「じゃ 明日頼みます」
「はい おやすみなさい」
神山は時田の車で大通りで降り タクシーを拾った
時計を見るとまだ21時を過ぎたばかりで 洋子に電話をした
「はい 洋子です どうされましたか」
「うん これからラーメンでも食べないか」
「わぁー ラーメンですか いいですよ 余り入らないけれど」
「うん そうだ そうしたら上原の寿司屋に行っているよ」
「はーい 直ぐに伺います」
神山は運転手に上原に行くよう行き先を変更した
駅前寿司に着くとニーナ・ニーナの由貴と桃子がいて
「わぁー どうしたんですか お帰りなさい」
「ははは ここが落ち着くからね 来ました」
女将がニコニコして ビールとおつまみを運んできてくれた
「神山さん GOLってそんなに規模が大きいんですか」
「うん そうだな 東京ドームの6倍は優にあるよ」
「そうなんだ だからチーフはリピートを増やさないと潰れるって」
「そうだよ リピートが少ないと売り上げが減る そうすると
どんどんと下降線をたどり 遂には閉店に追い込まれるよ」
「今日はパリのモーガン副社長が会議に同席され 神山さんが
予算を捻出したと チーフも喜んでいましたよ」
神山は箱で営業しても 最初は物珍しさで売り上げはあるが
そのうちにリピーターも減り存続が危ぶまれると説明したと話した
由貴と桃子も神山の話はよく分かり モーガンが来日している
タイミングで会議に出席できたことはラッキーだと言った
もともとモーガンは日本繊維開発会議に出席する為に来日し
御殿場は眼中に無かった それが昨日神山の発言で 御殿場の会議に
出席をし認識を改めたと話をした
「それでその会議っていつなの」
「ええ 本会議は明日だと聞いていますよ 筒井から聞きました」
「そうか そうそう あのスーツ 世界で3着しかないスーツ」
「ええ」
「それを見せてくれって言うので 見せたら 今度は紳士も作ろうかって
勿論冗談だろうけど 喜んでいたよ」
「やっぱり 持っている人が素敵だと 格好いいからなぁー」
「お待たせしました」
「わぁー 洋子先輩 どうしたんですか」
「ふふふ 神山さんに呼び出されたの ねぇー」
「うん ラーメンを食べたくなってさ それで呼んだんだ」
「またまた でもいいか」
「さっきまで 社長と一緒だったよ」
「まぁ お疲れ様でした ふふふ 言われたでしょ」
「うん もう少し待ってくださいって 話した」
「ふふふ 違うでしょ 仕事ではよきパートナーでも 実生活では
難しいって そう言ったんでしょ」
「えっ どうして まさか」
「そうよ まさかよ」
神山は元気をなくし 俯いてしまった
「ねえねえ あなた 副社長でしょ おめでとうございます」
「うん 洋子だって理事じゃないか」
「ふふふ 乾杯ー」
由貴と桃子はきょとんとしているので洋子が
「アルタで副社長になるのよ 7月1日に ねぇー」
神山は時田が何処まで話をしたか分からないので 鈴や食品の
副社長と洋子の理事の件は伏せておいた
「でもさ お給料だって そんなに上がるわけじゃないんだよ
まだ 聞いていないけれど ほんと有名税の方が高いよ きっと」
神山たち4人は寿司屋を出ると由貴と桃子もラーメンを食べるといい
渋谷まで歩き 有名なラーメン屋に入った
「洋子 明日朝一番で 社長に電話をして 口座番号を聞いてください」
「どうしたの?」
神山はニーナ・ニーナのブースが神山の考えている通りできると
鈴や食品ブースもそれなりに造るのに 予算が足りなく
神山自身のお金を時田に出資する事になったと 話をした
「わぁー 凄いわね そんな大金を出資するなんて 分かりました」
「そうそう ゴルフ優勝だって だからそれも褒めれば喜ぶよ」
「そうなの へぇー 神山さまさまね」
神山はこのとき 時田から電話が入っていないと感じたが
先ほどの件も含め 聞くのは止めておいた方がいいと思った
「あーあ お腹一杯です ご馳走様です」
「ほんと 私 また太るわ ふふふ」
「じゃ 洋子 悪いけれど二人をお願いします」
神山は洋子に1万円を渡すと タクシーを拾い見送った
