4月19日 日曜日 夕刻
「奥ちゃん 話しがあるんだ」
「おっかないですね なんですか 倉さん?」
田所の挨拶が終わり いつもの催事課に戻ったころを見て話をした
先ほど神山と杉田そして倉元が出した提案を伝えた
どうしても造花はこのお中元に欠かせない装飾品で 現状の造花では
出来ない事 誤魔化すとそれをカバーするのにまた予算が追加してしまう
中元予算は現在 対予算イーブンなのでどこから捻出するか
「ええ 私も考えていたんですよ どからか出れば使おうと」
奥村も困っていた どこからも余ったという話しを聞かないし
斉藤も難しいと言っていた 店長に話そうか迷っている所だった
「おう 奥ちゃんさ さっき赤坂センターの見積もりを見たんだけど
看板類を減らせば 造花なんとか買えるかなという感じなんだけど」
「あっ それ行きましょう いいですね そうしましょ」
「おう 奥ちゃん簡単に言うけど 店外催事だから枠が違うんだよ」
「ええ 分っていますよ 何とかします ねぇ由香里姫」
「えっ 知らないっ また 知りませんよ 帳尻併せで残業は嫌ですよ」
「わかった わかった 残業しないから ねぇ よし倉さん買おう」
話しはすんなり済んだ
「おう 山ちゃん OKでたぞ しかし間に合うか 翔の分で」
「僕は10万持っていますよ」
「おう そうか それだけあれば大丈夫だな」
「ええ 鈴や装飾ですがね 一応彼の所に預かって貰いましょうか?」
「おう そうだな そうしよう しかし良く貯めたな」
「まあ 何かの時にと思いまして 内緒ですよ」
「おう 分った オレも10万位あるが使わないでおこう」
二人は見合わせ笑った
神山は仕事に集中をしていると6時になった
祥子に連絡を入れないとまずいと思い外へ出て携帯を使った
「はい久保です」
「神山です ごめん忙しい所 今夜だけど?」
「ごめんなさい ここのスタッフと食事があるの
帰ったらお話しします」
「分った 僕も催事課で呑み会が出来た」
「遅くなっても待っています」
「了解です」
「呑み過ぎないようにね」
電話を切って 店舗の1階周りを色々と見て廻っていると
ニーナ・ニーナの外側に来た
たまたま祥子が外側を見ていたので手を振ると 笑みで返してきた
一通り見回ったので部屋に帰ろうとした時 後ろから声を掛けられた
振り向くと田所洋子であった
「やあ 早いですね 大丈夫ですか そうか6時で終わりですよね」
「ええ 大丈夫です」
神山は時計を見てみると 6時過ぎだったので
「田所さん 少しお茶を飲みませんか」
「はい 分りました」
洋子は何も聞かず 笑みを浮かべて付いてきた
事務所の向かい側にある 喫茶レイに入った
「すみません しかしちょっと話しておきたい事があるので」
「いえ 構いませんよ」
「実はご存知だと思いますが この手の仕事は24時間
フル稼動しなければいけない時が有ります 大丈夫ですか」
「はい 覚悟をしてお受けしました 人事や秘書からも言われました」
神山はほっとして
「な~んだ 知っていたのか 良かった いや男性でもきついです
だから女性だったら余計にきついだろうと思って」
「ええ そうですよね だけど神山部長がいえ次長が
徹夜をされているのに お先に失礼しますは言えませんよ」
「まあ そうだね それと部長や次長は辞めて欲しいな
第三者がいる時でいいよ その他の時は好きに呼んでくれれば」
笑みを浮かべながら
「分りました 神山さんって とても優しいんですね」
「いや そんな事ないよ」
「ちゃんと 調べてありますよ 神山さんのことは上野の時から」
「えっ それはないよなぁ まいったな」
神山は全然困った様子ではなく言葉だけだった
「あと あとあと必要になってくる事だから話すけど
何かあったとき 例えばこちらで会計をしなければいけない時とか
出てくると思うんだ 絶対に その時の為に 田所さんに
僕のお金を預かってもらおうと思っているんだけど どうかな?」
洋子はまた笑みを浮かべ
「大丈夫ですよ 理事の1級になられると お給料とは別に
本社人事から秘書のところへ50万円活動費として来るんです
その50万円は何に使ってもお咎めなしです しかし神山さんの場合
