早速コック長の多田が
「神山様のご提案は素晴らしく私も老若男女に喜んで頂けると
これは料理人として最高の勲章です」
これに対して若い調理師の東条は
「私は この案は案として やはり先程説明が有ったターゲット層の
30代女性を満足させる事が先決だと思います」
二人の料理人は意見が違っていても神山案は分って貰えた様だった
神山が
「黒江さん 牛肉代は幾ら掛かりましたか」
暫くして
「50人分のブロックで30万円掛かりました」
神山は自分の引出しから30万円を抜いて黒江に
「はい では30万円です お確かめ下さい」
黒江は30万円有る事を確認すると
「では 済みませんが ここにサインをお願いします」
神山は洋子が用意した領収書にサインを記入して
「これで 宜しいでしょうか」
神山は領収書を受け取って時計を見ると14時30分になっていたので
「さあ では厨房でステーキを焼いてください お願いします」
二人は事前に知らされていたのか 頷いた
5人が従業員食堂にいくと殆ど社員の姿はいなかった
厨房に入ると若い調理師の東条の着替えが始まり準備が出来た
神山が
「私もステーキを焼きます」
そう言うと鈴や食品の皆は驚いたが調理師の東条は
「神山様 幾らなんでも無茶でしょう 僕のほうが美味しいのが
分っているのに何故ですか」
「うん それはあとで話す」
神山はエプロンを借り調理器具も一式借りた
美味しい牛肉が運ばれて来たが神山は捌けないので調理師の東条に任せた
神山は小さく切って洋子と二人で食べると
「これは 人気のお肉だね」
「ええ そうね そうすると若いワインかしら」
「う~ん この肉味がどこまで出るかだな そうだ
がんがん呑む訳ではないから 口直しとするとミディアムで良いかもね」
「そうね」
洋子は調理のおばさんにも手伝ってもらいグラスをテーブルに並べた
黒江が
「神山様 ワインまで用意されたんですか」
「ええ そうですよ」
「私どもは何も用意してきませんでした なあ東条」
「ええ 大丈夫ですよ ご安心下さい ワインが無くても」
そろそろ3時になり神山に呼ばれた面々が従業員食堂に入ってきた
時田副社長 池上店長 秘書が6人 人事課が3人 催事課が6人
販促部長 人事部長 合計19名がテーブルに座った
神山が簡単な挨拶をして 東条の紹介と御殿場アウトレットで
東都食品のベテラン勢に勝たなければ傘下にした意味が無い事や
神山がこれまで覚えてきたノウハウが活かせるかどうかなど説明した
理由を知っている時田だけだニコニコしていた
「え~ 今から15分後に皆様のテーブルにステーキとワインが
出されます しかしワインは私 神山が用意した物ですが
どうぞ 東条さんの時にも呑んで頂いて結構です それでは
出来上がるまで暫くお待ちください」
神山はそう言うと厨房に戻り
先に牛肉を出しトレーに乗せ塩コショウを済ませそのまま放置した
一方の東条は牛肉を冷蔵庫に閉まったままニンニクのミジン切りをして
少し手を休めていた
神山はニンニクをミジン切りではなく短冊切りをし鉄板の
温度調節をしていた 洋子が何処から仕入れてきたのか
「はい オリーブオイルよ 頑張ってね」
神山は 牛肉を触るとまだひんやりしていたので焼かなかった
東条は鉄板の温度も考えずに焼こうとしたが出来上がりの時間が余るので
時間調整をしていたが鉄板にオイルを落として見ると直ぐに伸びるので
牛肉を冷蔵庫から出して塩コショウをして一旦トレーにおいて
ニンニクを少し炒めたあとに牛肉を焼き始めた
試食をする面々はニンニクの香りがしてきたので
「何ともいえないいい香りだね なあ池上君」
「社長 これは結局どちらが美味しかったと判断をするんでしょうか」
「まあそう焦らないで 山ちゃんに任せなさい」
池上店長を初めなぜ神山がステーキを焼く意味が分らなかった
神山は牛肉を触ると人肌になってきたので オリーブオイルをたらし
よく伸ばしてニンニクの香りをオイルに移すと牛肉を焼き始めた
勿論神山は勝負に勝てるとは思っていなかったが
何とか美味しく調理された牛肉をみなに食べて欲しかった
鉄板の方が色が変ってきているがもう少し待ちブラックペッパーを
少し振りかけて待った
東条は先に焼き始めたのにまだ返さなかった
神山は色を見て25枚のステーキを手早く返して反対側の焼きに入った
