2012年11月14日水曜日

青葉 6 - 20 Vol. 2



「ええ 田中君が行きます」
「分った 何時頃から入りますか?」
「うん 多分お昼を過ぎますが 今会社で図面を起こして 
明日 僕がチェックして それからになります」
「そうすると 僕もその図面を見られるわけだ」
「ええ そうすると 早いですよ 観ていただけると」
「備品類の配置もしてあるの? それと幸三君は何時頃来ますか?」
「ええ 一応は入れておきます 幸三は10時頃か10時30分頃でしょう」
「分った そうしたら 明日が楽しみです 今日と同じ位に行きます」
「了解 床綺麗に仕上がっていますよ」
神山は歩きながらはなした携帯をポケットにしまうと
「明日 辞令交付の後は?」
「ええ 引継ぎですが 大して在りませんよ」
「わかった 明日辞令のあと 10時半に上原の現場に来て下さい
住所はあとで教えます それとタクシーはこのチケットを利用してね」
「はい 分りました しかしなぜ上原に?」
神山は上原の高橋が責任者である事と次長室のレイアウトチェックが
明日10時30分頃から行われる事を伝え 出来るならば
使い勝手とか色々含め 洋子に観てもらい決定すれば 二度手間
三度手間にならず早く仕事が進む事を伝えた

「はい 分りました しかしそこまで考えて行動する人ははじめてよ」
「そうかな 僕にとっては普通だけどね」
真剣に話しいる二人はみなと段々離れ 気が付くと二人だけになった
神山がきょろきょろと探していると 路地から皆が出てきて
「お二人さん なに話していたんですか? 怪しいな?」
杉田がニヤニヤ言ってきた時
「杉田君 神山部長に失礼です 撤回しなさい」
急に言われ 翔は後ろに立っている皆を観ると 頷いているので
「すみません」
「違います 神山部長すみませんでした 以後言葉を慎みます でしょ」
元気を無くした杉田はもう一度
「神山部長 すみませんでした 以後言葉を慎みます」
きちんとお辞儀をしたら 今度は皆に
「皆さんも意地悪しないで下さい 余計な詮索は無用です 分りましたか」
「おう 洋子ちゃん 分ったから 怒るなよ なぁ ごめん 誤るよ
二人が 話しに夢中になっているので やきもちを焼いたんだよ
だから ごめんね」
「はい 分りました 明日の件で話をしていたんです 
ちゃんと考えて 取引先をコントロールしているんですよ
それを やきもちだなんて 失礼です 神山部長に」
「田所さん ごめんなさい 悪気は無しなんだ だから機嫌を直して」
「そうですね 悪気が有った訳では無いし 機嫌を直してください」
「神山さんが そう仰られるなら 今回は許します」

奥村がホッとして暫く歩くと 綺麗な居酒屋に入った
座るとおのおのが好きなものを頼んだが 洋子だけは注文しなかった
「どうしたの 注文しないで 具合でも悪いの?」
「いいえ こう言う処 余り来た事ないんです だから味とか
量とか だって頼んで残したら失礼でしょ 神山さんのが来てから
注文しようと思っているの」
「うん わかった そうしたら由香里姫 枝豆を追加してくださいな
それから美味しい 冷奴もお願い」
「は~い わかったわ」
最初にビールが来たので 奥村課長が 翔 乾杯の音頭を取れと言われ
「え~ 先ほどは我社の繁栄をご相談されている所へ ちゃちゃを
いたしまして 申し訳ございませんでした 乾杯」
みんなで乾杯して ホッとしていると
「杉田さん お上手よ 今のスピーチ 99点よ 頑張ってね」
皆が笑った 当の杉田は
「なんで100点じゃないんですか?」
「そうね 一言で言えば 神山さんのように心がこもっていなかったわ」
がっかりした杉田は俯いてしまった
今の言葉も 一所懸命考え 言葉を選んだつもりだった
「おう 翔 良かったぞ 99点で満点だ 今の翔では上出来だぞ」
「そうだ 落ち込むな 田所さんに99点貰った事ないから 
俺なんか何時も 70点とか60点とか酷いもんだ 元気出せ99点」
みんな笑った
「そうね 私も99点なんて洋子から貰った事無いわ」
「何言っているの由香里は100点有ったじゃない 何回も」
「いいの だから99点は貰っていないの わかった 翔くん」
「はい 分りました がんばります」
そう言いビールをぐいぐい呑んだ
奥山と倉元は 洋子は完全に神山の秘書になり
周りをけん制し始めてきたと言って お互いに頷いていた

