとって貰える 
まず造り付け は食器入れ 着替え室 簡易下駄箱 簡易洋服掛け
来客用ハンガー かな 田所さんはどうですか?」
「あと なんて言ったら良いか分りませんが お雑巾とか
簡単な清掃用具をいれるBOXが欲しいです 後は有りません」
高橋 神山 田中 田所4人が図面とにらめっこをした 沈黙が続いた
神山が沈黙を破った
「幸三ちゃん 簡単だ ここの壁面に一枚ふかそう」
神山は催事課会議室との間仕切りに造り付けの棚を設け扉を付ければ
一つ一つを造るより簡単に行くだろうと提案した
よくマンションなどで見かける 造り付けの棚やクローゼット
引き出しなどを言った
高橋が
「うん そうするとこの防音設備は半分で大丈夫だ 天井まで
壁を持っていけば問題ないだろう それに使い勝手が良くなるな
山ちゃん 食器入れって 透明でなくとも良いよね」
「勿論」
「そうしたら この壁面 この角をちょっと空かしてして あと天井まで
持って行って 工場で箱作って棚は真中は固定で あと150ピッチで
移動できるようにすれば 直ぐに出来ちゃうよ
山ちゃんが言うように一つ一つだと大変だけど この方が あいた所は
書類入れでも使えるし」
「うん 天袋部分は飾り板で構わないし箱はせいぜい1800でどうだろう」
「ええ 上は又考えますよ」
「どう 洋子さん」
「ええ 分りやすく絵を書いて下さったんで 理解しました OKです
何か一杯入りそうですね 
2つ質問があります 来客用ハンガーは露出した方がいいと思うんですが
どうでしょうか? あと ここの入り口のこの角ですが何の意味が
あって造られているのでしょうか この2点です」
高橋が
「来客用ハンガーは露出できます 例えば ここの1スパンを来客用に
すれば ガンガーの下は荷物置きになりますし 全然大丈夫です
あと この角は 濡れ物を置く場所に如何かなと 雨傘置きに考えました」
「はい よく分りました ありがとうございます 神山さんは」
「僕はもう無いよ しかし 確認したいけど 洋子さん
電源の話しです 湯沸しポットなどもこの作り付けの中にあります
お客様にお茶など出される時 入り口付近より 奥のほうがいい訳でしょ」
「そうですね しかしお客様のお荷物類から離れていれば
問題ないと思いますよ」
「そうしたら 来客用は入り口傍になるべくまとめ 自分達の分は
なるべく奥にする でいいですか?」
「ええ 問題ありません」
「そうすると 着替え室が少し出っ張るな どうするか」
「私も考えていたんです」
「孝ちゃん ところで PCとかFAX置き場は」
「うん 幸三どうした?」
「ええ 備品で机を考えていたんです」
「そうか そのほうが動かせるからな う~ん 困ったね
そうだ そうしたら孝ちゃん こうしよう 
この造り付け 壁面奥を1000位を着替え室にする
その出っ張りの奥行きで横に伸ばしPC、FAX 置き場兼作業台はどう」
「凄いね そうしよう 着替え室の入り口は450もあれば充分だし」
部屋の下を入り口として左側が会議室との間仕切り
ここに造り付けの扉付きの棚を作る 上の角に着替え室を作る
上側にPC、FAX置き場兼作業台を設ける
「よし決まった 後は洋子さんの居場所だ 問題だな」
「そうですね 田所さん いいアイデア有りますか?」
「私も困っています どこに居ていいか」
みな笑った またも神山が沈黙を破った
「どうせこの入り口間仕切りは撤去でしょ」
「ええ」
「そうしたら 入り口からハイカウンターを造り付けて
そこの支え棚を作業机にすれば 出来ちゃうじゃん
よく銀行なんかで見かけるでしょ ホテルのフロントとか」
「そうですね そうすれば入り口の補強が少なくて済むし頑丈になります」
「ええ 充分です そうすると 今会社でも使っている感じになる
訳ですね 机の下に引出しがあると 不便なんです」
「うん そうしたら 引き出し棚を作るよ
スチールの平机に棚を脇に作れば問題なしですね」
「はい 充分です ありがとうございます」
「そうしたら 孝ちゃん どうだろうそれで進むかしら」
「ええ充分です」
みんな大笑いした
「ねぇ 田所さん 山ちゃんは良い事言って早いんです
的確だし 結局 この仕事だって 後から追加されるより
安く出来ます これだけきちんと決まってしまえば
納期が7日でしょ 1週間で造るのはぎりぎりなんです
しかしここまで行ってしまえば 後は微調整だけなんです」
「おいおい なにも出ないぞ~ 辞めてよ 普段と同じなんだからさ」
「私もよく分りませんが 皆さんが迷っている時
多分 予算との兼ね合い お仕事の段取りなどだと思うんです
しかし こうしようとはっきり言わないと進みません
ですが間違った事を言われてもやり直しになるだけだと思います
そう言う部分で総合的にみて私は神山さんの
秘書になった事を光栄に思います 部屋を宜しくお願いします」
「山ちゃん 良かったね それでは進めよう
それで 詳細は銀座で行ってくれる 幸三と電話なんかも」
「うん そうするよ 最後に一ついい?」
「ええ 今なら」
「僕の作業机が入り口から見ると丸見えでしょ
その対処と 誰かと話をするのに 会議テーブルじゃなくて
平机が良いんだけど で出来れば長机ではなく 両端が
自分に向いているよくTVなんかで出てくる感じの机が良いな」
「こんな形でしょ」
高橋は簡単な絵を書いた 
「そうそう 結局 PCをもう一台買うか 移動するかになると思う
その時長机だと 作業しづらいもんね お願いできる」
「OKですよ 実際うちのデザイナーが使っているから あと寸法だけ」
「助かるよ ありがとう」
「アルタとしても助かります これだけ進めば終わりです なぁ幸三」
「ええ僕も凄く助かります だってこう言う話しって なかなか
決まらないんですよ 田所さんが言ってたように あっちいったり
こっちにいったり だからその分引けばもう充分です
こちらこそ お礼を申し上げます」

神山が洋子に
「なにか 追加する事は無いですか?」
「追加は無しですが 会議テーブルとか椅子はどうされるんですか?」
「そうだね 孝ちゃんどうなっているの」
「ええ 幸三が当っています 今日資料を持って来れませんでした」
「どんな感じ」
「ええ 秘書課さんで使っている黒皮のソファーと木の会議テーブルです」
「う~ん 今日じゃないとだめかな」
「と言うと 変更ですね」
「うん 少し考えがるんだ 洋子さん 壁の色は何色がいい?
今までみたいな 木目調の壁がいいかな?」
「急に言われても でも木目調はベーシックですが 重たいですよね
それに窮屈に感じがします 特に濃いいと」
「孝ちゃん 床はどうなっていますか?」
「ええ h12のループ絨毯です」
「う~ん」
「やはり 普通の役員室と性格が違いますからね 平気ですよ
今ではなく 今日明日中で 幸三 大丈夫だよな」
「ええ 大丈夫です」
高橋が時計を見て 12時になったので職人達を昼ご飯にだした
入れ替わりにアルタの梅崎淳一が来た
「神山部長 ご昇進おめでとうございます」
「やあ ありがとう 知っているのか しかし30日だよ
それとこれから 僕の秘書を勤めてくれる田所さんだ」
「田所です お願いしまね」
「はい」
「淳一 ちょっと」
高橋は梅崎を呼んで昼で遅くなっても 大工に仕事をするよう伝えた
「では お昼に行きましょうか 大丈夫でしょ」
「うん」
4人は駅前の寿司屋に入った 女将が深々とお辞儀をして奥に案内した
席に着くとだれも何も注文しないので 洋子はきょとんとした
「山ちゃん これから幸三が現場実測するけど 多分2時間くらいで
終るんだ だから僕に教えてもらうとスムースにいく」
「うんそうだね そうしよう 色気は色見本を渡すか連絡する」
話が終るとビールと鮮魚の盛り合わせが来た 
「どうして 注文しないのに来るんですか?」
「ほら 何時も来ているから それしか食べないし ねぇ孝ちゃん」
「そうなんです 山ちゃんも好きだし 僕も好きだし
それにここは 美味しいのほんと 食べてください」
「食べる前に乾杯じゃないですか 先輩」
「そうだね 山ちゃんの そして秘書の田所さん おめでとうございます
アルタをお願いします 乾杯」
みんなで乾杯をした そうすると大将じきじきにしめ鯖を持って来て
「ちょっと つまんでください」
神山が
「ありがとうございます 頂きます」
皆はしめ鯖からたべた
みんな一斉に美味しいと言ったので 大将はにこにこして戻った
「ねぇ 美味しいでしょ 洋子さん」
「これだったら 喜びますよ絶対」
「よかった 逸品は毎日入るわけではないよ言ってましたがね」
「山ちゃん何の話」 
「うん これからある人に会うんだけどね お魚が大好きなんだって
それで ここの魚は美味しいから お土産に持っていくの」
「その人 羨ましいね」
「うん まあね」
神山は急に席を立って   
「ごめん ちょっと外に出る 大切な事忘れていた」
神山は外に出ると携帯電話で浅草 大正堂に造花を発注した
在庫の数量を聞いてみると大体間に合いそうだったので 全部おさえた
送付先はあとで連絡するといった 電話を切った神山は駅売店まで走り
日経新聞他大新聞を買った
寿司屋に戻ると皆はあっけにとられた
「実はPCを見ていないので昨日の件どうなったか 調べていないんだ」
「ああ 僕も見ていないです」






.

2012年11月14日水曜日

青葉 6 - 20 Vol. 2



「ええ 田中君が行きます」
「分った 何時頃から入りますか?」
「うん 多分お昼を過ぎますが 今会社で図面を起こして 
明日 僕がチェックして それからになります」
「そうすると 僕もその図面を見られるわけだ」
「ええ そうすると 早いですよ 観ていただけると」
「備品類の配置もしてあるの? それと幸三君は何時頃来ますか?」
「ええ 一応は入れておきます 幸三は10時頃か10時30分頃でしょう」
「分った そうしたら 明日が楽しみです 今日と同じ位に行きます」
「了解 床綺麗に仕上がっていますよ」
神山は歩きながらはなした携帯をポケットにしまうと
「明日 辞令交付の後は?」
「ええ 引継ぎですが 大して在りませんよ」
「わかった 明日辞令のあと 10時半に上原の現場に来て下さい
住所はあとで教えます それとタクシーはこのチケットを利用してね」
「はい 分りました しかしなぜ上原に?」
神山は上原の高橋が責任者である事と次長室のレイアウトチェックが
明日10時30分頃から行われる事を伝え 出来るならば
使い勝手とか色々含め 洋子に観てもらい決定すれば 二度手間
三度手間にならず早く仕事が進む事を伝えた

「はい 分りました しかしそこまで考えて行動する人ははじめてよ」
「そうかな 僕にとっては普通だけどね」
真剣に話しいる二人はみなと段々離れ 気が付くと二人だけになった
神山がきょろきょろと探していると 路地から皆が出てきて
「お二人さん なに話していたんですか? 怪しいな?」
杉田がニヤニヤ言ってきた時
「杉田君 神山部長に失礼です 撤回しなさい」
急に言われ 翔は後ろに立っている皆を観ると 頷いているので
「すみません」
「違います 神山部長すみませんでした 以後言葉を慎みます でしょ」
元気を無くした杉田はもう一度
「神山部長 すみませんでした 以後言葉を慎みます」
きちんとお辞儀をしたら 今度は皆に
「皆さんも意地悪しないで下さい 余計な詮索は無用です 分りましたか」
「おう 洋子ちゃん 分ったから 怒るなよ なぁ ごめん 誤るよ
二人が 話しに夢中になっているので やきもちを焼いたんだよ
だから ごめんね」
「はい 分りました 明日の件で話をしていたんです 
ちゃんと考えて 取引先をコントロールしているんですよ
それを やきもちだなんて 失礼です 神山部長に」
「田所さん ごめんなさい 悪気は無しなんだ だから機嫌を直して」
「そうですね 悪気が有った訳では無いし 機嫌を直してください」
「神山さんが そう仰られるなら 今回は許します」