理事2級で査定すると言っていました ですからお給料は
120万円勿論税込みですよ確か それで活動費も理事2級ですと
70万円ですが アルタさんのこともあって80万か90万に
設定しようと言っていました ですから活動費を自由に使えるので
先ほどのご心配はいりませんよ」
「そうか だけど実際に頂いていないから実感が湧かないね」
「そうですよ 私だっていきなり部長職級1級ですもの」
「えっ9等級課長さんじゃなかったんですか?」
「7等級係長です 神山さんが特進したんで 私も特進です
ありがとうございます 助かります」
「そうなんだ いや挨拶に来られる前 奥村課長から本社での
報告がありまして 田所さん 部長 と来たもんだから
えっ 大変な女性が付いてくれる事になったんだ と思っていたんです
ちょっと思ったんですが 女性の部長職級は少ないんじゃないですか?」
「ええ 私をいれて 東京地区で3人です 名古屋地区は5名
いらっしゃいます」
「へぇ そうか上野の田中部長さんですよね 婦人服担当の あとは?」
「ご存知ないですよきっと 副社長の第三秘書の山口さんです」
「う~ん 見た事ないな」
「ええ これは秘密ですが ある所に居られます 秘密ですよ」
「そうすると 2名でいい訳か 僕は」
「そうですね」
また笑みを浮かべた 神山は時計を見ると6時20分を指していた
「では 出ましょうか 20分になったし ここでの話しは秘密
先に出てください 会計をして出ます」
「は~い 先に行っています」
洋子は笑顔で手を振って出て行った
神山が部屋に戻るとみんなからブーイングがでた
会計して直ぐだとまずいと思い 又建物を一回りして戻った
「すみません」
おじぎをすると
「さあ 時期次長さんは田所さんの隣りだ」
奥山課長が指示をしたので席に座った 洋子は神山の顔を笑みで迎えた
「さあ 揃った所で いきましょうか 倉さんお願いします」
「おう オレを置いてきぼりにした 山ちゃん べっぴんさんが
この部屋の傍に来て嬉しいと言う事で かんぱーい」
倉元の音頭で乾杯が行われた
「え~それでは自己紹介をお願いします まず田所さん」
「はい」
と言って立ち上がろうとしたので 座ってでいいですよ と奥村に言われ
「はい ありがとうございます
私はここにいらっしゃいます 斉藤由香里さんと同期生です
入社はまるまる年で鈴や銀座店総務部に配属されました
6年程前銀座店から東京本社人事部に配属され 入社以来
人事のお仕事しかしておりませんだけに 皆様のご支援をお願いします」
「はいありがとうございます 続きまして神山部長 お願いします」
いよ おとこまえ いよ 出世頭 などと野次が飛んだ
「ご紹介に預かりました 神山です え~ なにを話せばいいですか」
「ほら入社とか 田所さんのように」
「だって 田所さん全部僕の事調べていますよ ねぇ あっ」
神山は秘密をしゃべっちゃたと 少し赤くなり田所を見ると
口を手で抑えて笑っていた
それを見ていた皆も大爆笑した 笑いが収まって
「実は先ほど店内から戻るときにそこの角であったので レイに行き
レクチャーをしました」
なんのレクチャーしたんだ 早いぞ また笑いと野次が飛んだ
「え~ この仕事は回転すると24時間フル稼動するが大丈夫かとかです」
そんなのあたりまえだろ ちがうこと話していたんだろ
また野次と大爆笑が起きた
そこへ 店長が来たので 奥村が神山の横に案内した 奥村が
「店長がお見えになられましたので神山部長自己紹介をお願いします」
「えっ 最初から?」
「そう 全部最初からお願いします」
神山はこのさいもうどうでも良いやの気持ちで
「只今 ご紹介に預かりました 神山です え~ なにを話せばいいですか」
「ほら入社とか 田所さんのように」
「だって 田所さん全部僕の事調べていますよ ねぇ あっ」
今度は2回目なのでわざとらしさが入ったが 店長に受けた
「そうだよ 全部調べたさ 田所君は喜んでいたぞ なぁ あっ」
今度は店長が秘密をばらしてしまったらしい 頭をかき 洋子に
「すまん 勘弁」
と謝ったのでまた大爆笑になった 収まったのを機に奥村が
「田所さん 催事課はいつもこんな感じです 仕事の時は
