2014年4月3日木曜日

紫陽花 9 - 54 Vol. 2



神山がニーナ・ニーナの予算が少なくて力を発揮できず悩んでいると
「わぁー あなた 喜んで」
「どうしたの」
洋子が本社人事から戻ってきたが 尋常ではない喜び方だった
「ねえ 人事に行ったら おじ様に呼ばれたのよ」
「わぁー 又 来なさいですか」
「ううん 違うの あなたと私 7月に進級するって 凄いでしょ」
「はぁ 進級、、、」
「そうよ あなたが理事4級で私が部長2級よ 凄いでしょ」
「えっ 理事4級って なんだ?」
「もう 理事4級って初めて作られたのよ」
「なに それって 全然分からないよ」
「もういやねぇ 理事職は現行3級までなのよ だけど特例で
4級が設けられたのよ だから全国であなたの理事が1番なの」
「へぇー 理事で1番かぁー」
「ねえ もっと喜んでよ 私凄く嬉しいわ」
「うん でもね 実感がないから どう喜べばいいか分からないよ」
神山は急に両手を上げて 盆踊りの格好をすると 洋子はクスクス笑った
「しかしさ 副社長が決めたの?」
「ううん 違うのよ 社長の権田さんが決められたそうよ
なんでも 協会の理事職をしているのに2級は無いだろうって
それで 緊急役員会を開いて 決定したと言っていたわ」
「へぇー 凄い事になったね」
「ねえ おじ様に電話をしておいた方がいいと思うわ
おじ様も 大賛成で応援をされたそうよ」
神山は頷き 早速時田に電話をした
「おう 山ちゃんおめでとう 先ほど名古屋から連絡があり
7月1日の9時30分に命課だ 秘書室まで来てください」
「はい ありがとうございます」
「うん 良かった わしも少なからず応援をさせて貰った ははは
ところで 山ちゃん あそこの寿司屋に行きたいな 今夜はどうだ」
「すみません 今夜は洋子さんとデートです」
「あっ そうっかっ 洋子と デート、、、か、、、うん では」
「あっ あの、、、、、、、、、」
神山は少し刺激が強かったかなと思い 反省していると洋子が
「どうしたの」
「うん 喜んでくれたけれど 寿司屋に行こうと言うので
今夜は洋子さんと デートですって言ったら しどろもどろで話
そして 電話が切られました」
「まあ 刺激が強すぎたのね 大丈夫かしら」
「うん 電話をして 謝っておいてくれるかな 頼みます」
「ふふふ 大丈夫よ そんな人じゃないわ」
「あーあ 今日は朝から変だな なんだろう」
「まぁ 珍しいわね あなたの弱音って」
「そうか 何か昨夜の事が引っかかっているのかな もう 祐子め!」
「またぁー 祐子さんのせいでは無いでしょ もう可哀想よ」
「はい 分かりました」
神山はどうしても歯車が組合さずイライラしながら過ごした

「さあ 時間だ洋子 出ようか」
「はーい 丁度いい時間ですね」
神山と洋子は次長室を出ると蒼いBMWで赤坂のスタジオに向かった
「お帰りなさい 洋子さんいらっしゃい」
「こんばんわ 今夜も素敵なワンピースね とても似合うわ」
「ありがとうございます」
神山は二人が話しているので 主賓室で簡単にシャワーを浴び
着替えを済ませると 下に降りないで そのままビールを呑んだ
一息つくと 先日ゴルフの時椿から貰った包みを開けてみた
現金で500万円入っていて そのまま鍵のかかる棚に仕舞った
下におりると
「さあ そろそろタクシーを呼ぼうか」
そう言うと自分でタクシーを呼んだ
暫くすると門扉にタクシーが着いた事をモニターで確認し
みんなで スタジオを後にした

