4月20日 月曜日 夜
「やあ 遅くなって ごめんごめん」
「大丈夫よ 高橋さんと色々とお話をしていたから」
「やあ ようやくお出まし」
「うん すんなり出られなくて」
「何方と一緒だったの」
「うん うちの副社長だよ」
「副社長がなんで 神山さんと?」
神山はお昼 副社長室で起きた出来事を説明した
「あ~ 私も食べたいな 大好きよ~」
「わかった 電話で聞いてみる」
神山は駅前寿司屋に電話をしてまだ残っているか聞いた
大将はまだ大丈夫と言った すぐ行くので残して欲しいと伝えた
「大丈夫だよ まだ残っているって」
「わぁ嬉しい」
「ねぇ孝ちゃん 今日の終わりって何時頃になる?」
「うん この調子だと あと1時間か2時間でしょう」
「そしたらさ 待っているよ」
「でもいいの?」
「鯖寿司が待っているよ」
「分った 鯖寿司を食べに行く」
神山は祥子に会社で購入した珊瑚の砂などを見せ棚板に実際に飾ってみた
周りに祥子のバッグや自分のバッグを置いて感じを掴んでもらった
「ふぁ 素敵 綺麗でこの砂が珊瑚だから奥深い色を出しているわ」
高橋も近寄ってみて綺麗だと言った
「そうすると 7月に入るとこれ使える?」
「うん 7月8月は白い貝殻を置いて 9月、10月は流木を考えた
余り季節感は出さないけど何処かで 例えば色とか形とかで
つながるように関連付けとけば 見る人も違和感無く観られるよ
肝心なのは これが主役じゃないから そこが難しい」
「そうですね 先ほど副社長があのルーバーをみて
でしゃばっていなく優しい光を出している いいな と言われてましたよ」
「副社長のお墨付き 凄いわ」
「まあ そんなとこです さあ片付けましょう」
「は~い でもこのグラス高かったでしょ」
「うん 一個5000円だったよ」
「え~ そんな出ないわ」
「そこで 領収書は5000円で これだけでいいよ」
神山は鈴やの領収書を渡した
「後は?この珊瑚とか」
「僕からのプレゼントさ 開店お祝いさ」
「いいの ほんとうに?」
「いいさ」
「久保さん もう直ぐ理事ですよ 大丈夫ですよ 今だって
着ているもの違うでしょ 靴も」
「あっ そうだ なんか違うなって思っていたの 格好良くなったわ
前より 素敵 そうしたらお言葉に甘えます」
「うん いつ分ってもらえるかと思っていたんだが 残念でした」
「山ちゃん いいじゃない それだけ着ている物じゃなく中味で
判断してくれている訳だから」
「うん 言う通りだ では孝ちゃん お先に」
神山と祥子は片付けを終え店を出て寿司屋に入った
女将が奥を案内し何も言わず戻った
「ねぇ 次長になるとどうなの?」
「どうなのって?」
「うん 毎日こうやって逢えなくなる?」
「うん 分らないな ほんと しかし分っているのは
今後 構想範囲が広くなる事は確かだ それに毎日上原とはどうかな?」
「そうよね 御殿場アウトレットが中心になってくるもんな 寂しいな」
「そんなこと言ったて 僕だって今のままで仕事を続けられれば
安定しているし 仕事しやすいよ しかしみんなにある程度認められ
乗り越えなければ 負けだと思うんだ」
「そうよね その通りだわ だけどあなた たった3週間ちょとで
凄く環境が変って 私心配しているの だって逢ってから1週間で
部長でしょ 来月は理事 それも副社長直轄でしょ
なんか 私 だんだんと寂しくなるの 特に今日秘書の方と来られた時
私の手元から離れていくような不安が湧いてきたわ」
「それは表面を見ていれば そう映るよ しかし 今回これから
やって行かなければいけない事は 昨日も話したように
彼女を前面に出し 商談相手に威力をぶつけて行かないと 負けなんだ」
「そうね 昨夜のこと 今日もちょっと考えていたの
当たり前よね女性にとっては 知らない間に媚びを作って商談したり
女を武器にしているのよね」
女将が 鮮魚の盛り合わせとしめ鯖 ビールを運んできた
頼んだ事が無い あぶり焼きや照り焼きも来た しかし量が多かったので
