2012年11月19日月曜日

青葉 7 - 21 Vol. 1



4月19日 日曜日 夜
神山は祥子の部屋から戻ると 次長室の備品関係リストを作った
食器入れ 湯沸し 着替え室 簡易下駄箱 簡易洋服掛け 来客用ハンガー 
神山は思い出す物何でも書き込んで行った
ビールを呑み終わると いつもの睡魔が襲ってきて寝てしまった


4月20日 月曜日 朝 快晴
神山は携帯電話のアラームで起きた 6時30分だった
昨夜のメモを持ってテラスの椅子に座った 冷蔵庫から
持って来たビールを一口飲んで メモの中味を吟味した
神山は次長室に造り付け出来る物と 移動可能な備品を印をつけて分けた
このテラスは朝日が当らないので
少し肌寒いが爽やかな風が気持ちよかった
一息ついたので ホテルオートモとグランドホテルの資料をだし考えた
グランドホテルは外商顧客中心のホテル催事で年2回行われる
現行品で普段店内に置いていない物を出品する催事だ
部屋は一番大きい部屋を使い 銀座店のお得意様を中心に開催される
神山はグランドホテルの開催日を確認した 9月19日20日の土日で
行われる ここのホテルでは催事会場入り口が分りづらく 顧客誘導看板に
力を入れ 毎回新しい試みをしている会場だった
神山は今回も対前年で予算が来ると思い
思いつくまま 顧客誘導看板のデザインを起こした
出来上がったものを整理し会社に 一応自分宛てにFAXした
まだ時間があったので グランドホテルの正面ファザードの壁面を考えた
こちらも対前年予算だろうと思いホテルオートモ同様思いつくままに
デザインを起こした このホテルは開催日が10月17日18日の土日で
行われる為 まだ時間はあったが 今後の事もあるので早めに進めた
こちらも出来上がったものを会社に自分宛てにFAXした

神山は時計を見てみると8時になっていたので仕度をして
祥子の部屋に行った
「おはようございます ごめんなさい 起こさなかったわ」
そう言うとキスをしてきた 
祥子は準備は出来ているので 温めるだけだから待っていてといい
キッチンに向かった テーブルの上には上原の図面があり
商品配置や数量など細かく記入していた 神山が見ていると
「ねぇ 恥ずかしいから見ないで でも考えているんだけど
もう少し そうね タタミ1枚か2枚広いと良いわね」
「そうだね 限られた空間に飾っていく事は大変だよ
特に上原はアンテナショップだからね しかし逆に言うと
昨日話した例の返品するスーツなんか 飾っても面白いかもよ」
祥子は仕度している手を休め神山のところへきてキスをした
「いい考えだわ そうだ逆に店内で売れ行きの悪い商品を出しても
良いかもしれないわ 2割か3割くらいね」
そう言うと冷蔵庫からビールを持ってきて一緒に呑んだ
神山が祥子を抱き寄せると祥子も答えた
「ねぇ今夜まで待って お願い」
祥子は今夜と言いながら テーブルの仕度をした
配膳が済むと神山を呼び 冷蔵庫からビールを出した
「今日は和食か 美味しそうだ 良く作るね時間無いのに」
「うん でも少し早く起きれば 出来るし昨夜も時間あったし」
「そうか 祥子に少し時間を上げると 手の込んだ料理が出てくるんだ」
「そうよ だから少し時間頂戴」
「うん なるべくそうしたいが 頭と躰は別物で困っている」
祥子と神山は顔を見合わせ笑い いただきますをした
神山は久しぶりに祥子の和食を食べた 美味しかった
上原の件や御殿場アウトレットの話をしているうちに食べ終わった
祥子は簡単に片付け食器類は自動洗浄器にいれ
「終ったわ 後はちょっことお化粧よ そしたら出られるわ」
「化粧って もう終っているんでしょ」
「またぁ~ ふふふ何もしていないわよ すっぴんよ」

神山は支度のために部屋に戻ると洋子から電話が入った
「おはようございます 洋子です 今大丈夫ですか」
「うん どうされましたか」
「ええ 昨夜お話ししたAEXのカードの件です
先ほど人事の友人に聞いたところ 会社宛て送付はOKです」
「おお よかったね 分った 昨夜ちゃんと準備したよ 持って行きます」
「はい では10時30分に上原の現場に伺います」
「うん それと僕のほうでも洋子のスーツを探したよ
そしたらイメージにピッタリだ 後は試着をしてOKなら購入さ」
「何から何まで ありがとうございます では失礼します」
