平成10年4月3日 金曜日 快晴
「あれっ もしかして久保さんですよね 神山です こんばんわ」
「あら 神山さん こんばんわ お花見ですか」
「ええ 土日は込むでしょ お花見どころじゃないから」
「神山さんは確か昨年4月に銀座に来られたんでしょ」
「ええ 人事異動で 上野から花の銀座ですよ」
「まあ 花の銀座なんて でもなぜ上野に来られたんですか」
「ええ 上野店の連中が是非と言うもんですから」
「ふふ まだ心は上野のままですか 早く銀座に慣れて下さい」
「ははは すっかりお見通しですね 徐々になれますよ」
神山龍巳は名古屋に本店がある百貨店鈴やのエリートサラリーマン
入社は昭和51年度入社で 14年目36歳の若さで課長昇進は
同期の中でも群を抜いて早い抜擢である
役職は販売促進部催事課装飾専門課長で 百貨店催事の企画から
店内装飾のデザインや 外交的なことも行っている
入社しその抜群な能力を買われ一時営繕課デザイン業務も携わった
今夜の花見は上野店営繕課当時の仲間に誘われて参加した
「久保さん お仲間はどうされたんですか?」
「ええ 一人おトイレに行ったきり 帰ってこないので、、、」
「そうか 心配ですね 迷わなければいいですね、、、」
「神山さんの方は?」
「ええ 盛り上がっていますが 早々に引き上げです
若いのと一緒だと からだが幾つあっても足りませんよ」
「そうよね ほんと若い子は良く呑んで騒いで こちらも大変」
「またー 久保さんだって まだまだ若いですよ ほんと」
「まあ お上手ね でもありがとう 嬉しいです ふふふ」
二人で話し込んでいると おトイレから戻ってきた浜野由貴が
「チーフ ごめんなさい お待たせしました
あれっ 神山さんだぁー こんばんわ」
「やあ 浜野さん こんばんわ 盛り上がっているんだってね」
「ええ でもそろそろ帰ろうかって 話をしていたところです」
「そうなの 私 何も聞いていないわよ」
「ごめんなさい チーフ 私の後におトイレに来た林さんも
そろそろ 引き上げましょうかって そう言われてました」
「そうなの そうよね 女3人だとつまらないものね」
それを聞いていた神山龍巳は
「なんだ 女3人で桜見物なの?」
「ええ そうなんですよ 最初はもう少し居たんですよ
でも 色々とありまして 早々に引き上げていきました」
「そうかー それだったらこれから呑み直しをしようよ どう」
「わぁ 神山さんとご一緒できるんですかチーフ行きましょうよ」
「まあ 目を輝かせて いいわよ でも林さんはどうかしら」
「大丈夫ですよ 神山さんの大ファンですよ
チーフ 知らなかったんですか?」
「まあ そうなの だってあの人いっぱいファンの人居るでしょ」
「でも 神山さんは別格の大大ファンですよ」
「私はいいわよ 神山さんよろしいですか?」
「ええ 両手に花なんて 初めての事ですから 嬉しいですよ」
「まあ お上手」
3人が話していると林恵美がおトイレから戻ってきて
「チーフ すみませんお待たせしました
あら 神山さん こんばんわ お花見ですか」
「ええ していましたが 早々に帰ろうと思っていたところです」
「まあ 偶然ですね」
「それで浜野さんから聞いたのですが お開きにするんだったら
この近くで 呑み直そうと話していたんですよ」
「いいんですか 私なんかがご一緒でも、、、」
「そんな 周りに女性って 初めての経験ですから ははは」
「店長 そんな事言わないで ご一緒しましょうよ ねっ」
「チーフは、、、」
「私は大丈夫 林さんや浜野さんは大丈夫? 時間も遅いし」
「大丈夫ですよ 電車がなくなったらタクシーで帰りますし」
「まあ 元気 ははは」
「それでは 話は決まったね では行きましょうか」
久保と神山が前を歩く形で広小路通りを歩くと
大きなビルの前に着いた