「こんな食べられないよ」
「はい アルタの高橋様が後少しで来られますと電話がありまして
それで毎回同じものだと如何な物かと思いまして作りました」
「そうですよね 普段頂かないもん」
神山と祥子はあぶり焼きや照り焼きを食べた 普段余り食べないので
美味しかった 祥子も照り焼きを食べ喜んでいた
「どう 美味しい?」
「ええ ここの新鮮だから凄く美味しいわ」
「このしめ鯖を食べたら 驚くよ」
「頂きます」
祥子は切り身を摘んで口に運び食べてみると
「ふぁ~ なにこれ食べた事ないわ 油も美味しいし 幸せよ」
「ははは みな美味しい物を食べると幸せになるんだ」
「だってあなただって同じでしょ」
「だから 幸せだよ」
そう言っていると女将がキスや野菜の天ぷらを運んできた
おまけにゲソのから揚げも付いて来た
「ふぁー美味しそう 観ているだけでおなかが一杯よ」
丁度高橋が店に入ってきた 女将や大将に挨拶をして
「済みません遅くなって」
「えっ 早くなってでしょ ねぇ久保さん」
「お疲れ様です 美味しいですよ」
女将がビールとお野菜の天ぷらを持ってきた 神山が
「和風居酒屋兼寿司屋みたいになっちゃったね」
女将はニコニコして戻って ビールを運んできた
「では 今夜は副社長に誉められたで乾杯」
「孝ちゃん そうやって領収書に書くんだ」
「うん でないと理由がつかないじゃん」
「そうだね」
「ところで どうでした 時田さんは」
「うん 涙流して喜んでいた 食べながら美味しいって言いながら」
「そうだよな 実は以前ゴルフの帰りに寿司屋に寄ったんですよ
そこでしめ鯖があったので 大好きだと言われたので注文したんです
しかし一口食べて もう箸を進めなくなったんです 不味かったんですね」
「そんなことが有ったんだ」
「私だってこんなに美味しい しめ鯖ははじめてよ」
「そうでしょ だから魚好きにとってはお宝を頂いているみたいですね」
「そうだよね 僕自身あまりしめ鯖しめ鯖と騒がないほうなんですよ
たまたま大将に聞いたら逸品があるよって言われたから食べてみたんです」
「普段言わないですよね よっぽど好きでないと」
神山ら3人はおしゃべりしながら天ぷらや魚を食べていった
「どうだね 杉田君ここは 居心地がいいだろう?」
「はい やっぱり偉くなって こう言う処に来たいです」
「まあ 頑張れば評価はあとから付いてくる 山ちゃんも言っていただろ」
「はい 頑張ります」
時田と洋子 杉田はこじんまりした小料理屋に来ていた
お客は一日5組までしか居れず営業している
十二畳ほど部屋は月見窓があり外には桜の古木が覗いた
ほのかな月明かりが照らし静かな夜だった
ここは時田の隠れ家で知っている人間は運転手だけだった
この離れは部屋の外に化粧室がありお会計もその離れの玄関で
行われ そこから車に乗れるようになっている
殆どと言っていいほど他の客と鉢合わせしないようお店でも
気を配っている
注文聞きは最初の飲み物のことだけで後は会席のように
お客の食べる早さに会わせ出てくる
先ほどお銚子が運ばれた時 お酒が早く無くなるので 時田が
「若いのが居るから 多めに持ってきてくれ」
と頼んだくらいで女将は滅多に部屋に来ない
無くなったら持ってくるまで待っていなければいけなかった
杉田も始めての事なので緊張をし お酒が入っているのか分らなかったが
確実に躰に廻っていて 自身が気が付いていなかった
「副社長のように偉くなると 何時もこう言う処来れますか」
「うん 来れる」
「頑張ります すみません トイレに行って来ます」
「うん 部屋を出て右側だ」
「はい 分りました」
杉田が出て行くと時田が
「いい 芯が強い子だ しかし自分でも言っているように
少し 甘えん坊だな どうかな洋子 上を付けるんではなく
下を付けては」
「ええ 私もそう思います 神山さんも上野の時は一番下でした
成績はそれなりですが 銀座に来て 部下を持って急に