神山は電話を切ると 今日は部屋に戻って来れないので
会社に持ってゆくものも全部バッグに入れた 印鑑関係も確認した
忘れ物がないか点検しているところへドアホンが鳴ったので部屋を出ると
黒いスーツ姿の祥子がドアに立っていた
「凄く素敵だよ 惚れ直した」
「でしょ コレもパリよ ちょっとみて」
祥子は上着を脱ぐと 後ろ向きになった 
充分なお尻が また性欲をそそった 祥子が
「なに いやらしい顔をしているの ば~か もう知らない」
と言いつつも 説明をしてくれた
腰のラインがどうしても日本人のラインに合わないと言った
「だけど 祥子の後姿は素敵だったよ」
「うん 直したのよ だけどここまでしか直せないわ」
「どうして?」
「うん これ以上詰めたりすると 生地が寄って形が崩れるの」
「そうか そんなにスカートって難しいのか、、、」
「考えていてもしょうがないでしょ 試着した後ね考えるのは
それから この商品は昨夜話した商品より下のクラスよ
だから お勧めしたスーツはもっと良いわ 生地も違うのよ」
「へぇ~そうなんだ わかった現場に行こう」
マンションを出ると風が気持ちよかった 
普段と違った祥子と歩いていると 更に気分が良かった
「ねえ 今日は会社なの?」
「ええ その後銀座なの だから電話欲しいの 勿論行くけど読めないから
出来れば1時間位前だといいかな~ って事です」
「そうなんだ もう直ぐだものね」
「そうなの」
「ねぇ 今歩いているでしょ 二人がこの格好で 可笑しくないよな」
「ええ 全然 素敵よ 貴方が綺麗にまとめているから大丈夫よ
わかった 今後の事ね 秘書さんと」
「うん そうなんだ」
「だったら 靴を変えるともっと格好よくなるわ」
「そうか 靴か ありがとう 今日見てみるよ」
「そうね 貴方はシンプルなデザインが好きだから丁度良いわ
シンプルなほうが地味だけど格好はいいわね」
祥子からアドバイスを聞いていると 現場についた

高橋が祥子をみて 少しびっくりし
「久保さん おはようございます 素敵ですよ」
「おはようございます ありがとうございます」
「おはようさん 孝ちゃん」 
「あっ 次長おはようございます 目に入らなかったです」
アルタの高橋はわざと言って 祥子を誉めた
挨拶が終ると3人は早速バックヤードに入った
高橋が脚立を動かし昇り 懐中電灯で排煙ルーバーを照らした
「山ちゃん 外から見てくれる?ルーバーを」
「うん わかった」
神山が動くと祥子も一緒に外へ出た
「ほら あそこのルーバーから綺麗な光が出ているでしょ わかる?」
「ええ 素敵ね 夜はもっと素敵になるわね」
神山は中に入ると
「孝ちゃん OKだよ 今日の光でも充分いけるよ」
「そう よかった 今日取り付けます 蛍光管の色を3種類用意します」
「だけど 今夜は読めないな」
「いいですよ 別に 置いとけますから」
「了解」
「それで ここも今よりずっと明るくなるんですね」
「ええ 店内と同系色の蛍光管を使いますから 作業はしやすいですよ」
「そうか ここでお洋服を選んで店内で見た時 お色が違わない事ですね」
「ええ まあ極端に違いは出ませんが ストレス無い方が良いですもんね」
「そこまで考えてくださって ありがとうございます」
「この発案は山ちゃんなんですよ
そとから見て頂いたように ルーバーが主張していますが
しつこくなく 店内を盛り上げようとする役割を果たしているんです」
「そうですね あまりに主張が強すぎると そればっかりに目が行って
本末転倒ですよね 良かったわ 筒井も喜びます
改めて 神山さんありがとうございます」
祥子は深々とお辞儀をした
「あとは商品を入れてどのように見えるかでしょ」
「うん 山ちゃんが言う通り 内装がどれだけ商品を盛上げてくれるか
そこんとこですよね」
「うん 御殿場アウトレットのニーナ・ニーナにも取り入れたいね」
「そうですね 早速情報を流しておきます」
祥子はバックヤードの中に入り 什器の配置を確認した
「高橋さん」
「はい」
「このスチールのストック棚なんですが ここの入り口から入ります?」
高橋は祥子の図面を見て考えた 什器にはきちんと寸法が記入してある
バックヤード入り口の間口は800で高さは2000しかない
通常高さがない入り口では寝かすように斜めにするが バックヤードの