厳しいですが あとは何時もこんな感じです 宜しくお願いします」
今度は洋子が立ち上がって
「先ほど神山さんのスピーチを聞いていて 付いて行ける男だと
決心しました 仰られたように仕事の内容がハードで心配してくださり
優しさは感じていました
しかしその後 お金の事 いわゆる会社のお金ですがそのこともきちんと
考えておられ ちゃんと先を見ているんだと感心しました
しかし 私がいままで見てきた男性には神山さんのような方は
何名かいらっしゃいました がしかし会社のお金を使ったり
うそばっかり通して自分の首を絞める方ばかりでした
そんな中 神山さんはそれまでの男性と違った 芯を見る事が出来
先ほどから考えていましたが 嘘を言わず
話しをきちんとできる そうゆう人物なら 付いていくと
思っていた所 先ほどの件で 決心しました」
「ありがとうございます しかし 山ちゃん 羨ましいな」
「そんな 何も話していないですよ」
店長が洋子のはなしを聞いて
「山ちゃん 田所君が言っている事はうそではないぞ
ワシもいままで田所君が言っていた男を知っている しかしな
嘘をつきとおして 首になったり あとは天狗になり めちゃくちゃな
仕事をしたり 結局会社にとってはマイナスなんだよ
そこで言えるのは そんな男に付いていた秘書はと 後で非難される
だから彼女も 考えていたんだと思う そうかな田所君?」
「はい そうです 嫌ですもの そう非難されるのは」
「山ちゃん そう言う事だ 彼女を悲しませたら首だからな」
「えっ そんな まだ 辞令も貰っていないのに そこまで飛躍ですか」
また大爆笑だ 収まった所で奥村課長が
「よし 改めて 皆起立 お二人の昇進前祝で」
「課長 ちょっと待ってください昇進ではなく二人とも特進です 特進」
またまた 大爆笑になった
「え~ お二人の大特進の前祝で かんぱい」
みんなも かんぱいをして席につき ビールを呑んだ
神山の隣りの店長が
「山ちゃん 凄いな しっかりしている」
「えっ」
「さっき田所君が言っていた活動費を考えるとは なかなか自腹は
考える人間はいないぞ ワシはそうゆう発想をもった男は初めてだ」
「そうですか だけど当たり前ですよね あとで会社で清算して
戻ってくるんですから」
「うん 山ちゃんのような人間ばかりじゃないんだ そこだな
会社はその人間に見合ったお金を出すわけだ 分るだろ」
神山は頷き 奥村も頷いてきいた
「だから 金に目が眩むと悪い事をする訳だ ただ悪い事をしても
嘘をつかなければなんとかなる 対処の仕方もね つき通すと
どうにも成らなくなり 終ってしまう 解雇だな
まあ 山ちゃんの事を調べたが 太鼓判10こ押しても
まだ余るくらい大丈夫な人物とみて 銀座に呼んだんだよ
だから 山ちゃんがこけるとワシもこける 田所君もこける 頑張ってな」
神山はそこまで考えて 銀座に呼んでくれて そして次長までしてくれて
ありがたいと思った 胸が熱くなり 目を潤ませてしまった
ずっと下を向いている神山に田所がハンカチーフを渡そうとすると
「あっ ありがとう 大丈夫さ 店長ありがとうございます」
そう言ってまたビールを一気に呑みほした
シーンとなりかけた所を 杉田が
「店長 そうすると来年のウインドーコンテストに先輩は
出られないですよね 本社だし なんたって次長だし それに
今回最優秀賞を受賞しているし 来年は遠慮しますよね」
そこでようやく皆が笑った 倉元が
「おう そうだぞ 翔が言う通り 来年は遠慮しろよな
仕事でも 追い抜いていくし 役職でも追い抜いていくし
少しは礼儀を心得ているんなら 来年は倉元さん頑張ってください
とかなんとか言っちゃってさ 遠慮して下さい それでないと
オレ自信なくしちゃうぞ 本当に 今だって傷ついているんだ ねぇ」
この倉元の訴えで大爆笑になった 田所も笑いっぱなしだった
神山もようやく普段に戻り反撃した
「倉さんには遠慮しても良いが 翔 君は容赦なく潰す
かかって来たら正々堂々と受けて立とう だけどお手柔らかにな
こっちも翔より年取っているんだから」
又笑った もう笑いが止まらない 店長も田所も
そんな笑っている時に扉を叩く音がした