4階から上が居酒屋さんというちょっと珍しい建物だった
「久保さん このビルはね昨年秋に出来て
最初なにが入るのか検討も付かなかったらしいですよ」
「このお店なら銀座にもあるわ 銀座はもう2年位経つかしら」
「そうそう あそこと同じところが経営していますよ」
「近いうちに私たちが ご招待しますよ」
「ええ お願いします」
エレベーター周りは居酒屋のイメージではなく
どこかのブティックにきたような ファッショナブルな造りだった
浜野由貴と林恵美は始めて見る 居酒屋のエレベーターに驚き
「神山さん ここって高くないんですか?」
「ははは 大丈夫ですよ チェーン店だから安いですよ
多分 銀座と同じじゃないかな」
平日だといってもお花見の時期なので エレベーターを待つ
サラリーマンのグループなどが結構多く見られた
「普段はもう少し静かで お客さんも程ほどですが
この時期はちょっと 多いですね」
「そうですよね お花見でなくてもここら辺は人が多いですよ
なんと言っても鈴やさんや アメ横があるから」
「そう まあ持ちつ持たれつですかね」
4基あるエレベーターのうち2基が居酒屋専用となっていて
そのうちの1基が降りてくると 扉が開いた
箱の中からは 今まで呑んでいたお客がわんさかと出てきた
神山たちは最初に乗り込んだので 箱の隅の方においやられ
ちょうど久保と向き合う格好になり ちょっとばつが悪かった
最上階の8階で降りると そこは普通の居酒屋さんの構えだが
木札の付いている下駄箱だったり 廊下が畳敷きなど
少しばかり料亭の雰囲気を楽しめる内装だった
受付で待っていると若いスタッフが席まで案内してくれた
隣とのパーテンションは深緑色の漆喰風の落ち着いた壁の上に
黒色格子の障子が設けてあり なかなかしゃれていた
席は掘りコタツ式になっていて 足が伸ばせるところが好評で
男性だけではなく 女性の利用が多いのも頷けた
テーブルは丸太をスライスしたものがそのまま置かれていて
木肌の温もりを感じながら 食事が出来た
席順は久保祥子の隣に神山が座り 反対側に浜野と林が座った
「チーフ なにか足元がすうすうしませんか?」
「そうね 私も少し感じる うん」
「ははは これはですね タバコの煙を吸う機械があるでしょ
あれの 足元バージョンですよ」
「そうなの だから少しすうすうするんですね」
「会社の帰りだと 気を付けていてもねぇ」
「そうね 男の人だけじゃなくて 女性でも汗をかくし助かるし」
浜野と林はメニューを見ておつまみや飲み物を探していた
「神山さんは何を呑まれますか?」
林はメニューから目を離し 神山の顔をじっと見つめ聞いた
「僕は軽く 焼酎のグレープフルーツ割にしますよ」
「じゃ私も 同じのにするわ」
神山と林の呑みものが決まると 他の二人も同じものにした
「おつまみは何にされますか?」
神山は林からメニューを受け取ると 暫く考え
「うーん なんでもいいけれど そうだなこれとこれかな
それより 女性が食べたいものを頼んでよ
ここは僕が誘ったんだし ご馳走させて頂きますよ」
「はーい じゃいっぱい頼んでも大丈夫ね」
浜野由貴は愛らしい目をくりくりさせて 神山龍巳を見ていた
スタッフが注文聞きに来ると 林と浜野が争うように注文し
「神山さん 以上でいいですか?」
「うん 僕は構わないよ 君たちはそれでいいのかな」
「ええ ありがとうございます 大丈夫です ねぇ店長」
「ええ 大丈夫ですよ」
スタッフが戻ろうとした時に神山龍巳が
「悪いんだけど ビールと簡単なおつまみだけでも先にお願い」
「はい かしこまりました 直ぐにお持ち致します」
若いスタッフは丁寧にお辞儀をして 戻っていった
「ねえ 神山さん 一昨日って歓送迎会でしたでしょ」
「うん よく知っているね」
「勿論ですよ 神山さんの事はなんでも分かりますよ」