東条も25枚のステーキを返して反対側の焼きに入った
神山は 表面に集中してしていると肉汁が出てきたので
素早く鉄板の上で一口大の大きさに切ってお皿に持った
切り口を見ると真中がピンクに残っているミディアムに仕上がった
東条も牛肉を切ったがさすがはプロで素早かった
両名のステーキが叔母さんや洋子や人事課の女の子で運ばれた
左側に東条 右側に神山のステーキが並べられて神山が
「お待たせしました 東条さんと私のステーキです
どうぞ味わってください お願いします」
そう言われ参加した面々のフォークとナイフが動き出した
神山や東条もワインを呑みながら食べていた
洋子が小さい声で
「貴方のほうが全然美味しいわよ 良かったわね」
東条本人も神山の方が美味しく感じられ困惑した表情だった
お手伝いのおばさんたちも神山を誉めた
鈴や食品の黒江や多田もワインを呑みながら食べたが
神山のステーキに軍配を上げていた
皆が食べ終わった頃合を見て神山が
「如何でしたでしょうか ご満足いただけたと思います
さて これだけでは料理勝負の漫画になってしまいます
私の意見を最初に言う前にまず 東条さんから 調理の心構えとか
色々とお聞きしたいと思います」
「えっ 何を出すか?」
「ええ 皆さんに食べて頂いたステーキですよ」
「ええ 何時もの通り焼いただけですが」
「お肉がどのような状態でもですか 何時も通りの焼き方ですか」
「ええ そう言われて来ましたから」
「先程 ご自分で食べ比べた時に困惑した表情でしたね どうしてですか」
「ええ 神山様のほうが美味しいからです」
「分りました ありがとうございます さて私から皆様に質問をします
今日の牛肉は仕入れが大変高価だと思う方は挙手をお願いします」
そうすると神山と洋子以外は全員手を挙げた
神山はニコニコしながらはっきりと
「この牛肉は二流の牛肉です そして調理人も二流です
時田社長 この場で申し上げます
牛肉の良し悪しが分らなく仕入れ 調理するとは東都食品を完全な
傘下に出来ません 勉強不足です
そこで提案ですが 東条君に武者修行をして頂く
黒江さんには当分牛肉の味を分って頂くまでやはり武者修行をして頂く
如何でしょうか」
「う~ん 山ちゃんそこまでやらないと勝てないか」
「ええ 私に負けたんでしょ 当たり前だと思いますよ
東都食品を引っ張る人間が何も知らないでは困ります
いいですか このお肉はせいぜい仕入れで10万円がいいところです」
神山は黒江の領収書を時田に渡し
「それを30万円で仕入れたとすれば 東都食品に笑われるだけでなく
足元を救われ御殿場アウトレットから早期撤退となるでしょう」
「うん わかった 処分については考えるが 東条君の
武者修行先はどうなんだ」
「はい 2箇所ほど有ります」
「うん わかった では黒江君 君はもう一度牛肉を一から勉強だ いいね」
「はい 畏まりました」
「それと 出来れば 多田コック長にも東条さんと
一緒にお願いしたいんですが」
「しかし この食堂があるだろう なあ多田君 どうだね」
「ええ 私は次長室で伺った神山様の夢を現実にしたいと思います」
「うん わかった では武者修行の件は山ちゃんに任す 頼んだよ」
「ありがとうございます 社長 それではみなさまありがとうございます
ご自分のお皿やナイフはカウンターまで運んでくださいお願いします」
そばで聞いていた洋子が涙ぐんで
「よかったわ これで又 一歩進んだね」
「うん 良かった ありがとう」
神山と洋子が話している所へ時田が
「山ちゃん 凄いな 上手かったぞ ありがとう どうした洋子」
時田は涙ぐんでいる洋子に聞いた
「だって 神山の仕事がまた一歩前進したんですもの 嬉しくて」
「おお そうだな しかし上手に調理したな」
「ええ 生肉を食べて分ったんですよ 上等の肉じゃないって」
「そうか 分るか」
「ええ おじ様も今度 神山とご一緒されると良いわ 楽しいですよ
それにコックさんとお友達になれるし いいわよ一杯勉強出来るから」
「そうだな しめ鯖も上手かったし うん時間を作るよ
その時は頼んだよ お願いします」
「こちらこそお願いします ところで御殿場アウトレットの
鈴や食品のブース予算ですが どの位見て下さいますか」
「う~ん まだハッキリしないがな」
「私は 技術は東都食品で予算は鈴や食品だと考えているんです