奥行きが無く 無理をすると建具に傷を付けすし 考えた
「久保さん こうしましょう そのストックが来た時 中に入れるのは
我々で行います そのままの状態で入らなかったら分解します
それでばらばらにして中に入れ 組み立てします どうでしょう」
「ええ お願いします しかし組み立てって大変でしたよ」
「ご自分たちで組み立てですか?」
「ええ 3人がかりで 大変でした」
「はい わかりました 大丈夫ですよ 一人でも組み立てられますから」
「へぇ~ そんな」
「ええ コツが有りますがね」
「では 搬入お願いします」
「そうすると24日の日13時からですが その作業を最初に行いましょう
なので 積み込みをする時 最初に降ろせるように指示してください」
「そうですね 最後に積み込むよう指示します」
祥子は確認が済むと手帳に書き込んだ
「そうしたら私は帰ります ありがとうございます」
神山は祥子を駅まで送っていった
「ねぇ 今夜読めないって 遅いって事?」
「いや 彼にはそう言っておけば良いでしょ
例え 早く終って現場に寄っても怒られないし」
「そうね 予防線張っておけば大丈夫ね」
「しかし 今 本当に分らない 一応8時に出るつもりだよ」
「わかったわ 私もその位でないと出られないかな でも早く終るかも」
「うん 連絡とろう 時間がわかり次第 ねぇ」
「うん では行ってきます」
祥子は軽くキスをして 改札口の人ごみに消えていった

9時30分東京本社秘書室
「秘書 田所 洋子 人事発令 4月20日をもって命課発令  
職種 部長  役職 東京本社次長 神山 龍巳 専属秘書 以上」
東京本社秘書室では理事以上が立会い辞令交付となった
通常 行われないが 次長秘書と言う事で秘書室行われた
辞令を貰ったあと 各理事からおめでとうと言われ
お辞儀をして挨拶をした
部屋を出て行く西野理事に 洋子は
「後で 神山部長がご挨拶に伺います」
「分っているよ 車だろ 運転手付きでいいだろ」
「はい ありがとうございます しかし理事 もう少しクラスが
上でないとアルタさんにもそうですが ファッション界で引け目を
感じえません 神山はこれからアレックスグループと戦うのです
副社長の車とは申しません 予算のアップをお願いします」
「わかった それで何時に来る」
「ありがとうございます 上原の現場で打ち合わせ その後になり
15時前後だと思われます 私も同席いたします」
「わかった 欲しい車のパンフレットを用意して持ってきてくれ」
「ありがとうございます それで運転手ですが どうしても必要な時と
限らせて頂き 常時ではございません」
「うん そうだな君が付いているし 山ちゃんも飛ばすぞ いい勝負だ」
「えっ」
「うん 彼が上野に居た時 何回もゴルフに行ってな 帰りに運転手が
居なくなったんだ って言うかその車の持ち主が酔っ払っちゃって
急遽 山ちゃんに代わって貰った訳さ そしたら猛スピードで驚いたよ」
「まぁ 昨日はそんな話出ませんでしたよ」
「なに もう会ったのか」
「ええ 個人的ではないですよ 嫌だ理事 催事課の前祝です」
「おおそうか しかし彼はしっかりしている ワシの跡を継いで欲しかった
ごめんごめん では待っている 忘れるなパンフレット」
「メーカーさんは指定ございませんよね」
「おお 好きにしろ」
「ありがとうございます 神山に伝えます 喜びますわ」
「わかったから さっさと帰れ もう神山さん神山さん って」
「は~い」
洋子は西野に深くお辞儀をして見送った
理事が全員出て行った後 秘書室で 直通の電話番号を聞いた
「洋子さん おめでとうございます 凄いわ 私越されたもん 
今 西野さんから聞かなかった」
「ええ」
「あんなに長く何 話していたの?」
「ええ 車よ」
「そうね 必要ですものね」
洋子は自分の成果を見せびらかす訳ではないが
「車種はなんでもOKのお許しを 頂いたわ」
「えっ 何でもOK 凄いじゃない なんで 教えて ねぇ」
洋子は神山がアレックスグループと戦う事になると
現状より上のクラスにして欲しい旨を訴え聞いてもらった
「そうなの 神山さん喜ぶわね 初仕事おめでとう 応援するわ 
ではなくて 応援させて頂きます 部長」
「よろしい 120点」
二人は顔を見合わせ笑った
