2013年4月13日土曜日

薔薇 6 - 31 Vol. 2



部屋に戻ると神山の携帯がなった
「はい 神山ですが」
「先輩 こんばんわ 今良いですか」
「うん どうした?」
「ええ 今夜来てくれると思っていたんですよ
どうして来てくれないんですか」
「えっ だって 翔の部下出来ただろう いいじゃないか」
「ええ でもわからない事が有って」
杉田は解らない事を神山に聞いたが 現場じゃないと解らないと言い出し
「そうしたら 鈴や装飾の責任者に聞けば大丈夫だよ 
赤坂は 責任者に任せておいて 何か問題がでたら翔がジャッジすれば
殆ど大丈夫だよ がんばれよ」
「先輩 今何処ですか 来てくださいよ」
「駄目だ 今 美女に囲まれて逃げられないんだ じゃあね」
神山が携帯電話を切ると洋子が
「翔君?」
「うん 甘えてきたから 突き放した」 
「ふふふ 美女に囲まれて逃げられないですって うそばっかり」
「ほんとでしょ」
「美女に相手にして貰えないでしょ ねえ 亜矢子さん」
「そうそう さっきだって私たちが相手をしてあげたんですから
今後 間違わないようにね 神山さん 幾ら男に強くても
からっきし 女に弱いのね ふふふ」
「もう わかったよ 苛めなくてもいいだろ」
神山が少しぶっきらぼうに言うと
「ねぇ あなた カラオケがあったのよ 行きましょうよ」
「そうだね いこう」
3人はフロントでカラオケルームの申し込みを済ませビールを
買ったりしてカラオケルームに行った
元気な女性達がどんどんと曲を予約し神山は予約できなかった
ようやく神山の予約が出来き歌った曲は今の心境と一緒で
勝手にしやがれだった
女性達も立ち上がって一緒にリズムを取って踊っていた
気持ちよく歌い終わる時 部屋の外で山口 宏史がこちらを観ていた
神山は洋子にボリュームを下げるよう指示してドアを開けると
山口 宏史だけでなく先ほどの3人も一緒だった

「神山さま 今フロントにこの手紙を預けに行きました所
カラオケルームにおられるとお聞きして 伺いました
先ほどは大変申し訳ござませんでした これはお詫びの気持ちです」
山口 宏史は手紙のほかに封筒を別に差し出したが
「何が入っているかわからないが 先ほど約束した誓約書があればいい」
神山はきっぱりとその封筒を突き放すと 女達が
「済みませんでした 私たちの上司が血迷った事をしてしまい
本当にすみませんでした」
神山はやったと思った 美味しい情報が向こうから飛びこんで来たのだ
「そうでしたか 貴女達の上司ですか」
「ええ 皆でお金を出し合ったんです だから受け取ってください」
「そうすると この封筒には君達のお金も入っているんだね」
「ええ 済みませんでした 会社には御内密に」
神山はカチンと来て山口 宏史に
「自分の不始末なのになぜ女の子を巻き添えにする その根性が嫌いだ」
「はい この子達も少しでもって言ってくれたので
甘えて 本当に済みませんでした」
「いや これはただじゃ済まない わかったそのお金は女の子に
全額渡しなさい 役に立たない上司のためにお金を出すなんて
貴方の根性が汚すぎる そんなお金は受け取れない」
神山はきっぱりと言い 手紙を読んで見ると指示した通りだったので
「いいね 二度と会社の女の子に手を出すな わかったか 
今夜 これからでも帰れる 女の子たちは直ぐに帰りなさい」
「はい 分りました このお金で帰ります」
神山は女の子の名前を聞いた 一人は鶴見久美子でぽっちゃりして
いかにも遊んでいる感じだった もう一人は石田加奈で見た目は
しかっりしていそうだったが 遊んでいるのか艶がなかった
「お願いします 会社には言わないで下さい」
「うん 約束するが 君たちもこんなおじさんを相手にしないで
年相応な相手を選びなさい でないと通告する わかったか」
「はい 分りました ほんとに済みませんでした」
「うん では帰りなさい いいね」
4人はお辞儀をして出ようとした時に神山が山口 宏史を呼んで
「高柳さんて女性は知っているよね」
「ええ 秘書課で今度副社長と結婚する美人でしょ」
神山はまたもやラッキーと思い
「いや ありがとう 綺麗な方だと思っていましたがご成婚ですか」
「ええ 社長の息子なんですが少し遊びが酷くて社長が
昔 囲っていた女を迎えるそうですね 酷いですよ まったく」
神山は自分がいましている事を棚に上げてよく言えたものだと感心した
「そうだったんですか 大変ですね」
「ええ わたしらも 今後会社がどうなるか予測つきません」
「まあ 頑張ってください では」