最低でも2億は掛かります」
「そんなに掛かるか?」
「ええ まだはっきりとデザインが出来ていませんが
デザイン次第では4億になる可能性が高いです」
「おいおい そんなに出せないだろう 鈴や食品だと」
「ええ 多分無理だと思います そこで鈴やも一緒にするのです
出来ればアルタやアレックスジャパンの出資も考えていますよ僕は
先日もアレックス氏にアレックスブランドのビーフジャキーを
御殿場アウトレット限定で出そうと話をしているんです」
「そうか そんなに大きいか わかった何とか出どこを考える」
「ええ お願いします また 洋子さんのうれし涙を見られますよ」
「ははは そうだな わかった 山ちゃん今日はまた勉強したよ」
「はい ありがとうございます」
「うん では 洋子頑張れよ」
時田が神山の肩をポンと叩いて別れていった
神山と洋子の所に鈴や食品の3人が来て
「どうも先程は失礼いたしました 済みませんこれ お返しします」
神山は先程黒江に渡した30万円を出されると
「ははは 良いですよ これからの支度金にしてください」
「しかし お見事でした 実は上級の牛肉が見つからなかったんです
そこで多田と相談して手持ちの牛肉を持ってきました 済みませんでした」
「ははは もう済んだ事だし ここだけの話しにしましょう」
「私もそこまで酷い肉だと思っていませんでした 多田からも
そう報告を受けていた物ですから」
「まあ 生肉を食べれば分るでしょう ねえ多田さん」
「お恥ずかしい話 そんな良い肉を食べた事が少ないのです」
「そうしたら ちょっと待ってくださいね」
神山は日比谷パレルホテルの担当支配人 二ノ宮と電話をした
「ええ それで一番高い生と焼いたのを食べさせて頂きたいのです」
神山は頷いて
「今日 これから来れば準備をしてくれると言っていますが」
「ええ 伺います」
神山は二ノ宮に3人が行くことを伝え電話を切った
「日比谷パレルホテルの最上階レストラン担当支配人 二ノ宮さんを
尋ねてください 私の名前を仰って下されば分ります」
「神山様 何から何までありがとうございます」
「ただ 同業者と言わない方が良いでしょう ステーキファンと
言っておきましたから いいですね」
3人は深々とお辞儀をして社員食堂から出て行った
「まあ 酷い話しね調理士が上級のお肉を知らないなんて」
「うん しかし従業員食堂ではそれでいいのかも知れないね」
「う~ん そうかしら でも一流を知っているのと知らないでは
全然違うと思うな 私 一流しか知らないもん 貴方以外は全て
二流だと思っているわ」
「おいおい ありがとうございます なにも出ないよ」
洋子は嬉しく神山のほほに軽くキスをすると手伝いで残っていた
本社人事課の安井奈々子が見ていて
「ふぁ~ 先輩見ちゃいましたよ いいな~ ねえみんな
先輩って 神山次長とキスしているの」
「えっほんと いやだ うそよ」
「ほんとだってば いま ねえ 先輩」
洋子は少し赤くなった顔で
「だって ご褒美よ大切な人にご褒美は良いでしょ」
「あ~あ 先輩に先を越されたわ ショックよ」
神山は女の子を並べて
「よし 今日は良く働いてくれたから僕からご褒美を上げる
みんな目を瞑っているんだよ」
神山はみんなの額に軽くキスをして洋子と出て行った
目を開けた3人は夢を見ているようで嬉しかった
「純情な乙女達だね」
「ええ 目をしっかりと瞑っていたわね」
「ねえ 手伝ってもらったおばさんは5人だよね」
「ええ」
「そうしたら お菓子を買ってお礼をしておこうよ」
「ええ そうしましょ」
神山と洋子は地下のお菓子売場でお茶菓子を買っておばさん達が居る
事務所へ行きお礼を言いお菓子を渡した
次長室に戻ると神山はぐったりとしていて
「どうしたの そんなに疲れたの」
「うん やはり緊張していたんだよ 今になって出てきた
あ~ くたびれた」
神山は次長席に座ると生あくびを繰り返したので
従業員食堂で残ったワインを呑んでみると睡魔が襲ってきた
30分位寝たのか起きるとすっきりとしていた
洋子は神山が起きたのを気付くと冷蔵庫からコーヒーを出して
「はい どうぞ」
「ありがとう いや~よく寝た すっきりしたよ」
「貴方が寝ている時に鈴や食品の多田さんから電話があって
ありがとうございますって 本物を頂きましたって」