ほんと急に成長しました 杉田君も部下を付ければ あのいい性格を
もっと前面に出す事ができると思います くすぶっています」
「そうだな あの子は燻っているな 大爆発をさせよう」
「そうですね ある程度成長するまで 奥山さんはあそこに
居るのが条件ですね」
「そうだな うん 30日に間に合うか 誰か居ないか」
「ええ 一人美術の若い男の子が居ます
例の山城さんが亡くなって募集をかけたとき応募してきた人なんですが
池上さんが 上野から神山さんを移動させてので
配属を美術にさせられて 本人は最初は辞めると言っていましたが
今年に入って 腕を上げてきていると聞きます」
「わかった 携帯で 秘書室長に電話をしてくれ」
「はい しかし携帯番号は存じ上げませんが、、、」
「おお そうだった 洋子はワシの秘書ではなかった ごめんごめん」
時田は手帳を出し 番号を読み上げ洋子に掛けてもらい
「おお ワシじゃ 遅くに悪いが」
「はい こんばんわ 中村です」
「おお 銀座の美術で若い男の子で屋敷って居るんだ」
「はい」
「その子を銀座店の催事課に移す」
「はい 分りました」
「それでだ 池上君にはこれから話す 人事関係は任せた
山ちゃんと同じ30日だ わかったっな」
「はい 30日 9時30分 銀座店人事 命課で宜しいですね」
「うん」
「職級は」
「確か入社2年だから 主任は早い そのままでいい」
「はい 分りました 早速明日手配します」
「うん 頼んだぞ 極秘じゃ 美術の部長にはワシから伝える」
「はい 分りました」
電話を切ると 先ほどのように 洋子に番号を伝えて
「ワシじゃが」
「こんばんわ 副社長 どうされました」
「うん 実は催事課に若いのを入れる」
「えっ?」
「うん 催事課も山ちゃんが出て大変だろう」
「ええ」
「そこでだ 例の山城君が亡くなった時募集をした屋敷君が居るな」
「はい 美術です」
「その子を催事課に入れようと言う事さ」
「大変ありがとうございます 私もどうしたらいいか困っていました
屋敷君も昨年は落ち込んでいたんですが 今は腕を上げてきています
しかし 美術が出しますかね?」
「大丈夫だ ワシが部長に話しする 明日 君も同席してくれ いいね」
「はい 明日は出かけませんので店に居ます」
「わかった なるだけ早く連絡する」
「はい ありがとうございます」
電話を切って暫くすると 杉田が戻ってきた
「遅かったじゃない 大丈夫?」
「はい 大丈夫です それよりここの敷地は広いですね」
「うん?」
「ええおトイレが無いんですよ 右側に それでそのまま進んだら
外に出たんです きっとその先に有るんだろうと思って
探したんですが 副社長済みません 間に合わないので
林の中で 用をたしました もっと余裕をもって探せば
こんな事に ならなかったんですが 済みません」
「おお そうだった ごめんごめん ワシが悪かった この部屋は
出て左側 そこにある ごめんワシが悪かった」
「そうだったんですか でも広いです ここの敷地は
この部屋に帰ってくるのも不安でした」
「うん」
「ねぇ杉田君 交換条件しない?」
「なんですか?」
「実はね ここのお店 副社長の2号さんがいらっしゃるの
勿論 奥様はご存知よ だからこの事を誰かに話してもらっては困るの
貴方の口が堅いことは良く知っているわ だから知っているのは
ここに居る3人だけなの わかる?」
「はい」
「そこで 黙っていてくれたら 貴方に凄いプレゼントがあるの どう?」
「あの~ 小谷さん以外にですか?」
「そうよ どう 喋らない自信ある?」
「ええ できます」
「よし ワシはしっかり聞いたぞ 副社長からの命令だ
ここに3人で来た事 2号のこと 全部忘れてくれ いいな」
「はい 分りました 命令ですね 絶対に喋りません」
「おお 頼もしいな」
「偉くなると2号さんも持てるんですか?」
「おおそうじゃ だから早く偉くなって 2号でも3号でも持ちなさい
もし 誰かがここの事や2号の話が出たときは君は左遷だ いいか」