神山はそこで話を打ち切って 洋子や亜矢子と歌を歌い始めた
亜矢子はこの事については多少知っているし
洋子も神山から資料を集める事で知っていたが
二人の女性は話が繋がらないのでそのままにして歌っていた
神山は女性達が歌っている時手拍子を打ちながら作戦を練っていた
亜矢子がユーミンの歌を歌いだした時 神山は祥子が頭をよぎった
洋子はそれを見逃さなかった
「ねぇ あなた 今 他の女の事 考えているんだろう」
洋子は少し酔いが廻ってきたのか言葉が乱暴になった
「ううん 仕事だよ この曲とマッチ出来ないかと思ってさ」
「ふ~ん わかったよ 他の女の事 考えたらただじゃすまないよ」
「わかった していないよ」
亜矢子が歌い終わると洋子がユーミンの歌を歌い神山を観察していた
神山は気をそらす為に亜矢子と話し始めた
皆が歌い終わると24時を廻っていて
部屋に着くなり3人で布団のなかでくっついて寝た
洋子と亜矢子が抱き合って寝て 神山は一人外れて寝た
3人ともアルコールが効いていて直ぐに寝息が響く静かな夜になった

5月2日 土曜日 快晴
神山が露天風呂に入っていると洋子と亜矢子が起きて来て
「おはようございます まあ 素敵 入らせて」
3人で朝日が昇っていく様子を見ていた
「良かったわ お天気になって」
「そうね 大事なパーティーでしょ 私も応援しているわ」
「ねぇ 亜矢子 熱海で又やるか」
「ええ いいわよ 私は持って来ているから」
「そうすると 洋子の分をあのデパートで買って穿き替えればいいね」
「貴方も持ってきたの?」
「当然でしょ」
洋子が
「分ったわ あの赤いショーツでしょ」
「そうよ あなたなにも言っていないの これからはちゃんと
教えてあげないと可哀相よ もう隠さなくていいんだから」
「うん わかった」
洋子がこちらをにらみながら おちんちんをつねってきたので
「ごめん 優しくしてよ」
今度は亜矢子がつねって洋子と笑っていた
神山も女性達も昨日の疲れが残っていて交わりは無く
楽しくおしゃべりを楽しんでいた
洋子が用足しに出ると神山が
「しかし 昨夜 洋子の変身振りには驚いたよ 急に言葉が
乱暴になって 怖かったよ」
「知らなかったの 彼女 暴走族のリーダーよ 
今まで気がつかなかったんだ まったくあなたって言う人は」
そこへ洋子が戻ってきて亜矢子が 
「ねぇ 洋子さん 神山さんてあなたの事何も知らなかったわよ」
「へぇ~ 普通解りそうだけど まあ 普段わね」
「ごめん 気がつかなかったって言うより想像できなかったよ」
「まあ 過去だから ねぇ 亜矢子さん」
「そうよ これから洋子さんと一緒の時間が一杯あるから
気をつけた方がいいわよ」
そう言われると 神山のおちんちんはますますちじみ上がって
元気が無くなり洋子が
「ねぇ亜矢子さん いいの? 私 お手伝いするわよ」
「ええ もう大丈夫ですよ まだ入っているみたいで可笑しいから
それに貴方だって 我慢できなくなるわ 辞めておくわ」
「わかったわ そうね 私もまだ可笑しいの 躰が壊れるわ」
「ほんと この人と最初SEXした時 2、3日余韻が有って
からだがきつかったわ」
「そうそう その時は気持ちが良いけど後で大変なのよね」
洋子と亜矢子は勝手な事ばかり言って神山を無視していた
神山はひそかにおちんちんを大きくして立ち上がり
洋子と亜矢子の額を肉棒でパンパンと叩き風呂から上がった
「なによ 今の 厭らしいわ ねぇ亜矢子さん」
「僻んでいるのよ 無視されたから でも可愛いわね」
「そうね あんなに元気にしてどうするのかしら」
「大丈夫よ 本当に欲しければ噛み付いてくるでしょ
そうでないって事は すぐに小さくなるわよ ねぇ 神山さん」
神山は言い当てられたので無言だった