一方 神山と洋子はアルタ上原現場の住所や概略などを話していた
「嬉しいです そうゆう現場は初めてです 楽しみにしています」
「それから 次長室に必要な備品でも何でもいい
既存の秘書室や店長室など参考にならない 自分で気が付いた物を
メモ書きしておいてください あとは明日現場で図面を見ながら
落とし込んで行けば 大丈夫でしょう」
「ありがとうございます がんばりますね 
要は仕事をしやすいように 考えれば良いですね」
「そう うんそうですね 決まった スムースに進む仕事
自分の仕事をしやすいように考えてね」
話をしているとどんどんと注文した物がきて ビールも追加した
由香里も呑めるが洋子もいける口でみんなと同じリズムで呑んでいた
暫くすると洋子が化粧室に行くと断ったので頷くと化粧室に向かった
後姿が戦略イメージしている通りのプロポーションだったので
にやにやしていると由香里が
「何を にやにやしてんの またやらしい事でも考えているんでしょ」
「そうそう 相手の身になって考えていた」
「えっ なにそれ?」
「いや さっき言った戦略イメージにぴったしと思った という事
あの姿を見たらイチコロですねって事でーす」
「おう そうだな ぴったしじゃないか さすがだ見抜く眼力は」
そんな話をしていると 化粧室から洋子が戻ってきた
「洋子 いまねぇ山ちゃんがあなたのお尻を見てニヤニヤしていたの
だから しかっておいたわ」
「ふぁ 観ていたんですか もっとパッドを入れておけば良かっわ
失敗したわ 神山さん魅力無かったでしょ お尻?」
突然振られたが
「いや 充分だ それ以上魅力的になると 僕は世界を相手にしなければ 
ならなくなる だからこのままで充分です」
「おっ 99点」
翔が野次った
「いいえ 120点よ 杉田さん 今はね 既存の美しさを認め
それ以上の美しさは不要という事よ」
一同拍手で沸いた
「おう 由香里姫が意地悪を言って試したみたいだが それを
さらりと 受け流し 更にそれに答えた山ちゃんには敬服した
いや素晴らしい うん 息がぴったりだ ねぇ奥ちゃん」
「ええ 実は本社で秘書選考をしていると 山ちゃんに合う人材が
どこを探しても居ないんですよ で困っていると店長が
一層の事 逆も良いかもと逆転の発想で選考させて頂きました
田所さん そう言う理由なので 宜しく」
「ええ なんとなく感じていました」
「課長 僕は全然分りませんが、、、」
「まあ そのうち分るよ 焦らなくても でも山ちゃん 
本社人事は明日にでも挨拶しておいた方がいいよ 何しろ部長は
大反対だっただよ それを副社長や店長が宥め 移動の判を押したんだ
だから 明日お辞儀をしておいたほうがいいぞ」
「私 出てくるときそんな雰囲気じゃなかったですよ」
「それはそうでしょ 本人の前では 山ちゃん 田所さんはね
人事でナンバーワンなんだよ 知っていた?」
「いえ だって縁が無いじゃないですか それに、、、そんな時間ないし」
「まあそうだな しかしそう言う事だ」
「課長 お言葉ですが 誰がどこでなんであろうと過去でしょ
過去は幾ら言ったってだめです 今とこれからに力がないと」
「うん わかった ごめんごめん」
「神山さん ありがとうございます そうですよね 過去の栄誉で
今の或いはこれからの仕事に関係ないですよね がんばります」
「おう そうだよ 過去の栄誉には蓋をしよう いいねぇ山ちゃん」
その言葉でみんなビールを追加して洋子も追加した

