2014年5月23日金曜日

紫陽花 12 - 57 Vol. 3



「じゃあ スケールモデルが出来たら また連絡ください」
「はい 分かりました また泊まってね」
亜矢子は何時になく 神山の顔を真剣に見ながら話した
神山は亜矢子にタクシー代を渡し 自分もタクシーに乗った
運転手に御殿場総合病院を告げると
「あそこの若先生は そのうちに世界一になりますよ」
「へぇー 先生を知っているの」
「ええ うちのかーちゃんがガンで入院したんだけど
治してくれたんですよ それも最新技術で 凄いですよ」
タクシーの運転手が言うには まだ公表されていない 治療方法で
治療を行うといわれ 最初は躊躇したが 実験結果や副作用などの
説明を受け 金山の治療を信じ受ける事にしたと言う
みごとに治療は成功し 副作用もなく元気になったと話してくれた

病院に着くとBMWに乗り御殿場ICから東名高速に入り渋谷に向かった
銀座の次長室に着いたのは15時少し前だった
「お帰りなさい」
「やあ ただいま お昼は済んだ?」
「ええ 済ませました 土地は如何でしたか?」
「うん 広くて 少し丘になっていて 眺めもいいところだよ」
「よかったわ」
神山は6月の大竹組麻生事件の時にお世話になった先生の土地で
病院も直ぐ傍にあり 帰りのタクシーでは評判のいい先生だと言われた
事など掻い摘んで説明すると 洋子は
「それは良かったわね もう安心して生活できるし」
「そうだね 僕も嬉しいよ 少しだけ力になれて」
神山はもしかしたら ホテルを辞めるかもしれないと言った由紀枝の
言葉を思い出していた
ちょっとだけ複雑な思いで次長席に着き 少し考えていると
電話がなり洋子が取ると
「あなた ニーナ・ニーナの久保チーフからお電話です」
「はい」
「NNの祥子です こんにちわ お忙しいところ申し訳ないのですが
GOLのオープニングの件などで お時間を作って頂けませんか?」
「そうだね じゃ 今夜はどうかな?」
「はい そうしたら 上原の駅前寿司でもいいですか?」
「うん 出来れば浜野さんや安田さんも一緒に参加してもらい
色々な意見を聞きたいと思いますが 如何ですか?」
「、、、、、、 はい 分かりました では7時にお待ちしています」
神山は祥子の話し方が今までと違うので 少し気になった
洋子には参加を控えてもらうか否か考えていると
「ふふふ いいわよ 私は もしかしたらの事を考えているんでしょ」
「うん それに女性って気が付くし」
「まぁ ご自分の女性でしょ でもいいわよ 由貴さんと桃子ちゃんに
これから連絡しておくわね」
「まあ 大丈夫だと思うよ 逆にそんな事すると 由貴や桃子にばれるよ」
「ふふふ もう知っていますよ 貴方に話していないだけよ」
「えっ そっ そうなの、、、」
「私より感度がいいわよ 若いって凄いわね」
「何時から知っているの?」
「ふふふ 知らないわよ もう ご自分で聞いたら」
「あーあ もう 苛めないで欲しいな お願いします」
「上原ショップが出来る時よ あの時に気が付いたんですって」
「へぇー そうなのかぁー」
「だって誤魔化しかたが下手なのよ 同じマンションから出勤しているのに」
「そうかぁー 分かっていたんだぁー あーあ」
神山はみんなに知られていた事が分かり 少しがっかりしたが
それはそれとして それを自分に話さない由貴や桃子の態度に敬服した