改めて副社長に会いたいと申し出て 副社長の部屋に入った
「社長 頑張りますので 神山ともどもお願いします」
「うん わかった 洋子君 内緒だぞ」
洋子はにこっと笑ってお辞儀をし
「神山は本日 色々な手続きやお願いがあってここに来ます
社長にご挨拶もしたいと申しております お時間のご都合は?」
「何時ごろ来る?」
「多分14時前後と思われますが」
「わかった めしは帰った後にする それとも一緒に行くか?」
「それが神山のスケジュールが詰まっていますのでお約束できません」
「わかった しかしもうりっぱな秘書だな うん待っている」
「ありがとうございます では 失礼いたします」
「うん」

洋子はお辞儀をして副社長室を出ると 秘書室に戻り
「ごめんね さっきの電話番号だけど」
「うん 聞いておいたわ 凄いわ 03-XXXX-2200 よ
こんないい番号って 理事でははじめてよ 凄いわ~神山さんって」
「そうでしょ 凄いでしょ 彼の力って底知れないわ」
「良かったわね 変な理事じゃなくて」
「だから ちょっかいしたら駄目ですよ 減俸です」
「は~い 分りました」
二人は笑った
洋子は急いで古巣の人事に行くと みんながおめでとうと言ってくれたが
「ごめんなさい 10時30分に上原に着かなければいけないので
ご挨拶は 改めて後で 神山と来ます」
洋子は神山のAEXカード発行手続きの手伝いをして欲しい旨を伝えると 
「分ったわ だって向こうで審査する時は理事ですもんね」
「そうなの それで この申込書を作って欲しいの
先方からの請求明細などは会社送付にしてね 次長室よ お願いね」
「はい分りました 部長」
洋子は時計を見ると10時になっていた 自分の荷物を持って
急いで車を探した 丁度 タクシーがきたので乗車して
運転手に行き先を告げた

タクシーが動き出すと さきほど交わした会話内容を記入した
それが終ると 備品類のリストに目を通し 漏れがないかチェックした
全て作業を終った時 外を見てみるとまだ4月の半ばなのに
みんな涼しそうな格好をして歩いていた
Tシャツも無地の白からイラストが入っているものまでカラフルだった
外を見ながらボケーっとしていると 上原の駅に付いた
昨夜渡されたチケットを渡し降りると 何も無く寿司屋があった
暫く歩いても見つからないので 携帯に電話すると
寿司屋で待つよう言われ待っていると 神山がにこにこしてきた
「やあ 時間どおりだね ありがとう」
「地図を貰えばよかったわ ごめんなさい 今 少し大丈夫ですか?」
「うん」
「車ですが 好きな車種を選んで頂いてOKです」
「へぇ~ 凄い 初仕事おめでとう」
「それから 直通の番号が決まりました 03-XXXX-2200です」
「へぇ~ それも凄い なんだか怖いな うまく行き過ぎて」
「副社長ですが 私たちが伺うまでお昼に行かないそうです」
「う~ん 困ったな ねぇ 副社長って 魚は好きだった」
「ええ 大好物よ」
「そうか よし ちょっと待っていて」
そう言うと 神山は目の前にある寿司屋に入っていった
「いらっしゃい あれ今日は早いですね もう少し待ってください」
「いや 後で来るけど しめ鯖は今から作って3時ごろは大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ その位だったら後でこられた時にお出しできます」
「そうしたらさ そうだな しめ鯖を3人前くらい取っておいて」
「へい 今日は築地から逸品の鯖が入り朝から仕込んでいます
ちょっと待ってください」
そう言い 冷蔵庫に入っている鯖を捌き 切り身を神山に渡し
「どうぞ 試してください」
神山は一口で食べたが いままで食べた事が無いくらい美味しかった
「大将 あとでお土産作って貰うから いいところとっておいて」
「へい 分りました」
神山は外で待ってる洋子に
「ごめん お待たせしました」
「どうされたんですか 今から寿司屋に入って?」
「うん お昼はここになるんだ 大体いつも それで僕らが食べて
副社長が食べていないと不味いでしょ だから今大将と話していたの
そうしたら美味しい鯖が有るって言う事なので お土産用に
美味しい所をとっておいて貰った」
「ふぁ~ 喜ぶわ 大好きですよ」
「うん 良かった 僕も今摘んだけど 初めてだね美味しいの」

