神山と杉田は少し歩いた所にある中華料理店に入ると丁度サラリーマンの
お昼と重なって店内は込んでいた
二人は2階に上がって席を見つけてビールと餃子 野菜炒めを注文した
「屋敷君は出ていないのか」
「ええ 出る筈だったんですが 何か体調を壊して出ていません」
「そうか 翔も大変だな」
「しかし テツの分は僕が見ていたところですから大丈夫ですよ」
「うん 頑張ってな 頼んだよ」
話していると瓶ビールが2本と餃子 野菜炒めが運ばれてきた
このお店はけっして安くは無いが美味しくてボリュームが有るので
若い者には人気がある
杉田も美味しい事を知っているので箸が良く動いた 神山に
「先輩 食べないんですか」
ゆっくりと食べている神山は
「まあ そんなに焦って食べ無くてもいいと思ってさ
ところで 美佳さんと昨日はどうしたんだ」
「ええ 昨夜はちゃんと帰りましたよ また次の機会です
実は今夜も会うんですよ」
「そうか 良かったな いい人見つかって」
「しかし 問題が有りましてね 彼女が一人なんで 僕が養子で
向こうに入るようでないと難しいのです」
「翔は 妹が確かいたよな そうすると翔が出てしまうと 妹さんも
養子縁組になる訳だ」
「ええ そこで悩んでいます しかし あんなにいい女性は
鈴やにいないし 迷っています」
「向こうに入る事には抵抗は無いだろう」
「ええ 多少は有りますよ でもどうするのか分らないんです」
「難しいな 1,2年だけ別居して二人が落ち着いてから
ご両親と一緒って事も考えられるけどね」
「ええ しかし お金がもったいないし どうせなら最初から
一緒でもいいと思っていますよ」
「うん まあ時間はたっぷり有るんだ よく相談したほうがいいね」
神山と杉田は注文したラーメンが来たので話を中断して食べた
杉田はおなかが一杯になったと言って
「先輩 ご馳走様です いつもありがとうございます」
先に言われてしまったが神山は
「うん 午後からも頼んだよ 倉さんは分らないから
翔がしっかりと店内とウインドーを見てあげなさい」
「はい 分りました ありがとうございます」
二人は1階のウインドーに帰ってくるとデコレーター達はすでに
仕事を始めていた 神山はデコレーター達に手を振って次長室に戻った
神山は御殿場アウトレットのニーナ・ニーナや鈴や食品の
ブースデザインをラフスケッチで何枚も書きあげていった
一応大人と子供の融合性だったが おじいちゃんやおばあちゃんも
孫と楽しめるようなそんな事を考えていた
神山は時計を見るとまだ16時なので冷蔵庫からコーヒーを出して
飲みながらタバコを吹かした
TVをつけて見ると日本各地の温泉めぐりという番組が放映されていた
山に囲まれた秘境にある温泉だったり温泉宿の露天風呂だったり
神山も行ってみたいと思うところが一杯登場してきた
いいなと思った温泉を整理すると何かが見えてきた
神山はスケッチブックに考えついた事をどんどんとスケッチしていった
次長席に戻りスケッチを整理していると18時前になった
神山は帰り仕度をしてタクシーで赤坂のアメリカナ大使館へ向った
ジョン ブラームスは部屋で待っていて神山が来ると玄関に現れた
二人は握手をして近くのタクシーで上原に向った
上原の駅前寿司に入ると女将が
「奥でお待ち兼ねですよ」
と 案内してくれた
洋子が先に来ていて神山を見るとニコニコと笑顔で迎えた
ジョン ブラームスが
「洋子さん こんばんわ」
「ジョン ブラームスさん こんばんわ」
2人が座ると女将がビールと鮮魚の盛り合わせを持ってきた
神山が先日のお礼をジョン ブラームスに言いプレゼント渡した
「おお 素晴らしい 綺麗な漆だね」
ジョン ブラームスはきにいってくれたようだった 洋子がメモをだして
「ここに書いてください 滑らかでもっと気に入りますよ」
彼は言われた通りメモ紙に色々と書いたが滑らかな書き味に
「うん 素晴らしい ありがとうございます」
神山と洋子は彼が喜んでもらった事にほっと安心した
ジョンが
「本国に強制送還するボーンはいままでも何回か恐喝をしていて
こちらでもマークはしていたが 上手く逃げていた