「そうか 良かったね うん」
「あと おじ様が今夜美味しいとこに連れて行ってくれって」
「そうか しかし 今日は早く帰りたいんだが、、、」
神山は直接時田に電話をした
「本当に済みません 本日は先約を外せません 明日以降で如何でしょうか」
「そうか わかった また明日連絡するよ」
「はい 分りました お待ちしています」
洋子が
「良かったわね だけど先約って?」
「だってそうしないと早く帰って寝られないです」
「ふふふ なんだ 又 私に秘密で何かこそこそするのかと思ったわ」
「おいおい たまには早く帰って寝るよ
以前のように完全休暇を取っていないもんなこの頃」
「そうね お休みは女性を相手にしたりゴルフだったりね
ほんと大変でしょ 分るでしょ私が大変って」
「うん わかったよ さあもうこんな時間だ」
神山は時計を見ると17時を指していた
次長席で色々と纏めるのに集中していると直ぐに18時になり
「洋子 今日は帰っていいよ 君もたまには早く帰って
母親孝行をしてあげなさい」
「ほんと 帰っていいの?」
「うん 僕は もう少しここで纏めをして帰るよ
それと 明日は何も無いから完全休養にしてください」
「えっ ほんと」
「うん 昨日も中途半端だし まあ何も無いからさ もしかすると
僕も休むかもしれない」
「また駄目よ 亜矢子さんに会いに行くなら私も一緒よ」
「おいおい 勘違いするなよ」
「でもいいわ 亜矢子さんなら許してあげるわ」
「あのね 違うの ほんと だから苛めないで 一人で寝ているから」
正直 神山は芯から疲れていて一日中寝ていたかった
「はいはい わかった 私は駄目よ 私もあそこも完全休養ですからね」
「うん」
洋子はビジネススーツをわざと神山のところで着替えたが
反応が無いので神山の疲れを確認した
「では お先に失礼しますね」
「うん では 何かあったら連絡するよ」
「は~い 分りました」
洋子は神山に手を振って部屋を出て行った時にFAXが入ってきた
アルタの人事課からだった
【今月から給与の支払日が変更になりました
神山意匠担当常務 と 田所部長の給与支払日は毎月10日
指定口座に振り込み 自由費は10日 原則秘書(田所秘書)に
現金手渡しとなります 尚 10日が土日の場合は前営業日に
振込み 現金渡しになります
尚 ご不明な点はお電話でお願いします
本社人事課 武田恭子】
神山は洋子にも知らせておこうと電話をした
「はい 洋子です」
「ごめん 今 アルタからFAXが入って 給与支払い日の変更が来た
それで 10日に洋子の口座振り込まれることと自由費は10日に
アルタへ受け取りという事です ただ今月は10日が日曜日だから
8日の金曜日になる」
「は~い 分りました 8日のスケジュールに入れておきますね」
「うん では」
神山は洋子の電話を切ると青山3丁目『イタリアンレストラン スパ』に
電話をしてマスターと話をした
「そうしますと 私どもからのお給料は一切無し 牛肉仕入れ代として
100万円を出して頂けると言う事ですね」
「ええ ここは一つお願いします」
「ええ いですよ 神山様の事ですから それで7月末までの
修行で宜しいですか」
「うん?」
「ええ 7月一杯までなら逆にうちが助かります 若い子の夏休みも
充分取れますし」
「いいんですか お願いします それと休みですが週2日でお願いします」
「ええ 分りました それで何時来られますか」
「ええ 今日 7時30分位にお邪魔します その時に本人を紹介させて
頂きます 私はそちらで頂きますが」
「えっ そうすると 神山様は何名でお食事されますか」
「ええ 2名で女性が多分先にそちらに伺うと思いますのでお願いします」
「はい 畏まりました お待ちしております」
神山は電話を切ると鈴や食品の黒江に電話をして多田と東条の
武者修行先が決定した事 期間は7月一杯 休みは週2日
牛肉の仕入れ代100万円は神山が立て替えることなど説明して
「本日 両名を19時に次長室ビル出入り口に来るよう指示してください
それと 簡単な履歴書持参です いいですねお願いします」
黒江は早速手配をすると電話を切った
神山は祥子に電話をして
「こんばんわ 神山ですが」
「はい 祥子です」
「うん 今夜はイタリアンレストラン スパにしよう
今 予約を入れた 何時に終りますか?」