奥村がホッとして暫く歩くと 綺麗な居酒屋に入った
座るとおのおのが好きなものを頼んだが 洋子だけは注文しなかった
「どうしたの 注文しないで 具合でも悪いの?」
「いいえ こう言う処 余り来た事ないんです だから味とか
量とか だって頼んで残したら失礼でしょ 神山さんのが来てから
注文しようと思っているの」
「うん わかった そうしたら由香里姫 枝豆を追加してくださいな
それから美味しい 冷奴もお願い」
「は~い わかったわ」
最初にビールが来たので 奥村課長が 翔 乾杯の音頭を取れと言われ
「え~ 先ほどは我社の繁栄をご相談されている所へ ちゃちゃを
いたしまして 申し訳ございませんでした 乾杯」
みんなで乾杯して ホッとしていると
「杉田さん お上手よ 今のスピーチ 99点よ 頑張ってね」
皆が笑った 当の杉田は
「なんで100点じゃないんですか?」
「そうね 一言で言えば 神山さんのように心がこもっていなかったわ」
がっかりした杉田は俯いてしまった
今の言葉も 一所懸命考え 言葉を選んだつもりだった
「おう 翔 良かったぞ 99点で満点だ 今の翔では上出来だぞ」
「そうだ 落ち込むな 田所さんに99点貰った事ないから 
俺なんか何時も 70点とか60点とか酷いもんだ 元気出せ99点」
みんな笑った
「そうね 私も99点なんて洋子から貰った事無いわ」
「何言っているの由香里は100点有ったじゃない 何回も」
「いいの だから99点は貰っていないの わかった 翔くん」
「はい 分りました がんばります」
そう言いビールをぐいぐい呑んだ
奥山と倉元は 洋子は完全に神山の秘書になり
周りをけん制し始めてきたと言って お互いに頷いていた

一方 神山と洋子はアルタ上原現場の住所や概略などを話していた
「嬉しいです そうゆう現場は初めてです 楽しみにしています」
「それから 次長室に必要な備品でも何でもいい
既存の秘書室や店長室など参考にならない 自分で気が付いた物を
メモ書きしておいてください あとは明日現場で図面を見ながら
落とし込んで行けば 大丈夫でしょう」
「ありがとうございます がんばりますね 
要は仕事をしやすいように 考えれば良いですね」
「そう うんそうですね 決まった スムースに進む仕事
自分の仕事をしやすいように考えてね」
話をしているとどんどんと注文した物がきて ビールも追加した
由香里も呑めるが洋子もいける口でみんなと同じリズムで呑んでいた
暫くすると洋子が化粧室に行くと断ったので頷くと化粧室に向かった
後姿が戦略イメージしている通りのプロポーションだったので
にやにやしていると由香里が
「何を にやにやしてんの またやらしい事でも考えているんでしょ」
「そうそう 相手の身になって考えていた」
「えっ なにそれ?」
「いや さっき言った戦略イメージにぴったしと思った という事
あの姿を見たらイチコロですねって事でーす」
「おう そうだな ぴったしじゃないか さすがだ見抜く眼力は」
そんな話をしていると 化粧室から洋子が戻ってきた
「洋子 いまねぇ山ちゃんがあなたのお尻を見てニヤニヤしていたの
だから しかっておいたわ」
「ふぁ 観ていたんですか もっとパッドを入れておけば良かっわ
失敗したわ 神山さん魅力無かったでしょ お尻?」
突然振られたが
「いや 充分だ それ以上魅力的になると 僕は世界を相手にしなければ 
ならなくなる だからこのままで充分です」
「おっ 99点」
翔が野次った
「いいえ 120点よ 杉田さん 今はね 既存の美しさを認め
それ以上の美しさは不要という事よ」
一同拍手で沸いた
「おう 由香里姫が意地悪を言って試したみたいだが それを
さらりと 受け流し 更にそれに答えた山ちゃんには敬服した
いや素晴らしい うん 息がぴったりだ ねぇ奥ちゃん」
「ええ 実は本社で秘書選考をしていると 山ちゃんに合う人材が
どこを探しても居ないんですよ で困っていると店長が
一層の事 逆も良いかもと逆転の発想で選考させて頂きました
田所さん そう言う理由なので 宜しく」
「ええ なんとなく感じていました」
「課長 僕は全然分りませんが、、、」
「まあ そのうち分るよ 焦らなくても でも山ちゃん 
本社人事は明日にでも挨拶しておいた方がいいよ 何しろ部長は
大反対だっただよ それを副社長や店長が宥め 移動の判を押したんだ
だから 明日お辞儀をしておいたほうがいいぞ」
「私 出てくるときそんな雰囲気じゃなかったですよ」
「それはそうでしょ 本人の前では 山ちゃん 田所さんはね
人事でナンバーワンなんだよ 知っていた?」
「いえ だって縁が無いじゃないですか それに、、、そんな時間ないし」
「まあそうだな しかしそう言う事だ」
「課長 お言葉ですが 誰がどこでなんであろうと過去でしょ
過去は幾ら言ったってだめです 今とこれからに力がないと」
「うん わかった ごめんごめん」
「神山さん ありがとうございます そうですよね 過去の栄誉で
今の或いはこれからの仕事に関係ないですよね がんばります」
「おう そうだよ 過去の栄誉には蓋をしよう いいねぇ山ちゃん」
その言葉でみんなビールを追加して洋子も追加した

「ところで洋子さん 話し全然違うけど 運転は出来る?」
由香里が聞いていて
「何言っているの 知らないの もう」
由香里は少し酔ってきたようで だるくしゃべった
「洋子はね スピードきちがいよ 辞めておいたほうがいいわ
デートに車は うん」
「違うよ 仕事さ でもそんなに凄いんだ」
「そうよ もうそこらへんの男なんて目じゃないわ ねぇ~ ようこ~」
「これからのことを考えると車が必要だし 運転手をどうしようか
考えていたんだ」
「そうですね 御殿場アウトレットは直ぐですものね
車はあったほうが良いですよね 運転手 私しますよ」
「いや 運転は僕も出来るが 先方で呑んだ時の事を考えると 
そこを考えているんだよ う~ん よし決まった 買おう ねぇ」
洋子はきょとんとし
「しかし そう簡単に言っても 会社が買うかどうか分りません
それより リースで借りていたほうが安上がりでしょ」
「よし分った 東京本社の車関係は管財部でいいのかな?」
「ええ 管財です 管財に西野理事がいらっしゃいますね」
「うん上野の時良く遊んで頂いたから すんなり行くよ」
「明日 本社に出向く時一緒に済ませましょう」
神山と洋子は話が弾み 呑んでも呑んでも酔わなかった

「洋子さん 次長室 着替えが出来るようにしましょう」
「そうですね そうすると私だけでなく神山さんもご利用できますね」
「明日が待ちどうしいな」
「ええ 私もわくわくしています」 
「あと 次長室に直通と内線が必要になるね」
「ええ 確認済みです」
「早いね 気に入った」
二人は笑ったが 洋子は当たり前ですと言った
「神山さん 驚かないで」
「うん」
「内線の番号 何番だか分る?」
洋子はうきうきしながら質問した
「分らないし想像できないよ」
「凄いわ 副社長の次よ 番号」
「確か 1000番でしょ 秘書室が5番まで使っているでしょ
そうすると 1006番?」
「ちょっとずれたけど 1007番よ 凄いわ 廻りもびっくりよ」
「そんなに凄いの 若い番号が?」
話を聞いていた奥村が 
「凄い 1007なんてみんな驚いたでしょ」
「ええ 私も嬉しいのと 驚きで一瞬疑いました」
「分らないな?」

本社のシステムが分からない神山に奥村が説明した
「うん 銀座店ばかりだと分らないと思うけど 東京本社では偉い順番に
内線番号がつくんだ 部長や理事になると 各営業部の課長クラスは
上二桁は店内と同じなんだ それで 部長クラスは1500番
以降の番号を貰える訳で 理事でも1200番からしか貰えないんだよ
本社に行ったら 番号が全てで それで優劣が決まってしまう」
「そうなの だから神山さんは 理事でもトップで最高なの
もう前代未聞の出来事で 人事でも驚いていたわ 凄い事よ
だから 明日は正々堂々と胸を張って歩いてくださいね」
「そう言う事か わかった しかし凄い事になっているんだ」
「うん 店長が山ちゃんをどのくらい買っているか分るだろう」
「そうですね がんばります それとずーっと考えていたんだけどね
洋子さんが次長室に居る間は電話を受け取る事が出来るけど
二人で外出した場合はどうなるのかな?」
「ええ それも確認済みです」
「へぇ~ 凄いね そこまで進んでいるとは」
「いえいえ 通常秘書の方が2名付くんですが 次長室が狭い為と
今までの理事と畑が違うので私だけになって 不在の時は 全て本社
秘書課が対応します 神山さんと私に携帯電話を支給され
電話があるとその内容によってメールか留守電に入る
仕組みになっています 全て秘書課が対応します」
奥村が
「凄いな 良く秘書課が了承したもんだ」
「ええ副社長の鶴の一声ですかね でないと本社からもう一名出さないと
いけなくなり 秘書課もギリギリでこの提案を呑んだのでしょう」
「そうすると 2つ持つとことになるのか」
「ええ どちらでも良いみたいです ご自分のを破棄されてもいいし
そのまま使われているのもいいし 経費は本社持ちです
今 理事さんで携帯電話 会社負担の方は 西野理事お一人です」
「へぇ~ 凄い事になっているな」
「全国でも珍しいですよ 秘書が持つのは初めてです 凄いわほんと」
「そうしたら 始めてばかりだから ここで欲しい物をきちんと
秘書室や管財 人事に話そう」
「そうですね わたし帰ったらリストを作ります」
「わかった 僕も先ほどの備品関係と一緒にリストを作る」
奥村や倉元が
「おう 山ちゃん 羨ましいな しかし後世の代に足跡を残せよ
そうすると 次が仕事しやすくなるしな 洋子ちゃんもな」
「はい がんばります」
奥村が由香里がノックダウンになり 翔も怪しくなったので
「では 由香里姫がノックダウンになりました 本日はコレにて終了」
「なん~で まだ呑むぞ~ 日本酒だ~」
「えぇ こんな状態もいます 神山さん田所さん頑張ってください」
しっかりしている4人だけで拍手した
会計を済ませ外に出るとまだ外は肌寒かった
日曜日の夜なので行き交う人の姿は殆ど居なかった
奥村が由香里を介抱しタクシーに乗せ倉元が近いので一緒に載った
「おう じゃあな」
倉元は窓から手を出し振っていた車はすぐに見えなくなった
奥村は杉田と同乗し
「山ちゃん 翔を送りながらかえるよ じゃあ」
奥村の乗ったタクシーも直ぐに見えなくなった

二人が取り残された格好になり 気まずかったが洋子が
「神山さんはどちらですか 確か横浜ですよね」
「ええ しかし事務所兼住居が上原にあるんです」
「へぇ~ そこまでは調査できませんでした」
ようやく笑みを浮かべながら話してきたので ほっとした
今まで何かギクシャクした笑みだったが 
僅かな時間だが神山と話したり仲間の話で安心したのだろう
「洋子さんはどちらですか?」
洋子は
「近くの代々木です」
「へぇ~ 直ぐ近くだ まあ代々木と言っても広いですけどね」
「ええ」
「洋子さん 呑んでばかりなので少し美味しい所へ行きましょう
帰りは一緒ですから送ります」
又こちらをみて
「はい お供します それと二人っきりの時は洋子 でお願いします」
「では タクシーを拾いましょう」
「はい 私が拾います」
そう言ってタクシーに乗るとき神山はレディーワーストのつもりで
先に乗るよう勧めたが
「いえ 神山さんから乗ってください」
「うん わかったよ」
神山は運転手に行き先を告げた
「青山2丁目」
運転手ははいと返事をして車を発信させた
二人きりになり密着していると神山も何を話すか考えたが
「さっき言っていた 車の件ですけど 車種って選べるのかな?」
「たまにありますよ」
洋子は神山に向いて話をしている 
「そのたまにとは どう言う場合?」
「たとえば 理事のお得意さんが日産系の会社なら日産と言うように」
「そうすると好きな車種は難しいな 何とか成らないかいい案は無いかな」
神山が黙っていると
「神山さん ファッション関係もお仕事有りますか?」
「うん あるよ 例のアレックスグループ」
「えっ あそこも神山さん、、、凄いわ」
「いやいや アルタが射止めたんだよ 僕はその下準備で写真とっただけ」
「そうですか しかし凄い」
洋子ががっかりしているので
「その写真の出来栄えが認められたんだよ だからその写真が無かったら
アルタもアレックスグループの仕事は無いよ」
「ふぁ 凄いですね 神山さんて 何でも出来るスーパーマンだ」
「ははそんな事は無いよ だって洋子の事見えないもん まだ」
洋子はすこしがっかりした様子だったが 気を取り直し
「そうですよね 私も書類だけで色々と判断していましたし
しかし実際にお会いすると 書類なんか参考にならない事が分りました」
「でしょ だから二人は分らない事だらけで良いんじゃない」
洋子はようやく笑って
「そうですよね 判らない事ばっかりです」