「ところで洋子さん 話し全然違うけど 運転は出来る?」
由香里が聞いていて
「何言っているの 知らないの もう」
由香里は少し酔ってきたようで だるくしゃべった
「洋子はね スピードきちがいよ 辞めておいたほうがいいわ
デートに車は うん」
「違うよ 仕事さ でもそんなに凄いんだ」
「そうよ もうそこらへんの男なんて目じゃないわ ねぇ~ ようこ~」
「これからのことを考えると車が必要だし 運転手をどうしようか
考えていたんだ」
「そうですね 御殿場アウトレットは直ぐですものね
車はあったほうが良いですよね 運転手 私しますよ」
「いや 運転は僕も出来るが 先方で呑んだ時の事を考えると 
そこを考えているんだよ う~ん よし決まった 買おう ねぇ」
洋子はきょとんとし
「しかし そう簡単に言っても 会社が買うかどうか分りません
それより リースで借りていたほうが安上がりでしょ」
「よし分った 東京本社の車関係は管財部でいいのかな?」
「ええ 管財です 管財に西野理事がいらっしゃいますね」
「うん上野の時良く遊んで頂いたから すんなり行くよ」
「明日 本社に出向く時一緒に済ませましょう」
神山と洋子は話が弾み 呑んでも呑んでも酔わなかった

「洋子さん 次長室 着替えが出来るようにしましょう」
「そうですね そうすると私だけでなく神山さんもご利用できますね」
「明日が待ちどうしいな」
「ええ 私もわくわくしています」 
「あと 次長室に直通と内線が必要になるね」
「ええ 確認済みです」
「早いね 気に入った」
二人は笑ったが 洋子は当たり前ですと言った
「神山さん 驚かないで」
「うん」
「内線の番号 何番だか分る?」
洋子はうきうきしながら質問した
「分らないし想像できないよ」
「凄いわ 副社長の次よ 番号」
「確か 1000番でしょ 秘書室が5番まで使っているでしょ
そうすると 1006番?」
「ちょっとずれたけど 1007番よ 凄いわ 廻りもびっくりよ」
「そんなに凄いの 若い番号が?」
話を聞いていた奥村が 
「凄い 1007なんてみんな驚いたでしょ」
「ええ 私も嬉しいのと 驚きで一瞬疑いました」
「分らないな?」

本社のシステムが分からない神山に奥村が説明した
「うん 銀座店ばかりだと分らないと思うけど 東京本社では偉い順番に
内線番号がつくんだ 部長や理事になると 各営業部の課長クラスは
上二桁は店内と同じなんだ それで 部長クラスは1500番
以降の番号を貰える訳で 理事でも1200番からしか貰えないんだよ
本社に行ったら 番号が全てで それで優劣が決まってしまう」
「そうなの だから神山さんは 理事でもトップで最高なの
もう前代未聞の出来事で 人事でも驚いていたわ 凄い事よ
だから 明日は正々堂々と胸を張って歩いてくださいね」
「そう言う事か わかった しかし凄い事になっているんだ」
「うん 店長が山ちゃんをどのくらい買っているか分るだろう」
「そうですね がんばります それとずーっと考えていたんだけどね
洋子さんが次長室に居る間は電話を受け取る事が出来るけど
二人で外出した場合はどうなるのかな?」
「ええ それも確認済みです」
「へぇ~ 凄いね そこまで進んでいるとは」
「いえいえ 通常秘書の方が2名付くんですが 次長室が狭い為と
今までの理事と畑が違うので私だけになって 不在の時は 全て本社
秘書課が対応します 神山さんと私に携帯電話を支給され
電話があるとその内容によってメールか留守電に入る
仕組みになっています 全て秘書課が対応します」
奥村が
「凄いな 良く秘書課が了承したもんだ」
「ええ副社長の鶴の一声ですかね でないと本社からもう一名出さないと
いけなくなり 秘書課もギリギリでこの提案を呑んだのでしょう」
「そうすると 2つ持つとことになるのか」
「ええ どちらでも良いみたいです ご自分のを破棄されてもいいし
そのまま使われているのもいいし 経費は本社持ちです
今 理事さんで携帯電話 会社負担の方は 西野理事お一人です」
「へぇ~ 凄い事になっているな」
「全国でも珍しいですよ 秘書が持つのは初めてです 凄いわほんと」
「そうしたら 始めてばかりだから ここで欲しい物をきちんと
秘書室や管財 人事に話そう」
「そうですね わたし帰ったらリストを作ります」
「わかった 僕も先ほどの備品関係と一緒にリストを作る」
奥村や倉元が
「おう 山ちゃん 羨ましいな しかし後世の代に足跡を残せよ
そうすると 次が仕事しやすくなるしな 洋子ちゃんもな」
「はい がんばります」
奥村が由香里がノックダウンになり 翔も怪しくなったので
「では 由香里姫がノックダウンになりました 本日はコレにて終了」
「なん~で まだ呑むぞ~ 日本酒だ~」
「えぇ こんな状態もいます 神山さん田所さん頑張ってください」
しっかりしている4人だけで拍手した
会計を済ませ外に出るとまだ外は肌寒かった
日曜日の夜なので行き交う人の姿は殆ど居なかった
奥村が由香里を介抱しタクシーに乗せ倉元が近いので一緒に載った
「おう じゃあな」
倉元は窓から手を出し振っていた車はすぐに見えなくなった
奥村は杉田と同乗し
「山ちゃん 翔を送りながらかえるよ じゃあ」
奥村の乗ったタクシーも直ぐに見えなくなった