「ええ 7時には終るわ そうしたら先に行っていましょうか」
「うん マスターに僕の名前を言えば席に案内してくれる」
「ええ 分りました では楽しみにしています」
神山は時計を見ると19時前になったので部屋を見回し
ビルの出入り口に行くと多田と東条が待っていた
「神山様 ありがとうございます 早速ご手配をして下さいまして」
「いえいえ 当然ですよ さあ行きましょうか」
「あの これは黒江が神山様にと」
神山は茶封筒を受け取ったが中を見ないでタクシーを拾い
運転手に行き先を伝えた
前に座った神山は先程の茶封筒を開けてみると手紙と現金が入っていた
黒江からのお礼の手紙で現金は400万円入っていたが
100万円は先方の仕入れで300万円は謝礼と書いてあった
神山は100万円を貰って300万円を肉の仕入れに当てようと考えた
青山3丁目のイタリアンレストラン スパには約束より早く着いて
マスターに挨拶をした マスターが神山に
「今度 名刺が変りましたので」
そう言われて名刺を見ると マスターから総支配人に変っている
「なにか?」
「ええ 共同出資をしていたんですが業績が良くなって
今度 そのような立場になりました」
名刺には イタリアンレストラン スパ 総支配人 石原順次と
印刷されていた
神山は多田と東条の履歴書を渡し石原が目を通すと
「はい 分りました 神山様 7月一杯働いて頂ければ
いい腕を更に磨いてお返しできます」
「ありがとうございます それと牛肉の仕入れ代金ですが
これを当ててください お願いします」
石原は300万円をみてビックリして
「神山様 頂きすぎですよ こんなに」
「ええ 提案が有るんです 最初から超上級の調理は無理だと
思います そこで段階をへてその超上級も調理できるように
なって貰いたいのです その時の代金です」
「分りました そうですね 今ここで使っているお肉より
良いお肉はまだまだ有りますからね はい 分りました」
石原は多田と東条にここで待つように言って
「神山様 お連れの方が2階でお待ちでございます」
「うん ありがとう」
神山は石原と別れて2階に行くと祥子が手を振って待っていた
「やあ お待たせ 待たせたね」
「ううん 今しがた来た所ですよ」
神山はテーブルに何も無いのでウエイトレスを呼んで
ビールと単品のおつまみを頼んだ
「久しぶりね ここで食事するの」
「そうだね 僕も忙しくなったから」
「でも 今夜はちゃんと約束を守ってくれたわ 嬉しい」
テーブルにビールとおつまみが運ばれて神山と祥子は乾杯した
二人がゆっくりと食事をするのは久しぶりなので色々な話題が出た
筒井の件では
「先週 あんな事があったから 今は殆ど会社が終ったらまっすぐに家です」
「そうか やはり奥さんがあれだけ心配していたからね」
「ええ これ以上心配させられないって」
「そうすると 御殿場アウトレットは無理だね」
「ええ 東京と御殿場をいったり来たりするのは難しいわね
あんな事が無くても 大変じゃないかしら」
「そうすると 林さんがチーフで店長はいいけど
現場を見る人は祥子しかいないね」
「ええ でも内装工事だから 向こうでホテルを借りれば大丈夫よ」
「まあ そうだね 集中的に一ヶ月だからね
来年の3月1日前後を予定しているよ
先日筒井さんと話したけれど 予算が無いんだって
それで 上原と同じ様に箱は出来ていて 内装工事だけになる
可能性が非常に高くなったね」
「そうなの そうすると やはり一ヶ月ね」
「うん そうだね 僕の方は10月に入ったらちょくちょくと
行く事になるね 3月は殆ど御殿場でしょう」
神山はマスターを呼んでお勧めのステーキとそれに合うワインを注文すると
「丁度 今日は良いお肉が入っていますから良かったですよ」
「僕はミディアムで仕上げて頂いて ニンニクを少し多めにお願いします」
「私も同じでお願いします」
「はい 畏まりました」
石原はお辞儀をして階段を降りていった
神山は御殿場アウトレットのニーナ・ニーナをどうするか悩んでいた
その事を祥子に話すと
「しかし 予算がないとどうにもならないわね 結局上原と
同じ様な内装になる訳?」
「うん 一応6月までには御殿場アウトレットのプロジェクトから
何らかの書類が来るけど 箱が出来ている以上ねえ 難しいな」
「貴方でも難しい事あるのね」