次のタクシーに乗り 今回は真っ直ぐにスタジオに帰った
「お帰りなさい」
「ただいま 今日はありがとう」
神山は着替えを済ますと スタジオで寛いだ
「祐子 ビールを呑みたいな 一緒に呑もう」
祐子は頷くと ニコニコして缶ビールを持って神山の隣に座った
「お中元の話はどうなりましたか」
「ええ 明日だったら3時に伺えますって」
「うん じゃあ そうしよう 準備をして待つようにするよ」
祐子は電話のところに行くと 会社に連絡した
「祐子 こんなに遅くても大丈夫なの?」
「だって 仕入れって24時間体制ですよ だから大丈夫です」
「そうか、、、しかし凄いシステムだね」
「それでね コンテナ1台分ったら驚いていたわ ふふふ」
「まあね でも これから増えそうだ 困ったなぁー」
「また増えるんですか」
「うん 今日また仕事が増えた 決裁権のない理事だがね」
「わぁー 凄いですね おめでとうございます ふふふ」
「でもね お中元や贈り物が次長室に山となって 仕事にならないんだよ
だから 今回も配送課の倉庫を借りて保管しているんだ」
「そうですよね 仕入れの人もコンテナ1台分ですかって
驚いたまま 声が出なかったわ 普通バンで回っているんですよ
だけど明日は 大きなバンで伺いますって そう言ってました」
「ははは これからトラックが必要になるぞ もう あーあ」
「あなた 贅沢な悩みね ふふふ」
神山と祐子はシャワー室で戯れると
「ねえ ベッドに行きましょうよ」
神山は頷くと 湯船からでて シャワーで流した
祐子が出ると バスタオルで体を拭いてあげた
神山はソファーでブランデーを呑むと祐子は
「私 昨日呑みすぎたのかしら 少しにしておきます」
祐子は自分のグラスに ブランデーを少し注ぐと神山と乾杯した
主賓室のカーテンは開けられていて 庭の照明が綺麗だった
特に紫陽花のところは光線が射し込み 可愛く綺麗な花びらが
夜の芝生にぽっかりと浮んでいた
神山と祐子は庭の芸術を楽しんでいる時に神山の携帯がなった
「やあ 亜矢子 どうしたの」
「ふふふ 良かったわ 起きていて ねえ由紀枝さんが大変よ」
「えっ 大変てどうした」
「もう 若い子の話になると血相を変えるんだから ふふふ」
「おいおい 意地悪言わないでよ」
「実はね 昨日の事だけど 宿泊者の男性が呼吸停止状態になったの」
「えっ そんな、、、」
「ええ それでコールがあって 由紀枝さんが人工呼吸を施し
直ぐに救急病院に搬送されたんだけど そのときの判断がよかったの」
「うん」
「救急車にサイレンを鳴らさないで来て貰う事と 正面玄関ではなく
従業員出入り口につける事など 適切な判断をしたの」
「うん 分かるな」
「それが 御殿場市の議員さんで 女性は奥さんじゃ無い訳なのよ
だから 秘密裏に行動した事に凄く喜んで 今日ホテルに来られて
椿に是非 秘書として迎えたいって」
「へぇー 気に入られたんだ」
「ええ その場に居た女性にこう言ったそうよ
身内の方なら 病院まで一緒に行ってください でなければ 裏口から
静かに出られた方が いいと思います って」
「へぇー 凄いな 良くそこまで気がつくね」
「結局 議員さんの意見だけではなくて その女性が後押ししたのね」
「で 由紀枝は秘書か」
「ううん 私はここの職員だから出来た事で 秘書なら出来ませんって
そう電話で話をしたらしいの そうしたら椿が喜んで 由紀枝さんが
サブになったのよ もう信じられないわ」
「えっ サブになったの へぇー 凄いね」
「でしょ 多分由紀枝さんは自分から言わないから知らないと思って
電話をしてあげて 喜ぶわよ」
「うん ありがとう 凄いな」
「ふふふ 寂しいから来てね」
「うん 今はちょっと忙しい ごめんね」
「ふふふ 副社長 おめでとうございます」
「なんだ 知っていたのか もう 困ったものです」
「じゃ おやすみなさい」
神山は祐子に掻い摘んで話をして由紀枝に電話をした
「ふぁーい 由紀枝でーす もうお休みしていまーす」
「やあ 神山です」
「わぁー こんばんわ お久しぶりです 元気? 目が覚めました」