3人はレストランで朝食バイキングを楽しんだ
神山が洋子や亜矢子に
「ねぇ 昨日の4人が来ていないようだね」
「ええ 女の子が帰ったから一緒に帰ったんじゃないの」
「そうか 男二人じゃつまらないしな」
気にしたのはその時だけで 神山はビールを呑みながら洋食を
全部平らげると亜矢子と洋子が一緒に席を立ち椀を2つ持って
「はい アサリのお味噌汁よ 二人ともちゃんと気がついたでしょ」
神山はこのとき素直に嬉しくて
「ありがとう 助かるよ ほんと」
嬉しそうに飲むと3人とも全部綺麗に食べて部屋に戻った
神山は
「30分だけ寝かしてください お願いします」
そう言い直ぐに寝息を立てた 洋子と亜矢子は
「もう一度入ろうか」
そう言うと またゆっくりと湯船に浸かった
「ねぇ 洋子さん お互いの事はだいぶ分ったと思うの
そこで 神山と二人だけの時は緊急以外に連絡しないようしませんか」
「ええ でもいいの 私のほうが一緒の時間が多いわ」
「ええ 声を聞きたくなっても我慢するわ お仕事はお仕事ですもん」
「はい 分りました 私もしないわ」
亜矢子は冷蔵庫からビールを出して洋子と
「じゃあ 乾杯ね」
「ええ 乾杯」 
二人の女性は協定を結んだ
洋子が
「そろそろ 起こしましょうね」
「ええ そうしましょう」
二人は神山を起こして洋子はコーヒーを渡し
「では 楽しかった時間もこれで一時中断ね」
「おお ありがとう すっきりしたよ ありがとう」
神山は用意されたコーヒーを飲んで赤いショーツを穿き支度を済ませた
二人の着替えをじっと眺めていると洋子が
「まあ すけべ なに見ているの 変態 ねぇ~ 亜矢子さん」
「でも 減らないから見せても良いでしょ」
亜矢子はそう言って神山に対してストッキング姿で腰を振った
神山は下半身がむずむずしてきたので
「亜矢子 ありがとう もう見ないよ」
腰を振るのを辞めた亜矢子が洋子に
「あの人ね ストッキングに弱いわよ こんな感じだと」
洋子が頷いて神山の目の前でストッキング姿で腰を振っていると
「もう なにやっているんだ 早くしなさい」
そう言い洋子と亜矢子のお尻をペンペンを叩いた
「ふぁ~ きゃあ~ 痛いわ きゃあ~」
二人ともふざけていた

神山はもう時間が無いので構うのを辞めたのを見て
女性達も雰囲気を察して急いで仕度をした
フロントで清算を済ませると受付嬢が
「神山様 昨夜帰宅されました山口 宏史様から封筒を預かっています」
封筒を受け取ってみてみると手紙と現金10万円が入っていた
手紙の内容は謝罪と会社には黙っていて欲しい 現金は山口 宏史の
お金だと書いてあった 
神山は駐車場に行き 玄関で女性達を後ろに乗せると発車した
昨日と違って海の見える国道を東に飛ばして進んだ
土曜日だったが時間がまだ早いので渋滞は無かった
熱海駅で後ろの二人が降りてデパートに入っていき赤いショーツを買った
亜矢子をそのままにして 神山は洋子を乗せホテルの地下駐車場で
自分の車に乗り換えると 洋子がレンタカーを運転して返した
神山はいつも買う宝くじ売場に行くと叔母さんが覚えていて
「いらっしゃい 今日も頑張ってね」
最初神山がスクラッチを選ぶと今までと同じ様に手が勝手に動き選び
銀色の部分を削って見るとなんと3万円の大当たりだった
次に亜矢子が選び削って見るとやはり3万円の大当りだった
「さあ 洋子 頑張って」
神山と亜矢子に励まされて選び削ってみると10万円の大当たりだった
「ふぁ~ すごい そんなに効果があるなんて」
亜矢子が宝くじの数字に提案をした
「ねぇ 3人だから 3組で良いでしょ 後は熱い心でバストサイズを
並べない まず貴方は107でしょ 洋子さんの数字だけど同じかしら
93だけど?」
「ええ 93よ」
「そうしたら 3組の179393 で買いましょうよ」
「うん そうだね」
神山が叔母さんに探してもらうと 3組ではなく33組ならあると言って
連番で10枚買った 亜矢子が
「そうしたら ウエストは57かしら」
「ええ 57よ一緒ね」
「そうしたら あなたが79だから79組で1575757なんてどう?」
洋子が
「そうしたら 79組で177957はどう 昨夜の状態よ」
亜矢子も頷き叔母さんに探してもらうと丁度あって連番で10枚買った
「じゃあ これいつものように亜矢子が預かっていて お願いします」
「ええ それとこの間のは今度のお休みの時に振り込みます」
「うん ありがとう では」
「ええ 洋子さん 頑張ってね」
「はい 亜矢子も頑張ってね」