赤坂スカイハイホテル6Fに行き ステーキハウスで受付で
神山と名乗ると案内が窓際の席まで誘導してくれた
約束の18時にはまだ充分時間があったが ウエイトレスに
コースの注文と 生ビールや牛肉の生などおつまみを注文した
暫くすると涼子が受付に現れたので 神山は手を振って合図をした
「ごめんなさい 遅くなりました」
「いや 僕達も来たばっかりだよ それより急にごめんね」
「少し驚いていますが 大丈夫ですよ ふふふ」
「涼子さん 素敵よ ワンピース似合っているわ」
「祐子さんのワンピースも素敵よ おしゃれでいいわ」
若い二人が話していると 生ビールとおつまみが運ばれてきた
「では 若い二人にかんぱーい」
「まぁ 私は もう」
「あっ ごめん あのぉー 若い3人にかんぱーい」
神山はどうも普段の調子が出ないまま 乾杯をした
最初は世間話や先日のゴルフの話をしていたが神山がタイミングよく
「ねえ 涼子さん 同じ組の内野君がね 涼子さんにありがとうって」
涼子は内野の話が出た時に 顔を少し赤くした
洋子はその変化をしっかりと見ていたが祐子が
「わぁー 涼子さん どうしたの ねえ」
この言葉が引き金になり
「ええ 知らない間に 一生懸命応援をしていたんです
自宅に戻った時は 何も考えなかったんですが 日曜日になると
もう一度お逢いしたいと思っていました
それで きょう鈴やさんでお逢いできると思っていたんですが、、、」
「そうか 残念だったね 担当制にしているからなんだ」
「涼子さんね 私 内野君から相談されたのよ
ゴルフの時に応援してくれたけど 何か自分の中に恋が芽生えたようで
もう一度 涼子さんと会いたいって よかったわ」
「うん よかった そうしたら誠二ちゃんとデートをしなよ
誠二ちゃんも それで駄目なら 潔く諦めますって そう言ってたよ」
涼子は益々顔を赤くして 俯くと祐子が
「涼子さん 良かったわね 成功を祈って乾杯」
「おいおい 性交って まだ手も繋いでいないんだよ」
「もう 成功よ 嫌ねぇー 変態 ねぇー涼子さん」
神山を除いて女性達は大笑いして 楽しんだ
今夜の神山はどうしても 普段の調子が出なかったので
洋子や祐子と話をしないで我慢した

ビールを呑み終わりワインも進むと 神山が仕事の話をし始めた
「大変ね そんなに予算がきついなんて、、、」
「うん だからニーナ・ニーナのパリがGOLをもっと認めてくれないと」
「そうね でも筒井さんは動いてくれているんでしょ」
神山は周りの目があるので みんなにここからは
フランス語で話すように伝えると 3人とも頷いた
神山はフランス語なら周りの目を気にしないでいいだろうと
「だからパリニーナ・ニーナは御殿場店舗を認識しなければ駄目になるよ」
「なんで」
「だって デパートに入っている店舗と同様の店舗では 
直ぐに飽きられてしまい 存続自体が難しくなるってことさ」
神山がワインを一口呑むと 丁度後ろに座っていた外人が立ち上がり
「その話は 本当か」
神山はびっくりして後ろを振り向くと 外人の正面には祥子が座っていて
こちらを見ると ニコニコして挨拶をした
神山は気を取り直して
「今の話は本当です 私はあなたの事を知らないが 事実を話しました」
外人は名刺を出して神山にお辞儀をした
神山も名刺を出すと外人は驚いて神山を見て
「あなたがアレックスの神山さんか 噂には聞いています
先ほどは驚かせて すみませんでした」
洋子も祥子の存在に気が付きお互いに お辞儀をしていた

神山は簡単な説明をした後に
「今夜は 楽しいパーティーをしているので 明日我が社の次長室に
是非来てください その時にまた説明をさせて頂きます」
「分かった 神山さん 予算はどの位見ればいいのか教えてください」
「箱を造るとなると最低でも3億は掛かります でも存続はします」
「3億か 分かった 私が出来るところまで頑張ります
存続を希望しているからね お願いします では明日」
「久保さん 10時にお願いしますね」
「はーい 筒井も伺います こちらこそお願いしますね」
神山は名刺をもう一度見直すと パリニーナ・ニーナの副社長と
印刷され その下には財務長とも印刷されていた
洋子や祐子 涼子が覗いて
「多分 財務関係の最高責任者って事でしょ これは」
「そうね 向こうでは 役職が日本のようにごちゃごちゃしていないから」
神山は名刺を仕舞うと 仕事の話は一切しないようにみんなに伝えた