二人が取り残された格好になり 気まずかったが洋子が
「神山さんはどちらですか 確か横浜ですよね」
「ええ しかし事務所兼住居が上原にあるんです」
「へぇ~ そこまでは調査できませんでした」
ようやく笑みを浮かべながら話してきたので ほっとした
今まで何かギクシャクした笑みだったが 
僅かな時間だが神山と話したり仲間の話で安心したのだろう
「洋子さんはどちらですか?」
洋子は
「近くの代々木です」
「へぇ~ 直ぐ近くだ まあ代々木と言っても広いですけどね」
「ええ」
「洋子さん 呑んでばかりなので少し美味しい所へ行きましょう
帰りは一緒ですから送ります」
又こちらをみて
「はい お供します それと二人っきりの時は洋子 でお願いします」
「では タクシーを拾いましょう」
「はい 私が拾います」
そう言ってタクシーに乗るとき神山はレディーワーストのつもりで
先に乗るよう勧めたが
「いえ 神山さんから乗ってください」
「うん わかったよ」
神山は運転手に行き先を告げた
「青山2丁目」
運転手ははいと返事をして車を発信させた
二人きりになり密着していると神山も何を話すか考えたが
「さっき言っていた 車の件ですけど 車種って選べるのかな?」
「たまにありますよ」
洋子は神山に向いて話をしている 
「そのたまにとは どう言う場合?」
「たとえば 理事のお得意さんが日産系の会社なら日産と言うように」
「そうすると好きな車種は難しいな 何とか成らないかいい案は無いかな」
神山が黙っていると
「神山さん ファッション関係もお仕事有りますか?」
「うん あるよ 例のアレックスグループ」
「えっ あそこも神山さん、、、凄いわ」
「いやいや アルタが射止めたんだよ 僕はその下準備で写真とっただけ」
「そうですか しかし凄い」
洋子ががっかりしているので
「その写真の出来栄えが認められたんだよ だからその写真が無かったら
アルタもアレックスグループの仕事は無いよ」
「ふぁ 凄いですね 神山さんて 何でも出来るスーパーマンだ」
「ははそんな事は無いよ だって洋子の事見えないもん まだ」
洋子はすこしがっかりした様子だったが 気を取り直し
「そうですよね 私も書類だけで色々と判断していましたし
しかし実際にお会いすると 書類なんか参考にならない事が分りました」
「でしょ だから二人は分らない事だらけで良いんじゃない」
洋子はようやく笑って
「そうですよね 判らない事ばっかりです」