「あなた 由貴さんよ」
「神山です」
「ふふふ 今 洋子さんから聞きました 全然気にしていませんよ
それより 桃子ちゃんは今日お休みで今夜は特別参加をしてくれるって
だから 寿司屋でその話が出たら 褒めてあげてね お願いね」
「そうか 先ほど久保さんとの話では 休みの件は出なかったな
うん でも分かりました」
「もう お願いしますよ 桃子ちゃんには私から連絡するわ 大丈夫よ」
「うん ありがとう」
「ねぇ 神山さん いつお泊りしてくれるの 寂しいなぁー」
「うん 今夜は無理だ 時間を作るよ 待っていてね」
「はーい ではお寿司屋さんで」
電話を切ると洋子に
「あーあ 墓穴を掘ったよ もう あーあ」
「ふふふ どうしたの?」
「うん いつお泊りですかって あーあ 時間が欲しいなぁー」
「まぁ 贅沢な悩みね でも そう言われて励みになるでしょ ふふふ」
「洋子 そうしたら祐子とどこかで夕飯でも食べてから帰る?」
「わぁー 嬉しいわ」
「分かった そうしたら 家まで行って そこから何処に行くか、、、」
「そうしたら イタリアンレストラン スパでお食事をしようかしら どう」
「うん そうしたら予約の電話をしておいた方がいいね」
洋子は神山からOKが出たので 予約を入れると総支配人の石原が
「はい お待ちしております」
と答え 洋子は神山に
「良かったわ 予約をして ふふふ ありがとうございます」
神山は洋子に現金10万円を渡そうとすると
「ねえ 軍資金を使わせて もう引き出しに入らないのよ いいでしょ」
神山は頷いて 10万円を洋子に渡し
「これは お小遣いだよ 取っておきなさい」
「はーい ありがとうございまーす」

神山が次長席に戻ると洋子が
「あなた 先ほど本社秘書課から代引きの品物が届いてると言われ
代金を支払い 持って来ました」
「あっ そうか 忘れていた ごめんごめん」
「なあに 金額が高額だったので 秘書課でもどうしたらいいか
悩んでいたみたいよ 電話をしておいた方がいいわ」
「そうか ごめん」
神山は早速中村部長に電話をし 事情を説明した
「ははは 大丈夫ですよ ご安心ください 神山常務の事ですから はい」
「はい ありがとうございます これからは事前に連絡します」
「ええ そうして頂くと ありがたいです」
「では 失礼します」
神山は電話を切ると ダンボール箱を開け桐箱を出した
洋子も何が入っているのか気になり 次長席に来ると
「わぁー 素敵なグラスね」
「うん これがクリスタルグラスの手彫り絵巻さ そうだ 翔を呼んで」
洋子は杉田に電話をして 大至急次長室に来るよう話した

「済みません 今 テツに説明していたので遅くなりました」
「翔 これだ どうだね 素晴らしく綺麗だろ」
杉田は見たことがないグラスの絵巻に驚いて声が出なかった
神山は洋子にビールを出すように指示をすると 洋子が冷蔵庫から
ビールを出しそのグラスに注いだ
「わぁー ビールを入れると 向こう側の絵も見えるんですね凄い わぁー」
「どうだ 翔 気に入ってくれたかな」
「もう 先輩 気に入るなんて もう ありがとうございますの一言です」
「そうか そうしたら翔 これから1時間くらい時間あるかな」
「ええ 大丈夫ですよ でもどうして?」
「これから 内藤さんのところに行く 美佳さんにも見てもらい
それからこの会社に 正式に発注をします いいかな?」
「はい お願いします そうそう先輩 この会社 クリスタル大和って
2年前かなぁー 確かNHKの番組で取り上げられていましたよ
なんでも 一つ一つが手彫りって話していました」
神山は上野店のときに クリスタル大和と話したタイミングが一緒で
その時に口座を作り 取引を始めていればよかったと思った