4人はニーナ・ニーナの二人に挨拶をすると神山が
「さあ 洋子 踊れるところに行こうか」
「アメリカン ポップスですか」
「うん どう 涼子さん踊ろうか」
「わぁー 行きましょうよ お願いします」
「洋子 しかしアレックスって凄いブランドだね」
「ええ 私も驚いたわ アレックスの神山ですもの ねえ涼子さん」
「ほんと 鈴やの神山ではないもの 驚いたわ
私も アレックスで頑張るわ」
「そうよ涼子さん 内野さんとも頑張ってね ねぇ」
洋子が迷って神山の顔を見ると頷くので
「ねえ涼子さん 美佳さんね もう直ぐよ」
「えっ もう直ぐゴールインですか あーあ 負けたぁー」
「がっかりしないのよ 私も独身よ もう」
「ははは さあ 踊りにいこう」

4人はタクシーで表参道のアメリカンポップスに行った
店内に入ると 以前のようにビートが効いた曲が流れていた
神山はビールを注文すると 簡単なおつまみも貰った
曲が変わり懐かしいポップスが流れると センターで踊り始めた
洋子が
「ふふふ お尻の踊りをしましょうよ」
洋子が神山の手を取り センターでツイストを踊りだすと
祐子や涼子も一緒に踊り始めた
「わぁー 神山さんって 上手ですね」
「うん 洋子に教えられた ははは」
洋子が時々お尻を突き出すと 神山は上手にお尻で答えていると
周りが 二人の踊りに見とれて踊らずに見る方に回った
こうなると 神山の独壇場で スペースを上手に使い踊り始めた
曲の最後になると 洋子の体を抱き上げ投げると 1回転させた
洋子がきちんとポーズをとると 周りから拍手や指笛がなった
「わぁー 素敵でした 凄くよかった」
「私も見とれてしまいました 凄いですね二人とも いいなぁー」
「ははは そうしたら次は祐子の番だ いいね」
神山は祐子とステップを合わせながら踊り 時々お尻で挨拶すると
祐子もニコニコして挨拶をしてくれた
このときも 神山の周りには誰も居なかったので 
洋子のときと同じように 上に投げ上手に受け止めると
祐子はきちんとポーズをして ピースサインを出した
周りからは先ほどと同じように 拍手や指笛が鳴り止まなかった

「はぁ 少し休憩 1曲だけ休憩させてね」
「あら 私まだなのに」
「うん 次に一緒に踊ろうね 待っていてね」
神山はビールを呑むと みんなに呑みものをきいた
祐子と涼子は洋子に合わせて トマトベースのカクテルで 神山は
ドライマテニィを注文した
ビートの効いた曲が終わると バラードに変わった
センターではチークを踊りだすカップルが多く 神山は涼子に
「次に踊ろうね 待っていてね」
「はーい 待っていまーす」
その間にカクテルが来ると みんなで乾杯をした
「涼子 アレックスと最初に合ったのが この場所さ 記念の場所」
「そうですね それで先ほどのように お尻で挨拶して ふふふ」
「へぇー 凄いですね 私はまだお話もしていないですよ」
「ははは 仕方が無いよ でもね もう直ぐ日本にくるよ ねっ洋子」
「ええ もう直ぐ来るわね 楽しみね」
「また あそこの寿司屋かな ははは」
「女将さん 驚いていたもの よく食べるって ふふふ」
話していると曲が終わり 神山は涼子の手を引いてチークを踊りだした
涼子は最初から両手を神山の首に巻き いつでも踊れる状態だった
曲が流れ 神山が上手にステップをすると
涼子もしっかりとついて来て 次第にぴったりと息が合った
神山は涼子の腰に両手を回し リードしていると涼子がキスをしてきた
慌てずにしっかりとキスのお返しをすると 涼子は微笑んだ
曲も終わりに近づくと 神山は周りを見て涼子を投げると1回転して
ポーズを決めた このときも拍手や指笛が鳴り止まなかった
「わぁー 涼子さん 凄いわね 綺麗だったわ」
「そうスカートが綺麗に開いたでしょ 見ていても素敵だったわ」
「わぁー ありがとう 祐子さんの時も スカートが開いて綺麗だったわ」
二人は楽しいのか良くしゃべった
洋子と神山は若い力を微笑ましく見ていた