今夜の道路は空いていて 青山2丁目に直ぐに付いた
チケットを渡し降りると タクシーは広い闇の中へ消えていった
先日来たばかりの『ざ いたりあん』まで歩いた
店内に入るとまばらに人が居た
受付が顔を覚えていて
「先日はありがとうございます 本日は2名様でしょうか?」
「うん」
受付は2階の窓際に案内してくれた 
神山はビールと簡単なおつまみを頼み 洋子にここの事を知っている
経緯を話した 洋子は丁寧に手帳に書いているので
「さっきから 一生懸命書いているけど見せてくれる?」
どうぞごらん下さい と言って神山に手渡した
神山は手帳を開くと2つビックリした
まず 全て英語で書かれていた事 今日以前の記載が無い事だった
「すごい 大したもんです 僕は洋子が少し見えてきました」
「私は英語が大好きで もしかしたら日本語で纏めるより英語で
纏めたほうが早いですね まああと紛失した時 英語を理解しないと
分らないように書いていますから 落としても機密は漏れません」
「それと 今日から秘書と言う覚悟ですね いや素晴らしい」
「ありがとうございます しかし神山さんも素晴らしいです
お仲間の話を聞いていると余計分りますね 奥山さん可哀相ですね
こんなに素晴らしい部下を手放すなんて 店長も」
「それはそうとして 戻る事って出来るのかな 勿論 仕事が終ったあと」
「多分 仕事はエンドレスでしょう 今はニーナ・ニーナさんですが
アルタさん関連に傾いていくと思いますよ 
だから私と一緒です どこまでも もう後戻り出来ないんです」
神山が黙っているとビールとおつまみが届き乾杯した
洋子が
「神山さんのお気持ちは良く分るます しかしこれからは自分で仕事が
出来るわけです 新しいお仕事が目の前に一杯転がっているんですよ
それを見逃さないでいきましょうよ そうすれば今までと違って
何倍 いえ何十倍も楽しくなれますよ
普通 社長が失敗すると会社は傾きますが 私たちは失敗をしても
傾かない保証がある訳でしょ 鈴やと言う
だから 失敗を恐れないで ご自分の思ったとおり出来るわ
女の私には出来ませんが 神山さんなら絶対にできます」
洋子は自分を励ます意味を含め神山にアドバイスをした

おつまみを食べた洋子は嬉しそうに
「私 初めてです こんなにおいしいの食べたの」
「良かった うん」
「さっき言っていたけど 神山さんて手柄を全然見せびらかせないのね
貴方のような方は本当に鈴やでは珍しいわ」
「洋子 幾ら誉められても何も出ませんよ」
「そんなつもりじゃないの 人事にばかりいるせいか 一杯見てるでしょ
杉田君も見たし 市川さんも見たし そんな中 貴方は誰とも重ならない
う~ん どのタイプでもないのよ」
「洋子 僕はただのすけべだよ ほんと」
「う~ん それは分らないわ もう少し表面的な処よ今言っている事は」
神山はビールはもういいのでワインを頼んだ
洋子はカルボナーラを食べたいと言うので一緒に頼んだ
幾ら呑んでも全然素面でいる洋子に 神山は今日は負けたと思った
自身 今日 彼女と大人の関係になろうなどと思っていないが
何処かにスキが出来るかと期待をしたけれど 出てこなかった 
運ばれてきたカルボナーラやおつまみを食べているとワインが無くなり
「私 このワイン気に入りました もう一杯いいですか?」
「うん そうしたらボトルごと頼もうか」
「ええ 残ったら私もって帰ります」
ニコニコしながらいい神山を見つめた

神山はワインのメニューを貰い 洋子に見せた
洋子は一番高いのを頼もうとしたが 神山は財源が危ない旨伝えると
「大丈夫ですよ ここは任せてください」
そう言い 一番高いのを注文した あっけに取られている神山に
「これからは 一番高い物を召し上がって頂いて 味を分って
頂かないと困ります そのための勉強も必要ですわ」
「そうか ただブルゴーニュ地方のワインだけではだめか?」
「はい きちんと味を覚えて頂ければ それも武器になるでしょ」
「ああ なるほど 分った 今後は気をつけるよ」
「ええ あなたのために私も勉強するわね」
「しかし 実際は来月のお給料日あとだね 今回のお給料は
前職の課長だし まあ焦らないでいこう」
「神山さん喜んで 明日私の辞令があるでしょ そうしたら
活動金 貰えるの 分る 結局秘書にくるんですよ」
「ああ なるほど そうしたら部屋で皆から集めなくても良かったのに」
「ただね 活動金が有る事知っている人間は 理事以上なの
私ちょっとしゃべっちゃたけど 金額とか何時貰えるとか
言い辛かったのよ それで貴方が集めてくれたから甘えたの」
「そうなんだ では明日自分のお金で返しておくよ」
「そうね 活動金は辞令のあと頂けることは確認しています」
「そうか でもいいや 25万なら用意できるし 僕が返しておく」
「では ここに有るお金はどうしますか」
「う~ん 25万だけ返して 後は何に使うか分らないから
洋子に預けておく それで活動金が回転してきたら 返してもらう」
「そうね 私もあなたと同じ考えです」
洋子はそう言い25万を神山に返し手帳に書いていた 書き終わると

「ねえ 貴方はクレジットカードを持っている?」
「いや 持たない主義だよ なんで」
「ねぇ クレジットカードはステータスシンボルなの 持たない?」
「う~ん しかしな~」
「分るけど それもお仕事と割り切ったら 普段使わないのだから
だって 戦略作戦って私だけじゃないでしょ」
「うん わかった 作ろう 洋子が進める事にマイナスは無いはずだ」
「そんな~ ごめんなさい しかし支払いが10万円ぐらいなら
問題ないけど 20万30万なんてあるでしょ そうしたら
毎日 100万持っていなければいけないでしょ
だったら相手にカードで支払いって 絶対優位に立てるわよ」
「うん そうだな 戦略の内だね」
「そうよ そうなの 良かったわ 本当に素晴らしいわ
本当は少し心配していたの でも良かった ふふふ」
「どこのカード会社がいいだろう」
「そうね どこも似たり寄ったりよ そうだ AEXにする?」
「あのアメリカの会社だね 入会審査が厳しいところでしょ」
「ええ あなたならAEXは大丈夫よ 現職理事で行くもん それに
審査で会社に電話が掛かってきても 根回ししておくから大丈夫よ
あした 印鑑でしょ引き落とし銀行カード 免許証をもって来て」
「うん ただ上原だからな住んでいるところは」
「うん そうしたら送付先を次長室にすれば問題ないでしょ」
「出来るの そんな事」
「ええ人事課は 色々とこなしているわ そう言う事で相談も受けるし」
「わかった 口座は余りと言うか 殆ど使っていない口座があるけど
それでもいいかな?」
「ええ 新しい口座より古いほうが信用は有るわね 
それに会社で何かあった時 通帳を調べるからその方がいいわ
そのうち 活動金が回転したら新しく作って変更すれば問題ないわ」
「わかった では明日忘れないようにする」
洋子は大丈夫と言う心配顔で見たので 神山の携帯電話番号を教えた
神山は料理を見てみると殆ど食べたので 洋子に
「ワインを呑んだら 出ようか?」

時計を見ると そろそろ24時になる
「そうね 出ましょうか ワインボトルは私が頂いてもいい?」
「うん でも持てるかな?」
「大丈夫よ もう一つあるから」
1階に行きカウンターで清算しようとすると
「ここは私がだしますって言ったでしょ」
洋子は笑って言った 神山は
「ではお言葉に甘えます」
「うん 素直でよろしい 120て~ん」
それを聞いていた カウンター嬢はくすって笑った 
外に出てみると先ほどより寒くなった
やはり青山と言っても日曜日の夜は人通りがなかった
朝からの曇天は変わらず 今も星を隠していた
洋子は神山の腕に絡んできた
「洋子 大丈夫?」
「うん 少し寒いわ」
「わかった ちょっと待って」
と言って ジャケットを脱 洋子に掛けた
「ふぁ 温かいわ ありがとうございます」
そう言うと 神山のほほにかるくキスをした
神山は人差し指で おでこをちょこんと触った
交差点に向かっていると タクシーが後ろから来たので乗車した
洋子に行き先を告げるように指示した
運転手に行き先を告げるとタクシーはゆっくり走り出した
暫くすると洋子の自宅近くに着たので 止まってもらい降りた
丁寧にお辞儀をし 手を振って見送った
(神山さん どうして誘わなかったのかしら 
由香里とは関係有るだろうな 由香里のあの乱れ振りでは
もしかして 魅力が足りないのかしら、、、わからないわ
だけど 初めてだから怖いわ、、、でもあの人だったらあげてもいいか
私がこんなに夢中になっているのに 分らないのかしら ば~か)

神山はタクシーの中で言っていた事を考えていた
【今夜は一人なの ほんとうよ 母は旅行でいないの
だから時間たっぷりあります】
(だけど 今夜は祥子が待っているしな 誘っている事は分るがなぜ?)
そんな事を考えていると携帯電話が鳴った
「洋子です すみません この電話番号が私の携帯です 登録お願いします
それと 遅くまでありがとうございます おやすみなさい」
「うん お休み こちらこそありがとう では明日お願いします」
「は~い 分りました」
電話の声は明るかった 少し安心したが考えていた 
「お客さん 着きましたよ」
神山はチケットではなく千円札を出しおつりを受け取った
自分の部屋に入る前に祥子のドアホンを鳴らした
祥子は直ぐに出てきて 抱きついて来た
「あなた 凄いじゃない 理事ですってね 凄いわ~」
祥子は風呂には行った後でもうガウンになっていた
「うん 今日突然で もう地球がひっくり返ったみたいだった
それで 部屋に行って戻ってくる 30分くらい掛かります
至急しなければいけない事が有るので ごめんね 待っていて」
祥子は嬉しいのか30分を全然気にしていなかった
神山は部屋に戻ると お祝いのFAXが何通か着ていた
ニーナ・ニーナの筒井 アルタの内藤社長 内藤夫人 
ゴテンバ グランド インの椿支配人 椿夫人
まあ 内示だからこんなものかと思い 先にシャワーを浴びた
中元の資料と店外催事の資料 上原の明日使う資料
あと明日持っていく取引先銀行のカードと印鑑を用意し袋に詰めた
忘れ物がないか 確認をして部屋を出て祥子の部屋に入った