今夜の道路は空いていて 青山2丁目に直ぐに付いた
チケットを渡し降りると タクシーは広い闇の中へ消えていった
先日来たばかりの『ざ いたりあん』まで歩いた
店内に入るとまばらに人が居た
受付が顔を覚えていて
「先日はありがとうございます 本日は2名様でしょうか?」
「うん」
受付は2階の窓際に案内してくれた 
神山はビールと簡単なおつまみを頼み 洋子にここの事を知っている
経緯を話した 洋子は丁寧に手帳に書いているので
「さっきから 一生懸命書いているけど見せてくれる?」
どうぞごらん下さい と言って神山に手渡した
神山は手帳を開くと2つビックリした
まず 全て英語で書かれていた事 今日以前の記載が無い事だった
「すごい 大したもんです 僕は洋子が少し見えてきました」
「私は英語が大好きで もしかしたら日本語で纏めるより英語で
纏めたほうが早いですね まああと紛失した時 英語を理解しないと
分らないように書いていますから 落としても機密は漏れません」
「それと 今日から秘書と言う覚悟ですね いや素晴らしい」
「ありがとうございます しかし神山さんも素晴らしいです
お仲間の話を聞いていると余計分りますね 奥山さん可哀相ですね
こんなに素晴らしい部下を手放すなんて 店長も」
「それはそうとして 戻る事って出来るのかな 勿論 仕事が終ったあと」
「多分 仕事はエンドレスでしょう 今はニーナ・ニーナさんですが
アルタさん関連に傾いていくと思いますよ 
だから私と一緒です どこまでも もう後戻り出来ないんです」
神山が黙っているとビールとおつまみが届き乾杯した
洋子が
「神山さんのお気持ちは良く分るます しかしこれからは自分で仕事が
出来るわけです 新しいお仕事が目の前に一杯転がっているんですよ
それを見逃さないでいきましょうよ そうすれば今までと違って
何倍 いえ何十倍も楽しくなれますよ
普通 社長が失敗すると会社は傾きますが 私たちは失敗をしても
傾かない保証がある訳でしょ 鈴やと言う
だから 失敗を恐れないで ご自分の思ったとおり出来るわ
女の私には出来ませんが 神山さんなら絶対にできます」
洋子は自分を励ます意味を含め神山にアドバイスをした

おつまみを食べた洋子は嬉しそうに
「私 初めてです こんなにおいしいの食べたの」
「良かった うん」
「さっき言っていたけど 神山さんて手柄を全然見せびらかせないのね
貴方のような方は本当に鈴やでは珍しいわ」
「洋子 幾ら誉められても何も出ませんよ」
「そんなつもりじゃないの 人事にばかりいるせいか 一杯見てるでしょ
杉田君も見たし 市川さんも見たし そんな中 貴方は誰とも重ならない
う~ん どのタイプでもないのよ」
「洋子 僕はただのすけべだよ ほんと」
「う~ん それは分らないわ もう少し表面的な処よ今言っている事は」
神山はビールはもういいのでワインを頼んだ
洋子はカルボナーラを食べたいと言うので一緒に頼んだ
幾ら呑んでも全然素面でいる洋子に 神山は今日は負けたと思った
自身 今日 彼女と大人の関係になろうなどと思っていないが
何処かにスキが出来るかと期待をしたけれど 出てこなかった 
運ばれてきたカルボナーラやおつまみを食べているとワインが無くなり
「私 このワイン気に入りました もう一杯いいですか?」
「うん そうしたらボトルごと頼もうか」
「ええ 残ったら私もって帰ります」
ニコニコしながらいい神山を見つめた

神山はワインのメニューを貰い 洋子に見せた
洋子は一番高いのを頼もうとしたが 神山は財源が危ない旨伝えると
「大丈夫ですよ ここは任せてください」
そう言い 一番高いのを注文した あっけに取られている神山に
「これからは 一番高い物を召し上がって頂いて 味を分って
頂かないと困ります そのための勉強も必要ですわ」
「そうか ただブルゴーニュ地方のワインだけではだめか?」
「はい きちんと味を覚えて頂ければ それも武器になるでしょ」
「ああ なるほど 分った 今後は気をつけるよ」
「ええ あなたのために私も勉強するわね」
「しかし 実際は来月のお給料日あとだね 今回のお給料は
前職の課長だし まあ焦らないでいこう」
「神山さん喜んで 明日私の辞令があるでしょ そうしたら
活動金 貰えるの 分る 結局秘書にくるんですよ」
「ああ なるほど そうしたら部屋で皆から集めなくても良かったのに」
「ただね 活動金が有る事知っている人間は 理事以上なの
私ちょっとしゃべっちゃたけど 金額とか何時貰えるとか
言い辛かったのよ それで貴方が集めてくれたから甘えたの」
「そうなんだ では明日自分のお金で返しておくよ」
「そうね 活動金は辞令のあと頂けることは確認しています」
「そうか でもいいや 25万なら用意できるし 僕が返しておく」
「では ここに有るお金はどうしますか」
「う~ん 25万だけ返して 後は何に使うか分らないから
洋子に預けておく それで活動金が回転してきたら 返してもらう」
「そうね 私もあなたと同じ考えです」
洋子はそう言い25万を神山に返し手帳に書いていた 書き終わると