神山は久保祥子が言っている意味が分からなかった
(銀座店の内情がなぜ分かるんだろう、、、)
暫く考えていると 先ほどのスタッフが生ビールとおつまみを
運んできて 各人の前にジョッキを置いた
「さあ 上野のお山に乾杯しましょう かんぱーい」
神山の音頭で乾杯しみんなのジョッキがカチンと響いた
「さあ 遠慮しないでガンガン呑んでね」
「わぁー 嬉しいけれど おトイレが近くなるし ねぇ先輩」
「そうよ 呑むのはいいけれど おトイレはね」
「まあ そう言わずにガンガン行きましょうよ」
神山たち4人は すぐに生ビールを呑みほすと焼酎を頼んだ
今度は可愛い女の子が焼酎1本と氷と水 グレープフルーツを
運んできて 大きなグラスをテーブルに置いて戻っていった
グレープフルーツは半分にカットされていて
自分たちで絞ってグラスに入れるようになっていた
「だから ここはいいのよね 天然だから」
「そうそう 他のお店だと何を入れられているか分からないもの」
浜野由貴と林恵美が口を揃えて 神山に話していた
神山が浜野と林の分を絞ってグラスに入れると
「神山さんって 優しいんですね」
林が目をキラキラさせて 神山を見ながら言った
「いやいや このぐらい ほら多少でも力仕事でしょ」
隣に座っている久保祥子はクスクス笑いながら
「多少は力仕事でも 私たちだって出来ますよ ふふふ」
そう言うと 久保祥子は神山の為に果実を絞り
大きなグラスに焼酎と氷を入れて 果実を注いだ
「はい どうぞ」
「いやぁー 参った 女性でも出来るんだ これまた失礼」
3人の女性は神山龍巳のおどけた仕草に大笑いした
グレープフルーツが無くなると神山は可愛い女の子を呼んで
「これが無くなったから もう少し持ってきてくれるかな」
「お幾つ持って来ればよろしいですか?」
「うーん そうしたらあと4切れ持ってきてくれるかな」
「はい かしこまりました 少々お待ちくださいませ」
そう言うと 丁寧にお辞儀をして 厨房へ戻っていった
「随分と訓練されているね 気持ちがいいね」
「そうですね 普段接客をしているから余計に感じますね」
久保祥子は神山の横顔をじっと見つめて話していた
神山が焼酎を呑み終わると グレープフルーツの果実を絞り
自分のグラスに注いでいると浜野由貴が
「あのー神山さん グレープフルーツって酸が
強いから程ほどにされたほうがいいですよ」
「ほぉー そうなんだ」
「ええ 私 大学の時 フランスへ留学した時に
アルバイトで グレープフルーツを売っていたんですよ
ほら 色々と勉強するのにお金が足りないでしょ だから、、、」
「偉いね 留学してアルバイトか それで」
「ええ 毎日グレープフルーツの果実を絞っていると手が
ツルツルになってきたんです」
「へぇーそんなに強いのか でもお肌に良いと言われているよね」
「それでも毎日顔にじかに付けていると 肌荒れを起こしますよ」
「そうなんだ いやぁー 初耳だよ 気をつけよう」
「だから余り大量に飲まないほうがいいですよ」
「そうだね ありがとう」
神山は浜野に言われてからは 果実を半分にして焼酎を呑んだ
おつまみも半分くらい食べると林恵美がおトイレに行った
それを合図に浜野由貴も一緒におトイレに向かった
「ははは 女性のつれしょんか」
「まあ 神山さんたら 変な事言わないでくださいよ ふふふ」
神山は時計を見ると 22時を回っていたが
最終電車にはまだ充分に時間があるのでゆっくりしていた
「いかがですか 銀座の催事課は」
「ええ 上野より楽しいですよ なにしろ宣伝課と仲がいいし」
「そうですね 上野より銀座のほうが連絡が取れていますし
私たちも銀座のほうが お仕事はしやすいですよ」
「そうですか では機会があったらそれとなく上野に話しますよ」