「じゃあ 洋子 内藤さんに電話をして都合を聞いてくれるかな」
「ふふふ 都合じゃなくて 伺いますでしょ」
神山はこのとき 洋子の言うとおりと思い 翔はなるほどと思った
洋子が確認をすると 美佳も丁度休憩時間に合わせることが出来ると言った
杉田は催事課に戻ると奥村課長に外出を伝え ビルの下で待った
神山は蒼いBMWを駐車場から出すと 杉田と洋子を乗せアルタ本社に
向かった 蒼いBMWに初めて乗った杉田は
「凄く乗り心地がいいですね 最高です」
「ふふふ そうでしょ 翔君も頑張れば 自分で運転できるわよ」
「そうですね いい道しるべを先輩が作ってくれているし 頑張ります」
話していると 直ぐにアルタに着き 杉田が美佳を見つけると洋子が
「美佳さん どんどんと綺麗になっていくわね 羨ましいわ」
「そんな 先輩だって 美しいですよ ほんと 美佳がいつも言っています」
「まぁ お上手なこと 神山に似てきたわね ふふふ」
「おいおい 早く降りてください 車を向こうに置いて来るから」
「はーい 翔君 降りましょ」

2人が車を降り駐車場に止めると 美佳がエレベーターまで案内し
一緒に社長室まで来た
「やあ 山ちゃん 早いですね さあどうぞ」
内藤がソファーを勧めたので 4人が座ると神山は絵巻グラスをだした
「ほぉー 素晴らしい 大したものですね 初めてみました」
神山が持参した缶ビールでビールを注ぐと 向こう側の絵が見え
「うーん 素晴らしい こうすると幻想的な世界に引き込まれますね」
「ええ この大きさのグラスなので この絵柄が生きていると思います」
「分かりました それではこれで進めましょう
そうそう 肝心な本人達の意見を聞かないといけないですね」
「翔は先ほどOKですが 美佳さんは如何ですか」
美佳は翔の顔を見て
「凄く嬉しいのですが こんなに甘えていいのか迷っています」
「そうですか 山ちゃんどうしましょうか」
「そうですね 甘えられる時は甘えた方がいいと思いますが、、、
例えば 甘えられない時に甘えられるか そう考えると どうだろう
スタートラインをこれからの生活に少しでもプラスの位置において
そこからスタートした方が 何かのときにプラスに働くと思うが」
「そうよ 美佳さん 折角オートモで挙式でしょ 折角だから甘えなさい
これは上司の命令です いいですか」
美佳は杉田の顔を見ると 頷いているので
「ごめんなさい お言葉に甘えさせて頂きます ありがとうございます」
美佳はそこまで言うと 目に涙を浮べ 杉田の胸の中で泣いてしまった
「まぁ 美佳さん 嬉しいのは分かるけれど お仕事よ さあ
もう しっかりしなさい また泣いて内藤社長を困らせると 降格よ」
美佳はこの言葉が効いたのか 杉田の胸から離れくしゃくしゃの顔で
「はい 先輩ごめんなさい 山ちゃんごめんなさい うぇーん」
「美佳 しっかりしろよ もう 泣くなよ でも良かったな」
「うん ぐすぅ ごめんなさい 翔ちゃん 嬉しくて ぐすぅ」
神山と内藤はニコニコと見ていたが洋子が
「さあ お二人は外でお化粧をなおしなさい」
きょとんとしている翔に
「美佳さん一人じゃ可哀想でしょ 付いていてあげなさい ふふふ」
翔と美佳はみんなに挨拶をして部屋を出ると神山は内藤に
「内藤さん ではこれで正式に発注します」
「数はどうされますか」
「ええ 最低120組 最高200組と伝えてありますが
早めに連絡した方が 先方も仕事がしやすいでしょう どうでしょうか」
「そうですね わかりました 私の方も急いで人数を確認します」
「分かりました 私の方も人数を詰めます お忙しいところお願いします」
「ははは 山ちゃんの事だからそうくると思っていましたよ」
「ははは 想定内の事ですね」
「ええ そうです」