「由紀枝 おめでとう サブマネジャー」
「わぁー そうなの ふふふ なっちゃったぁー
でも普通の事をしただけなのに 大げさよね もう困っちゃうわ」
「まあまあ 僕も普通のことをして 副社長になった」
「ぎゃはぁー 副社長 って ほんと」
「うん それも2つの会社だ」
「ぎゃー 2つも 凄いじゃん やったぁー」
「まあ 僕より由紀枝の方が良くやったと思います
適切な判断 相手を気遣う気持ち 僕は嬉しいよ」
「ねえ 早く逢いたいね 待っていますね ふふふ」
「うん ちょっと待ってね 祐子と代わるね
由紀枝さん おめでとうございます 凄いわね」
「祐子さん お久しぶり そうなの でもね お部屋でぱっと見たときに
このカップル 夫婦じゃないって 直ぐにピーンときたんだ
だから女性に逃げてもらった方が いいと思ったの」
「そうなんだ でもその判断が間違っていなくて 良かったわね」
「そうそう 後で考えると ちょっと恐ろしくなったよ ふふふ
ねえ こっちにおいでよ ゴルフをしよう」
「ええ 神山さんが今大変な時期みたいなの だから落ち着いたらね」
「そうね でも副社長が2つって凄いわね」
「私も初めて聞いたわ」
「あっ そうだよね 神山さんって言わないもんね じゃ おやすみなさい」
「はーい 頑張ってね」
「うん ありがとう」
電話を切ると祐子が
「みんないいなぁー」
「どうして?」
「だって みんなから感謝されているでしょ 私は神山さんだけだもん」
「ははは そうだね でも僕は最高のメイドだと感謝しているよ
それでも 不満かな」
「わぁー ほんと 嬉しいわ ふふふ」
二人はブランデーを呑干すとベッドに入った
神山と祐子は交わり 抱き合って眠りについた
6月25日 木曜日 小雨
神山が目を覚ますと 祐子は少し幼さを残した可愛い寝顔だった
起こさないよう 部屋のガラス戸を開け 空気を入れ替えた
昨日見た紫陽花が雨に濡れていて 綺麗に輝いていた
神山は濡れてもいいように トランクスとTシャツを着て
デジタルカメラを持ち 庭に出た
マクロで撮影するが なかなか上手に撮影できなかったが
素人にしてはまあまあの出来栄えと 自分を褒めた
撮影する時に どうしても傘の柄が邪魔になり 神山は背中に差した
両手を使えるが 今度はカメラを前に出しすぎると 雨に濡れ止めた
何枚か撮影すると 事務所でPCにコピーし大きなモニターで見ると
ピントが少し甘いのが発見でき 次回から気をつけようと思った
祐子がスタジオに下りてくると神山は
「祐子 見てご覧 この写真」
神山は先ほど撮影した 紫陽花の写真を見せた
「わぁー 可愛らしくて 綺麗に撮れましたね どこですか」
「あそこだよ」
「へぇー 接写をしているから分からないけど 綺麗だわ」
「祐子も撮影をしたかったら デジカメを買うよ」
「わぁー 嬉しいわ ではデートの時に買ってくださいね ふふふ
さあ 朝食を作りまーす ビールを呑まれますか」
「うん お願いします」
神山は缶ビールを受け取りに行くと デジカメで祐子の顔を撮影した
祐子はニコニコしたり わざと怒った顔をしたり 表情豊かに撮影できた
60インチのモニターで見ていると 祐子が
「ぎゃぁー なあに もう そんなに大きくして」
祐子はモニターのところに自分の顔をつけて こちらを向き
「どっちが 私だ ふふふ 綺麗かしら」
「両方とも 綺麗だよ うん モニターを見てご覧」
神山はその時に 自分のおちんちんを見せた
「ぎゃぁー 変態 なあに もう でかすぎるぅー」
祐子はおちんちんの先をペロペロする仕草をすると 神山ににやっとして
「はーい あとは今夜デース」
そう言うと 朝食の調理に専念した
暫くすると
「どうぞ 簡単ですよ 出来ました」
「ありがとう 焼き魚がいい匂いだね」
「ありがとうございます 漸く上手に焼くコツが分かりました」
「うん この頃は以前より美味しいもの 勉強しているね」
「だって 美味しい方がいいでしょ 私もあなたも」
神山は嬉しかった
ご飯が良く進み 御代りをして綺麗に食べると祐子がお茶を用意した