洋子と神山は現場に行った
「なんだ こっち側だったんだ 向こうばっかり探してました」
「ここがニーナ・ニーナの上原アンテナショップだ
この仕事は実質アルタです 僕は手助けをしているだけ では入ろうか」
中に入ると高橋がきょとんとし挨拶した
「いらっしゃい 山ちゃん この人は」
「うん 昨日僕が内定した次長秘書さ 田所さん 30日にアルタで
やはり僕の秘書として命課をもらう」
「田所です 宜しくお願いします」
「すみませんでした」
「いや 仕方ないよ それで今回来て貰ったのは 次長室の備品類など
設置場所など 大枠で決めておけば 二度手間三度手間に
ならないだろうと思って 着て頂きました」
「申し訳ございません お忙しい所」
「いえいえ 田中はもう直ぐきます 少し待ってて下さい」
洋子は制作途中の現場を初めてだという
こうやって出来て来るんですねと 感心しながら見学した
分らない事があると直ぐに質問してきて なかなか熱心であった
少し遅れてアルタの田中が入ってきた
「神山次長 おめでとうございます それと常務おめでとうございます」
「幸三君 まだ早いよ 30日になってから それから紹介しておく
こちらは僕の秘書で田所さんだ 覚えておいてね アルタでも命課を頂く」
「はい 今日は朝からいい話しばかりでみんな大変ですよ」
「分ったありがとう 喜んでもらって嬉しいよ さて早速だが 田所さんに
来て貰ったのは 次長室の備品類などの設置場所の大枠を決めたい
そうすれば 連絡をとるのにも二度手間三度手間にならないだろうと
それと アルタさんがどこまで考えて居るのか その2点です」
洋子も神山の内容で説明不足がないと思い頷いた
田中が図面を取り出し広げた
高橋と神山が平面図を見ている限りでは問題なかった
立ち上げ図面を見ても問題なかった 
「幸三ちゃん この原図はどうしたの?」
「ええ銀座店の営繕課から貰いました 寸法確認と現状ですね
明日から徹夜で入ります」
「わかった 孝ちゃん どう不備は無いでしょ」
「ええ 完璧です これで造れます 大丈夫です」
「ありがとう 幸三ちゃん それでは本題です
孝ちゃんもメモとって貰える 
まず造り付け は食器入れ 着替え室 簡易下駄箱 簡易洋服掛け
来客用ハンガー かな 田所さんはどうですか?」
「あと なんて言ったら良いか分りませんが お雑巾とか
簡単な清掃用具をいれるBOXが欲しいです 後は有りません」
高橋 神山 田中 田所4人が図面とにらめっこをした 沈黙が続いた
神山が沈黙を破った
「幸三ちゃん 簡単だ ここの壁面に一枚ふかそう」
神山は催事課会議室との間仕切りに造り付けの棚を設け扉を付ければ
一つ一つを造るより簡単に行くだろうと提案した
よくマンションなどで見かける 造り付けの棚やクローゼット
引き出しなどを言った
高橋が
「うん そうするとこの防音設備は半分で大丈夫だ 天井まで
壁を持っていけば問題ないだろう それに使い勝手が良くなるな
山ちゃん 食器入れって 透明でなくとも良いよね」
「勿論」
「そうしたら この壁面 この角をちょっと空かしてして あと天井まで
持って行って 工場で箱作って棚は真中は固定で あと150ピッチで
移動できるようにすれば 直ぐに出来ちゃうよ
山ちゃんが言うように一つ一つだと大変だけど この方が あいた所は
書類入れでも使えるし」
「うん 天袋部分は飾り板で構わないし箱はせいぜい1800でどうだろう」
「ええ 上は又考えますよ」
「どう 洋子さん」
「ええ 分りやすく絵を書いて下さったんで 理解しました OKです
何か一杯入りそうですね 
2つ質問があります 来客用ハンガーは露出した方がいいと思うんですが
どうでしょうか? あと ここの入り口のこの角ですが何の意味が
あって造られているのでしょうか この2点です」
高橋が
「来客用ハンガーは露出できます 例えば ここの1スパンを来客用に
すれば ガンガーの下は荷物置きになりますし 全然大丈夫です
あと この角は 濡れ物を置く場所に如何かなと 雨傘置きに考えました」
「はい よく分りました ありがとうございます 神山さんは」
「僕はもう無いよ しかし 確認したいけど 洋子さん
電源の話しです 湯沸しポットなどもこの作り付けの中にあります