「ところで 内藤さん これを御殿場で出しませんか」
神山は2年後のシドニーオリンピックに併せ アレックスジャパンが
世界限定販売をする オリンピックマークの入ったクリスタルグラス
「うちのメリットは?」
「グラスのデザインです」
「うーん そうすると どの位売れるか未知ですね」
「ええ そこで GOLで先行販売するんですよ アレックスだって
利益があり スポーツに関係していれば 販売はしやすいでしょ
それにオリンピックマークの使用権利も獲得しているので
このグラスに使うのも 問題ないはずですよ」
「そうすると このグラスはいくらですか」
「ええ 1客2万円です プラスデザイン料2万円 五輪権利料1万円
アレックス利益2万円 合計7万円で6客42万円を50万円で販売」
「うーん 1000個限定で 2000万円ですかどうでしょう、、、」
「世界限定なので 1万個でどうでしょう そうすれば2億です
アレックスが本腰入れたらすぐに売り切れますよ どうされますか」
「分かりました やりましょう しかし山ちゃん 凄い事考えますね」
「次の冬季五輪がアメリカでしょ そうすればもっと出ますよ
そうそう 販売方法にもひと工夫すれば もっと売れますよ」
「例えば?」
「ええ 各競技ごとにシリアルナンバーを振るんですよ バラで買えば
大変な金額ですよ」
「あっ そうか そうすると大変な事になるね」
「でしょ なので セットはほどほどにして バラに力を入れて
予約販売でもなんでも出来ると思いますよ GOLではその動きを
見るのに丁度いいと思いますよ」
「そうですね 分かりました」
「それにGプロの仕事が出来るじゃないですか」
「うん いいですね 山ちゃん お任せします お願いしますね」
「はい この件は少しの間 オフレコでお願いします」
「はい 了解です ははは しかし凄いな もう付いていけません ははは」
「それでは そろそろ失礼します」
「そうそう 山ちゃん 小田原工場から例のアンケートが戻ってきました」
内藤は野菜缶詰アンケート用紙の詰まった封筒を神山に渡した
「早いですね さすが小田原工場ですね」
「ええ パテントが絡んでいるんでしょ なので大至急って話しました」
「ありがとうございます これでGOLが楽しくなりますよ」
内藤はニコニコしながら 1階の受付まで見送りにくると杉田と美佳が
きちんとお辞儀をして待っていた
「美佳さん よかったね じゃ車を持って来るから」
神山は駐車場から車を出すと 玄関で翔と洋子を乗せアルタを後にした

次長室に戻ると神山はクリスタル大和の社長 大森和一に電話をした
「はい ヤマトの大森ですが」
「先日の神山です こんばんわ」
「ああ 鈴やさんの神山さんですね ありがとうございます
上野店さんから連絡を頂き 臨時口座開設と伺いました」
「それで 例の6客120組の件ですが 正式に発注させて頂きます
最終数字も早急に詰めて ご連絡したいと思っています」
「ありがとうございます ところで神山さま 実はまだ試作段階なんですが
あの6客中に 機械彫りがあるんですが 分かりましたか」
「いいえ 全然分からないですよ でも そうすると手彫りの良さとか
貴重さなどが薄れるんではないですか?」
「ええ 仰られるとおりですが 機械も進歩していまして 手彫りのように
彫る事が出来るようになりました 逆に機械だとまだまだ修正を
していかなければ 難しいところがあるんですが どうでしょうか
今度 お時間があるときに 会社を見て頂けませんか」
「そうですね 私の方もちょっとお話があるんですよ そうそう
お伺いしたいんですが 百貨店で入っている所は他にありますか?」
「いいえ 鈴やさんだけですよ この不況でちょっと難しいですね」
「そうですか 分かりました そうしたら こちらからご連絡します」
「はい お待ちしています 失礼します」

神山は大森との電話を終えると時計を覗いた
「洋子 そろそろ出ようか」
「そうですね では着替えをします」
洋子が着替えている間に祐子に電話をすると
「はい 分かりました 直ぐに出られるように支度をします
それから タクシーの手配もしておきますね」
「そうだね ありがとう では 10分くらいでいきます」
電話を切ると洋子の支度が終わり 次長室を出た
赤坂のスタジオに戻ると 祐子が迎えてくれた
神山は2階の主賓室で着替えると GOLのNNブースのデザインを
鞄に入れ スタジオに下りると丁度タクシーが来た