「はい 分りました」
「よし それでは綺麗に片付け帰るか」
「副社長 今夜はここではないんですか」
「ははは ワシも 君のようにもてて困っている 分るな」
「はい」
そう言って 呑む物は呑んで 片付け始めた
時田たち3人は玄関を出て 車に乗った 杉田はどこを走っているのか
分らなかったが 人に話すなという事なので覚えなかった
人通りが多くなり千駄ヶ谷の駅に着いた
杉田と洋子はここで降りて 洋子は車に乗って杉田は駅の改札に向かった
神山達3人は野菜やキスの天ぷらも普段余り食べていないので箸が動いた
「山ちゃん アルタの常務でしょ おめでとうございます 遅れました」
「えっ常務?」
「ええ久保さんも驚かれたでしょう 山ちゃん常務ですよ」
「ねぇどうなっているの?」
「うん 今日昼にある出来事があってさ それでです」
「但し書きがあるんです 意匠担当常務です これには訳がありまして
常務以上は株主総会で決められます しかし山ちゃんのこの担当が付くと
社長が独断で決める事が出来るんです だから名簿には載りますが
そう言う部分で正式でないわけです しかしお給料は
常務のお給料が出ますよ 月に確か200万円だったと思います
勿論 税込み金額です その他に自由に使えるお金が自由費がありまして
毎月お給料と同額 200万円出ます これは本当に自由に使えまして
レシートもいらない性格のお金です ただ常務以上になると
会社経費で何かを買う事が出来ないんです 例えば僕らが
PCを購入する場合 会社経費で購入なんですが 山ちゃんは
その自由費で購入しないといけないんです あとタクシーチケットも
山ちゃんが用意しなければいけなくなります だから結構
自腹切る人も多いですよ」
「へぇ~ そんなに有っても」
「ええ だってゴルフに行けば10万はするでしょ4人で そのあと
車代としてタクシーチケットを使ったら そんなもんじゃ済まないでしょ」
「そうだね その自由費は誰が貰うの?」
「ええ 本社給与で 秘書の方が受け取る原則になっています
だから山ちゃんの秘書の方が受け取ります
秘書ですがアルタからは付きません その代わり鈴やさんの
秘書の方がうちの秘書も兼ねると言う事です」
「うんその話は聞いた」
「担当部長で役職は担当常務 神山 龍巳 専属秘書 です
お給料は 確か100万円だったと思います」
「彼女 喜ぶだろうな なんせ 化粧品も全部買え変えたし
結構お金掛かるもんな」
「そうよ お金掛かるわ だってこれからお付き合いする人たちって
ある程度のところで会食されるわけだから 幾らあっても足りないわよ」
「ええ 久保さんが言われる通りですが 今回こちらでのポジションは
余り相手を意識しない所なんです はっきり言いますと
接待は殆ど無いと思われます ただなんだこの人間はと 言われないよう
色々な所へ行って頂き 見聞を広め それで仕事を納めていく
例えば ワインでもピンキリがありますが ある程度 上級のワインなど
口に含んで 会話が成り立つ そう言う部分があると思います
実際の仕事は仕事でありますが 先方と上手く話し優位に纏めていく
事も重要な仕事です 鈴やさんで食堂を出されますよね」
「早いね 情報が」
「ええ 多分私が担当になります で そのデザインコンセプトなど
先方と話していく間に その食べ歩きですかね 情報が必要に
なってきて 生かされる訳なんです ですから自由費があるようで
無いと思いますよ 仲間と一緒に試食をしたり 全部出す訳ですから
直ぐに飛んじゃうじゃないかなと思っています」
「そうだね こうやっていつも同じものを同じ人と食べるわけには
いかないし 大変だね」
「そうですね だけど内藤が助けてくれますよ 大丈夫ですよ」
「一つ思っている事があるんだ」
「何ですか」
「うん 絶対内緒だよ 実はゴテンバ グランド インの地ビールが
あるでしょ その地ビールを御殿場アウトレットで展開するわけさ