「今夜はありがとう 明日の活力なります」
神山は洋子にタクシー代を渡し
「じゃ 涼子さんをお願いしますね」
「ええ 分かりました ではおやすみなさい」
「うん 明日もお願いしますね」
神山と祐子はスタジオに戻ると神山が
「祐子 先に風呂に入って 寛ごうよ」
「はーい 直ぐにいきます」
神山は先に主賓室に行くと 湯船に湯を張り準備した
祐子がなかなか来ないので 先に湯船に浸かっていると
「ごめんなさい あなた 明日ですが 大掃除でした
報告するのを すっかり忘れていました」
「そうか もう2週間経ったんだ 分かりました お願いしますね」
祐子はニコニコして入ると 大事なところを良く洗い
「ねえ あなた 綺麗になったかしら どう」
神山は湯船から見ると
「ねえ 仰って 見ていないで」
「うん 大丈夫だ 綺麗になっているよ」
祐子はニコニコして神山の隣に座ると 肉棒を掴んだが 動かさなかった
その代わり 触る場所を変えたり握る力を変えていた
「祐子 どうしたの いつもみたいにしないの」
「ええ ベッドまでお預けです」
神山は完全に主導権を握られ 自信を無くしてしまった
それでも神山は少し考え 明るい光が見えた

お風呂から出ると神山は作り付けの棚から ブランデーを出し
祐子と呑む事にした
「ねえ 神山さん お中元の商品ってまだ余っているんでしょ」
「うん コンテナ1台分ある 困っているんだ」
「そうしたら 私のメイドクラブで買うことが出来るんですよ
今日 会社に聞いたんです 但し 定価の70%って言ってました」
「そうか ではそうするかな 腐らせても仕方ないしね」
「では 明日にでももう一度きちんと聞いておきますね」
「うん もうお中元で懲りているのに お歳暮になると
もっと凄い量になるだろうな 困ったものだよ もう1杯お願い」
神山は祐子も呑むように勧めると 頷き自分のグラスにも
ブランデーを入れて持って来た
「はい どうぞ」
「そうしたら 何時来れるか聞いてくれる 場所は鈴や裏の事務館」
「はい 分かりました」
「出来れば 今週だったら 午後3時とか4時がいいな」
「はい 分かりました」
祐子は少し酔ってきたのか 目が虚ろになってきた
神山はこれ以上呑ませると SEXが出来ないと思ったが
「あーあ あなた 私 酔っ払ったみたい もう寝かせてね」
祐子はそういうと神山のベッドに横になり 直ぐに寝息がした
「あーあ 私酔っ払ったか もう 参ったな 今日は可笑しな日だ」
神山は独り言を言いながらベッドに入ると直ぐに寝てしまった

6月24日 水曜日 晴れ
「あなた 起きてください もう」
「おお 早いね おはよう」
「もう 7時ですよ」
「ごめんごめん 起きます」
神山はシャワー室に入ると熱い湯で体をしゃっきとさせた
スタジオに下りると祐子はキッチンで朝食の準備をしていた
神山は冷蔵庫から缶ビールを取り出し ソファーで呑んでいると祐子が
「神山さん 昨夜はごめんなさい なにか急に酔ってしまい」
「うん 酔った時は仕方が無いさ 気にしていないよ」
「わぁー ほんと 嬉しいわ 出来ましたよ どうぞ」
神山がテーブルに着くと 焼き魚や先日の野菜炒めなど 和洋折衷だが
それなりに美味しくて ご飯が進んだ
「祐子 今日は お願いしますね」
「はい 大丈夫です きちんと見ています」
「うん」
神山がソファーに行くとお茶を用意し さがるとキッチンで後片付けした
お茶を飲み終わると 冷蔵庫から缶ビールを取り出し 呑み始めた
「祐子 庭の手入れはいつになるのかな」
「あっ それも今日確認しておきますね 今月はありませんから
多分 来月に予定が入っていると思います」
「うん お願いします 雑草がそろそろ伸びてきているし」
「そうですね 聞いておきます」
「祐子 30分寝かしてください」
「はーい 分かりました」
神山はそう言うとソファーに横になると直ぐに寝てしまった