「運転手さん 青山3丁目で二人降り 僕は代々木上原までお願いします」
「はい 分かりました 交差点の少し手前で止めますね」
洋子と祐子は頷き 食後のショッピングやカクテルバーの話で盛り上がり
神山は一人蚊帳の外だった
青山3丁目で洋子と祐子が降りると 神山は洋子に
「じゃ 祐子を頼みましたよ」
「はーい 分かりました」
「祐子 今夜は分からないから 先に寝ていなさい」
「はーい ごゆっくりどうぞ 行ってらっしゃい」
タクシーが出ると 洋子と祐子は手を振って見送ってくれた
代々木上原の駅前に着くと タクシーを降りて駅前寿司に入った
時間はまだ7時前なので 祥子は着ていなかったが桃子が着ていた
奥の座敷から桃子が手を振り合図をしてきたので
「やあ こんばんわ 今夜はありがとう 助かるよ」
「ふふふ もう 突然なんだから 驚くわ」
「ごめんごめん でも ほら 若い人たちの意見も聞きたくてさ」
「またまた 顔を見たかったんでしょ もう 分かっているんだぁー」
「参ったなぁー ところで 調子はどう」
「絶好調よー 次回は優勝を争うわ 絶対に 真っ直ぐに飛ぶし
アイアンはほぼ狙い通りのところに落とせるようになったわ」
「おいおい 凄いなぁー もうこれ以上上達すると 追い越されるよ」
二人で笑っていると 女将がおつまみの鮮魚の盛り合わせやビールを
持って来てくれた
「女将 あと10分くらいで もう2名来ます お願いね」
「あいよー そうそう 美味しい照り焼きがあるけれど どうする?」
「うーん みんなが揃ってからでいいよ そうだ 10分したら焼いてね」
「あいよ 10分したら4つでいいかい」
「ええ 人数分焼いてください」
やり取りを聞いていた桃子が
「神山さんて 良く気が付くのね 改めて感心しました ふふふ」
桃子は神山の顔をまじまじ見つめながら 微笑んだ
「おいおい いつもそのつもりだけどな でも褒められたんだからいいか」
「そうよ いいでしょ こんなピチピチに寂しい思いさせて もう」
「わかった ごめんごめん そろそろ元気になったよ 大丈夫さ」
桃子は神山が元気と言うと 顔を少しピンクに染めて俯いた
「こらぁー 自分で言い出しておいて でもごめんね 時間を作るよ」
「ほんと 嬉しいわ でもね 今日からレディースディーなのよ 残念ね」
「そうか 分かった じゃその後だね」
「祐子さんと一緒でもいいよ 全然気にしていないし 楽しいもん」
「分かった 時間を作ります」

二人の約束が成立した時に 祥子と由貴が店に入ってきた
桃子が直ぐに気が付き由貴に手を振ると 由貴も合図に答えた
「やあ こんばんわ 先に頂いています」
「ごめんなさい お忙しいところ 時間を作っていただいて」
「そんな事はないよ これもお仕事ですからね 僕にとっては大事な時間さ」
祥子は少し躊躇し
「でも 良かったわ 改めてGOLのことを話せるし よかった」
祥子と由貴が落ち着いたところで 女将がビールとおつまみを運んだ
「ではGOL成功を祈願して かんぱーい」
みんなでジョッキをカチンと合わせると祥子が
「それで 早速で申し訳ないのですが メンズをどの様に位置づけし
どの様に展開するか 全然検討が付かないんですよ
あと ブースデザインは先日の打ち合わせで拝見しましたが
商品展開方法など ランニングを考えて行きたいと思っています」
神山は祥子がこの時期からGOLの事を考えてくれている事に
嬉しく思い 出会ったときの祥子を思い出した