今回 神山さんのお手柄で強制送還出来る事になった
こちらこそ ありがとうございます」
神山はアレックスジャパンにとっても彼は不要な人物だと言うと
「しかし 神山はアレックスジャパンの副社長なのか?」
「いや 違うよ 最高責任者だよ アレックス氏に確認すれば分ります」
「おお 社長より権限がある訳か 素晴らしい」
ジョン ブラームスは改めて神山と握手をした
「なにか大変な事が起きたら この電話番号に電話を下さい
出来る限りの事はします 例えば車の事故とか公にしたくない時などにね」
彼はウインクをしながら神山に自分の携帯番号を教えた
3人は美味しい鮮魚を味わって彼も機嫌が良かった
神山は日本酒も勧めジョン ブラームスも美味しい酒だと言って喜んだ
「アレックス夫人の大ファンだ 現役のモデルでは最高に綺麗だし
頭も良かった ほんと残念だ見られなくなって」
「まあ 時々来日するからその時に会えばいいじゃないか」
「う~ん でもモデルではない 私はモデルが見たいのだよ」
「そうか 夫人では違うという事か 難しいね」
洋子が
「そうよね モデルの彼女が好きで夫人の彼女は普通の女性になる訳でしょ」
「う~ん そうですね」
3人はアレックス夫人の話で盛り上がって20時になっていた
神山はそろそろ巻物が欲しくなり女将に注文をした
運ばれたネギとろ巻きを食べたジョン ブラームスは
「これは美味しい 赤坂の寿司屋では無いよ こんなに美味しいのは」
神山と洋子はこの寿司屋を選んで良かったと頷いていた
ジョン ブラームスはお酒のせいか顔が赤くなり神山に指摘されると
「神山さん 美味しかった ありがとうございます
今夜はこれ以上呑めない 楽しかった 又 会いたいですね」
「ええ 是非お会いしましょう 今夜はありがとうございます」
神山と洋子は玄関を出てタクシーをつかまえ彼を乗せた
席に着いて残った物を食べると
「さあ 我々もそろそろ帰ろうか」
「ええ では清算をしてきますね」
「お願いします」
洋子が清算をすると
「本当に安いわね 潰れるんじゃないかと心配するわ」
「幾らだったの」
「ええ 1万5千円ですって」
「うん 安いよなほんと さて それではお疲れ様でした それは?」
「ええ 母のお土産よ いつも私ばかりだから巻いてもらったの」
「いいね これから僕もそうしよう 夜食にちょっとってね では」
「ええ お疲れ様でした」
洋子は神山にお辞儀をして別れタクシーで自宅に戻った
神山は歩いてニーナ・ニーナを覗くとすでに閉店していた
夜になるとさすがに人通りが少なくなって 静かな町になっていた
部屋に戻るとFAXも来ていなかったのでシャワーを浴び
冷蔵庫からビールを出しテーブルで呑んでいた
神山はアレックスジャパンのブースと鈴や食品のブースは
なんとかたたき台を作ったがニーナ・ニーナのラフスケッチはまだ
ぜんぜん手をつけていなかった
エリアゾーンで展開すると決まった箱の中でしか展開できず
かといってフリーゾーンだとそれだけの商品量が無いし困っていた
エリアゾーンで箱物を造るだけの価値があるか考えた
選択肢として 予算に余裕があればフリーゾーンの箱ものの建設
予算が無ければ既存の箱もので内装勝負と二案を考えた
まだ21時だったので筒井に電話をした
「神山ですが 夜分申し訳ございません」
「いや 山ちゃんどうされましたか」
「ええ 先日御殿場アウトレットの件で静岡県庁の国土開発へ出向いて
御殿場アウトレットの基本的なコンセプトを聞いてきました」
神山は筒井に分りやすくその日の内容を伝えた上で
「ニーナ・ニーナのブースの規模をどうするかで悩んでいます」
「うん 結局 本社のパリがOKを出さない限り予算内で仕事を
進めていかなくては駄目になります いまの山ちゃんの話だと
箱を造る気持ちはよく分りますが そこまで考えていないでしょう
これから予算を貰う事は可能としても50%アップがせいぜいでしょう
ですから 既存の箱に入るしかないと思いますよ」
「予算は 幾らくらい有るのですか」
「ええ 3千万円位ですね」
「そうですか そうすると箱は無理ですね」
「うん 難しいね」