「凄いわ おめでとうございます」
そう言うと 祥子は珍しく お辞儀をして喜んでくれた
神山は今日一日の出来事をかいつまんで話をした
「そうすると 日経新聞に明日出るかしら?」
「分らないけど プロジェクトが大きいでしょ 影響力を考えると
朝刊に出るんじゃないかな それともあさってだね 裏をとってからさ
なにしろ たまたま記事を見つけたって処なんだよね」
「その記事を見なければ 理事は無かったんでしょ」
「うん だけど遅かれ早かれあったでしょう 多分ね」
「うん アルタの内藤さんが僕を欲しがっているからさ」
「そうか しかしこの若さで理事は居ないでしょ」
「うん 東京本社次長職も初めてだし 何から何まで前代未聞の出来事です
身内でも驚いている だから店長が僕の事を買ってくれているのと
副社長が前向きに考えてくれたおかげさ」
祥子はソファーに座りビールを呑んだ
「ねぇここに座って お願いだから」
神山もソファーに座ると キスをした 祥子は改めて
「ねぇ上原の現場だけどいい」
「うん いいよ そのつもりだから」
「造花とか用意して飾付けたいんだけど やはりプロの方がいいかしら」
「そういう事か だって予算ないでしょ どうにも動けないな
例え自分達でデコレーションしても ランニングがあるし
造花は季節で変化をつけていかないと汚くなるし 保管も大変だよ」
「そうよね 何かいい方法ないかとスタッフとも話したの
それで出てきた案が造花だったわけ ほら銀座でも造花で飾り付けている
売場が一杯あるでしょ それでいいアイデアだと思ったの、、、」
二人はアイデアを出す為色々と考えていた
神山がスケッチをして色々とアイデアを出すが予算の関係で
難しく壁に突き当たってしまった
神山はビールが無くなり冷蔵庫から取り出しグラスに注いだ
祥子のグラスに注ぐ時 照明の関係かグラスから綺麗な虹が
テーブルに模様を描いていた

「ねえ今 気が付いたけど 造花は買ったの?」
「ううん まだよ」
「だったら こうしよう 僕はあそこで造花を使うのはあまり感心しない
限られた空間だから余計だ そこでね グラスとビー球を用意して
それを飾付けるんだ」
手元にあるグラスの効果を見せながら 角度を変えたりし
神山はメモ用紙に簡単なスケッチを書いた
見える効果など分りやすく説明すると祥子の顔が明るくなり
頷きも多くなり喜んだ
「分ったわ そうね 銀座のように店内にある処は入り口にポイントを
おかなければ何のメッセージも伝わらないけど 上原の場合 客導線を
考えてもそれは無理ね 私も分っていたけど どうして良いか
その方法が分らなかったの しかし ビー球ってどこに売っているの?」
「うん 当日まで僕が用意する ただ敷物が必要だね」
神山はそれについても分りやすく絵に描き教えた
「うん 自分で出来ないわ 困ったわね」
しかし祥子はにこにこして困っていなかった
「うん こうしよう 少し粗い白い砂を用意する そこに配置する」
「やっぱり あなたね 私全然困ってなかったもん」
「そうしたら コップ代とビー球と砂でいくらですか大体?」
「さっき言った大きさ 45cm角で1000円から1500円
大体その位でできるよ」
「わかったわ 経費は出るけど 何ヶ所必要かしら」
祥子は什器などを配置した図面を鞄から取り出し 見つめた
自分なりに7個所もあればじゅうぶんと思うがどうですかと聞いてきた
「そうだね ビー球屋さんじゃないからね その位かな」
「そうしたら 8箇所分買っておいてくれる お願いします」
また丁寧にお辞儀をした 
「分った 買ったら現場において置くよ」
「ほんと助かったわ 龍巳さんのおかげです ありがとうございます」
「えぇ 龍巳さん?」
「そうよ ファーストネームでいいでしょ」
「うん わかった それと聞きたいんだ 今度は僕の番だけど」
「ええ なぁに」

神山は秘書の制服に付いて聞いてみた 要望も伝えると
「あるわよ ピッタリのが 一度見に来て頂くと良いわ 凄く素敵よ
パリで作ったものだから日本人がきると少し派手になるかもね
でも 大丈夫なの そのスーツで」
「うん 大丈夫ありがとう で金額は?」
「社員カードは使う?」
「いいや 会社のお金だよ」
「そうしたら 40万と50万とあって両方とも50%引けるわ
ただし領収書はニーナ・ニーナだけど大丈夫?」
「わかった 大丈夫だよ 秘書の年齢は確か39かな」
「へぇ~すごい秘書が付くなんて」
「うん まあ 大変だよ 次長室立ち上げまで それからさ
白いブラウスだろ これはほら胸が少し 開くような衿が大きい
よくTVでCMなんかに出てくる女性が着ているもの」
「うん それもあるわ」
「あとバッグなんだけど こんな感じだよ」
神山は絵に描いた 
「う~ん 似たようなの有るわ」
「あと そのスーツにあうハイヒールだけど」
「う~ん あるわ サイズが違う場合は倉庫から持ってこれるわ
大丈夫よ 直ぐに揃える事が出来るから」
「よかった 助かります 金額はどう?」
「ブラウスはパリよ5万くらいかな バッグもパリ 15万
ハイヒールは日本製とパリがあるけど日本製よりパリが良いわ違うもん
18万円で スーツとあわせると合計で 88万円よそれの
50%OFFだから 44万円になるわ」
「わかった どうだろう それ着ていると洗練された秘書に変身するかな」
「大丈夫よ 普通 お出掛けで買われる方は この下のクラスよ」
「ほら 女優さんが素敵なドレスを着るとオーラがでるでしょ
そんな感じになる?」
「ええ 大丈夫よ しかし何で制服にそんな高いお金払うの?」
神山は催事課で話した 戦略のことを言った
「ふ~ん そう言う意味でも全然OKね どちらかと言うと
今 考えている戦略型かしら」
「ありがとう 白いブラウスについては もう一着欲しくて」
神山はまたフリルが付いたブラウスを絵に描いた
「ええ あるわよ 確か7万円ぐらいでした 全部買って頂けるとしたら
もう少し 安くなるわ」
「どうして?」
「実は日本では 売れないの ほら体型が合わないのよ
私みたいに バストがあってもお尻がそれについて来ないのね
だから返品するの、、、だから安くしても売ったほうが良いでしょ
そう言う訳なの
返品と言っても パリでは現行品よ だからその秘書の方が
スーツを追加で買われる時は パリから輸入するから時間がかかるわ」
「わかった それで明日は売場にずーっといる?」
「そのつもりよ 来る前にそう、、、30分か1時間前に電話貰えれば
売場で待っています 領収書とお金は私が管理なの 売場と別だから
それでもいいかしら」
「わかった 電話するからお願いします 何しろこれから
御殿場アウトレットがあるので 大変になる ありがとう 助かります」
神山はキスをして 今夜はどうと聞いた
「ごめんなさい ほんとうに 明日は多分大丈夫だと思うわ」
「わかったよ 明朝現場に行こうか」
「ええ 時間が有るから 付いて行きます お願いします」





.

2012年11月9日金曜日

青葉 6 - 20 Vol. 1



4月19日 日曜日 夕刻
「奥ちゃん 話しがあるんだ」
「おっかないですね なんですか 倉さん?」
田所の挨拶が終わり いつもの催事課に戻ったころを見て話をした 
先ほど神山と杉田そして倉元が出した提案を伝えた
どうしても造花はこのお中元に欠かせない装飾品で 現状の造花では
出来ない事 誤魔化すとそれをカバーするのにまた予算が追加してしまう
中元予算は現在 対予算イーブンなのでどこから捻出するか
「ええ 私も考えていたんですよ どからか出れば使おうと」
奥村も困っていた どこからも余ったという話しを聞かないし
斉藤も難しいと言っていた 店長に話そうか迷っている所だった
「おう 奥ちゃんさ さっき赤坂センターの見積もりを見たんだけど
看板類を減らせば 造花なんとか買えるかなという感じなんだけど」
「あっ それ行きましょう いいですね そうしましょ」
「おう 奥ちゃん簡単に言うけど 店外催事だから枠が違うんだよ」
「ええ 分っていますよ 何とかします ねぇ由香里姫」
「えっ 知らないっ また 知りませんよ 帳尻併せで残業は嫌ですよ」
「わかった わかった 残業しないから ねぇ よし倉さん買おう」
話しはすんなり済んだ
「おう 山ちゃん OKでたぞ しかし間に合うか 翔の分で」
「僕は10万持っていますよ」
「おう そうか それだけあれば大丈夫だな」
「ええ 鈴や装飾ですがね 一応彼の所に預かって貰いましょうか?」
「おう そうだな そうしよう しかし良く貯めたな」
「まあ 何かの時にと思いまして 内緒ですよ」
「おう 分った オレも10万位あるが使わないでおこう」
二人は見合わせ笑った
神山は仕事に集中をしていると6時になった
祥子に連絡を入れないとまずいと思い外へ出て携帯を使った
「はい久保です」
「神山です ごめん忙しい所 今夜だけど?」
「ごめんなさい ここのスタッフと食事があるの
帰ったらお話しします」
「分った 僕も催事課で呑み会が出来た」
「遅くなっても待っています」
「了解です」
「呑み過ぎないようにね」
電話を切って 店舗の1階周りを色々と見て廻っていると
ニーナ・ニーナの外側に来た
たまたま祥子が外側を見ていたので手を振ると 笑みで返してきた
一通り見回ったので部屋に帰ろうとした時 後ろから声を掛けられた

振り向くと田所洋子であった
「やあ 早いですね 大丈夫ですか そうか6時で終わりですよね」
「ええ 大丈夫です」
神山は時計を見てみると 6時過ぎだったので
「田所さん 少しお茶を飲みませんか」
「はい 分りました」
洋子は何も聞かず 笑みを浮かべて付いてきた
事務所の向かい側にある 喫茶レイに入った
「すみません しかしちょっと話しておきたい事があるので」
「いえ 構いませんよ」
「実はご存知だと思いますが この手の仕事は24時間
フル稼動しなければいけない時が有ります 大丈夫ですか」
「はい 覚悟をしてお受けしました 人事や秘書からも言われました」
神山はほっとして
「な~んだ 知っていたのか 良かった いや男性でもきついです
だから女性だったら余計にきついだろうと思って」
「ええ そうですよね だけど神山部長がいえ次長が
徹夜をされているのに お先に失礼しますは言えませんよ」
「まあ そうだね それと部長や次長は辞めて欲しいな
第三者がいる時でいいよ その他の時は好きに呼んでくれれば」
笑みを浮かべながら
「分りました 神山さんって とても優しいんですね」
「いや そんな事ないよ」
「ちゃんと 調べてありますよ 神山さんのことは上野の時から」
「えっ それはないよなぁ まいったな」
神山は全然困った様子ではなく言葉だけだった
「あと あとあと必要になってくる事だから話すけど
何かあったとき 例えばこちらで会計をしなければいけない時とか
出てくると思うんだ 絶対に その時の為に 田所さんに
僕のお金を預かってもらおうと思っているんだけど どうかな?」
洋子はまた笑みを浮かべ
「大丈夫ですよ 理事の1級になられると お給料とは別に
本社人事から秘書のところへ50万円活動費として来るんです
その50万円は何に使ってもお咎めなしです しかし神山さんの場合
理事2級で査定すると言っていました ですからお給料は
120万円勿論税込みですよ確か それで活動費も理事2級ですと
70万円ですが アルタさんのこともあって80万か90万に
設定しようと言っていました ですから活動費を自由に使えるので
先ほどのご心配はいりませんよ」
「そうか だけど実際に頂いていないから実感が湧かないね」
「そうですよ 私だっていきなり部長職級1級ですもの」
「えっ9等級課長さんじゃなかったんですか?」
「7等級係長です 神山さんが特進したんで 私も特進です
ありがとうございます 助かります」
「そうなんだ いや挨拶に来られる前 奥村課長から本社での
報告がありまして 田所さん 部長 と来たもんだから
えっ 大変な女性が付いてくれる事になったんだ と思っていたんです
ちょっと思ったんですが 女性の部長職級は少ないんじゃないですか?」
「ええ 私をいれて 東京地区で3人です 名古屋地区は5名
いらっしゃいます」
「へぇ そうか上野の田中部長さんですよね 婦人服担当の あとは?」
「ご存知ないですよきっと 副社長の第三秘書の山口さんです」
「う~ん 見た事ないな」
「ええ これは秘密ですが ある所に居られます 秘密ですよ」
「そうすると 2名でいい訳か 僕は」
「そうですね」
また笑みを浮かべた 神山は時計を見ると6時20分を指していた
「では 出ましょうか 20分になったし ここでの話しは秘密
先に出てください 会計をして出ます」
「は~い 先に行っています」
洋子は笑顔で手を振って出て行った