由香里が出てみると お寿司が来た 銀座築地の寿司屋いせ丸だった
翔と市川が手伝いお寿司を運んだ
テーブルに置き 箸を配って 由香里が帰ってくるのを待った
「店長からの差し入れです ありがとうございます」
奥村が代表で御礼を言った
すかさず田所は店長に
「店長 あれですか?」
「うん あれしかないだろう」
田所は神山にそっと耳打ちした
「先ほどの活動費ですって」
神山は頷き OKサインを分る程度に示した
(なるほど 活動費はあれで とうるんだ 勉強する事多いや)
神山は洋子とは余り話さなかった どうせ向こうはこちらの隅々まで
知っているんだし あと1週間で嫌でも毎日会わせなければなくなる
そう考えると今 がつがつとしなくて良いやと思った
神山は28日の事を気が付いたので店長に聞いた
「店長28日火曜日ですが 田所さんを連れてアルタとニーナ・ニーナに
あいさつ回りをしてはどうでしょうか」
「うん いいだろう 但書きを付けておけよ」
「はい 分りました 田所さん そう言う事で アルタとニーナ・ニーナに
あいさつ回りをします 忙しいでしょうがお願いします」
「はい 分りました 時間は何時でしょう」
「うん 明日は内藤社長忙しいから、、、ちょっと待って」
神山は立ち上がって席に戻りアルタに電話をした
内藤社長は凄く喜んでいて 今仕事が順調に進んでいる事も伝えてきた
28日の火曜日は朝9時なら空いていると言ってきたので その時間に
ご挨拶に伺う事を伝えた
それと30日木曜日アルタの辞令交付は11時になった事を言われた
内藤にスーツは着ませんが良いですねと 言うとOKですと言われた
早速店長に報告した
「今 内藤社長に電話をした所OKを頂きました 9時に伺います」
「うん 分った 田所君聞いたか 9時だ なにか包んでおくように」
「店長 お言葉ですが お土産は不要です アルタとの関係は
彼女がしっかりと秘書の役目を果たせば 喜ぶはずです
中途半端な金額では逆に足元見られ 不利になります」
「おお ワシに意見したぞ 山ちゃんが3人目だ わかったそうしよう」
「すみません アルタは巨大です だから上手に使う方法を考えます」
「おお 奥ちゃん なんか似てきたな 奥ちゃんと倉さんを足して
割ったような なんか若いからいいな 内藤さんが惚れるわけだ」
奥村が
「ええ 本当に寂しいですよ 出勤簿から消える事は しかし
余力があったらお手伝いをしてくれると言ってくれていますので
期待しています」
「だめだよ 奥ちゃん 余力が出来たら どっか遊びに行っちゃうよ」
「行きませんよ そんな それと内藤社長は明日の準備で大変だけど
仕事は順調に行っている事を伝えてくださいと言っていました
それから 30日のアルタの辞令交付は11時決定です
そのときにスーツは着ていきませんよって言いましたらOKでした」
「うん分った 田所君に伝えなさい 君の秘書なんだから
もうワシじゃないんだ 山ちゃん もう自分ひとりなんだよ
君を支えるのが秘書 田所君だいいね じゃあワシは失礼する楽しかった」
池上店長は立ち上がると 手を差し出してきたので 神山は立ち上がり
店長の手を両手で握った そして深々とお辞儀をした
そのままで居ると 店長が
「山ちゃん 何かあったら 困った事があったら 来なさい
ワシの力で出来る事は充分協力するから」
「はい ありがとうございます」
奥山以下全員で見送りしてテーブル席に座ると
「さあ 店長が居なくなって寂しいですが お寿司を頂きましょう」
神山は田所に
「スケジュールをお願いします」
「はい」
「4月28日 火曜日 9時アルタ本社 内藤一哉社長 住所電話番号は
あとで したがって 8時30分にここを出ます 田所さんも一緒です
4月30日 木曜日 11時アルタ本社 私の辞令交付
ここを10時20分に出ます 私一人」
「すみません 私もご一緒させて頂きます」
「えっ ご一緒って ねぇ課長 どうなっているんですか?」
「うん 彼女も向こうで辞令を貰う」
「えっ~ ほんとですか なんで今まで、、、もう信用できない ねぇ」
「ごめんごめん 驚かすつもりちょっとあったけど 言いそびれて ごめん」
またまた大爆笑になった