神山は箱を造る事を諦め 既存の箱の中での展開を考えた
「筒井さん 既存の箱が何処まで出来ているかは6月になると分ります
そこで その予算内で出来る事やいろいろとシュミレーションします」
「うん お願いします」
電話を切ってニーナ・ニーナのデザインが一番難しいと考えた
神山はテーブルで色々とデザインを出していったが
これと思ったものは出てこなかった
どれも既存のニーナ・ニーナのイメージが強かった
いいアイディアが出ないでタバコを吹かしていると携帯がなった
「はい 神山ですが」
「わたし 亜矢子です こんばんわ いま大丈夫ですか?」
「ええ 一人ですよ 遅くにどうしたの?」
「ええ 当ったわ みごとにダブルで1等賞よ」
「えっ また1等賞? ほんと」
「ええ 今日の夕刊を何回も見直したわ 大丈夫よ」
「それで幾らなの」
「ええ 私の方が2億5千万円 1等が1億5千万円で前後賞が
5千万円が2本で1億 合計2億5千万円よ 貴方も同じよ」
「へぇ~ どうしようね 凄すぎて分らないよ」
「ええ 私も怖くなったわ もう買わないわ」
「うん 僕も怖いよ」
「それで 2億5千万円はまだ1週間先になるけど振り込むわね
それと昨日振り込んで置いたわ 見た」
「ごめんなさい まだ見ていないよ」
「こんど換金できる次のお休みだから 5月14日の木曜日に
振り込むわね 良いでしょ」
「うん しかし僕が全額とはいかないから洋子さんにも
振り込んでくれる? これから調べて連絡するよ」
「ええ そうね余り気にしないと思うけど お金だからその方が
いいわね 携帯に電話をしてください」
神山は電話を切ると洋子に電話をすると
「ふぁ~ 凄い でもいいのかしら 頂いて」
「うん 亜矢子さんも2億5千万円をきちんと受け取ったし
洋子は1億で良いかな?」
「多いわよ でも頂くわ では口座番号を言いますね」
神山は口座番号と振り込み額を確認して電話を切ると
亜矢子に直ぐ電話をして承知しましたと言い電話を切った
神山は時計を覗くと23時なので祥子に電話をしたが通じなかった
多分新幹線の中だろうと思い留守電にこれから寝るメッセージを入れた
5月7日 木曜日 晴れ
何処で鳴っている携帯の音で目が覚めた
「はい 神山ですが」
「私です 祥子よ おはようございます」
「やあ おはよう どこ」
「ええ お部屋よ 朝ご飯の仕度できたわよ こない」
「うん ありがとう シャワーを浴びていくよ」
神山はシャワーを浴びて部屋着で祥子の部屋に行くと
「ごめんなさい 何時も 電話を貰っておいて」
「うん まあ仕方ないさ」
神山と祥子は軽いキスをした
「本当に何時もごめんなさいね 朝食も出来なくて」
「いやいいよ 仕事だから仕方ないさ それより御殿場アウトレットの件で
段々と分ってきた事があるよ」
神山は先日の静岡県庁の話や昨夜の筒井との会話を説明した
「そうすると ニーナ・ニーナは既存の建物の一ブースの中で展開する訳?」
「そうだね だから上原のアンテナショップと同じさ」
「そうなると デザイン的には現状維持が濃厚ですね」
「うん いま考えている所さ 大変だね こちらも参ったよ」
二人は朝食を食べながら上原のアンテナショップの話をした
「うん 祥子の言う事は分るが営業時間を引き延ばしてどれだけの
データーが集まるか疑問だね それに勤務時間の問題が大変だろう」
「ええ 残業をしていると中を覗くお客がいるのね だから
今は20時で閉店しているけど22時にするとかどうかなって」
「うん 本当に興味があれば営業時間内に来るよ
だって休みが無い訳では無いしね」
「そうね」
「そうさ 昨夜だって閉店後暫く見ていたが誰も覗かなかったし
と言うより 人が歩いていなかったよ」
「そうか そうすると計画は止めたほうが良いわね」
「うん 後はどこかに隠れていて覗いていくお客の人数を
チェックするしかないけど 費用対効果で考えると
22時閉店はマイナスだと思うよ」
二人はおしゃべりをしながら食べると8時になっていた
「ご馳走様でした 今日は銀座?」
「ええ 本社によってから銀座へ行きます 貴方は」