「神山さん 30分立ちましたよー もういつもなんだから」
祐子はおちんちんをしごき始めると 大きくなったので自分から跨いだ
肉棒をヴァギナに挿入すると 気持ちよく 腰を充分に振ると
硬さが増してきて 更に気持ちよくなった
「ああっ いいわ 気持ちいい」
神山はまだ目を覚ましていなかった
祐子は神山の顔を見ながら 楽しそうに腰を振っていた
「あっ 祐子 あっ 入っている」
「もう ようやく起きたのね ふふふ あっ いいわ あっ」
神山も下から突き上げると 祐子は更に快楽の頂点に向かった
「もっと もっと突いて あっ いいわぁー」
祐子の腰の動かし方も 回転させたり上下に動かしたりした
「駄目だ 出そうだ」
祐子は神山の肉棒が 最高に硬くなり自分も果てそうだった
神山は最後の突きをすると 果ててしまった
「あっ きてる あっ あっ いくぅー うっー」
祐子も果てて 神山の上に伏せるとキスをして 暫く動けなかった
神山が上半身を起こし 祐子を抱きかかえると
「もう駄目です お願い」
「うん 分かった」
神山は漸く主導権を握れたと 喜んだ
祐子の秘所をティッシュペーパーで綺麗にすると 二人で主賓室に
シャワールームで綺麗に流した

神山は着替えを済ますと 玄関で祐子にキスをして
「では 何かあったら 携帯まで連絡くださいね」
「はい 了解です ふふふ 行ってらっしゃい」
神山は久しぶりに真紅のポルシェで出勤した
次長室に入ると 昨日会った外人の名刺を確認した
神山はブースを造ると3億円と言ったが 果たしてどこまで出来るか
時間的な部分などで多少不安があったが 後戻りは出来なかった
ニーナ・ニーナの現在進めている案は既存建物のブースに入った時で
ブースを最初から建築する案もあるのでそれを改良していけば
何とか間に合うと思った
神山は打ち合わせ時間まで出来る事を集中して仕事をした
9時30分になると洋子が出勤してきたので 挨拶はしたが
仕事に没頭し 何も話さずに デッサンを仕上げていった
神山は9時45分になるとGプロの高橋に電話をして次長室に
来るよう指示を出した
高橋は今日の神山の口調が普段と違う事を敏感に感じ
「山ちゃん 来ました」
「考ちゃん 大変なんだ」
神山は昨日の経緯を掻い摘んで話すると高橋は
「わぁー 大変だ それはお金の問題じゃないよ 時間の勝負だ」
「うん そこで 僕が考えたデザインだけど どうかな?」
神山はコンセプトを他のブースと同じように 子供と遊べるブースと
位置づけし 地下をアレックス 鈴や食品と繋げてしまい
地下広場を 子供たちに開放すれば 集客も充分に出来ると考えた
「わぁー 山ちゃん それ頂き でも今日はそれでOKでも
正式に書き上げるとなると時間が欲しいし」
「うん でも徹夜でもしないと間に合わないよ だってアレックスが
絡んでいるだろう そこも調整しないといけないしさ」
「わぁー 凄い事やったね 嬉しい悲鳴だよ わかりました
兎にも角にも 今日は当初案の説明と このスケッチの説明で
そうだ アレックスの地下部分のパースも用意しようね」
「うん 箱で3000万円掛けても存続は難しいが このようにすれば
存続は充分に補償できる そこを話そうよ ねっ」
「了解 そうしたら当初案は誠二に説明して貰って この案は
やはり山ちゃんがいいと 思うよ どう」
「うーん 考ちゃんは無理?」
「了解 助け舟 お願いね」
「うん 僕が最初から話してしまうとそれでお終いでしょ お願いします」

事前打ち合わせが終わり 高橋はGプロのメンバーを呼んだ
神山は洋子に昨日の覚書を出しておくよう指示をした
洋子はこんなに仕事に打ち込んでいる神山を見たのは初めてで
男の魅力を改めて見直し 神山を惚れ直した
10時丁度にニーナ・ニーナの面々が次長室に現れた
筒井も神山のピリピリとした態度から 普段と違う神山を改めて見た
全員が洋子の案内で席に座ると神山が
「ここにいらっしゃる方を 私が紹介していきます
久保さん通訳をお願いしますね」
祥子も神山が普段と違い 大きく見え男の魅力を改めて見直した
神山が全員の紹介を終わると
「それでは当初案から説明をさせて頂きます」
内野は先日のシュミレーションどおり 気持ちに余裕を持ち説明した
時々洋子の顔を見ながら 説明していたが 先日のような
慌てる様子も無く 分かり易く説明を終えた