神山が部屋に戻るとみんなからブーイングがでた
会計して直ぐだとまずいと思い 又建物を一回りして戻った
「すみません」
おじぎをすると 
「さあ 時期次長さんは田所さんの隣りだ」
奥山課長が指示をしたので席に座った 洋子は神山の顔を笑みで迎えた
「さあ 揃った所で いきましょうか 倉さんお願いします」
「おう オレを置いてきぼりにした 山ちゃん べっぴんさんが
この部屋の傍に来て嬉しいと言う事で かんぱーい」
倉元の音頭で乾杯が行われた
「え~それでは自己紹介をお願いします まず田所さん」
「はい」
と言って立ち上がろうとしたので 座ってでいいですよ と奥村に言われ 
「はい ありがとうございます 
私はここにいらっしゃいます 斉藤由香里さんと同期生です
入社はまるまる年で鈴や銀座店総務部に配属されました
6年程前銀座店から東京本社人事部に配属され 入社以来
人事のお仕事しかしておりませんだけに 皆様のご支援をお願いします」
「はいありがとうございます 続きまして神山部長 お願いします」
いよ おとこまえ いよ 出世頭 などと野次が飛んだ
「ご紹介に預かりました 神山です え~ なにを話せばいいですか」
「ほら入社とか 田所さんのように」
「だって 田所さん全部僕の事調べていますよ ねぇ あっ」

神山は秘密をしゃべっちゃたと 少し赤くなり田所を見ると
口を手で抑えて笑っていた
それを見ていた皆も大爆笑した 笑いが収まって
「実は先ほど店内から戻るときにそこの角であったので レイに行き
レクチャーをしました」
なんのレクチャーしたんだ 早いぞ また笑いと野次が飛んだ
「え~ この仕事は回転すると24時間フル稼動するが大丈夫かとかです」
そんなのあたりまえだろ ちがうこと話していたんだろ
また野次と大爆笑が起きた
そこへ 店長が来たので 奥村が神山の横に案内した 奥村が
「店長がお見えになられましたので神山部長自己紹介をお願いします」
「えっ 最初から?」
「そう 全部最初からお願いします」
神山はこのさいもうどうでも良いやの気持ちで
「只今 ご紹介に預かりました 神山です え~ なにを話せばいいですか」
「ほら入社とか 田所さんのように」
「だって 田所さん全部僕の事調べていますよ ねぇ あっ」
今度は2回目なのでわざとらしさが入ったが 店長に受けた
「そうだよ 全部調べたさ 田所君は喜んでいたぞ なぁ あっ」

今度は店長が秘密をばらしてしまったらしい 頭をかき 洋子に
「すまん 勘弁」
と謝ったのでまた大爆笑になった 収まったのを機に奥村が
「田所さん 催事課はいつもこんな感じです 仕事の時は
厳しいですが あとは何時もこんな感じです 宜しくお願いします」
今度は洋子が立ち上がって
「先ほど神山さんのスピーチを聞いていて 付いて行ける男だと
決心しました 仰られたように仕事の内容がハードで心配してくださり
優しさは感じていました
しかしその後 お金の事 いわゆる会社のお金ですがそのこともきちんと
考えておられ ちゃんと先を見ているんだと感心しました
しかし 私がいままで見てきた男性には神山さんのような方は
何名かいらっしゃいました がしかし会社のお金を使ったり
うそばっかり通して自分の首を絞める方ばかりでした
そんな中 神山さんはそれまでの男性と違った 芯を見る事が出来
先ほどから考えていましたが 嘘を言わず
話しをきちんとできる そうゆう人物なら 付いていくと
思っていた所 先ほどの件で 決心しました」
「ありがとうございます しかし 山ちゃん 羨ましいな」
「そんな 何も話していないですよ」
店長が洋子のはなしを聞いて
「山ちゃん 田所君が言っている事はうそではないぞ
ワシもいままで田所君が言っていた男を知っている しかしな
嘘をつきとおして 首になったり あとは天狗になり めちゃくちゃな
仕事をしたり 結局会社にとってはマイナスなんだよ
そこで言えるのは そんな男に付いていた秘書はと 後で非難される
だから彼女も 考えていたんだと思う そうかな田所君?」
「はい そうです 嫌ですもの そう非難されるのは」
「山ちゃん そう言う事だ 彼女を悲しませたら首だからな」
「えっ そんな まだ 辞令も貰っていないのに そこまで飛躍ですか」
また大爆笑だ 収まった所で奥村課長が
「よし 改めて 皆起立 お二人の昇進前祝で」
「課長 ちょっと待ってください昇進ではなく二人とも特進です 特進」
またまた 大爆笑になった
「え~ お二人の大特進の前祝で かんぱい」
みんなも かんぱいをして席につき ビールを呑んだ

神山の隣りの店長が
「山ちゃん 凄いな しっかりしている」
「えっ」
「さっき田所君が言っていた活動費を考えるとは なかなか自腹は
考える人間はいないぞ ワシはそうゆう発想をもった男は初めてだ」
「そうですか だけど当たり前ですよね あとで会社で清算して
戻ってくるんですから」
「うん 山ちゃんのような人間ばかりじゃないんだ そこだな
会社はその人間に見合ったお金を出すわけだ 分るだろ」
神山は頷き 奥村も頷いてきいた
「だから 金に目が眩むと悪い事をする訳だ ただ悪い事をしても
嘘をつかなければなんとかなる 対処の仕方もね つき通すと
どうにも成らなくなり 終ってしまう 解雇だな
まあ 山ちゃんの事を調べたが 太鼓判10こ押しても
まだ余るくらい大丈夫な人物とみて 銀座に呼んだんだよ
だから 山ちゃんがこけるとワシもこける 田所君もこける 頑張ってな」
神山はそこまで考えて 銀座に呼んでくれて そして次長までしてくれて
ありがたいと思った 胸が熱くなり 目を潤ませてしまった
ずっと下を向いている神山に田所がハンカチーフを渡そうとすると
「あっ ありがとう 大丈夫さ 店長ありがとうございます」
そう言ってまたビールを一気に呑みほした
シーンとなりかけた所を 杉田が
「店長 そうすると来年のウインドーコンテストに先輩は
出られないですよね 本社だし なんたって次長だし それに
今回最優秀賞を受賞しているし 来年は遠慮しますよね」
そこでようやく皆が笑った 倉元が
「おう そうだぞ 翔が言う通り 来年は遠慮しろよな 
仕事でも 追い抜いていくし 役職でも追い抜いていくし
少しは礼儀を心得ているんなら 来年は倉元さん頑張ってください
とかなんとか言っちゃってさ 遠慮して下さい それでないと
オレ自信なくしちゃうぞ 本当に 今だって傷ついているんだ ねぇ」
この倉元の訴えで大爆笑になった 田所も笑いっぱなしだった
神山もようやく普段に戻り反撃した
「倉さんには遠慮しても良いが 翔 君は容赦なく潰す
かかって来たら正々堂々と受けて立とう だけどお手柔らかにな
こっちも翔より年取っているんだから」
又笑った もう笑いが止まらない 店長も田所も
そんな笑っている時に扉を叩く音がした
由香里が出てみると お寿司が来た 銀座築地の寿司屋いせ丸だった
翔と市川が手伝いお寿司を運んだ
テーブルに置き 箸を配って 由香里が帰ってくるのを待った

「店長からの差し入れです ありがとうございます」
奥村が代表で御礼を言った
すかさず田所は店長に
「店長 あれですか?」
「うん あれしかないだろう」
田所は神山にそっと耳打ちした
「先ほどの活動費ですって」
神山は頷き OKサインを分る程度に示した
(なるほど 活動費はあれで とうるんだ 勉強する事多いや)
神山は洋子とは余り話さなかった どうせ向こうはこちらの隅々まで
知っているんだし あと1週間で嫌でも毎日会わせなければなくなる
そう考えると今 がつがつとしなくて良いやと思った
神山は28日の事を気が付いたので店長に聞いた
「店長28日火曜日ですが 田所さんを連れてアルタとニーナ・ニーナに
あいさつ回りをしてはどうでしょうか」
「うん いいだろう 但書きを付けておけよ」
「はい 分りました 田所さん そう言う事で アルタとニーナ・ニーナに
あいさつ回りをします 忙しいでしょうがお願いします」
「はい 分りました 時間は何時でしょう」
「うん 明日は内藤社長忙しいから、、、ちょっと待って」
神山は立ち上がって席に戻りアルタに電話をした
内藤社長は凄く喜んでいて 今仕事が順調に進んでいる事も伝えてきた
28日の火曜日は朝9時なら空いていると言ってきたので その時間に
ご挨拶に伺う事を伝えた
それと30日木曜日アルタの辞令交付は11時になった事を言われた
内藤にスーツは着ませんが良いですねと 言うとOKですと言われた
早速店長に報告した

「今 内藤社長に電話をした所OKを頂きました 9時に伺います」
「うん 分った 田所君聞いたか 9時だ なにか包んでおくように」
「店長 お言葉ですが お土産は不要です アルタとの関係は
彼女がしっかりと秘書の役目を果たせば 喜ぶはずです
中途半端な金額では逆に足元見られ 不利になります」
「おお ワシに意見したぞ 山ちゃんが3人目だ わかったそうしよう」
「すみません アルタは巨大です だから上手に使う方法を考えます」
「おお 奥ちゃん なんか似てきたな 奥ちゃんと倉さんを足して
割ったような なんか若いからいいな 内藤さんが惚れるわけだ」
奥村が
「ええ 本当に寂しいですよ 出勤簿から消える事は しかし
余力があったらお手伝いをしてくれると言ってくれていますので
期待しています」
「だめだよ 奥ちゃん 余力が出来たら どっか遊びに行っちゃうよ」
「行きませんよ そんな それと内藤社長は明日の準備で大変だけど
仕事は順調に行っている事を伝えてくださいと言っていました
それから 30日のアルタの辞令交付は11時決定です
そのときにスーツは着ていきませんよって言いましたらOKでした」
「うん分った 田所君に伝えなさい 君の秘書なんだから
もうワシじゃないんだ 山ちゃん もう自分ひとりなんだよ
君を支えるのが秘書 田所君だいいね じゃあワシは失礼する楽しかった」
池上店長は立ち上がると 手を差し出してきたので 神山は立ち上がり
店長の手を両手で握った そして深々とお辞儀をした
そのままで居ると 店長が
「山ちゃん 何かあったら 困った事があったら 来なさい
ワシの力で出来る事は充分協力するから」
「はい ありがとうございます」