3人は熱海駅で別れた 亜矢子は車が出るまで見送ってくれた
神山は亜矢子に手を振って貴婦人を発進させ有料道路に入ると
どんどんとスピードを上げていった
神山は右側車線をズーット走るのではなく左を走っていて前に追いつくと
ウインカーを出し 気が付かない時はパッシングを巧みに利用して
追い越しをしていった
小田原から東名に入るがここでも神山のテクニックは素晴らしく
直ぐに首都高に入り銀座で降りた
車をホテルの地下駐車場に止めると洋子が
「凄いわ 1時間をきっているわ すごい」
「うん 空いていたしね さあ着替えよう」
次長室に入って洋子はまだスピードの余韻が残っているのか
神山に抱きついて来た
「おいおい さあ着替えよう」
二人は最高級のスーツに着替えて変身をした
洋子はホテルを出る時に化粧をしなかったので簡単に化粧が出来上がった
二人は何時ものように交互に廻ってみて可笑しい所をチェックした
時計を見ると11時を少し回った所で洋子が
「今日はお金はどうしますか」
「うん 僕ので足りるよ 大丈夫だよ カードもあるし」
神山は次長室を出て催事課を覗いてみると鈴や装飾のメンバーが
留守番していて
「神山次長 おめでとうございます」
「うん ありがとう みんなは?」
「ええ 少し前に出ました いろいろと準備が有ると言っていました」
「じゃあ 悪いけどお願いします」

そう言い神山と洋子は銀座通りに出てタクシーを拾いホテルへ向った
ホテルには30分前に着いたが ぽつぽつと来賓客が来ていて
受付では催事課の全員が対応していた 
洋子の後輩の安井も手伝ってくれていた
みんなは二人を見ると市川や杉田が
「なんか 新郎新婦さんだね 決まっているよ」
「先輩 綺麗で格好良いです」
「やあ みなさんありがとうございます」
神山と洋子は受付応援の皆に挨拶をした
「おう 山ちゃん このままどうだ 一緒にすれば 経費安上がりだぞ」
由香里がいる前で言っているので由香里も一区切りついたと思った
神山と洋子を見つけたホテルの担当者が二人を呼んで別室に入った
「神山様 田所様 ご昇進おめでとうございます
本日進行係をさせて頂きます」 
そう自己紹介され 流れの説明が有った
席は全て円卓で神山と洋子のテーブルには内藤社長と時田副社長が
座る事など
始まってから約6名位の祝辞がある事 その後に一旦会場内を暗くして
アレックス氏ご夫妻の登場 神山たちのテーブルに座る
そのあとに祝辞が有るけど全員は無理なのでこちらで選ばせて頂きます
あとは親睦で皆さんと一緒に会食をしてください
そんな内容だった12時10分前になると段々と込みだしてきて
ホテルの従業員も席の案内で忙しくなった 副社長の時田が現れ
神山と洋子は挨拶をすると
「盛大なパーティーだな どうじゃ洋子 このままゴールインは」
洋子は人差し指を口にあて
「だめです おじ様 声が大きいですわ」
笑っているところへ内藤社長がきて
「神山さん洋子さん ご昇進おめでとうございます お似合いですね」
「そうじゃろ 内藤さん 山ちゃんはいい男じゃ」
「ええ 洋子さんも中々の切れ者です 感心しました」
「ほう そんなに切れるか いいのお若いのは」
副社長の時田と内藤社長はホテルの従業員に案内され席に座った
12時の時間になるとさすが遅れてくる人が1人や2人いるものだが
今回 遅れる人は誰もいなかった
会場内ではざわついていたが 進行係の挨拶が始まって入場曲が流れると
外で待っていた二人にホテルの従業員が
「お席まではピンスポットが案内します 上座の円卓です」 
と 説明され 扉が開くと真っ暗でピンスポットの光だけが輝いていた