「うん もう少しして銀座に行く」
「そうしたら 私 早めに出ますね」
「うん 分った」
神山は食器をさげるのを手伝って自分の部屋に戻った
部屋に戻るとまだ時間が有ったのでベッドに横になった
暫くするとドアフォンが鳴ったのでモニターを見ると祥子だったので
ドアを開けると
「では 行って来ますね 今夜また電話をください 出ますから」
そう言い軽くキスをした
エレベーターまで見送ると祥子が
「今夜 お願いね」
「なにが?」
祥子はニコニコして神山のおちんちんを触って
「ここです」
そう言うと顔を真っ赤にしてエレベーターに乗った
部屋に戻ると再びベッドに横たわり寝てしまった
神山は再び電話の音で目が覚めた
「洋子です どうされましたか」
「うん ごめん うたた寝をしてしまった」
神山は時計を見ると10時になっていた
「これから次長室に向います 何かあった?」
「緊急では有りませんが 内藤社長から小谷美佳さんの昇進の件は
了承したとFAXが入っているだけです」
「ありがとう これから出るよ」
神山は仕度をしてタクシーを拾い次長室に向った
まだ5月なのに夏を思い出させるような強い陽射しが眩しかった
渋谷でも青山でもみんな夏の格好をしていた
次長室に入ると神山は洋子に
「いやあ ごめんなさい ビール呑んでいて寝てしまった」
「ええ 何時も連絡が有るのにないから心配しました」
「ありがとう」
神山は洋子がスーツを着ているので
「今日 何か有った?」
「ふふふ たまにはこの制服も着てあげないと可哀相でしょ だから」
「そうか いいね 朝から元気が出てくるよ」
洋子はニコニコしながら次長席に来て振り向いてお尻を向けた
神山は何も穿いていないお尻を見せられ
「おいおい 何をしているの もう ほんと あ~あ」
「ふふふ 脅かしただけよ さあお仕事 お仕事」
そう言い ポケットからショーツを出して神山の目の前で穿いた
ここまで大胆に行動を起こされると神山の調子も狂ってしまった
神山は気を取り直し鈴や食品の黒江亮二常務に電話をした
「黒江ですが」
「次長の神山です」
「神山様 この度はご昇進おめでとうございます 済みませんでした
オートモでお話が出来なくて」
「いえいえ こちらこそ遅くなって済みません」
「時田社長からも神山様に任せなさいと言われているものですから
こちらからご連絡を控えていました」
鈴や食品の社長は鈴やの副社長 時田清三郎が勤めている
鈴やが100%出資という事で人事の交流も行われている
「ところで 黒江さんに伺いたいのですが 味のわかるコック長を
どなたかご存知無いですかね」
「そうですね 例の東都食品に関係しますね」
「ええ 御殿場アウトレットで鈴や食品の傘下で
動いてもらうつもりなんですが いかんせん戦力不足で
作戦負けをしてしまいますからね こちらも揃えたいんです」
「えっ 東都食品をうちの傘下に ですか それは初耳です
ありがとうございます しかし どうでしょう
腕の立つコック長が多いですからね 調べてお電話をします」
「はい お願いします それと牛肉を焼かせたら一番と言われる人も
お願いしますね」
「はい 分りました 直ぐに調べます」
神山は鈴や食品に示す御殿場アウトレットのスケッチを何枚か用意して
デジカメで写真をとってPCに移し画像処理をした
洋子が気になって神山を見ても後ろ向きで作業をしているので
「ねえ 何しているの」
「仕事 もう少し待っていてね 出来上がったら見せるよ」
そう言い 画像処理に集中した
神山が洋子の脇のある60インチモニターのスイッチをオンにして
PCの場面を映し出すと綺麗に色がつけられたスケッチが映し出された
「ふぁ~綺麗 素敵ですね これは鈴や食品のブースですか」
「うん そのつもりだが まだたたき台でデザインは未定さ」
見ていると神山のデスクにある電話が鳴って
「はい 神山ですが」
「どうも済みません 遅くなりまして 分りましたが どうしましょうか」
「ええ そうしたら 2時になればコック長は空きますかね」
「ええ 大丈夫です あと牛肉を上手に調理する人間もわかりました」