次長室に行くと神山は鈴や食品のデザインを見直した
いままでは 鈴や食品6億 東都食品6億合計12億のプランだが
鈴や食品で12億となれば 合計で24億のプランが出来 各ブースの
連結部分にお金を掛けられると思った
鈴や食品のプランも当初案に戻し 神山が考えていたプランで
進める事が可能になった
神山は自分のデザインを何枚も書き直し アレックスブース
ニーナ・ニーナブースとの関連性を持たせた スケッチをした
3ブースの全体像が書けた時に 神山は喜んだ
これなら絶対に存続間違いなしと 自画自賛した
神山が喜んでいるところへ洋子が出勤してきて
「おはようございます 早いですね」
「洋子 出来たぞ これだよ これ」
洋子は神山が持ってきたパースを見ると 笑顔になり
「漸くあなたの夢が叶うのね おめでとうございます」
神山は興奮していて 洋子にキスをし
「これでおじさんに 恩返しが出来るな よかった」
洋子は神山は今まで時田のことをおじさんなどと言わなかったので
よほど嬉しいのだと 思った
「洋子 昨夜亜矢子から電話があって 由紀枝が昇進したって」
神山は亜矢子からの電話内容を掻い摘んで話をすると
「凄いわね 私には出来ないわ 亜矢子さんも驚いたでしょうね」
「うん 面白いのは 私は普通の事をしただけなのに 大げさよね
だって 僕と同じ心境だったんだ でも良くやったね」
「ええ 自分が信念を持って行えば 結果は後から付いて来るのよね
そのいい見本だわ 社員や外商に聞かせたいわね 本当に」
「おいおい 分かった ははは それで今日は鈴や食品は誰が来るの」
「ええ おじ様は欠席でしょ 黒江常務はもうこのプランから外れていて
結局 あなたしか居ないのよ」
「えっ それならさ 時田さんを呼ぼうよ 頼む」
洋子はしぶしぶと時田に電話をすると来てくれる事になった
「ありがとう でもプライベートな話は無しだよ いいね」
「ふふふ 分かりました」
9時30分を過ぎたときにアレックスJrから電話が入った
「はい 神山です」
「神山さん おめでとうございます」
神山は何について おめでとうを言われているのか分からなかった
「うん」
「凄いじゃないですか 繊維協会の理事って それも4箇所も理事
そうそう 午後に伺います」
「うん お待ちしています では」
神山は想定内の事態が起きてきたと思い
「洋子 実は繊維関係4協会の理事になった それでこちらに
電話は無いと思うけど 何かあったら 協会の方に振ってください」
「えっ また理事職が増えたんですか、、、」
「ああ 困ったものです」
洋子は 正直これ以上贈り物の整理はしたくないと思った
「あのー お言葉ですが お仕事が出来なくなりますよ
お中元って これからが本格的になるでしょ あーあ」
「おいおい 秘書が嘆いてどうするの 僕が嘆いているのに もう」
又 電話が鳴った
「はい 次長室です」
「ニーナ・ニーナの筒井です 山ちゃんは居ますか?」
「はい お待ちください 神山さん筒井さんからです
はい 神山です」
「山ちゃん 凄いな 繊維関係4つも理事なんて」
「いえいえ まぐれですよ」
「午後に伺いたいんだが 時間は何時がいいだろうか
ほら 繊維関係の会議があるので遅い時間がいいんだ」
「いいですよ 6時までお待ちします」
「パリのポール・モーガン副社長も一緒に伺います」
「はい お待ちしています」
神山は洋子に
「今日は 遅くなりそうだよ 昨日のモーガンさんが来られるんだって」
「もう ご自分の事でしょ ふふふ でも良かったわね」
又 電話が鳴った
「はい 次長室です」
「内藤です おはようございます」
「田所です おはようございます」
「山ちゃんは居ますか」
「はい 神山さん 内藤社長よ
はい 神山です」
「山ちゃん おめでとうございます 凄いね」
「はい ありがとうございます」
神山は繊維協会の事は知っているはずだと思い すると鈴や食品か
「これで副社長職が2箇所になりましたね」
「それで 鈴や食品は12億出します」
「えっ6億じゃないの」