「ねえ 貴方はクレジットカードを持っている?」
「いや 持たない主義だよ なんで」
「ねぇ クレジットカードはステータスシンボルなの 持たない?」
「う~ん しかしな~」
「分るけど それもお仕事と割り切ったら 普段使わないのだから
だって 戦略作戦って私だけじゃないでしょ」
「うん わかった 作ろう 洋子が進める事にマイナスは無いはずだ」
「そんな~ ごめんなさい しかし支払いが10万円ぐらいなら
問題ないけど 20万30万なんてあるでしょ そうしたら
毎日 100万持っていなければいけないでしょ
だったら相手にカードで支払いって 絶対優位に立てるわよ」
「うん そうだな 戦略の内だね」
「そうよ そうなの 良かったわ 本当に素晴らしいわ
本当は少し心配していたの でも良かった ふふふ」
「どこのカード会社がいいだろう」
「そうね どこも似たり寄ったりよ そうだ AEXにする?」
「あのアメリカの会社だね 入会審査が厳しいところでしょ」
「ええ あなたならAEXは大丈夫よ 現職理事で行くもん それに
審査で会社に電話が掛かってきても 根回ししておくから大丈夫よ
あした 印鑑でしょ引き落とし銀行カード 免許証をもって来て」
「うん ただ上原だからな住んでいるところは」
「うん そうしたら送付先を次長室にすれば問題ないでしょ」
「出来るの そんな事」
「ええ人事課は 色々とこなしているわ そう言う事で相談も受けるし」
「わかった 口座は余りと言うか 殆ど使っていない口座があるけど
それでもいいかな?」
「ええ 新しい口座より古いほうが信用は有るわね 
それに会社で何かあった時 通帳を調べるからその方がいいわ
そのうち 活動金が回転したら新しく作って変更すれば問題ないわ」
「わかった では明日忘れないようにする」
洋子は大丈夫と言う心配顔で見たので 神山の携帯電話番号を教えた
神山は料理を見てみると殆ど食べたので 洋子に
「ワインを呑んだら 出ようか?」

時計を見ると そろそろ24時になる
「そうね 出ましょうか ワインボトルは私が頂いてもいい?」
「うん でも持てるかな?」
「大丈夫よ もう一つあるから」
1階に行きカウンターで清算しようとすると
「ここは私がだしますって言ったでしょ」
洋子は笑って言った 神山は
「ではお言葉に甘えます」
「うん 素直でよろしい 120て~ん」
それを聞いていた カウンター嬢はくすって笑った 
外に出てみると先ほどより寒くなった
やはり青山と言っても日曜日の夜は人通りがなかった
朝からの曇天は変わらず 今も星を隠していた
洋子は神山の腕に絡んできた
「洋子 大丈夫?」
「うん 少し寒いわ」
「わかった ちょっと待って」
と言って ジャケットを脱 洋子に掛けた
「ふぁ 温かいわ ありがとうございます」
そう言うと 神山のほほにかるくキスをした
神山は人差し指で おでこをちょこんと触った
交差点に向かっていると タクシーが後ろから来たので乗車した
洋子に行き先を告げるように指示した
運転手に行き先を告げるとタクシーはゆっくり走り出した
暫くすると洋子の自宅近くに着たので 止まってもらい降りた
丁寧にお辞儀をし 手を振って見送った
(神山さん どうして誘わなかったのかしら 
由香里とは関係有るだろうな 由香里のあの乱れ振りでは
もしかして 魅力が足りないのかしら、、、わからないわ
だけど 初めてだから怖いわ、、、でもあの人だったらあげてもいいか
私がこんなに夢中になっているのに 分らないのかしら ば~か)