「そうしたら 2時に一緒に次長室まで来て下さい
それと その方の腕を見たいので3時からどこか厨房を
貸して頂く事と 牛肉を20人分位 美味しいブロックを用意してください」
「えっ 20人もですか、、、」
「それでしたら 私がお金を出します まあ10万も出せば充分でしょ」
「ええ 非常にありがたいお言葉なのですが
ブロックは大体 50人分位の大きさなんです」
「良いですよ お金の事を言われるんでしたら 一番高い牛肉の
ブロックを大至急仕入れてください お金はこちらにこられた時に
お支払いします いいですね」
「はい 分りました それでは手配をします」
神山は副社長の時田にこの事を報告すると黒江の対応を凄く怒ったが
「社長 それで3時からその腕の立つコックを検証します
それで場所が決定しましたら秘書室までご連絡いたします」
「うん わかった そうすると 美味しいステーキが食べられる訳だな」
「ええ 多分 ですからお昼は軽めにお願いします」
「うん わかった しかし黒江も山ちゃんにそんなこと言ったか
我社を思って動いてくれているのにな 酷いなまったく
だから業績が上がらないんだ まったくな すまんすまん」
「では お願いします 秘書の方も2,3人OKですよ
お肉の量からいくと充分余裕ですから それから
池上店長も検証に立ち会って頂こうと思っていますが
私から 直接お電話しても宜しいでしょうか」
「ああ ワシから言っておく 3時だな 場所を教えてくれ」
「はい 了解しました」
「それと山ちゃん、、、」
「はい」
「どうだ その後」
「えっ 何がですか?」
「洋子とうまく行っているかって事 この頃二人ともこの部屋に来ないから
寂しいんじゃ」
「ええ 上手く行き過ぎていますよ 大丈夫ですよ ご安心下さい」
「そうか わかった では連絡を待っているぞ」
神山は電話を切ると直ぐに催事課の奥村課長に同様の内容を伝えると
「わかった なるべく全員で行くよ ありがとう」
神山は洋子に主旨を話して本社人事課で参加してくれる女子社員の
参加を募るよう指示をした
「何人ですか」
「うん 業務に支障が出ない程度でいいよ」
神山は人数が多すぎると焼き立てを食べられなくなるので20人位を
想定した
一応午後の牛肉試食会の件が終ってタバコを吸っていると黒江から
「神山様 先程は大変失礼致しました 只今社長からおしかりを
受けました 申し訳ございませんでした そこで私どもで
牛肉の負担をさせて頂きます」
「そうですか 良いですよ 私が出しますよ しっかりといい肉を
注文してください」
「はい でも、、、」
「貴方も分らない方ですね 私は最高級の牛肉が欲しいと頼んでいるんです」
「はい 分りました ではそのように致します
それから やはり従業員食堂の厨房が大きいのでそこを確保しました
あと 牛肉料理の上手な人間も確保しました 2時に伺います」
「お願いしますね」
神山は催事課と本社秘書室 人事課へ場所の決定を連絡した
「さあ そろそろお昼だけど どこにするか」
「3時のおやつにステーキでしょ そしたらパスタかな」
「あそこか うん いこう」
神山と洋子はまだ12時になっていないが次長室を出て
イタリア料理店に入った
ランチの時間はどこのお店も込み合うが少し前に来ると空きが目立った
「こうやって 外が見える場所も良いわね」
「うん 雨が降っていてもそれなりの情緒があるね銀座は」
二人はパスタとピザパイを一人前ずつ頼み
サラダを2人前注文しビールも注文した
テーブルにサラダとビールが来ると乾杯して呑んだ
「洋子 今日は面白い事になるよ」
「なに?」
「内緒だよ 僕もステーキを焼く」
「えっ なんで プロでしょ 来る人は」
「うん プロでも何でも良いさ 僕が今まで調べたデーターで
どこまで出来るか挑戦したいんだ」
「ふぁ~凄い事するわね まあそこが貴方のいいところね
負けても勝っても関係なく実力を試すわけね
だけど 無いと思うけど向こうが負けたら大変じゃないの」
「そうしたら 勉強さ それしかないでしょ」
「ええ そうね」
「だって 実力が無いのに駄目でしょ やはり美味しいく