「メンズはあくまでも御殿場発進のデザインで 全国展開の様子見と
位置づけする事は 知っていると思います ある部分アンテナです なので
婦人服との関連付けは考えなくてもいいと思います どうだろう浜野さん」
「はい 私も初めての事なので はっきりは分からないのですが
商品構成が全然違うステージなので 無理やり関連付けさせるより
見せていく部分で 例えば小物などで 雰囲気を醸し出す方法とか
逆に アンバランスな商品群を同じステージで展開しても面白いと思います」
「ええ 私も由貴先輩が話したように メンズがどのような形で
出来上がってくるか分からないじゃないですか だったら無理やり
同じステージで見せていかなくてもいいと思いますよ」
「そうだ 浜野さん メンズは僕のファッションが基本になるよ どうかな」
祥子は事前に知っているので クスクス笑い神山の手を取り立ち上がると
「ねえ どうかしら 似合っているかしら ふふふ」
神山以上に由貴と桃子は驚いていると 祥子は更に腕を組み
「こんな感じよ どう 似合っている?」
神山は完全に何もいえない状態だったが 由貴が落ち着いて
「神山さん マネキンの使い方で大丈夫だと思います
例えば 顔のメイクがないものや そうもっとシンプルに 目と鼻がない
シンプルなボディーなんかだと イメージが沸いて来ますよね」
「そうそう 変にメイクや顔の形があるとイメージが 固定されるでしょ
でも 何も無いとイメージが膨らんで ステージの違う商品でも
同じステージで展開しても全然 可笑しくないですよ 大丈夫です」
神山は漸く心に余裕が出来 席に座ると
「久保さん オープニングは僕達が 精一杯演出します しかし
ランニングについては まだなにも決まっていないんです しかし
イベント関係や 各ブースの集客プランについてはGプロで行います
そこで ディスプレイやVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)は
まだ はっきりと決まっていません なので今後の課題となります
当然 婦人服の新作とメンズの新作を展開しますが 大規模な構想だと
当然予算が絡んできます そこだけですね」
「そうすると 展開するには 私たちの力では限られた演出しかなく
ランニングを考えていくと 少し無理が出てきます そこで提案ですが
神山さんがポールに掛け合って頂き ランニングの予算捻出を
お願い出来ませんか そうすれば安心して 計画する事が出来ます」
神山は暫く考えたが 祥子のいう通りなので
「分かりました メンズアドバイザーと言う立場とGOLデザイナーと言う
ところで 経費の捻出を相談します 最悪はNNジャパンになり
筒井さんにも報告させていただく事になります 
でも 大丈夫ですよ ポールは分かってくれますよ」
神山の話を聞いた ニーナ・ニーナの面々は一安心した

話が落ち着くと女将が運んできてくれた照り焼きなどを食べたりし
ビールも呑むと日本酒を頼んだりして 和やかに話が進んだ
由貴も桃子もGOLに対し積極的に意見や提案が出され 神山は
デザインに書き込みをしていくと 参考になる事案ばかりだった
おつまみや巻物を食べると由貴が桃子に
「桃子 そろそろ帰ろうよ 後はチーフと神山さんに任せましょう」
「はい そうですね 神山さん ご馳走様でした」
「いやぁー こちらこそ 貴重な意見をありがとう 助かったよ
そうそう もう遅い時間だから これで帰りなさい」
神山は二人に2万円ずつ渡し
「残業代少ないけど 気をつけて 帰ってくださいね ごめんね」
「わぁー ご馳走になって 残業代まで頂いて ありがとうございます」
由貴と桃子は神山と祥子にお辞儀をして お店を出て行った
「ねぇ あなた お部屋に来てくださる」
神山は一瞬考えたが
「うん いいよ」
神山と祥子は駅前寿司屋を出ると祥子のマンションに向かったが
以前のように楽しい会話がなく 神山も祥子も暗い道を歩くだけだった
神山は歩きながら その壁を取り除こうと思い考えていたが 足取りも重く
祥子は祥子でその空気を打ち破ろうと考えていたが 出来ずに
二人は言葉を交わすことなく 祥子のマンションに着いた