神山はタクシーの中で言っていた事を考えていた
【今夜は一人なの ほんとうよ 母は旅行でいないの
だから時間たっぷりあります】
(だけど 今夜は祥子が待っているしな 誘っている事は分るがなぜ?)
そんな事を考えていると携帯電話が鳴った
「洋子です すみません この電話番号が私の携帯です 登録お願いします
それと 遅くまでありがとうございます おやすみなさい」
「うん お休み こちらこそありがとう では明日お願いします」
「は~い 分りました」
電話の声は明るかった 少し安心したが考えていた 
「お客さん 着きましたよ」
神山はチケットではなく千円札を出しおつりを受け取った
自分の部屋に入る前に祥子のドアホンを鳴らした
祥子は直ぐに出てきて 抱きついて来た
「あなた 凄いじゃない 理事ですってね 凄いわ~」
祥子は風呂には行った後でもうガウンになっていた
「うん 今日突然で もう地球がひっくり返ったみたいだった
それで 部屋に行って戻ってくる 30分くらい掛かります
至急しなければいけない事が有るので ごめんね 待っていて」
祥子は嬉しいのか30分を全然気にしていなかった
神山は部屋に戻ると お祝いのFAXが何通か着ていた
ニーナ・ニーナの筒井 アルタの内藤社長 内藤夫人 
ゴテンバ グランド インの椿支配人 椿夫人
まあ 内示だからこんなものかと思い 先にシャワーを浴びた
中元の資料と店外催事の資料 上原の明日使う資料
あと明日持っていく取引先銀行のカードと印鑑を用意し袋に詰めた
忘れ物がないか 確認をして部屋を出て祥子の部屋に入った

「凄いわ おめでとうございます」
そう言うと 祥子は珍しく お辞儀をして喜んでくれた
神山は今日一日の出来事をかいつまんで話をした
「そうすると 日経新聞に明日出るかしら?」
「分らないけど プロジェクトが大きいでしょ 影響力を考えると
朝刊に出るんじゃないかな それともあさってだね 裏をとってからさ
なにしろ たまたま記事を見つけたって処なんだよね」
「その記事を見なければ 理事は無かったんでしょ」
「うん だけど遅かれ早かれあったでしょう 多分ね」
「うん アルタの内藤さんが僕を欲しがっているからさ」
「そうか しかしこの若さで理事は居ないでしょ」
「うん 東京本社次長職も初めてだし 何から何まで前代未聞の出来事です
身内でも驚いている だから店長が僕の事を買ってくれているのと
副社長が前向きに考えてくれたおかげさ」
祥子はソファーに座りビールを呑んだ
「ねぇここに座って お願いだから」
神山もソファーに座ると キスをした 祥子は改めて
「ねぇ上原の現場だけどいい」
「うん いいよ そのつもりだから」
「造花とか用意して飾付けたいんだけど やはりプロの方がいいかしら」
「そういう事か だって予算ないでしょ どうにも動けないな
例え自分達でデコレーションしても ランニングがあるし
造花は季節で変化をつけていかないと汚くなるし 保管も大変だよ」
「そうよね 何かいい方法ないかとスタッフとも話したの
それで出てきた案が造花だったわけ ほら銀座でも造花で飾り付けている
売場が一杯あるでしょ それでいいアイデアだと思ったの、、、」
二人はアイデアを出す為色々と考えていた
神山がスケッチをして色々とアイデアを出すが予算の関係で
難しく壁に突き当たってしまった
神山はビールが無くなり冷蔵庫から取り出しグラスに注いだ
祥子のグラスに注ぐ時 照明の関係かグラスから綺麗な虹が
テーブルに模様を描いていた