「ごめん知らなかったから それで田所さんもスーツではなくていい
あまりカジュアルだといけないが 任せます」
「だめです キチンと決めてください 神山さん」
また大爆笑 どうしても笑いが止まらなくなった
ぎこちない二人のやり取りを 奥村と倉元は 微笑ましく眺め
大丈夫 この二人ならこの仕事を乗り切ると確信した
「わかった ビジネススーツを作る 田所さんのだ」
「ビジネススーツは持っていますよ」
「いや 仕事着だから 自宅のとは区別する いいね その代わり
直ぐに着られる様 会社に置いておく事になるかな
今 どのくらいしますか?」
「安いので スリーシーズンだと8万から10万です
夏物も同じくらいです」
「分った 白いブラウスは?」
「そうですね 2万円前後だと思います」
「わかった 黒い靴は?」
「1万円位でしょうか」
「ねぇ 由香里姫 大体そんな所でそろう?」
「ええ 余るんじゃない」
「分りました ありがとう」
神山はポケットから札入れをだして 1万円札を30枚を田所に渡し
「このお金で 早速先ほどの ビジネススーツ ブラウス 靴を
揃えてください 出来るだけ高いほうがいい
足りない分は 建て替えておいてくださいね 28日に払うから
そうだ イメージが湧いてきたぞ スカートはストレートではなく
少しタイトがいい 上はオードリーヘップバーンが着ていたような
3つボタン いや 2つボタンのダブルが素敵かな ブラウスは
衿が少し大きい形で開き 靴はハイヒールがいい どうでしょう
皆さんのご意見は」
「先輩 ばっちりじゃないですか いいと思います」
「おう オレもいいと思うな」
「私もいいと思うわ 洋子 綺麗だからますます綺麗になるわ」
「そうだ 生地は多少サテンがあっても良いけど 目立たないくらいだね
そうゆうのありますよね」
「ええ あります」
「イメージは湧きましたか?」
「はい 分りやすく説明してくださったんで OKです」
「そうだ バッグ これは ハンドバッグはだめで
ショルダーバッグがいい デザインは」
神山はテーブルに指で書いてこんな感じでこんな風にと説明した
「はい わかります」
「絶対に安い物はだめだよ 出来れば貯金を一時的に降ろしてでも
買ってください 協力してください」
「ねぇ 山ちゃん さっき自分はスーツ着ないで なぜ秘書を
そんなに着飾る必要があるわけ?」
「うん 僕なりの考えだけど 主役がキチンとしているのは
どこの世界でも一緒でしょ しかし秘書がごく普通だと
主役だけではなくその会社全体まで普通に見られてしまうんですよ
この心理を逆にとって 主役はなんだこの格好はと思わせ
しかしこの大事な会議だから何者だろうと思う訳
そして秘書が洗練された姿 普通品でない物を身に付けていれば
相手はそれだけで引き そこで勝負がつき話しを優位に進める訳です」
「うん 山ちゃんの言う通りだ 俺なんかも良く出かけるでしょ
だけど相手がきちんとスーツなんて当たり前でしょ しかし
女性が素晴らしく素敵だとそこで負けちゃうね」
「おう 良いんじゃないか ちょっと待ってくれ」
倉元は 由香里とはなし 20万円をだした
「おう 山ちゃん オレも賛成だ コレ貸しておく 利息はアルコール」
奥村も財布から5万円出し
「山ちゃん 僕も出します 利息はいらないよ」
「みなさん ご協力ありがとうございます さあ田所さん
皆さんに借用金を書いて下さい 倉元さん 20万円 奥村さん5万円
神山 30万円 由香里姫 これだけ有ったらどうだろう さっき言った
高級品とまで行かなくとも結構な線でいけますか?」
「ええ 充分すぎるんじゃない でも上は高いからな でも大丈夫よ」
「田所さん 社員カードでは買わないように 正札で買ってください」
「はい 分りました」
「なぜ もったないじゃない それに会社で使うんでしょ」
「うん さっき田所さんから聞いたんだけど ある程度
自由なお金が出るんです これは秘密にしてください」
この時 洋子が笑い出した
「どうしたの?」
「だって神山さん さっきも秘密と言って自分から話したでしょ だから」
またみんな大爆笑になった
「う~ん そうだね そのお金を社員カードを使って福利厚生費を