そのとき アルタが入って宣伝とかをするわけ 権利を取るわけ
そうすると 他のお店では相当のロイヤリティーを払うわけです
どう いけるでしょ」
「うん 素晴らしい 内藤に話すね いいでしょ」
そう言い高橋は内藤に電話した 色々と話 頷き終わった
「内藤社長 大喜びだよ そうすれば 椿さんのところへ5%
行っても うちはぜんぜん儲かる話しだって 手土産が
一杯過ぎて大変じゃない」
「うん 地ビールだけではなく 地酒も考えたんだけど
そこまで手が廻るか分らないからね 目の前にあるところからと思ってさ」
「神山さん 素晴らしいわ 伊達に御殿場に行っていないのね」
「うん というよりやはり美味しい物を食べたら記憶に残るでしょ
それを又 食べたいから そこに行く訳だから活性化に繋がるよね」
「そうですね でもこのしめ鯖は これでお終い そこですよね」
「うん そうしたら横浜の崎陽軒のように 真空パックが出来る物とか
しかし 真空パックは味が落ちるしね~ 難しいね」
高橋が
「どうも済みません 硬い話しになちゃって」
「でもたまにはいいでしょ」
「私も勉強なりました」
3人それぞれ勉強したみたいだった
「山ちゃん 久保さん 久しぶりに早く帰ります」
神山達は大将に挨拶をして 寿司屋で別れた
神山は祥子に
「今日はこのまま帰ろう」
「そうね 私 明日会社終ったらそのまま名古屋に帰るから
あんまり遅くまで遊べなかったの だから良かったわ」
「そうだよな 多少の仕度もあるだろうし」
「ええ」
そう言ってまだ肌寒い夜道を歩いた
朝も静かだが夜は更に静かだった
部屋に戻ると祥子が 抱きついて来た
「ねぇ そのシャツも戦略の一環?」
「まあそうだね どうして?」
「いえ 凄くお似合いよ Tシャツも素敵だけど
このシャツ着ると少し偉くなったみたい」
「ありがとう うれしいよ」
「そうしたら ちょっと着替えてくるよ」
「は~い 待ってます」
神山は部屋に戻ると着替えをして FAXを見ると田中から
【神山部長 こんばんわ 今日はありがとうございました
大変助かりました 明日午前中に次長室で詳細について
打ち合わせをさせて頂ければ幸いです
尚 今日決定した図面も送らせて頂きました
詳細はPCのメールに添付しました
コピーで出して頂ければ わかると思います アルタ 田中】
神山は後で見る事にして祥子の部屋に入った
祥子は着替えを済ませルームウエア姿で神山を待っていた
神山は祥子を抱き寄せると
「ごめんなさい まだ だめなの ほんとごめんんさい」
「うん 仕方ないよ 休み無しで働いているから体調が崩れたんだろ」
「ほんとごめんなさい」
「わかったよ」
「ねぇ 久しぶりに バーボンでも呑もうか」
「おお そうだバーボンがあったね 呑もう」
「さっき高橋さんも言っていたけど 毎日こうやって過ごせないのね」
「ハハハ しかし一時でしょ それに1ヶ月も会えない訳でないし
考えすぎだよ 祥子だってこれから忙しくなるし 御殿場の
話が進めば ここに居る時間すくないだろ」
「そうね 御殿場アウトレットは何時から動くの?」
「うん アルタで30日に辞令が交付される それから打ち合わせが
始まって そうだな 祥子達は実際に動くのは来年だと思うけどね」
「そうなんだ」
「うん 敷地の話も聞いていないし まだぜんぜん分らないよ 僕は」
祥子がバーボンを作ってくれたので乾杯した
「美味しいわ だけど不安があるの」
「なに」
「うん 美味しいの色々なところで食べると
私の食べて貰えなくなるような気がしてるの」
「そんな事は無いでしょ 普通に食べるよ」
「ほんと 食べてくれる?」
「ああ 大丈夫だよ 心配しなくていいよ それはさ どこどこのが
美味しいと言ったて 祥子と違うわけでしょ やはり祥子は祥子でしょ」
「ありがとう 信じていい?」
「うん 勿論だよ」
バーボンに合うのはチーズと言って チーズを用意した
「さっきの 飾り物の珊瑚だけどきれいね どこで買って来たの?」