「ええ 12億です で東都食品は12億出します なので合計24億の
食品ブース 3ブースの地下共有部分が出来ます 凄いですよ」
「えっ そんなに凄い事をするの、、、」
内藤は最後には声が出なかった
「勿論 アレックスにも協力をしてもらいますが これで漸く
自分が考えてきた デザインが出来ます」
「はぁー 凄い予算だ 山ちゃん ありがとう」
「いえいえ 当たり前のことをしているだけですよ」
「分かりました でも 凄い では」
「はい」
神山は電話を切ると祐子に電話をした
「わぁー 神山さん どうされたんですか」
「うん 今夜は遅くなる 先に寝ていなさい」
「はーい 分かりました 呑みすぎないようにしてくださいね」
神山が電話を切ると婦人服部長から電話が入った
「はい 神山です」
「次長 おめでとうございます」
「ははは しっかりと顧客を掴んでくださいね ありがとうございます」
電話を切ると 紳士服部長からも電話があり同じ内容で答えた
「あーあ 仕事にならないな もう」
「ふふふ これもお仕事でしょ」
神山はソファーで頭を抱えていると本社婦人服部長から電話が入った
さすがに売場と同じようには答えられず
「これからも 喜ばれる服を提供してくださいね」
本社紳士服部長にも同様の話をした
「洋子 秘書室に連絡をして 祝辞は不要と伝えてください
事由は仕事が捗らない でお願いします」
洋子が電話をしようとした時に社長の時田が部屋に来た
「いらっしゃいませ お待ちしていました」
「まあ 洋子に言われたら 断れないな ははは」
この時 洋子が本社秘書室に電話をした
「ええ ですから祝辞の挨拶に対応していると 仕事が出来ないんです
丁度GOLの大切な時期なんですよ なので各店 名古屋本社に
早急に連絡をしてください もし破った場合は 次長命令で左遷です
いいですね お願いします」
この次長命令で左遷のところで神山は
「おいおい洋子 大丈夫かよ そんな事言って」
「理事秘書が言っているんです 平気です ねぇーおじ様 ふふふ」
神山は時田をみるとニコニコしていたので 任せる事にした
洋子が秘書室に連絡したので 社内祝辞は無くなった
暫くすると東都食品の田宮副社長と里香秘書 森和幸営業推進部長の
3名が訪れた
直ぐにGプロの担当の田中 高橋や佐藤部長 GDの田辺 建築の渡辺
など5名が現れた
神山は各人の紹介を終えると田中に
「では 幸三ちゃん プランの説明をお願いします」
田中は予算上積みみの件は知らされていないので 今までどおりの
説明を行った ピンポイントでわかり易く時田も頷いた
「以上が 今までのプランです これからは私が説明します」
神山が以前スケッチを描いたものや 今朝仕上げたものなどを見せ
田中のプラントの違いなども分かり易く説明した
驚いたのは 東都食品やGプロだった
東都食品は当初6億の予算を見込んでいたが 神山の説明だと
倍の12億を予算計上しなくてはいけなくなり 驚いた
Gプロの佐藤部長も12億が24億になった話は 初耳で驚いた
「以上です ところで驚かれていると思いますが 鈴や食品時田社長から
12億出資のお話を伺ったのは 今朝一番です なので皆様に
ご連絡できませんでした」
神山は少しうそを言ったが 時田はニコニコしてみなを見ていた
東都食品の田宮が
「私はプラン自体は大賛成です ただネックは予算だけです
私も頑張って お金を集めます 神山さんこのB案でお願いします」
「ありがとうございます そうすれば 3ブースの地下共有部分で
強力な展開が出来 ニーナ・ニーナさんやアレックスさんからも
こちらのブースに来れるし 何しろ楽しい空間を行ったり来たり出来る
それも毎週のように各ブースでイベントをしていれば 必ず
リピーターが増えると信じています」
神山の説明が終わり会議が終了すると 田宮が神山に
「神山さん これはパセリの改良です 前回より より美味しいですよ」
そう言うと里香がみんなに缶詰を渡し 戻し方を説明した
時田は早速食べてみたが
「田宮さん これは美味しい 絶対に売れるよ うん」