奥山以下全員で見送りしてテーブル席に座ると
「さあ 店長が居なくなって寂しいですが お寿司を頂きましょう」
神山は田所に
「スケジュールをお願いします」
「はい」
「4月28日 火曜日 9時アルタ本社 内藤一哉社長 住所電話番号は
あとで したがって 8時30分にここを出ます 田所さんも一緒です
4月30日 木曜日 11時アルタ本社 私の辞令交付
ここを10時20分に出ます 私一人」
「すみません 私もご一緒させて頂きます」
「えっ ご一緒って ねぇ課長 どうなっているんですか?」
「うん 彼女も向こうで辞令を貰う」
「えっ~ ほんとですか なんで今まで、、、もう信用できない ねぇ」
「ごめんごめん 驚かすつもりちょっとあったけど 言いそびれて ごめん」
またまた大爆笑になった 
「ごめん知らなかったから それで田所さんもスーツではなくていい
あまりカジュアルだといけないが 任せます」
「だめです キチンと決めてください 神山さん」
また大爆笑 どうしても笑いが止まらなくなった
ぎこちない二人のやり取りを 奥村と倉元は 微笑ましく眺め
大丈夫 この二人ならこの仕事を乗り切ると確信した
「わかった ビジネススーツを作る 田所さんのだ」
「ビジネススーツは持っていますよ」
「いや 仕事着だから 自宅のとは区別する いいね その代わり
直ぐに着られる様 会社に置いておく事になるかな 
今 どのくらいしますか?」
「安いので スリーシーズンだと8万から10万です 
夏物も同じくらいです」
「分った 白いブラウスは?」 
「そうですね 2万円前後だと思います」
「わかった 黒い靴は?」
「1万円位でしょうか」
「ねぇ 由香里姫 大体そんな所でそろう?」
「ええ 余るんじゃない」
「分りました ありがとう」
神山はポケットから札入れをだして 1万円札を30枚を田所に渡し
「このお金で 早速先ほどの ビジネススーツ ブラウス 靴を
揃えてください 出来るだけ高いほうがいい
足りない分は 建て替えておいてくださいね 28日に払うから
そうだ イメージが湧いてきたぞ スカートはストレートではなく
少しタイトがいい 上はオードリーヘップバーンが着ていたような
3つボタン いや 2つボタンのダブルが素敵かな ブラウスは
衿が少し大きい形で開き 靴はハイヒールがいい どうでしょう
皆さんのご意見は」
「先輩 ばっちりじゃないですか いいと思います」
「おう オレもいいと思うな」
「私もいいと思うわ 洋子 綺麗だからますます綺麗になるわ」
「そうだ 生地は多少サテンがあっても良いけど 目立たないくらいだね
そうゆうのありますよね」
「ええ あります」
「イメージは湧きましたか?」
「はい 分りやすく説明してくださったんで OKです」
「そうだ バッグ これは ハンドバッグはだめで
ショルダーバッグがいい デザインは」
神山はテーブルに指で書いてこんな感じでこんな風にと説明した
「はい わかります」
「絶対に安い物はだめだよ 出来れば貯金を一時的に降ろしてでも
買ってください 協力してください」
「ねぇ 山ちゃん さっき自分はスーツ着ないで なぜ秘書を
そんなに着飾る必要があるわけ?」
「うん 僕なりの考えだけど 主役がキチンとしているのは
どこの世界でも一緒でしょ しかし秘書がごく普通だと
主役だけではなくその会社全体まで普通に見られてしまうんですよ
この心理を逆にとって 主役はなんだこの格好はと思わせ
しかしこの大事な会議だから何者だろうと思う訳
そして秘書が洗練された姿 普通品でない物を身に付けていれば
相手はそれだけで引き そこで勝負がつき話しを優位に進める訳です」
「うん 山ちゃんの言う通りだ 俺なんかも良く出かけるでしょ
だけど相手がきちんとスーツなんて当たり前でしょ しかし
女性が素晴らしく素敵だとそこで負けちゃうね」
「おう 良いんじゃないか ちょっと待ってくれ」
倉元は 由香里とはなし 20万円をだした
「おう 山ちゃん オレも賛成だ コレ貸しておく 利息はアルコール」
奥村も財布から5万円出し
「山ちゃん 僕も出します 利息はいらないよ」
「みなさん ご協力ありがとうございます さあ田所さん
皆さんに借用金を書いて下さい 倉元さん 20万円 奥村さん5万円
神山 30万円  由香里姫 これだけ有ったらどうだろう さっき言った
高級品とまで行かなくとも結構な線でいけますか?」
「ええ 充分すぎるんじゃない でも上は高いからな でも大丈夫よ」
「田所さん 社員カードでは買わないように 正札で買ってください」
「はい 分りました」
「なぜ もったないじゃない それに会社で使うんでしょ」
「うん さっき田所さんから聞いたんだけど ある程度
自由なお金が出るんです これは秘密にしてください」
この時 洋子が笑い出した 
「どうしたの?」
「だって神山さん さっきも秘密と言って自分から話したでしょ だから」
またみんな大爆笑になった
「う~ん そうだね そのお金を社員カードを使って福利厚生費を
あげる事ないじゃないですか だったら普通に買っていれば
お店もきちんと売上が伸びるわけでしょ」
「おう よく言った そのとおりだ」
「うん山ちゃんの言った事 翔や市川 ちゃんと聞いておけよ
そうなんだよ 山ちゃん だからお金は回せばみんながいい夢を
見る事が出来るんだよ 特にそうゆう性格のお金は」
「私 幸せです こんなに会社の事を思い仕事に熱中する神山さんと
その廻りのみなさんとご一緒できて 嬉しいです
先ほどの服装についても皆さんの意見を取り入れ 何とか鈴やを
引き上げようと 素晴らしいです 綺麗な洗練された秘書になります」

今度は大拍手だった 収まってから
「神山さん 私を呼ぶ時 『田所さん』ではなくて
『洋子』って呼んでください ファーストネームですから お願いします」
ここでも皆拍手した
「そうですね これからファーストネームで呼びます 
それからパソコンのスキルはどうですか?」
「ええ会社で使う程度でしたら なんとか」
「分りました 市ちゃん」
「あいよ なんだ」
「あのさ えーと あの 洋子さんのパソコンスキルを調べてくれ」
「うん どの程度?」
「洋子さん キー入力のブラインドタッチですが出来ますか?」
「すこしですが」
「市ちゃん どのくらいの速さか 調べて それとエクセルの簡単な
四則計算 簡単な表計算 ほら市が普段使っているのでいいや
それからワード あとはプレゼンする時に エクセルを使っているけど
そこらへんかな 頼んだよ」
「お任せ」
「では洋子さん 連絡を取り合い 市川にパソコンスキルを
調べてもらってください お願いします」
「はい 分りました」
「それから市ちゃんに頼みがもう一つあるんだ 以前 ほら女の子の
管理をPCで行っていただろう」
「なんで そんなここで言うの」
「良いじゃないか 洋子さんはお見通しだよ」
みんな大爆笑だった 特に洋子は笑いが収まらなく涙を流していた
「そこで ほら何月何日の誰と会った と言ったセルをクリックすると
彼女のそれまでの会話内容が別ウインドーで出てきたじゃないか」
「うん 分るけど そんなに詳しく言わなくてもいいじゃないか」
「うん それって ちょこって変えれば対会社や対会社個人に
変える事は可能だよな」
「うん 可能だよ なんで」
「うん 洋子さんに大事な時メモをとって貰うけど その手帳の
ままだと生かしきれないんだ 折角のメモが そこで市の女の子の
そうゆうリストを作っておけば 次回会うときの強力な武器になるでしょ
あの時はこうゆう発言をしたとか 会社はこうだったとか
履歴が一覧できれば なにかつかめるし ヒントが有ると思う」
「わかった そうだよ 僕も山ちゃんの言う通り 履歴をみて
その子の弱点を探した うん協力する 作ろう」
「それって まだ残っているだろ」
「まさか 見せないよ 嫌だぜ」
「だから 洋子さんはお見通しさ さあ持ってきて 見せて」
「嫌だよ 絶対に」

神山が洋子に耳打ちをした 時々驚いて聞いたり頷いていた 
市川は 以前の離婚騒ぎをねたにされているのか不安になった 洋子が
「市川さん 会社をどう思っていますか」
洋子は笑いながら 
「奥方にまた怒られたくないでしょ どうですか?」
市川はきょとんとして 
「ええ もうこりごりですから」
「それでしたら これは上司の命令です 言ってみれば会社命令です
したがって」
もう洋子は堪えきれずに大笑いをしてしまい
「その女性のリストを 直ちに提出しなさい でないと停職3ヶ月です」
またまた大爆笑で 洋子も自分で言っていて笑いが止まらなくなった
横に座っている由香里も涙をながし笑っていた
奥村課長も笑いながら
「俺もそんなに凄いのなら使って見たい 見せてくれ おい停職だぞ」
市川はさっきまで明るかった顔が曇ってきて まるで犯罪者扱いをされ
がっかりしていたが 事が会社の為となれば恥じを晒してもいいかと思い
自分のデスクからパソコンを持ってきた

PC立ち上げてエクセルを更に立ち上げファイルを開くと
神山が以前みた女の子管理リストと書かれたスケジュール表が開いた
皆がパソコンを覗き見る中 
「さあ 操作して 例えば 10日あこちゃん会う そこをクリックして」
市川は 言われた通り操作した クリックすると別なウインドーが開き
出会いから 会話内容 好き嫌い などなど 履歴が一目瞭然で分る
これを導入すれば 僕だけではなく洋子さんも
困った時なんか 何かを掴めるかもしれない どうですかと聞くと
「ええ お願いします しかし市川さんまめですね 
これで女性に使ったお金 大変だったでしょ」
「ええ 今考えてみれば はい だけど全部知っていたんですか?」
「いいえ 何も知らないわ こんなに女の子とお付き合いしていたなんて
今 このPCで分りました 早速人事課に提出しましょう」
「もう 勘弁してくださいよ さっきからもう心臓が爆発寸前です」
「神山さんからは何も言われてないわ ただ私が感じた事を言ったのよ」
「えっ じゃあ 完全に引っかかったんだ それって詐欺でしょ もう」
「市川 しょうがないだろ 負けだ 相手は泣く子も黙る田所さんだよ
その人に勝てるわけねーじゃないですか ねぇ倉さん」
「おう そうだぞ そこに居る由香里姫と洋子ちゃんは 才色兼備で
銀座店の2枚看板だった 洋子ちゃんは怖かったな ほんと奥ちゃんが
言ったように 泣く子も黙る洋子 だったからな それで婚期を遅らせ
今でものんびり楽しく独身をしているのさ 由香里姫は
そろばんの鬼と言われ 本社会計が来る前は必ず残業で汚点を見つけ
呼ばれ その場で納得いくまで修正をさせられたそうだ そう意味で
由香里姫も怖かった存在で 婚期を逃し洋子ちゃんと一緒に楽しんでいる」
「まあ倉元さん そんなに怖くないですよ 優しかったですよ」
「そうですよ 私だって好きで嫌われた訳じゃないですからね ねぇ」
奥村が
「まあまあ 兎にも角にも分った スケジュール管理というか
顧客管理リストは後日 神山部長監修で作ってくれ いいね市川君」
「はい 停職より嫁に言われるのはもうこりごりですから」
「しかし山ちゃん記憶力いいね 人のパソコンの中身を覚えているなんて」
「だって男はいくつに成っても女の子に興味持つでしょ 課長だって」
「うん まあな」
「だからこのシステムを覚えちゃったんですよ いいなこんな事できてって
メモは必要だけれど 一覧する時はこちらの方が断然早いし
比較するのにもページをめくる必要が無いし そこですね」
「うん そうだな」
「洋子さんは見てどう思われました」
「ええ 戦略を立てる時とかに非常に有効な武器になりますね」
「おう 奥ちゃん 新しく戦士が誕生したぞ 喜べ」
「ええ 頼もしいですね 田所さん お願いしますよ」
「はい」

奥村はテーブルのお寿司が無くなったので
「ようし 仕事も順調だしお寿司が無くなったので 2次会に行きます
田所さんは どうしますか?」
「はい 神山さんが 来なさいと言われれば行きます」
「神山部長 どうされますか?」
「う~ん もう直ぐ9時でしょ 帰って貰っても良いんじゃないですか」
「では 決定 田所さんは帰ります 後は 市川か」
「ええ 呑めないんで それに嫁さんが、、、」
「分った 以上 帰り支度をしよう」
洋子が突然立ち上がり 怒った様子で
「私 行きます」
きっぱり言うので みな唖然とした
「神山さん 見損ないました あれほど私を心配して下さるんでしたら
こうゆう事もありきと 何故言ってくれないんですか
なんか 見放されたようで 寂しいです 私 行きます」
一同 唖然としていると 倉元が
「おう そうだぞ これからの準備だろ 心の 誘ってあげろ」
「はい 洋子さん 付いて来なさい しかし時間が許す限りでいい」
「よお どこで覚えた そのセリフ かっこいいぞ」
市川が 野次を飛ばした
また一同大爆笑をした 怒っていた洋子も笑ってしまった
「はい 分りました 時間が許す中 神山さんに付いて行きます」
奥村が 仕度をして早く出ようと皆に言った
神山が携帯でアルタの高橋に電話をした
「神山です お疲れ様です どうですか床は?」
「やあ 山ちゃん大丈夫だよ それより特進おめでとうございます」
「ありがとうございます でも大変ですよ そこでここの次長室
だれが観るの?」





.