お客様にお茶など出される時 入り口付近より 奥のほうがいい訳でしょ」
「そうですね しかしお客様のお荷物類から離れていれば
問題ないと思いますよ」
「そうしたら 来客用は入り口傍になるべくまとめ 自分達の分は
なるべく奥にする でいいですか?」
「ええ 問題ありません」
「そうすると 着替え室が少し出っ張るな どうするか」
「私も考えていたんです」
「孝ちゃん ところで PCとかFAX置き場は」
「うん 幸三どうした?」
「ええ 備品で机を考えていたんです」
「そうか そのほうが動かせるからな う~ん 困ったね
そうだ そうしたら孝ちゃん こうしよう 
この造り付け 壁面奥を1000位を着替え室にする
その出っ張りの奥行きで横に伸ばしPC、FAX 置き場兼作業台はどう」
「凄いね そうしよう 着替え室の入り口は450もあれば充分だし」
部屋の下を入り口として左側が会議室との間仕切り
ここに造り付けの扉付きの棚を作る 上の角に着替え室を作る
上側にPC、FAX置き場兼作業台を設ける
「よし決まった 後は洋子さんの居場所だ 問題だな」
「そうですね 田所さん いいアイデア有りますか?」
「私も困っています どこに居ていいか」
みな笑った またも神山が沈黙を破った
「どうせこの入り口間仕切りは撤去でしょ」
「ええ」
「そうしたら 入り口からハイカウンターを造り付けて
そこの支え棚を作業机にすれば 出来ちゃうじゃん
よく銀行なんかで見かけるでしょ ホテルのフロントとか」
「そうですね そうすれば入り口の補強が少なくて済むし頑丈になります」
「ええ 充分です そうすると 今会社でも使っている感じになる
訳ですね 机の下に引出しがあると 不便なんです」
「うん そうしたら 引き出し棚を作るよ
スチールの平机に棚を脇に作れば問題なしですね」
「はい 充分です ありがとうございます」
「そうしたら 孝ちゃん どうだろうそれで進むかしら」
「ええ充分です」
みんな大笑いした
「ねぇ 田所さん 山ちゃんは良い事言って早いんです
的確だし 結局 この仕事だって 後から追加されるより
安く出来ます これだけきちんと決まってしまえば
納期が7日でしょ 1週間で造るのはぎりぎりなんです
しかしここまで行ってしまえば 後は微調整だけなんです」
「おいおい なにも出ないぞ~ 辞めてよ 普段と同じなんだからさ」
「私もよく分りませんが 皆さんが迷っている時
多分 予算との兼ね合い お仕事の段取りなどだと思うんです
しかし こうしようとはっきり言わないと進みません
ですが間違った事を言われてもやり直しになるだけだと思います
そう言う部分で総合的にみて私は神山さんの
秘書になった事を光栄に思います 部屋を宜しくお願いします」
「山ちゃん 良かったね それでは進めよう
それで 詳細は銀座で行ってくれる 幸三と電話なんかも」
「うん そうするよ 最後に一ついい?」
「ええ 今なら」
「僕の作業机が入り口から見ると丸見えでしょ
その対処と 誰かと話をするのに 会議テーブルじゃなくて
平机が良いんだけど で出来れば長机ではなく 両端が
自分に向いているよくTVなんかで出てくる感じの机が良いな」
「こんな形でしょ」
高橋は簡単な絵を書いた 
「そうそう 結局 PCをもう一台買うか 移動するかになると思う
その時長机だと 作業しづらいもんね お願いできる」
「OKですよ 実際うちのデザイナーが使っているから あと寸法だけ」
「助かるよ ありがとう」
「アルタとしても助かります これだけ進めば終わりです なぁ幸三」
「ええ僕も凄く助かります だってこう言う話しって なかなか
決まらないんですよ 田所さんが言ってたように あっちいったり
こっちにいったり だからその分引けばもう充分です
こちらこそ お礼を申し上げます」

神山が洋子に
「なにか 追加する事は無いですか?」
「追加は無しですが 会議テーブルとか椅子はどうされるんですか?」
「そうだね 孝ちゃんどうなっているの」
「ええ 幸三が当っています 今日資料を持って来れませんでした」
「どんな感じ」
「ええ 秘書課さんで使っている黒皮のソファーと木の会議テーブルです」
「う~ん 今日じゃないとだめかな」
「と言うと 変更ですね」
「うん 少し考えがるんだ 洋子さん 壁の色は何色がいい?