「社長 ありがとうございます 喜んでいただいて光栄です」
神山や洋子 Gプロの面々も美味しいと話していた
「そうしたら プレミアムレタスですかね」
「そうそう山ちゃん プレミアムレタス いいじゃん ねえ」
田宮や時田も頷いていた
「ところで田宮さん 単価設定はいくらですか」
「ええ そこなんです 今は300円を切るように頑張っているんですよ」
「そうですよね レタスが300円では ちょっと心配ですね
しかし 保存が5年を考えれば どうかなって思うんですがね」
「ええ あとは量をもう少し入れてどうかなと思っているんですが
もともと レタス1個を購入しても 一回で使い切らないんです
そうすると 八百屋の感覚で行くと 50円とか70円になるんです」
「うん そうですね でも機械を動かすのに最低いくらかは掛かるし
非常に 難しい値段設定ですね ただ言える事は この頃 安い商品が
売れているかというと そうではなく 非常に高価なものも売れています
現にニーナ・ニーナさんの売り上げ一つとっても そうです
だから美味しいレタスを供給していれば 必ずリピーターが付きます」
「そうですよね それにGOL限定ですから 物珍しさという部分でも
結構 出るんじゃないかと思っていますよ」
レタスの試食が終わり みんなが退室すると神山は
「洋子 どこに行こうか」
「そうね レタスを食べたら サラダが欲しくなったわ」
「そうしたら 銀座のパスタでも行こうか」
「そうね あそこのサラダも豊富だしね」
神山ははっと思った
「ねえ洋子 レタスだけじゃなくて 色々と混ざっていれば
そのままサラダだよね それだったら300円でも大丈夫だよ」
「そうね 2人前くらい入っていれば充分だし」
神山は早速田宮に連絡した
「それはいいアイデアですね そうですね 早速作ってみます
いやー 神山さんを味方にして良かったですよ 本当です」
「いやいや これは洋子さんの考えですよ では」
神山は電話を切ると洋子に
「田宮さん 喜んでいたよ それからね僕を味方にして良かったって」
「そうよ あなたを敵に回したら お終いね ふふふ」
二人はパスタ店に入ると2階の席に着いた
洋子が言うようにサラダの盛り合わせと生ビールを注文した
「洋子さ 単価の高い野菜をパックの中に入れれば
500円でもいけるかな 例えばパプリカはさ高いけれど 自分で
買った時って 一つを丸ごと使わないと思うんだ サラダに使うんなら
ほんと少しで良い訳でしょ そのような物を混ぜてあげれば 単価が
高くても納得するよね どうだろう」
「ええ 私は大丈夫だと思うわ その方が見栄えもいいし サラダは
この缶詰一つあれば 出来上がりって いいと思うわ
保存が利くので 普通考えられる倍の値段にしても大丈夫よ」
「そうだよね 1個100円のパプリカで50食分 そうすると
1食2円ですむんだ それが5色も入っていたら 喜ぶよね」
「ええ 原価で10円でも 見た目で100円の価値が有るわね」
神山は今の話を田宮にすると 大賛成で試作品を作ると喜んだ
「ははは 田宮さん どんどん八百屋缶詰にはまったよ ははは」
「そうなの 良かったわ どんどんと作って間に合わせて欲しいわね」
「うん そうだね しかし田宮さん 凄いやる気だね」
「貴方が居るからでしょ ほんと出来ないと思われる事を作るんだもの
だって最初はレタスでしょ そこから派生させたじゃない
そのアイデアは素晴らしいと思うし 出来ない事じゃないもん
向こうはプロだし それだけの経験があるから 逆に楽しいでしょ」
「そうだね うん 楽しく仕事をしないといいアイデアは生まれないよ」
神山達はゆっくりと食事をしたので次長室に戻ったのが
14時30分だった 神山は15時5分前に起こしてもらうよう寝た
洋子が55分に起こすと お中元の処分に行くといい部屋をでた
事務館の配送課で待っていると 神山をみて
「すみませんが神山さんは いらっしゃいますか」
「私ですが」
「こんにちは メイドクラブから来ました 山中と言います」