「ねえ今 気が付いたけど 造花は買ったの?」
「ううん まだよ」
「だったら こうしよう 僕はあそこで造花を使うのはあまり感心しない
限られた空間だから余計だ そこでね グラスとビー球を用意して
それを飾付けるんだ」
手元にあるグラスの効果を見せながら 角度を変えたりし
神山はメモ用紙に簡単なスケッチを書いた
見える効果など分りやすく説明すると祥子の顔が明るくなり
頷きも多くなり喜んだ
「分ったわ そうね 銀座のように店内にある処は入り口にポイントを
おかなければ何のメッセージも伝わらないけど 上原の場合 客導線を
考えてもそれは無理ね 私も分っていたけど どうして良いか
その方法が分らなかったの しかし ビー球ってどこに売っているの?」
「うん 当日まで僕が用意する ただ敷物が必要だね」
神山はそれについても分りやすく絵に描き教えた
「うん 自分で出来ないわ 困ったわね」
しかし祥子はにこにこして困っていなかった
「うん こうしよう 少し粗い白い砂を用意する そこに配置する」
「やっぱり あなたね 私全然困ってなかったもん」
「そうしたら コップ代とビー球と砂でいくらですか大体?」
「さっき言った大きさ 45cm角で1000円から1500円
大体その位でできるよ」
「わかったわ 経費は出るけど 何ヶ所必要かしら」
祥子は什器などを配置した図面を鞄から取り出し 見つめた
自分なりに7個所もあればじゅうぶんと思うがどうですかと聞いてきた
「そうだね ビー球屋さんじゃないからね その位かな」
「そうしたら 8箇所分買っておいてくれる お願いします」
また丁寧にお辞儀をした 
「分った 買ったら現場において置くよ」
「ほんと助かったわ 龍巳さんのおかげです ありがとうございます」
「えぇ 龍巳さん?」
「そうよ ファーストネームでいいでしょ」
「うん わかった それと聞きたいんだ 今度は僕の番だけど」
「ええ なぁに」

神山は秘書の制服に付いて聞いてみた 要望も伝えると
「あるわよ ピッタリのが 一度見に来て頂くと良いわ 凄く素敵よ
パリで作ったものだから日本人がきると少し派手になるかもね
でも 大丈夫なの そのスーツで」
「うん 大丈夫ありがとう で金額は?」
「社員カードは使う?」
「いいや 会社のお金だよ」
「そうしたら 40万と50万とあって両方とも50%引けるわ
ただし領収書はニーナ・ニーナだけど大丈夫?」
「わかった 大丈夫だよ 秘書の年齢は確か39かな」
「へぇ~すごい秘書が付くなんて」
「うん まあ 大変だよ 次長室立ち上げまで それからさ
白いブラウスだろ これはほら胸が少し 開くような衿が大きい
よくTVでCMなんかに出てくる女性が着ているもの」
「うん それもあるわ」
「あとバッグなんだけど こんな感じだよ」
神山は絵に描いた 
「う~ん 似たようなの有るわ」
「あと そのスーツにあうハイヒールだけど」
「う~ん あるわ サイズが違う場合は倉庫から持ってこれるわ
大丈夫よ 直ぐに揃える事が出来るから」
「よかった 助かります 金額はどう?」
「ブラウスはパリよ5万くらいかな バッグもパリ 15万
ハイヒールは日本製とパリがあるけど日本製よりパリが良いわ違うもん
18万円で スーツとあわせると合計で 88万円よそれの
50%OFFだから 44万円になるわ」
「わかった どうだろう それ着ていると洗練された秘書に変身するかな」
「大丈夫よ 普通 お出掛けで買われる方は この下のクラスよ」
「ほら 女優さんが素敵なドレスを着るとオーラがでるでしょ
そんな感じになる?」
「ええ 大丈夫よ しかし何で制服にそんな高いお金払うの?」
神山は催事課で話した 戦略のことを言った
「ふ~ん そう言う意味でも全然OKね どちらかと言うと
今 考えている戦略型かしら」
「ありがとう 白いブラウスについては もう一着欲しくて」
神山はまたフリルが付いたブラウスを絵に描いた
「ええ あるわよ 確か7万円ぐらいでした 全部買って頂けるとしたら
もう少し 安くなるわ」
「どうして?」
「実は日本では 売れないの ほら体型が合わないのよ
私みたいに バストがあってもお尻がそれについて来ないのね
だから返品するの、、、だから安くしても売ったほうが良いでしょ
そう言う訳なの
返品と言っても パリでは現行品よ だからその秘書の方が
スーツを追加で買われる時は パリから輸入するから時間がかかるわ」
「わかった それで明日は売場にずーっといる?」
「そのつもりよ 来る前にそう、、、30分か1時間前に電話貰えれば
売場で待っています 領収書とお金は私が管理なの 売場と別だから
それでもいいかしら」
「わかった 電話するからお願いします 何しろこれから
御殿場アウトレットがあるので 大変になる ありがとう 助かります」
神山はキスをして 今夜はどうと聞いた
「ごめんなさい ほんとうに 明日は多分大丈夫だと思うわ」
「わかったよ 明朝現場に行こうか」
「ええ 時間が有るから 付いて行きます お願いします」





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