調理をしてもらって 幾らの世界でしょ」
「そうね しかし貴方と戦う相手は大変ね ボーンにしても
アレックスJrにしても 東都食品にしても みんな貴方が
戦って負かしてきた相手ですもん 私 戦わなくて良かったわ」
「また ぼくはいつも洋子に負けているよ」
「そんな」
「時田さんが 寂しがっていたよ この頃部屋に来ないからって」
「でもね 用事を作らないといけないしね そんなねえ」
「で 上手くいっているのかって だから上手く行き過ぎていますよって」
「それで」
「うん 喜んでいたよ そうか うん そうかって まあ嘘でもないし
ある部分困るしな~」
「私は 良いわよ 貴方次第だから ぜんぜん気にしていないから」
「もう 苛めないでくれ 今日はどうしたの」
「いえ 全然 普通よ」
二人はボトルワインを頼んでピザとパスタを平らげた
「あ~ 食べた 洋子と食べると美味しいや」
「また ほんと」
「うん ほんとだよ あと亜矢子さんの時もそうだけどね」
「やっぱりね、、、でも亜矢子さん凄いわね 私も自分だったら
怖くて買わないわよ」
「うん 僕も怖くなってきたよ だってゴルフでも上手く行ったでしょ
ほんと 信じられないよ」
「ねえ 今日は赤パン?」
「ううん 違うよ」
「そうしたら縁起を担いで 赤パンを買いにいこう」
洋子は神山の手をひっぱって他のデパートのランジェリー売場に行った
神山は大勢いる女性客に混じって洋子と一緒に売場を歩いた
「あったわよ これって この間 熱海で買ったのと同じよ」
そう言い 5枚も買って
「どうするの こんなに買って」
「良いじゃない 部屋が3箇所あるわけだから2枚ずつでもおいて置けば」
「まあ わかった ありがとうございます では試着をしましょうかね」
「もう ば~か なに言っているの ほんと」
洋子が清算を済ませて次長室へ戻る時に神山が
「酒売場でワインを買おう ステーキには欠かせないしね」
「そうね そうしたらニンニクとブラックペッパー お塩ね」
神山と洋子は地下の食品売場で3時の準備をした
ワインはどんな肉が用意されるか分らないので
ライトボディーとミディアムボディーを神山と洋子は何種類か試飲して
5本ずつ買って次長室へ戻った
神山は早速ワインを冷蔵庫に入れて冷やした 全部で8万円ほど掛かった
暫く先程のスケッチをPCで画像処理していると洋子が
「只今 黒江様がお見えになられました」
そう言い次長室のドアを開けると3人がスーツ姿で入ってきた
神山がソファーを勧め洋子がお茶を用意した
「黒江さん いらっしゃいませ」
「ありがとうございます 神山様」
「さて 早速本題ですが この絵を見て頂きたいのです」
神山は60インチのモニターに御殿場アウトレット 鈴や食品の
ブースをスケッチした画像を説明しながら見せていった
黒江は説明を聞いている時は嬉しそうだったが終ると
「しかし 神山様 どうでしょうか 予算は?」
「ええ 1億は掛かりますね」
「へぇ~1億ですか 無いですよ そんなに」
「ええ お金はこれからです この案の概略は社長の時田さんは
ご存知で賛成をして頂いていますよ まあこれはあくまでたたき台です」
「神山さま ご存知だと思われますが 当社は従業員を相手にしている
会社です ですからこの様なブースまでは如何と感じています」
「分りました 兎にも角にもお金は抜きにして如何ですか
方向性を尋ねているのです
例えば テナントを募っても良いと思われますが どうでしょう
何のために出店をしたか分りませんよね そこでどのようにされたいか
お聞きしているんです」
「ええ 先程も申し上げましたように何しろ神山様に任せておきなさいと
指示でしたので 何も考えていません」
「そうですか では 私の案は先程説明した通りですが 何かご提案が
有りましたら ご連絡を下さい」
黒江が
「申し遅れました こちらがコック長の多田美智雄で若い方が
調理師の東条忠徳です 二人とも肉料理は得意と聞きましたので
ここに来てもらいました」
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