「まぁ いいですよ ごめんなさい 余計な事をお話をして」
「いいじゃないですか 改善できるところは 改善しないと
そのうちに置いてきぼりになりますからね」
久保祥子と神山が話していると浜野と林が戻ってきて
「チーフ 私たちこれで失礼します」
「おや まだ呑めるでしょ」
「ええ でも明日のお仕事もあるし 神山さん ごちそうさま」
「うん 気をつけて帰ってね 今夜は楽しかったよ」
「次回は銀座で呑みましょうね ではチーフ失礼します」
「はーい 気をつけて帰ってね 明日お願いね」
浜野由貴と林恵美は神山と久保に深々とお辞儀をして
受付に向かい浜野は下駄箱の手前で神山に手を振った
神山もそれに答えて 両手を振った
「さあ これからカラオケが出来るしゃれたお店に行きますか」
「わぁー カラオケですか いいんですか?」
「大丈夫ですよ」
「嬉しい ご一緒しま~す」
神山が精算を済ませると 混み合っているエレベーターに乗った
アルコールで熱くなった久保祥子と体が触れ合いどきりとした
エレベーターの扉が開くと 涼しい風が気持ちよかった
広小路通りにでると神山は高いビルを指差しながら
「ほら見えるでしょ あのビルの最上階ですよ」
「へぇー あんなところにカラオケですか?」
「ええ もっともカラオケはおまけみたいなもので
大抵のお客さんは 外を眺めながらチビリチビリやっています」
「そうしたら カラオケ出来ないですね」
「大丈夫ですよ 安心してください」
神山はビルの最上階を見ている久保祥子の横顔を見ていた
(綺麗な女性だ お付き合い出来たらいいな)
「ねえ 神山さん 本当にいいんですか?」
「ははは 大丈夫ですよ」
「ごめんなさい 私 今夜はあまり持ち合わせが無い物ですから」
「心配無用です さあ行きましょう」
少し安心したのか 久保祥子の顔が明るくなった
4月だというのにまだ肌寒いのに 今夜は少し暖かかった
濃紺のジャケットに白いブラウスが素敵で
生暖かい優しい風が 久保祥子の髪の毛を撫でていた
「今夜は普段より すこし暖かいですね」
「ええ 僕もそう感じていたんですよ ちょうどいい具合ですね」
「お酒も入っているし このぐらいが気持ちいいですね」
「久保さんって お酒いけるほうですね」
「そんな事ないですよ もう一杯です」
「だって 足元もしっかりしているし 本当は強いんでしょ」
「だって男性が居るところで フラフラ出来ないでしょ」
「うーん そうか そうすると 家に帰るとバタンキューですか」
「その前にお風呂に入りますよ ちゃんと」
「僕はバタンキューで 翌日シャワーですね」
話しながら歩いているとしゃれた造りのビルに着いた
エレベーターで最上階に降りると 目の前にガラスがあり
そこからの眺めは目を見張った
「ここって 少し怖いですね ほら下まで見えているし」
「そうですね エレベーターの前側 この広小路側が
全面ガラス張りに成っているので なれないと怖いかも」
「それで下から見上げた時に 人影が動いていたんですね」
「そうですよ よく見えるから スカートの格好で
このガラスのところに居ると 下から覗かれますよ ははは」
「まあ そうなんですか」
久保祥子はそう言うと ガラスから離れて神山の顔を見た
「大丈夫ですよ 夜だし 見えないですよ」
「まあ 神山さんの意地悪 ふふふ」
床にはタイルの張り分けでお店の名前が書かれていた
「神山さん『ビーンズ』って素敵なお店ですね」
「でも 豆類のことでしょ うーんって感じです」
「可愛らしくて いい名前よ」
「そうですか それでかな 女性客が多いのは」
「うーん あと美味しくてリーズナブルじゃないかしら」
「そうですね 確かにそんなに高くは無いですよ」
エントランス右側に店の入り口があり 神山が二人と伝えると
ボーイが全面ガラス側の席に案内した