「ごめんなさい 私 寂しかったの」
「そうか 僕も祥子が自分から離れていった事が凄く寂しかったよ」
祥子はベッドの中で神山に充分に愛された後 少しずつ話してきた
神山と連絡を取れなくなったのは 別れた夫(黒石)がしつこく迫ってきて
自分一人で解決できず 黒石の当時の上司に相談にのってもらった
その上司は小島真人と言い 黒石と結婚することに反対をしていた
「なんで 僕に前の旦那の事を話してくれなかったの
祥子の悪いところだよ 自分で溜め込んで、、、」
「ええ、、、ごめんなさい」
「それで、、、」
「ええ 黒石の話は結局は財産目当ての話なんです それで 当時上司で
良く相談していた小島さんに 話したら 僕が話してあげると言われ
お任せしたんです ごめんなさい」
神山は祥子の髪の毛を弄りながら聞いていた
「最初は親切に私の悩みを聞いてくれていたの でも そのうちに
だんだんと 彼のことが私の中に入ってきたのよ ごめんなさい
私 寂しかったの だから、、、 ごめんなさい、、、」
神山は祥子と小島の交わりの事を聞きたくなかったが
「うん それで」
「ええ 貴方と会えない寂しさを小島さんに求めました ごめんなさい」
「でも いまさらだよね 今 経緯を話されても納得できないし
逆に 自分だったらそんなことしたら どうなるか、、、寂しいね」
「ごめんなさい」
「で 今も その小島って男と付き合っているの」
「、、、、、、」
「そうか、、、これからどうする」
「、、、、、、」
「まあ 僕は祥子次第だけど」
「、、、だけど 貴方は一杯女性に囲まれているし、、、」
「なんだよ」
「だって 洋子さんだっているし 私なんか必要ないでしょ、、、」
「なんだ その言い方 随分だね
はっきり言わせて貰うよ 仕事とプライベートは区別しています
それに 連絡をしなくなったのは 祥子からだろ
変な言いがかりは やめて欲しいな」
「ごめんなさい、、、、、、」
「それで その小島って幾つなの」
「ええ 52歳です」
「今も付き合っているんだろ」
「ううん それがね 浮気がばれて 逢っていないわ」
「ふーん」
「ほんとよ 横浜の本牧に住んでいるの それで小島さんは婿養子なのよ
財産は凄いわ 小高い丘全部小島さんの土地で 驚いたわ」
「へぇー じゃ 奥さんと別れられないんだ ふーん」
「ねえ 戻ってきて お願い、、、」
「祥子 言っておくが 都合が良すぎるよ いくらなんでも」
「分かっているわ 恥を承知でお願いしているの ねえ」

神山は祥子の寂しい部分を覗いたような気がして このまま泊まるか否か
少し考えていたが 余りにも自己中心的な考えに付いて行けず
「祥子 悪いけれど 今夜は帰らせてもらうよ」
祥子は結果を予測していたのか 以外にも明るい顔で
「そうね ごめんなさい お仕事にも影響するし GOLもあるし
私 あなたの事 待っています 今度こそ本気よ ねっ」
神山は明るくなった祥子の顔を見て少し安心し 帰り支度を始めた
1階のエントランスホールで祥子が
「GOLを成功させましょうね お願いします」
祥子は深々とお辞儀をすると 神山に抱きつきキスをした
二人だけの空間 祥子はこのまま時間が止まって欲しいと思ったが
「さあ お仕事お仕事 ふふふ おやすみなさい アドバイザー殿」
神山も祥子の事を思い 
「じゃ おやすみ」
大きなガラス戸が開くと 1回だけ振り向き祥子に手を振り大通りに出た
タクシーを拾い 赤坂のスタジオに戻った







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