あげる事ないじゃないですか だったら普通に買っていれば
お店もきちんと売上が伸びるわけでしょ」
「おう よく言った そのとおりだ」
「うん山ちゃんの言った事 翔や市川 ちゃんと聞いておけよ
そうなんだよ 山ちゃん だからお金は回せばみんながいい夢を
見る事が出来るんだよ 特にそうゆう性格のお金は」
「私 幸せです こんなに会社の事を思い仕事に熱中する神山さんと
その廻りのみなさんとご一緒できて 嬉しいです
先ほどの服装についても皆さんの意見を取り入れ 何とか鈴やを
引き上げようと 素晴らしいです 綺麗な洗練された秘書になります」
今度は大拍手だった 収まってから
「神山さん 私を呼ぶ時 『田所さん』ではなくて
『洋子』って呼んでください ファーストネームですから お願いします」
ここでも皆拍手した
「そうですね これからファーストネームで呼びます
それからパソコンのスキルはどうですか?」
「ええ会社で使う程度でしたら なんとか」
「分りました 市ちゃん」
「あいよ なんだ」
「あのさ えーと あの 洋子さんのパソコンスキルを調べてくれ」
「うん どの程度?」
「洋子さん キー入力のブラインドタッチですが出来ますか?」
「すこしですが」
「市ちゃん どのくらいの速さか 調べて それとエクセルの簡単な
四則計算 簡単な表計算 ほら市が普段使っているのでいいや
それからワード あとはプレゼンする時に エクセルを使っているけど
そこらへんかな 頼んだよ」
「お任せ」
「では洋子さん 連絡を取り合い 市川にパソコンスキルを
調べてもらってください お願いします」
「はい 分りました」
「それから市ちゃんに頼みがもう一つあるんだ 以前 ほら女の子の
管理をPCで行っていただろう」
「なんで そんなここで言うの」
「良いじゃないか 洋子さんはお見通しだよ」
みんな大爆笑だった 特に洋子は笑いが収まらなく涙を流していた
「そこで ほら何月何日の誰と会った と言ったセルをクリックすると
彼女のそれまでの会話内容が別ウインドーで出てきたじゃないか」
「うん 分るけど そんなに詳しく言わなくてもいいじゃないか」
「うん それって ちょこって変えれば対会社や対会社個人に
変える事は可能だよな」
「うん 可能だよ なんで」
「うん 洋子さんに大事な時メモをとって貰うけど その手帳の
ままだと生かしきれないんだ 折角のメモが そこで市の女の子の
そうゆうリストを作っておけば 次回会うときの強力な武器になるでしょ
あの時はこうゆう発言をしたとか 会社はこうだったとか
履歴が一覧できれば なにかつかめるし ヒントが有ると思う」
「わかった そうだよ 僕も山ちゃんの言う通り 履歴をみて
その子の弱点を探した うん協力する 作ろう」
「それって まだ残っているだろ」
「まさか 見せないよ 嫌だぜ」
「だから 洋子さんはお見通しさ さあ持ってきて 見せて」
「嫌だよ 絶対に」
神山が洋子に耳打ちをした 時々驚いて聞いたり頷いていた
市川は 以前の離婚騒ぎをねたにされているのか不安になった 洋子が
「市川さん 会社をどう思っていますか」
洋子は笑いながら
「奥方にまた怒られたくないでしょ どうですか?」
市川はきょとんとして
「ええ もうこりごりですから」
「それでしたら これは上司の命令です 言ってみれば会社命令です
したがって」
もう洋子は堪えきれずに大笑いをしてしまい
「その女性のリストを 直ちに提出しなさい でないと停職3ヶ月です」
またまた大爆笑で 洋子も自分で言っていて笑いが止まらなくなった
横に座っている由香里も涙をながし笑っていた
奥村課長も笑いながら
「俺もそんなに凄いのなら使って見たい 見せてくれ おい停職だぞ」
市川はさっきまで明るかった顔が曇ってきて まるで犯罪者扱いをされ
がっかりしていたが 事が会社の為となれば恥じを晒してもいいかと思い
自分のデスクからパソコンを持ってきた
PC立ち上げてエクセルを更に立ち上げファイルを開くと
神山が以前みた女の子管理リストと書かれたスケジュール表が開いた
皆がパソコンを覗き見る中
「さあ 操作して 例えば 10日あこちゃん会う そこをクリックして」