「うん 例えば箱を2つ貰えたら話は別だけど それでも
自由なデザインは限られてくるからね 困っている
アレックスジャパンはフリーゾーンって言ってね
箱から設計をする訳 そうすると例えばだけど 天井は高くて
ドームにしたりと自由度が高まるのさ そうなるとデザインも
色々と出てきて楽しいブースが出来るわけさ」
「そうね 聞いているだけで楽しくなるわ しかしそんなに
予算が無いのかな パリも好調だし日本も好調よ どうしてかしら」
「うん 昨夜の話しではパリ本社は箱まで考えていないだろうと
言っていたよ」
「そうなんだ しょうがないかも知れないわね」
祥子は本社パリが動かなければ予算が出ない事は充分知っていたが
御殿場アウトレットの知名度が低い事にショックを隠せなかった
神山は祥子が元気を無くしてので
「ほら また祥子の悪い癖が出たぞ ここは割り切って考えたほうが
良いし 背伸びをすると無理が出てくるよ」
祥子は頷いては見たが何とかならないか考えていた
「御殿場アウトレットはゾーンエリアでも箱を造ることは出来るんだよ
ただし 色々と条件が厳しくなると思うがそれでも最低1億は掛かって
現状予算だと無理になってくる
そこでやはり箱の中をどうするかで勝負が決まってくると思うよ」
「そうなの アレックスジャパンはどの位掛けるの?」
「ハッキリしていないけど最低でも3億は掛かると思うよ
まだ何も出来ていないけど 敷地を換算するとその位の
箱ものを建てていかないと無駄になるね
逆にニーナ・ニーナがそんなに大きな建物を造っても
商品量が少なくて 逆効果になってしまうよ
そうすると費用対効果からしても無駄と判断され
計画自体がなくなる可能性が大きいね」
神山と祥子は運ばれてきたワインとステーキを食べながら
話しに夢中になっているとマスターの石原が
「そろそろガーリックライスに致しましょうか それともさっぱり系の
パスタにされますか」
「祥子はどうする」
「ええ そうしたら私はカルボナーラにするわ いい?」
「そうしたら 僕はアサリと紫蘇のボンゴレビアンコでお願いします」
石原がお辞儀をして神山に
「先程の多田さんと東条さんですが凄くやる気があって助かりました
ありがとうございます 助かりますよ」
「お願いしますね」
石原は再びお辞儀をして階段を降りて行った
「なあに 多田さん東条さんって」
神山は鈴や食品の御殿場アウトレット出店に関して東都食品を
絡める計画を分りやすく説明して今日のステーキ対決まで話した
「へぇ~すごい 調理士に勝ったんですね 凄いわね」
「うん それで鈴や食品の社員が武者修行をする訳です」
「それも思いきった決定ね 貴方が下したの」
「うん」
「それも凄いわね 貴方って 今は誰でも動かせるの?」
「そんなことは無いさ 理にかなった事をしているだけだよ」
神山と祥子はウエイトレスが運んでくれたカルボナーラを食べ
そのあとに出されたフルーツも食べた
神山は清算をして石原に二人の事を頼んで店を出た
二人は手を繋いで歩いていたが祥子が
「早く二人っきりになりたいわ」
神山はタクシーで上原のマンションへ向った
タクシーの中で祥子は頭を神山の胸に預けていた
マンションに着いて祥子の部屋に入ると祥子が抱き付いてきて
自分からベッドに横になった
神山も一緒に横になって戯れお互い裸になって交わった
「あっ あっ うっ うっ~ さみしかったわ」
「僕もさ 全然だし」
神山が上になって祥子は足を上げて腰を動かしていた
祥子の膣が締まって来たので神山が発射してしまうと祥子も昇天した
二人がくたびれるまで2回も交わり神山は
「ねえ 明日は早いの?」
「ええ 普通よ」
「そうしたら どうしようかな 明日は休みなんだ ゆっくりと
朝寝坊したいけど どうしようかな」
「う~ん 起こさないようにするわ 食事はいらないでしょ」
「うん そうしたら 私 駅で食べるから ゆっくり寝てて」
「分りました そうしたら 部屋に帰ってすぐ来るよ」
「ええ 待っているわ」
神山は自分の部屋に戻りFAXや留守電を聞いたが緊急性が
無かったので部屋着を着て祥子の部屋に入った
「ねえ 一緒にお風呂に入って」
二人は浴室で交わりベッドに戻ると直ぐに寝てしまった
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