「うちの屋上にある園芸だよ」
「今度 7月に入ったら 使ってみようかなって思ったの」
「そうだね 綺麗だよ 道路側の棚に飾るとか」
「そうなの あちら側を意識しようと考えたの さっき」
「うん いいじゃん あそこに少し余分に買ってあるから
余ったら 持っていって試してみればいいよ」
「うん そうしてみる 助かったわ」
「そうだ 一箇所だけ 銀座とまっるっきり一緒に出来ないかな
道路側の棚板一枚 いや二枚を銀座とまるっきり一緒に飾り陳列する訳
どう言うことかと言うと イメージを一緒にしておくと親近感が沸く
上原で見て 銀座で見るでしょ そうすると どっかで見たなって
思うでしょ 店舗だって同じ理由だよ あそこで見て あっここにもある
私の町にもあるって だからイメージの統一は大切なんだ」
「そうよね わかったわ どこがいいか考えてみる」
神山と祥子は楽しく呑んだがそろそろ24時になるので
「そろそろ 帰るよ 12時近いし 明日の仕度もあるでしょ」
「ええ ほんとごめんなさい 朝は起こすわ」
「うん じゃあ おやすみ」
二人は軽くキスをした 神山は部屋に戻って 明日の資料を確認した
アルタの田中からのメールを開いた
今日 打ち合わせした事が書かれていた
よく見てみると 記入もれのところがあったので チェックした
チェックしていくと書き込みをしたくなったので PCの図面を
プリンターで出力した やはり大きいと分りやすいし見やすかった
図面に書き込みやチェックをしていたら25時になった
今日一日 地球がひっくり返ったようで頭の中がごちゃごちゃだった
神山は明日使う資料を鞄に詰め ベッドにもぐった
4月21日 火曜日 快晴
神山は6時30分に目覚まし時計で起きた
先日横浜から持ってきて全然使っていなかった
目を覚ました神山は様子が可笑しいと思ったが 上原にスイッチが入った
祥子が起こしに来るのに時間が有ったので
昨日チェックした次長室の図面をもう一度確認し 落ち度が無いので
シャワーを浴びると 熱い湯が躰にしみた
何か忘れていると考えたが 分らないので冷蔵庫からビールを出した
気が付きビールを入れておく冷蔵庫を忘れていた 神山は 冷蔵庫を
造り付けの棚の中に入れてしまおうと考えた
そのことも図面に書き入れた
すべて見終わると7時過ぎになっていた
今日のスケジュールを確認すると
昨日 田所洋子のPCスキルを市川に頼んだが時間が
無いので出来なかった これを是非行ってもらう
後は市川のスケジュール管理がどこまで出来ているか確認
神山は大体こんなもんだろうと思った
一通り仕度が出来たが シャツの洗濯をどうするか
Tシャツを着ながら思った どうせ今は出かける機会が少ないから
このままで すこし活動費や自由費が入ったら買い足して
揃えていけばいいと思った とりあえずシャツをバッグに入れた
部屋のドアホンが鳴ったので出てみると祥子だった
「おはよ 早いわね」
「うん 気が張っているのかな」
「朝ご飯出来ていますよ」
「そっちも早いじゃん」
「ええ 仕度が有ったから早く起きたの そしたら余り無かったわ」
「うん直ぐ行く待ってて」
神山は祥子の部屋に入ると 昨日のように和食を用意してくれていた
「おお 和食だ 嬉しいね朝からこんな豪勢で」
「何をそんなに誉めているの?だめよ なにも出ませんからね ふふふ」
神山は冷蔵庫からビールをだしテラスに向かい呑んだ
「やっぱり朝は太陽が見えないと 朝らしくないね」
「そうね 特に今朝のように快晴だと気分が違うわね」
「うん 僕は起きても 太陽が見えないから つまらないしね」
「さあ 頂きましょう こっちに来て」
祥子は神山を呼びほほに軽くキスをした
「私もビール呑もおっと」
祥子は休み無しで働き娘の友子ちゃんと会える喜びで一杯だった
実家に僅か一日しか居られないがそれでも嬉しいのだろう
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