神山は倉庫の鍵を開けると 山中は商品の多さにびっくりした
山中が考えていたのは 化粧箱に入っているものだと思い
ダンボールの中に 商品がじかに入っていたので 驚いた
それでも山中は 部下と一緒に丁寧に一つ一つの定価を
スキャナーで読み込み 確認してから別なダンボールに入れていった
全てが終わると山中は
「神山さん 凄い量ですね 全部で178万円分ありまして 今回は
75%で如何でしょうか」
「ええ お願いします」
「そうしますと 133万5千円です 少々お待ちください」
山中はバッグからお金を出し神山に手渡した
「神山さま 次回もこれだけ纏まれば78%で引き取ります」
「はい では貯まりましたら また電話をします」
山中は丁寧にお辞儀をして 車をだした
神山は次長室に戻ると洋子が不在で メモが無いので化粧室だと思った
次長席に座ると各ブースのデザインを詳細を見ていた
特に気をつけなければいけない所は無く それよりも地下の共有部分に
何処の会社がどの割合で 出資してもらえるか考えた
メインは鈴や食品と東都食品で 次にアレックス 最後にニーナ・ニーナ
出資比率を考えたがニーナ・ニーナはどう見ても20%が上限だと思い
そうなると アレックスと食品で80%をどう振り分けるか 考えた
神山はアレックスのビーフジャーキーやユニフォームの事を考え
50:50の出資でいいだろうと思った
地下共有部分に10億掛けるとすれば ニーナ・ニーナが2億になり
ブースにお金を掛けられなくなってしまう
「ごめんなさい 戻りました ふふふ」
「おいおい おトイレ 長かったね」
「まあ 本社人事に行っていたの メモあるでしょ そこに」
神山は洋子が示した 机のところに貼ってあるのを見つけ
「ごめん 見えなかった ははは」
「それで スイス銀行からメールが来ていたの 私 本社人事のアドレスを
送ったものだから そこに来ていたのよ はいプリントアウトしたものよ」
神山は読んでみると 日本時間の15時から口座を開設したので
利用できる事が書かれていた
「うん ありがとう そうすると 明日入金をするよ」
「ええ 良かったわね ふふふ」
神山は祐子に電話をして 今夜は遅くなる事を伝えた
「そうそう おじ様がこのメモを渡してくれって」
神山は見てみると 口座番号が書かれたものだった
こちらの入金も 明日朝一番で入金する事にした
神山がソファーで寛いでいると ニーナ・ニーナの面々が次長室に訪れた
筒井が神山と握手をすると モーガンも握手をした
神山がソファーを勧めると洋子にビールを出すよう支持した
「神山さん 大変素晴らしい事です 繊維協会の理事になられて
本当におめでとうございます」
「しかしながら 決裁権のない理事ですから お飾りですよ ははは」
「それでも 成りたくても成れない人が沢山居るんです 良かったですよ」
「はい ありがとうございます」
「山ちゃん おめでとうございます それと聞いたよ 鈴や食品の
副社長の件も おめでとうございます」
「まあ あちらも担当副社長ですからね」
「でも時田さんの次に偉いんだからな 大したものです 良かったよ
山ちゃんを味方に付けておいて ははは
そうそう これはモーガン副社長の気持ちです こちらは日本の気持ち
少ないが どうぞ収めてください」
神山は包みを受け取ると モーガンと筒井にお辞儀をして次長席に置いた
祥子が神山に笑顔で
「神山次長 上原も順調に育っています ありがとうございます
それで 私たちの気持ちです 受け取ってください」
神山は包みを開くと デザインシャツが現れた
「わぁー 素敵ですね」
「ええ あのスーツとお揃いのシャツなんですよ パリに型が残っていて
大至急作って貰ったんです たまたまタイミングよくお渡し出来ました」
「山ちゃん シルク100%で縫製はしっかりしているよ」
デザインシャツは2着あり 1着はネクタイを結べるような襟の作りで
もう1着はスタンドカラーの仕上げになっていた
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