店内は薄暗くガラステーブルが下からの照明で浮かんで見えた
席に着くと久保は落ち着かないのか 周りを見渡していた
「どうされました 落ち着かないですか」
「ええ こんなに素敵なところは初めてなんですよ だから」
「僕も初めは落ち着かなかったですよ でも直ぐになれますよ」
このフロアは天井までが高くて開放感が味わえるが
マド側の席が少し高くなっていて 落ち着かないところがある
建物構造上マド側に梁を設ける為 マド側床自体を高くして
その分 客席をマド側に付けるレイアウトがされていた
「でも このマドガラスを覗くと直ぐ下の歩道が見えるでしょ」
「ははは 久保さんは高所恐怖症ですか」
「うーん かも知れないわね だって初めてですもん」
「じゃあ 初めてでしたら 慣れるまでムズムズしますね」
「大丈夫よ 平気です」
「ははは 何を呑まれますか?」
「カクテルにしようかなぁ ほら あそこのテーブルの人」
久保がちょこんと出した手のひらの先を見てみると
「あのピンク色したカクテルですか?」
「そう 分からないけれど 美味しそうに呑んでいるので」
「では早速注文しましょうね」
神山は片手を挙げて ボーイを呼ぶと
「ほら あそこの女性が呑んでいるピンクのカクテルと
そうだな 僕はマティーニでお願いします」
「お客様 あのカクテルはミリオン・ダラーと言いまして
甘くていい香りのするカクテルです アルコール度数は8%です」
「うん お願いします いいですね」
「はい お願いします」
「おつまみは如何されますか?」
「うーん モッツァレラは今日ありますか」
「ええ 大丈夫ですよ」
「それから フランスパンの薄切りを焼いたのってありますか?」
「ええ 大丈夫ですよ」
「そうしたら それをお願いします」
ボーイがメモをとって厨房に戻ると久保祥子が
「神山さんモッツァレラなんてご存知なんですか 凄いグルメ!」
「ははは 種明かしは先日の歓送迎会で覚えたんですよ」
「まあ そうなんですか」
二人は顔を見合わせて 笑い出した
暫くするとボーイがグラスビールとカクテルを運んできた
「あれっ ビールは注文していないのに」
「ええ このお花見のシーズンはカップル様限定で
ウェルカムビールをサービスさせて頂いているんですよ」
「そうだよね 先日きた時には なかったよね ありがとう」
ボーイがグラスビールやカクテルなどテーブルに置くと
深々とお辞儀をして厨房へ戻っていった
薄い乳白のガラステーブルに置かれたミリオン・ダラーは
まるでピンクの液体が宙に浮いているようで美しかった
「綺麗ね このカクテル」
「うん ピンクの光るボールが宙に浮いているようだ」
「ほんと 宙に浮いているようですね」
久保祥子は初めてみる光景に感心していた
「さあ 呑みなおしの乾杯でもしましょうか」
「は~い」
神山と久保は笑みを浮かべ互いの目を見つめ乾杯した
二人はよく冷えたグラスビールを一気に呑むと
「久保さん 改めて乾杯」
「ふふふ 何回してもいいですね」
互いのカクテルグラスを少しだけ持ち上げて乾杯した
薄切りパンにモッツァレラを塗り口に入れると美味しかった
「神山さん この小さなパンがいいのね」
「うん これが普通のフランスパンだと 大きすぎるでしょ」
「でもこんなに細長いフランスパンってあるのかなぁー?」
「きっと アメ横あたりで売っているんじゃないですか」
「まさか でも分からないですね」
「美味しいね どこで売っているんだろう 聞いてみようか」
久保祥子は答えずに神山の顔をみて頷いた
神山が手を挙げてボーイを呼ぶと
「このフランスパンなんだけれど 凄く美味しいね」
「褒めて頂いて ありがとうございます」
次回は4月8日に掲載です
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