神山はここで
「内野さん 説明ありがとうございます さてここにいらっしゃる
パリニーナ・ニーナ副社長 ポール・モーガンさんにお伺いします」
神山は久保に通訳をお願いし
「実はこの案は筒井副社長と打ち合わせをして 決められた予算の中で
デザインをさせて頂きました このデザインは決められたスペースの
中で最高のものだと思います しかしこの御殿場アウトレットでは
私は存続が難しいと思います 一つに固定客の販売ではなく
不特定多数の顧客に満足して貰わないともいけないからです
百貨店のように 固定客がいれば売り上げも見込めますが この
GOLでは 強力な固定客を望むのは無理だと思います
ポール・モーガンさん 如何でしょうか」
指名されたポールは ではGOLの位置づけはどうかと質問した
「はい GOLでの販売は 現行品も多少値下げをして販売し
更にGOL限定品も販売するという方向です 百貨店のセールとは
意味が全然違います ここに来た方に安く提供をする そのスタンスです」
祥子が分かり易く通訳をしていると
「クリアランスでもないのか」
「ええ この会場に来て頂いた顧客のみが手にする喜びです
それは値段であったり 限定品であったりさまざまです」
ポールは頷いてどの様にすればいいのか 教えて欲しいと話した
神山は頷いて高橋に説明するように指示をした
高橋はぶっつけ本番だったが さすが神山が認めているだけあって
丁寧に ポイントを分かり易く説明した
ポールは久保の通訳で頷き 聞くほどに目が輝いてきた
説明を聞き終わるとポールが神山に
「これで3億円か 高くないか」
「これはまだ試作で 方向性を示したもので 地下部分もあるので
この図面も見て欲しい」
神山はアレックスブースの地下共有部分のパースを見せると
「アレックスはここまでやるのか 素晴らしい」
「そこで考えているのは 自分でブースを建てれば この地下共有部分に
連結させる事が出来 大きなテーマブースが誕生し リピートが必ずある
その方法も アレックスと進めているので 安心して欲しい」
ポールは神山の話に頷き
「是非 アレックスと手を組んで 仕事をしたい どうだろう」
「わかった ポール 最低でも3億は掛かる デザインによっては
6億掛かるかもしれないが それでもいいか」
ポールは暫く考えた後 頷き
「分かった 神山さんに任せる ジャパンの筒井と進めてください」

神山は洋子に契約書を直ぐに製作するよう指示を出した
いつもの事ながら 頷く時にはもうキー入力をしていて
「はい これで宜しいでしょうか」
神山はフランス語で書かれた契約書を熟読し頷くと
「コピーを2部作ってください」
洋子は2部プリントアウトして 神山に渡すと
ポールからサインをして 筒井 神山とサインをした
洋子と祥子が立会いでサインをして 最後に神山が場所と時間をサインした
神山は1部をポール 1部を筒井 1部を自分が保管した
ようやく普段の神山に戻ると筒井が
「山ちゃん 助かったよ 本当にありがとうございます」
筒井は丁寧に深々とお辞儀をし握手をした
「頑張って 進みましょう 良かったですね」
ポールが神山に
「あなたが居るので 安心した アレックス氏が惚れている訳が分かったよ
もう 好きなようにデザインをして ニーナ・ニーナを盛り上げて下さい」
ポールも神山としっかりと握手をしたが神山が
「私はアレックスJPでは最高責任者だが 鈴やの人間です ははは」
「そうだったね 鈴やのデザイナーだったね うん ありがとう」
「筒井さんと いいものを造ります ありがとうございます」
「では お願いしますね」
神山は筒井にポールの昼食を聞いてみると
「うん 築地のいせ丸に行くことになっているよ どう一緒に」
神山は少し考えたが
「ここはニーナ・ニーナさんで行かれた方が いいでしょう
次の機会にしますよ」
「うん ありがとう そうそう あのスーツはある?」
神山は作り付けのワードローブから世界で3着しかないスーツを出すと
ポールが懐かしそうに見ていて
「うん神山さんに似合う ぴったりだ そうだ 紳士も作るか ははは」
神山もこの冗談に笑って答えた