今までみたいな 木目調の壁がいいかな?」
「急に言われても でも木目調はベーシックですが 重たいですよね
それに窮屈に感じがします 特に濃いいと」
「孝ちゃん 床はどうなっていますか?」
「ええ h12のループ絨毯です」
「う~ん」
「やはり 普通の役員室と性格が違いますからね 平気ですよ
今ではなく 今日明日中で 幸三 大丈夫だよな」
「ええ 大丈夫です」
高橋が時計を見て 12時になったので職人達を昼ご飯にだした
入れ替わりにアルタの梅崎淳一が来た
「神山部長 ご昇進おめでとうございます」
「やあ ありがとう 知っているのか しかし30日だよ
それとこれから 僕の秘書を勤めてくれる田所さんだ」
「田所です お願いしまね」
「はい」
「淳一 ちょっと」
高橋は梅崎を呼んで昼で遅くなっても 大工に仕事をするよう伝えた
「では お昼に行きましょうか 大丈夫でしょ」
「うん」
4人は駅前の寿司屋に入った 女将が深々とお辞儀をして奥に案内した
席に着くとだれも何も注文しないので 洋子はきょとんとした
「山ちゃん これから幸三が現場実測するけど 多分2時間くらいで
終るんだ だから僕に教えてもらうとスムースにいく」
「うんそうだね そうしよう 色気は色見本を渡すか連絡する」
話が終るとビールと鮮魚の盛り合わせが来た 
「どうして 注文しないのに来るんですか?」
「ほら 何時も来ているから それしか食べないし ねぇ孝ちゃん」
「そうなんです 山ちゃんも好きだし 僕も好きだし
それにここは 美味しいのほんと 食べてください」
「食べる前に乾杯じゃないですか 先輩」
「そうだね 山ちゃんの そして秘書の田所さん おめでとうございます
アルタをお願いします 乾杯」
みんなで乾杯をした そうすると大将じきじきにしめ鯖を持って来て
「ちょっと つまんでください」
神山が
「ありがとうございます 頂きます」
皆はしめ鯖からたべた
みんな一斉に美味しいと言ったので 大将はにこにこして戻った
「ねぇ 美味しいでしょ 洋子さん」
「これだったら 喜びますよ絶対」
「よかった 逸品は毎日入るわけではないよ言ってましたがね」
「山ちゃん何の話」 
「うん これからある人に会うんだけどね お魚が大好きなんだって
それで ここの魚は美味しいから お土産に持っていくの」
「その人 羨ましいね」
「うん まあね」
神山は急に席を立って   
「ごめん ちょっと外に出る 大切な事忘れていた」
神山は外に出ると携帯電話で浅草 大正堂に造花を発注した
在庫の数量を聞いてみると大体間に合いそうだったので 全部おさえた
送付先はあとで連絡するといった 電話を切った神山は駅売店まで走り
日経新聞他大新聞を買った
寿司屋に戻ると皆はあっけにとられた
「実はPCを見ていないので昨日の件どうなったか 調べていないんだ」
「ああ 僕も見ていないです」






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