2012年11月4日日曜日

青葉 5 - 19 Vol. 3



「やったわね あな、、、神山さん」
「やあ 山ちゃん 凄いじゃないか」
部屋の皆が声を掛けてきた
神山は訳が分らないのできょとんとしていると
「おう 山ちゃん 凄いな大スクープを よく発見した」
「そんな その件ですか たまたまですよ」
「おう しかしなそれを直ぐにアルタに知らせるとは大したものだ」
「ええ まあ 自分も大変になるので それでアルタに伝えたんですよ」
奥村が近寄ってきて
「先ほどアルタの内藤社長が来られて大変喜んでおられた」
「来たんですか ここに」
「うん 佐藤部長と一緒に来られた」
「へぇ~ なんでそんなに、、、」
「店長に会われる為に来たんだ」
「へぇ~」
「そうだ みんな居るから ちょっと会議室へ来てくれ 由香里さんも」
催事課全員が会議室に入ると 奥村が
「コレはまだ正式ではないが 決定するのでそのつもりで 極秘です」
神山は今後アルタの出向社員扱いと成る事 待遇は常務
鈴や銀座店にも 席を置く待遇は理事と成る 
アルタの仕事内容は御殿場アウトレットの全般デザインを含めた
統括アドバイザーになることを話した
催事課皆はびっくりした 倉元は知っていたので驚かないが
「おう 山ちゃん オレを抜いたな 凄いぞ こんなの初めてだ
店長も驚いてさ 大喜びだったぞ おい 凄いよ」
倉元の発言を受けて奥村が
「鈴や始まって依頼の出来事です この若さで 理事になり
さらに先方の待遇が常務とは聞いた事がありません
山ちゃんは今後御殿場アウトレットを中心に動いて貰います
実は御殿場アウトレットに鈴やも食堂関係で出店予定が
ありましたが 先ほど出店が正式に決まりました
我社の出店は一部には知られていましたが 公には成っていません
しかし 本日から正式に稼動します
統括責任者 神山理事 施工管理アルタです
以上 ご報告いたします
山ちゃん いや神山部長 おめでとうございます」
奥村課長の話が終るとみんなから拍手された
神山自身実感が湧かないが 要は今までよりアルタの仕事をして
業績をあげていく事がねらいだと思っていた

報告終った奥村が 
「いや 山ちゃんじゃない神山部長 凄い 店長を動かすなんて」
「そんな 何もしていないですよ 向こうで常務と言われても
結局は今までの仕事プラス アルタの仕事が増える事でしょ」
「まあ そうだが 比重を今までよりアルタに置く事が条件に成っている」
「そんなの 難しいですよ」
「そうだな しかしアルタが考えられない事を山ちゃんじゃない
神山部長が提案していって 進めていく事なんだよ
具体的には24日の配車の件26日の配車の件 今日の午前中の件
全て内藤社長に報告されている
そのように臨機応変 柔軟な思考 迅速な決断 を評価された
勿論デザインは最上級評価だよ
一番は顔の広さだろう 人脈を大切にしているので
そこが最大のポイントじゃないかな」
「へぇ~ そんなもんですかね」
「そこが一番大切さ 山ちゃんじゃない神山部長」
「いいですよ 山ちゃんで 皆さんも山ちゃんで良いからね」
鈴やの理事は店長 店次長 部長職が理事で
部長職は 理事と部長と別れている
今 倉元や神山 その他店内の部長は職級は部長で理事は一人も居ない
「尚 皆に一言 絶対に漏らさないで欲しい この人事はアルタを含め
色々と手続きがあり 4月30日 木曜日朝発令 アルタも午後発令
よって 30日は大変な一日になるが 皆さん協力してください
それから 今の上原の電話番号は必要以上絶対に教えないように
アルタの仕事が絡んできますから 住所もいいですね
それで 山ちゃん この時ばかりはスーツにしないか?」
「おう 奥ちゃん いいじゃないか そのままで
銀座はそれで通してきたんだし 服が辞令貰うんじゃないぞ」
「そうですね 分りました」
「倉さん ありがとうございます」
賑わっている時 部屋の電話がずーっと鳴っていた 直通だった
由香里が急いで部屋を出て受話器を上げると 筒井からだった
「山ちゃん 筒井さんからですが」
「分りました」
電話に出ると
「やあ 山ちゃんおめでとうございます 素晴らしいね
今 内藤社長から聞きましたよ これで思う存分
御殿場アウトレットの仕事が出来ますね いや本当におめでとう」
神山は会議室に戻ると
「筒井さんから 頑張ってくださいとお褒めの言葉を頂きました」
神山は杉田に
「なあ 翔 これで地下でケーキ買ってきて」
神山は杉田に小銭入れを渡し頼んだ 杉田は小銭入れを覗いたが
「先輩 足りませんよ 実は昨日も足りなかったんで自腹切ったんです」
「ごめんごめん そうか」
そう言うと札入れを出し 1万円を渡し
「昨日の分 そっから引いといてちょうだい」
「はい 行ってきます」
そう言い部屋を出ると又 戻ってきた
「奥村課長 店長が来られました」

奥村以下全員立ち上がり 店長を迎えた
「いや 大した用じゃないんだ 今 山ちゃんが部屋に居るので来た」 
「おう 翔 店長の分も買ってこいや」
倉元から言われ地下へ買いに行った
「改めて 神山君 おめでとうございます 素晴らしい働きだ
アルタの社長がべたほれで 私はどうする事も出来なかった
鈴やさんで理事扱いしなければ私の会社に引き抜きます
と そこまで言われ 考えた結果なんだ だから理事でも
店次長ではなく 東京本社次長になる 勿論仕事はここも手伝ってもらうが
メインは御殿場アウトレットになってくる
アルタさんのアレックスグループやうちの食堂 ニーナ・ニーナの仕事と
この一年 大変な事になる いち催事課員だと動きが制限されるので
東京本社付けになった その方が自由に動けるしな
しかし はじめてだぞ 東京本社次長は」
奥村は組合の執行役員をしていることもあり
「そうですよね 本社社長はいませんからね 東京本社と言う
名称は普通の会社の本社と違って 各店を統括する人の集まりですからね
だから 東京本社社長は居ないだろ」
「したがって 神山君は30日の人事発令後は私の部下ではなく
同格になる ちょっと変な話だけどな ははは」
奥村が
「そうすると役員になるわけですか?」
「うん まあそう言う事になるなかな」 
「えぇ~ そうか 鈴や社長 副社長 専務 常務 その次ですか」
「うん そうだ わしもほんとビックリしている」
「そうか 株主総会で承認が必要なのは常務までだから 次長理事だと
本社サイドで人事が発令できるわけですね」
「うん そうだな」
黙っていた神山が
「そうすると 30日は本社秘書課に伺う事になるのでしょうか?」
「うん そうだね」
由香里がきょとんとして
「神山さん 店長と同じ位偉くなるんだ」
奥村が
「店長は常務だから山ちゃんはその下さ だけど銀座店を統括して
みる事が出来るし 店長にも同等の立場で発言できるのさ」
「おう 山ちゃん 凄いな ワシはびっくりだよ まだ信じられない
銀座だけじゃなく 全国でも初めてだぞ ははは」
奥山が
「店長 アルタは何をそんなに山ちゃんを買ったんですか」
「うん みんな居るがいいのか?」
「ええ 構いません それに勉強になります」
「そうだな 御殿場アウトレットのオープンが早まる事は関係者は
皆知っていたが動けない状態が続いているわけだ
勿論 構築物などはある程度原案は出来ているがね
しかし 本格的に稼動しようにも 道路設備 土地買収など
特に駐車場関連など色々な要素があって 動けなかった
ところが山ちゃんの情報で一気に稼動できるわけだ
コレは単に構築物をデザインするとかではなく 総合的に
権利を取得出来るチャンスでもある訳さ
例えばオープン時のアレックスグループのTVCM権利や現場の
イベント関係の権利など 全てが優位に話を進める事が出来るんだよ
なぜかと言うと オープンまで時間がないから スムースに進まなければ
今度は発注した側が困る訳だ そこでもアルタは優位に立てる
そこで山ちゃんがなぜ必要かに成って来るのだが
今までの仕事の内容や態度 上原の仕事の進め方
絶賛していたのは24日の配車の件 26日の配車の件 今朝の件
そのように臨機応変 柔軟な思考 迅速な決断 を評価されたし
勿論デザインは最高級の評価を頂いた
そこでだ アルタとしてはこの際 神山君を引き抜くと言うわけだ
しかし鈴やにとっても至宝なので手放せない
そこで妥協案が出されお互いの関係を上手に利用するには
鈴や在席が一番で しかもこれから色々と仕事を考えると
部長では如何なものか
そこで 考えついたのが 東京本社次長と言う前代見門の
役職が誕生したわけさ この話は東京本社に副社長がいらっしゃったので
相談して 結論を出した」
店長の話を聞いていたみんなは あっけに取られていた
そこに翔が戻ってきて
「お待たせしました お客様が一杯並んでいて すぐに
買えなかったんです すみません それと先輩 おつりです」
それを聞いた由香里は
「先輩じゃなくて 神山部長でしょ」
杉田は訳がわからずきょとんとしていると 神山はおつりを受け取り
「ははは いいよ先輩で ねぇ店長」
「ははは まあいいじゃないか 由香里姫」

由香里はお辞儀をして コーヒーを入れに行った 店長は
「ここは本当に 安らぐところだ 何時来ても飾った所ないし
サムライが揃っているし 頭の切れる女性はいるし」
「店長 頭が切れるだけではなく美貌も備わっていますよ」
「そうだな 奥ちゃんの言う通りじゃな なぁ倉さん 17日に受賞の
祝賀会を開いたばかりだろう」
「おう そうですね どうしましょうか」
「そこで 26日のニーナ・ニーナオープンの後はどうかな?」
「そうですね 翔 出勤簿持って来てくれ」
神山は黙っていた 翔は出勤簿を倉元に渡すと
「全員出勤ですが あっ 主役が居ません 店長」
「どうした 山ちゃん」
店長から聞かれ
「ええ 実は26日は御殿場のホテルの仕事なんです
例の車の件もあって 自分も手伝いに行くんです
なにしろアルタも横浜を抱え人手が足りないそうです」
「そうか 凄い仕事だな ほんと催事課の器をはみ出るな
わかった 主役が居なければむりだな」
奥村課長が 
「店長 祝賀会ですが 本社は呼んだほうが良いですね」
「うん 副社長がご存知なので秘書室長 店では店次長と秘書課かな」
「はい では招待状の原案を作り後でお届けに伺います」
「うん 日付だけ抜いてな ワシのほうから副社長に電話をして
何時あいているか聞いてみようか」
「はい ありがとうございます お任せします
うちのほうで都合が悪いのは 赤坂センターホテル準備の
5月1日 撤収作業がある3日です」
「そうか そうしたら2日には副社長もホテルに行くと言っていたので
2日土曜日にしようか なぁ 倉さん」
「ええ 皆さん 顔揃っていますからね」
「奥ちゃん そのように作ってよ」
「はい 主催はどうしますかね 困っています」
「うん いいじゃないか ここで」
「はい ではそうさせて頂きます」
会議室の中では まだ興奮が冷めなかった その時神山が
「店長 お伺いしたいんですが 御殿場が終ったらどうなるんですか」
「う~ん ワシも考えていたんじゃが、、、う~ん
いっそうの事 役員になるかだな あとは現状移行だな
なにしろ業績がある人間を下げる訳にはいかないしな」
「僕は今のままで仕事したいですけどね」
「まあ そうだな しかし今度は手広くなるからな」
奥村がそろそろお開きにしようと
「山ちゃんと倉さんを除いて 席に戻って仕事だ」
みな奥村の掛け声で 席に戻った 奥村が
「山ちゃん 店長も仰られて居るわけだから 
今後は幅広く仕事をし活躍して欲しいんだ 
という事はここだけに拘らなくても良い事になるので
店長 彼に専属の秘書を付けては 如何でしょうか」
「う~ん そうだな 本社じゃ秘書いるしワシも秘書がいるしな」
「倉さんどう思いますか」
「おう そうだな いちいち山ちゃんじゃ可哀相だろ
肝心な所は今まで通りにすればいいし アルタの常務だろ 付けよう
しかし お金はどうする」
「ええ 実は東京本社で一人辞められたでしょ」
「おう 辞めさせられたな おう そっから出るか」
「ええ 勿論 催事課ではと言うより 銀座店では出せませんからね」
「ははは 奥ちゃん良く調べているね」
「はい これも組合の仕事ですから そこで東京本社でだす訳です」
「うん そうしよう よし僕は副社長に伝えておく
人事関係は本社から持ってくるんだな」
「ええ 銀座の人材を使いません」
「分った 銀座がお金 人 と関らなければワシはOKじゃ」
「ありがとうございます それで次長室なんですが まさか今のままでは
仕事が出来ないので この会議室の後ろが開いているので
そこで仕事をしてもらえば こちらも助かるんですが 如何でしょうか」
「そうだな 奥ちゃんがそれでいいとなれば OKだ」
「倉さんはどうですか?」
「おう いいね その方がある部分仕事しやすいだろう」
「勿論 会議なんかは この部屋を使ってもいいし 
この上の会議室もあるし 山ちゃんも会議室があれば 困らないと思う
店長 よろしいでしょうか?」
「わかった 早速 準備をしてくれ 待遇が悪いとアルタに行かれるぞ
アルタはこの至宝を狙っているからな 奥ちゃん頼んだぞ」
「はい 山ちゃんは鈴やで守ります 手放しません
そう言う事だ 山ちゃん この後ろに山ちゃんの部屋が出来る事
専属の秘書がつく事 最後に待遇を良くするから 離れないでね」
奥村の最後の言葉で店長 倉元 神山 奥村自身笑った
店長が
「奥ちゃん もう良いかね 開放してくれるかね」
「どうもありがとうございます お忙しい所 すみませんでした」
「では 山ちゃん 頑張ってな 頼んだよ」
店長は手を振って部屋を出て行った みなお辞儀をして見送った