ニーナ・ニーナの面々が次長室から出ると神山達はビルの出口で見送った
次長室に戻ると神山は冷蔵庫から缶ビールを取り出し みなに配ると
「お疲れ様でした ニーナ・ニーナは予算の上乗せが出来
これからが時間との勝負です 頑張ってください いいですね 乾杯」
神山は心の底から嬉しかった
ある部分筒井に恩返しが出来た事 これでようやく自分が考えていた
子供と大人の調和 などなど もう予算を気にしないで 
思い通りの仕事が出来る喜びが 嬉しかった
Gプロの佐藤部長も
「山ちゃん 凄い もう感激したよ よかった ありがとう」
「佐藤部長 漸く自分の仕事が出来るように整いました
後は 皆さんに徹夜をしてでも 仕上げてください お願いします」
「もう 頑張りますよ これだけ下地を作ってもらったんだ ねえ高橋君」
「ええ 山ちゃんの為にも 頑張るよ 任せて」
「考ちゃん 悪いけれど誠二ちゃんの応援体制をお願いね」
「うん 午後から準備して 明日から稼動します」
「では ニーナ・ニーナの打ち合わせ 解散でーす」

次長室に洋子と二人だけになると神山は ビールを呑みながら泣いていた
洋子が
「良かったですね 自分のお仕事が出来るようになって」
神山は何も言わずに頷くだけだった
GOLで何かを仕掛けたかったが なかなかデザインが出てこなかった
デザインが出来ても予算が足りなく 夢が砕けた
しかし今日の話で 描いていたグローバルプランが実現できるところまで
こぎつけた その喜びと 自分を支えてくれている人に恩返しが
出来る喜びを かみしめていた
神山の気持ちが落ち着いてきた時に携帯電話が鳴った
「はい 神山です」
「おお 山ちゃん わしじゃ」
「社長 どうされたんですか 急に」
「ははは 午前中はトップじゃ グロスでトップじゃ」
「はあ おめでとうございます 午後も頑張ってください」
「おお それからニーナ・ニーナ やったそうだなおめでとう」
「早いですね ははは」
「アルタで昇級だと言っていた」
「えっ あーあ 人気者は辛いなぁー」
「ははは それで昨夜は どうした 上手く行ったか」
「はぁ 残念ながら 次回です」
「ははは スーパーマンでも弱点はあるんだな 頑張れ」
「はい それで明日の鈴や食品さんの打ち合わせにはどうされますか?」
「うん 山ちゃんに任せた ははは ワシの出る幕はなしじゃ」
「お金は大丈夫ですか」
「うん 大丈夫だ 任せろ」
「はい お願いします」
「うん じゃ午後も頑張る」
「はい 頑張ってください」
「じゃ」

神山は電話を切ると洋子に
「参ったぁー 社長が午前のプレーでグロストップの話で その後
ニーナ・ニーナの件 そうそうアルタで僕の昇進だって」
「えっ アルタで昇進 凄いわね」
「その後が 昨夜はどうした って言われたから次回ですって答えると
そうしたらスーパーマンにも弱点はあるんだな ははは だよ もう」
洋子はクスクス笑って
「でも 良かったわね 筒井さんもアレックスJrも」
「それでね 明日の鈴や食品どうされますか って聞いたら
ワシの出る幕は無しじゃ 任せたって もう 困りましたね ははは」
「ねえ お食事はどうされますか」
「そうだ どこに行こうか いせ丸は避けよう」
神山は洋子にGプロに行くが直ぐに戻るといい部屋に入ると
「佐藤部長 今夜からフル稼働でお願いします」
そういうと現金100万円を渡し お辞儀をして戻った
「洋子 イタリアンレストラン スパにでも行こうか 久しぶりに」
洋子は頷くと早速予約を入れた
「キープ出来ました」
「洋子 白い封筒あるかな?」
洋子は引き出しから出すと神山に渡した
「ねえ 4枚ください」
洋子はきょとんとして訳が分からずに神山に手渡した
神山は白い封筒に多田と東条の氏名を書き現金50万円を二つの
封筒に ギフトカード100万円分を二つの封筒に入れた
「洋子 これを食事が終わったら渡して欲しい」
洋子はわざわざ別けた理由を聞かなかったが 自分の存在も
きちんと考えてくれている神山に ありがたく思った
「はーい 分かりました あなたの後に渡せばいいですね」
神山は何も言わず 頷いて答えた







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