市川は 言われた通り操作した クリックすると別なウインドーが開き
出会いから 会話内容 好き嫌い などなど 履歴が一目瞭然で分る
これを導入すれば 僕だけではなく洋子さんも
困った時なんか 何かを掴めるかもしれない どうですかと聞くと
「ええ お願いします しかし市川さんまめですね
これで女性に使ったお金 大変だったでしょ」
「ええ 今考えてみれば はい だけど全部知っていたんですか?」
「いいえ 何も知らないわ こんなに女の子とお付き合いしていたなんて
今 このPCで分りました 早速人事課に提出しましょう」
「もう 勘弁してくださいよ さっきからもう心臓が爆発寸前です」
「神山さんからは何も言われてないわ ただ私が感じた事を言ったのよ」
「えっ じゃあ 完全に引っかかったんだ それって詐欺でしょ もう」
「市川 しょうがないだろ 負けだ 相手は泣く子も黙る田所さんだよ
その人に勝てるわけねーじゃないですか ねぇ倉さん」
「おう そうだぞ そこに居る由香里姫と洋子ちゃんは 才色兼備で
銀座店の2枚看板だった 洋子ちゃんは怖かったな ほんと奥ちゃんが
言ったように 泣く子も黙る洋子 だったからな それで婚期を遅らせ
今でものんびり楽しく独身をしているのさ 由香里姫は
そろばんの鬼と言われ 本社会計が来る前は必ず残業で汚点を見つけ
呼ばれ その場で納得いくまで修正をさせられたそうだ そう意味で
由香里姫も怖かった存在で 婚期を逃し洋子ちゃんと一緒に楽しんでいる」
「まあ倉元さん そんなに怖くないですよ 優しかったですよ」
「そうですよ 私だって好きで嫌われた訳じゃないですからね ねぇ」
奥村が
「まあまあ 兎にも角にも分った スケジュール管理というか
顧客管理リストは後日 神山部長監修で作ってくれ いいね市川君」
「はい 停職より嫁に言われるのはもうこりごりですから」
「しかし山ちゃん記憶力いいね 人のパソコンの中身を覚えているなんて」
「だって男はいくつに成っても女の子に興味持つでしょ 課長だって」
「うん まあな」
「だからこのシステムを覚えちゃったんですよ いいなこんな事できてって
メモは必要だけれど 一覧する時はこちらの方が断然早いし
比較するのにもページをめくる必要が無いし そこですね」
「うん そうだな」
「洋子さんは見てどう思われました」
「ええ 戦略を立てる時とかに非常に有効な武器になりますね」
「おう 奥ちゃん 新しく戦士が誕生したぞ 喜べ」
「ええ 頼もしいですね 田所さん お願いしますよ」
「はい」
奥村はテーブルのお寿司が無くなったので
「ようし 仕事も順調だしお寿司が無くなったので 2次会に行きます
田所さんは どうしますか?」
「はい 神山さんが 来なさいと言われれば行きます」
「神山部長 どうされますか?」
「う~ん もう直ぐ9時でしょ 帰って貰っても良いんじゃないですか」
「では 決定 田所さんは帰ります 後は 市川か」
「ええ 呑めないんで それに嫁さんが、、、」
「分った 以上 帰り支度をしよう」
洋子が突然立ち上がり 怒った様子で
「私 行きます」
きっぱり言うので みな唖然とした
「神山さん 見損ないました あれほど私を心配して下さるんでしたら
こうゆう事もありきと 何故言ってくれないんですか
なんか 見放されたようで 寂しいです 私 行きます」
一同 唖然としていると 倉元が
「おう そうだぞ これからの準備だろ 心の 誘ってあげろ」
「はい 洋子さん 付いて来なさい しかし時間が許す限りでいい」
「よお どこで覚えた そのセリフ かっこいいぞ」
市川が 野次を飛ばした
また一同大爆笑をした 怒っていた洋子も笑ってしまった
「はい 分りました 時間が許す中 神山さんに付いて行きます」
奥村が 仕度をして早く出ようと皆に言った
神山が携帯でアルタの高橋に電話をした
「神山です お疲れ様です どうですか床は?」
「やあ 山ちゃん大丈夫だよ それより特進おめでとうございます」
「ありがとうございます でも大変ですよ そこでここの次長室
だれが観るの?」
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