部屋に残った3人は今後の仕事の進め方を協議した
神山は今まで通りと言ったが これからは重要催事だけ手伝う
勿論 余裕がある時には手伝ってもらう
「山ちゃん これは肝心な事だけど いままで銀座店の中で行動する場合
店長の判を貰っていたけど これからは本社秘書課で貰う事になる
もっとも書類を出せば殆ど判はもらえる なにしろ次長だからね
秘書課も嫌といえないんだよ
それから人事考課は副社長になる もっとも理事の場合 部長と違って
そんなに厳しくないし大丈夫だよ それから出勤簿はなくなる
ただ 秘書には伝え連絡取れるようにする 勤怠関係は本社人事になる
以上 何か質問はあるかな もちろん倉さんも」
「おう オレはない ただ催事の出勤簿から消えるのが寂しいな」
「ええ しかし次長が催事課では可笑しいでしょ」
「おう そうだな」
「僕も有りませんが しかし、、、」
「うん しかし、、、とは?」
「随分と手回しが良いなと感じていたんですよ」
「うん 前から考えていたのさ 勤務にしてもイレギュラーな時間が多いし
本人と連絡をとっても こちらの仕事が出来ないとか 
今後 絶対にそのような時が来ると思い 情報を探しておいたさ
それが今回こんなに早く役に立ったわけさ
山ちゃんと同じだよ 情報を先取りすれば優位に話が出来るし
懸案を纏める事が出来るんだよ」
「ありがとうございます 勉強になりました」
「さあ それでは仕事をしよう」

奥村は部屋を出て席に戻ると店長から電話が来た 何度も頷いていた
「由香里姫 店長と副社長の本社に行ってくる」
「はい 行ってらっしゃい」
神山と倉元が席に戻るとき 市川が
「山ちゃん じゃない部長 凄いじゃないか この若さで理事なんて」
「たまたまだよ 市ちゃんもがんばれよ」
今度は由香里が
「凄いわ やっぱり私が見込んだ通りね 凄いわ」
「先輩 凄いですよ 僕にとっても嬉しいですよ 胸張れますよ」
「うん だけど余計な事はしゃべるなよ 昨日みたいになっても
もう助けられないからな いいね ねぇ倉さん」
神山はウインクをして 倉元に振った
「おう そうだぞ これからは助けてくれる人がいないぞ
オレも忙しいからな 翔のことに付き合えないぞ」
「そんな 誉めたのに そこに行く訳ですね すみません」
「そうよ だって奥村さんだって 返す事出来なかったでしょ
たまたま神山さんが知っていたから笑い話で済んだんじゃない
もっとしっかりしてよ ほんと神山さんの爪の垢でも飲んだら」
「おう 由香里姫 そこまで言わなくても 翔が泣いてるよ 翔 泣けよ」
「グズン グスン ごめんなさい 以後申しませんから許してください」
「分ったわ しっかりしてよ ほんと 頼りないんだから もう」
翔と神山が席に戻ると翔が
「どうしたんですかね やけにキツイですよ」 
倉元は
「おう 分らんか 山ちゃんが遠くなるのさ」
「あっ そうか 今までお世話してきたけど 出来ないし」
「おう まぁそんなとこかな」

倉元が2人に中元の打ち合わせをしようといって真中のテーブルに来た
神山と杉田もデザイン資料を持ち寄った
項目ごとチェックしてゆき 殆どOKがでた
倉元が杉田に 良く出来た事で誉めると
「すみません 殆ど先輩が原案を作ってくれたんです」
「おうそうか、、、でもフィニッシュは翔だろ 頑張ったじゃないか」
「倉さん 造花はどうしますか」
「おう そうだな 翔 赤坂センターの見積もりをもってこいや」
「はい 準備できています」
「おう 早いな」
そう言い見積もりを項目ごとつき合わせてみた所 漏れがないので
「翔 もうこれでいいな 追加は出来ないぞ」
「はい けさ先輩から言われ 何回も見ましたが 漏れは有りません」
「翔さ スポーツの什器だけど 流通センター納めだろ
什器屋は なんにも言って来ないのか 後で運搬費下さいは無しだよ」
「はい それも確認をとってあります 大丈夫です」
「おう そうか そうすると単純に10万円浮くな」
「ええ 看板を再利用するので 鈴や装飾がその分減っていますね」
「おう で翔 この概算見積もりはこの数字で課長に行ってるのか?」
「喜んでください ちゃんと看板代を入れて出しています」
「おう たまにはいい事するな そうしたらここで買いたいが枠がな~」
「ええ 僕も倉さんに相談しようと思っていたんです 翔の数字がOKなら
ここで購入できるしと思っていたんです
あの色の造花はほんと難しくて 普通のリーフを混ぜる事出来ないし
単独で使わないと いい色気が出てこないんですよ」
「おう そうだな 今までのが多少でも使いまわし出来ればな、、、
そうしたら オレが課長に話す 今日中だったら納品は大丈夫?」
「ええ大丈夫です 昨日確認をしました ここ1週間って言ってましたが
輸入品なので 早く抑えたほうがいいでしょうね」
「おう わかった 今日中に結論を出すよ」

3人が話し終わった時に 店長と奥村課長が戻ってきた
「おう おかえり どうだった」
「ええ 今副社長と決定した事をご報告します みんな集まって」
そう言われ センターテーブルに集まった
「副社長と本社秘書課並び人事課を交えて話をしてきました
確認事項と決定事項がありますので ダブりますがご了承ねがいます」
奥村課長が丁寧な進行のときは特に大切な内容の話なのでみなメモをとった
「神山部長 人事発令4月30日 朝9時30分
職種 理事  役職 東京本社次長  
秘書 田所 洋子 人事発令 4月20日 朝9時30分 
職種 部長  役職 東京本社次長 神山 龍巳 専属秘書 以上」
みんなこのことを聞いてざわざわした
特に専属秘書の部分だった
皆が疑問に思っているので 奥村が
「え~ 専属秘書も今回新しく設けました 説明します
田所さんは鈴やの仕事だけではなく アルタの仕事もします
要は次長秘書になると鈴やの中だけの秘書になってしまいます
そこでオールマイティーに管理したほうが鈴ややアルタなど
全てを見てもらう事が出来ます 主にスケジュール管理や
各取引先との連絡です え~ もう直ぐ田所さんが来ますので
拍手で迎えてください
尚 それに伴った決定事項です
次長室は ここの奥に設けます 間仕切り工事が明日から入り
出来上がりは 4月27日月曜日 施工 アルタ 費用アルタ
これには事情がありまして アルタさんの会社では神山次長の席を
設けません したがって次長席は鈴やだけになります
次長室は本社のように秘書室との仕切りを設けません
理由は部屋が狭くなり テーブルが入らない事と次長の作業スペースが
無くなってしまう事由です 
尚 それに伴い 催事課の会議室が 現在 180平米有りますが 
110平米に縮小します
それから次長室の家具 備品類の準備はアルタが担当します
えっと それから」
奥村はメモをきちんと取っているが今回は長い時間だったのでメモも
一杯になり 探した

「え~ 田所さんについては 明日名刺が出来ますが 引継ぎなどで
あと神山部長のご都合や次長室の関係で 28日から席を移します
田所さんの挨拶は28日から行いますが次長の辞令が30日に
決まっていますので アルタさんニーナ・ニーナさんに限らせて頂きます
以上ですが 何か質問は? それから空き部屋にはいっている
装飾保管品は 早急に隣りにの部屋に移動してください
え~ 長期保管をしていて 使わないのもはこの際破棄するなど
見直しをしてください 後はペントハウスに保管してください」
みな質問はなかったが 神山が
「次長室に作業スペースを設けて頂く事は大変ありがたい話しですが
この部屋にある 私の席はどうなるんですか?」
「全て移動してもらいます」
「へぇ~ 引越しですか」
「ええ お願いします」
「参ったな~」
「こちらに置ける書類はそのままでいいですよ
次長室は現在上原で使用している設備がきます PCからモニターまで」
「おう 山ちゃんいいじゃないか 奥ちゃん冷蔵庫は?」
「はい 準備します でも山ちゃん扉開けたらビールばっかりは勘弁な」
ここでみんな大笑いした
「先輩 そうなんですか」
「うん まあな だってそれしか入れるものがないだろ」
それを聞いていた店長が
「早く いい人見つけろよ」
そう言ったとき又 大爆笑だったが由香里だけは笑えなかった

皆が笑いざわついている時 催事課の扉が開き 田所が入ってきた
「おお ようやく来たな さあこっちへ」
店長に言われ センターテーブルに来て
「本社の 田所洋子です 今 人事でお話しを聞き秘書室で細かい事を
伺ってきました あす辞令を頂きますが こちらには28日から勤務
いたします 分からない事がありますので よろしくお願いします」
お辞儀をして挨拶が終るとみんなが拍手をした 店長が
「こちらが 神山部長だ これから君のご主人様だ さあ握手して」
店長に言われ神山に歩み寄ると 手を差し出してきた
神山も手を出し握手し
「神山です 不束者ですが宜しくお願いしますね」
「いえ こちらこそご迷惑に成らない様頑張りますのでお願いします」
二人はがっちり握手をしていると
「おいおい いつまで手を握っているんだ まったく」
また店長の一言で大爆笑だった

手を離した田所に奥村が
「出来れば今夜 少しの時間でいいのですが空いてませんか
ここで 神山部長の昇進と田所さんの昇進前祝をします」
「ええ ありがとうございます 何時に伺えばよろしいですか?」
「6時過ぎでいいですよ 本社は6時ですから終ったら来て下さい」
「はい 分りました 伺わせて頂きます」
挨拶が終ると由香里のところへ寄って 手を握った
「良かったわね いい所に来て」
「そうね こんなに近いところに来れるなんて久しぶりね」
「抜けるとみんな寂しがるでしょ」
「どうかしら 私の下だけでしょ ふふふ」
「でも 良く本社が手放したわね」
「そうね おばさんのお仕事はお終いね ふふふ」
「まあ そんな事無いでしょ だって今だって人事のエースじゃない
こうみえても ちゃんと知っているんだから」
「ふふふ ありがとう ところでお母様はお元気?」
「ええ 相変わらず元気すぎて困っているわ」
「そうなのね うちの母も元気よ ほんとよく出かけるし 昨日も
泊りがけで 町内会の方とお出かけしているわ」
「へぇー うちの母もよくお泊りをしているわね
もっともその方がこちらも助かるけれどね」
田所洋子は斉藤由香里と同期生で 入社してからずーっと比べられ
才色兼備の二人は銀座の代表といっても過言ではない
以前銀座店に居た時は 総務部人事課だった 経理の由香里か人事の洋子か
以前から言われていて 境遇も似ている
父親を早くに無くし彼女と母親二人で暮らしている
由香里も洋子も家庭環境などお互い知っているので 仲が良かった





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