ここは結婚披露宴ではないので神山が先に歩き始めると会場内からは
拍手が盛大に沸き起こって二人を祝福してくれた
言われたようにスポットライトのなかを歩いているつもりだが
どうしても早く歩いてしまいスポットライトから外れてしまう
なんとか席に付くと会場内の明かりが一斉について眩しかった
祝辞の先頭は催事課の奥村課長からだった
神山の業績や失敗談など笑い有りの楽しい祝辞だった
洋子の方も本社人事部長が奥村課長に輪を掛けて楽しい祝辞を述べた
次は副社長の時田が祝辞を述べ 神山を誉め洋子を誉めている時に
言葉が出て来なくなって 涙ぐんでいた
内藤社長が直ぐに気転を利かせ祝辞を述べた
副社長時田が隣りの洋子に
「すまん ワシとした事が」
洋子は小さい声で
「ありがとうございます 大丈夫ですよ ズーッといますよ」
時田は頷いていたが虚ろだった
内藤社長が終わり席に付くと時田が
「内藤さん ありがとう だめだな 年だな」
「良かったですよ ただし途中までは」
4人は大笑いをしてしまった

ホテルの人から聞いていた時が来た
会場がまた真っ暗になり 
色々な色のスポットライトが会場を交差するなか
アメリカンポップスが流れると進行係りが
「本日 特別に参加してくださる方をご紹介します」
アレックスグループのトップ アレックス氏夫妻が紹介されると
静かだった会場はざわめいた 
このことを知っている内藤社長と神山と洋子は多少落ち着いてはいたが
時田は洋子に
「洋子 なんであんな偉い人が来るんだ わからん」
「ええ お付き合いが有ったのよ」
「へぇ~ 洋子凄いな」
「いいえ 神山さんよ」
「えっ 山ちゃんが はあ あの男は凄いな」
「でしょ だから私じゃだめよ もっと器が大きい女性でなければ」
アレックス氏夫妻が神山たちのテーブルに来ると
神山と洋子は立ち上がって 最初に握手をして抱き合った
「アレックスさん 来て下さってありがとうございます」
「うん 是非帰る前に合いたかったからね」
夫人は洋子にバラの花束をプレゼントした 神山がアレックス氏に
「アレックスさん 僕のがないよ」
「心配するな ほらこれだよ」
アレックス氏が用意したのはアレックスグループで
絶対権力者しか着ることが出来ない噂のブレザーだった
神山は手にとって見ていると
「山ちゃん 早く着ておくれ みせてくれ」
アレックス氏にせがまれ 上着を洋子に渡しブレザーに袖を通すと
進行係が 
「神山さんはここでもう一つ勲章を得ました あのアレックスジャパンの
最高責任者になられました おめでとうございます」   
来賓客たちは予想外の出来事にあちこちでざわざわした
進行係が静めるとアレックス氏の挨拶が始まった
要約すると 神山とはお尻で始まった仲で 大変勇気があり
紳士で 的確な判断力を持っている アレックスジャパンの欠点を
迅速に見つけ再建を約束してくれた 私は彼のために何でもする
ここにいる人たちも神山に協力をして欲しい 
挨拶が終ると拍手が鳴り止まなかった
今度は夫人の挨拶で同じような内容だったが
神山には洋子と言う素晴らしい女性が付いているので
決して 神山を横取りするよう考えは持たないで欲しい
だって 私だって諦めたんだから お願いね 
この挨拶にも会場から拍手が鳴り止まなかった
二人のスピーチは英語で話をしたが 予め翻訳したのを
読み上げたのでタイムラグが生じたがそれでも素晴らしい挨拶だった
アレックス夫妻が席に座ると会場が明るくなり次の祝辞が始まった

神山はグリーンにブルーが少し混ざった素敵なブレザーを脱ぐと
「神山さん このブレザーは世界でパリ、ロンドン、ニューヨーク、
そして東京の4着しかない1枚だ これを着てパリに行けば何でも出来る
ただし向こうのトップと相談をしてからだけどね したがって世界で
4番以内に入ったことになるね おめでとうございます」
「アレックスさん 奥様 ありがとうございます」
「しかし このスーツは素晴らしい 高かっただろう 洋子と同じ生地だし
素晴らしい どこのメーカーですか」
「これは ニーナ・ニーナのスーツですよ」
「ああ ニーナ・ニーナは知っているが 婦人だけだろう」
神山はスーツを着ている経緯の話しすると
「なんと素晴らしい話だ その筒井さんも山ちゃんが好きで
プレゼントをしてくれたんだよ いい話だ しかし世界で3着とはね
この生地でこの作りならば100万円でも出来ないよ 大切にね」
時田は英語を多少出来ても神山とアレックス氏の会話には
追いつけず洋子が同時通訳をしていると また涙ぐんだ
「洋子 本当にいい男だな ワシが女だったら絶対に離さないな」
夫人は時田が涙ぐんでいる訳を洋子に尋ねて
「時田さんは優しい人ですね 時田さんが居るから神山さんも居るのね」
進行係の上手な語り口で祝辞が進められ前半の部が終わり会食になった
ここで倉元が乾杯の音頭を取った
「おう 山ちゃんおめでとうございます 今まで大変お世話になりました
ありがとうございます これからも持っている力を存分に発揮して
山ちゃんらしい仕事をしてください 洋子ちゃんも山ちゃんを
支えてください お二人ともご昇進おめでとう かんぱ~い」
会場の皆が祝福して乾杯をした

食べ始めてからすぐに催事課の時にお世話になった業者が続々と
神山のテーブルを取り巻き順番に挨拶をしていった
副社長の時田に挨拶して内藤社長に頭を下げてアレックス氏に挨拶してと
業者も大変だった
神山と洋子は起立をして対応していたので殆ど食べられなかった
握手をして神山と洋子に二言三言話をするとご祝儀袋をわたされ
「これは お祝いです受け取ってください」
と みんなが置いて行った 
当初受付で預かる事をしていたが神山に直接渡したいと希望が出て
会場内で神山に直接手渡しが出来るようになった
3列で積み上げても相当な高さになり ホテルの従業員が袋を用意して
その中にしまった 
祝儀袋自体飾りがあってがさばり それが100人を超えるから
相当な量の大きさになった
神山と洋子は出された料理を最初の一口、二口しか食べられず
殆ど手をつけていない状態だった
内藤社長がそれを見て進行係を呼んで
「ここで少し中止出来ないか なにも食べていないよ彼らは」
「ええ 私も先ほどから考えていたんですが 後ろが詰まっていまして
中止すると後半の祝辞の時間が無くなってしまうんでよ」
「そうか わかった ありがとう」
内藤社長もおめでたい席なので祝辞を中止する事も失礼だと思い
立っている二人に
「山ちゃん 洋子さん ワインを呑めば どう」
二人は振り返って内藤社長の言葉に頷きワイングラスを持って対応した
それでもお辞儀をするときグラスをテーブルに置いてしまうと
今までと同様になってしまった
アレックス夫妻も神山の人気ぶりには目を細めて喜んでいた
アルタ関係の業者達も来て神山と洋子に挨拶を済ませ一段落し進行係が
「それでは お時間も残り少なくなって来ました ご来賓のご祝辞を
お願いします」
進行係が一人3分程度でお願いしますと
条件を付け順番に指名をしていった
3番目の挨拶で東都食品の副社長と2日前に挙式を終えた新妻が起立して
挨拶をした
神山は伊豆で会った高柳里香が副社長と結婚していたのかと思うと
胸がわくわくしてきた
全員の祝辞が終ると終了時間を大幅にオーバーしていた
解散になると神山と洋子は出口で来賓客と握手をし見送った
催事課の杉田が
「先輩 おめでとうございます これ受付で頂いた祝儀袋です」
「おお ありがとう がんばってな」
「はい それでは失礼します」





.