「お客さん 上原に着きましたよ」
すっかり寝込んでしまった神山はタクシーの運転手に起こされた
神山はマンションに戻り郵便受けを覗くと
宅配業者からの不在表が入っていて
【ゴテンバ グランド インさん からのお届けものは
管理人さんに預けました 受け取りをお願いします】
神山はエレベーター後方の管理人室に行き荷物を受け取り
台車を借りて自分の部屋に運んだ
送られてきた日本酒を筒井の分を取り出し祥子に電話した
「神山ですがお楽しみのところ 済みませんね
どう盛り上がっていますか」
「はい 私です ちょっと待ってくださいね」
祥子は居酒屋のような所に行っているらしく雑音が酷く
聞こえないために静かな場所に移った
「ごめんなさい 聞こえますか?」
「うん 聞こえるよ 大丈夫です
ところで筒井さんの住所を知りたいんだけど、、、」
「どうしたの?」
「うん 御殿場のお土産を送りたいんだ」
「はい 少し待ってね 今手帳を持ってきます」
「うんお願いします」
神山は祥子から住所を聞くとメモをしてから
「どうもありがとう 今夜中に宅配業者さんに出しておきます」
「はい 分りました お仕事頑張ってください」
「そちらも頑張ってください」
神山はメモを書き直して日本酒を台車に載せ管理人室に行くと
管理人は荷物を受け取り寸法と重量を測り送料を割り出した
神山はお届け伝票に必要事項を記入し送料を渡し部屋に戻った
時計を見ると22時30分なので銀座の部屋で
杉田が仕事をしていると思い電話した
「おばんです 神山ですが どうだい仕事は」
「こんばんわ どうされたんですか?もう自宅ですか?」
「うん 今帰ってきた」
「随分と早いですね」
「うん 皆は2次会に行ったが そうも出来ないからな」
「ありがとうございます お聞きしたい事があって
電話をしようにも どうしたものかと考えていた所です」
「そんな 遠慮しないでくれ 時間がもったないぞ それで」
神山は杉田の悩んでいる事を聞きだし 適切に指示をした
杉田は神山から聞いたアドバイスで
「分りました その方法で合い見積もりを行います」
「うん その方法がいいと思うよ」
「ええ ありがとうございます たすかりました
これから書類を作って明日各業者にFAXします」
「うん 頑張ってくれてありがとう 23時頃には帰れよ」
「はい それで明日はどうされますか?」
「うん 午前中は上原の現場で午後から銀座に行く」
「分りました 気をつけて下さいね」
「うんありがとう 翔も気をつけろよ」
神山は杉田と電話を終えると 由香里に電話した
「こんばんわ 神山ですが」
「こんばんわ お早いですね」
「そう 10時過ぎに終って帰ってきた」
「倉元さん達とご一緒ではないのですか」
「うん 翔が今も部屋で残業していたし
それに自分の仕事が山ほど残っているからね」
「そうですか 大変ですね それで翔君もまだ部屋で仕事?」
「うん 今電話したら仕事の最終段階だったよ」
「頑張っているわね 早く課長さんになってもらえるといいわね」
「うん それから例の日本酒が届いていて筒井さんに送っておいた」
「あっ そうそうありがとうございます 私の所にも届いています」
「良かったね」
「ええ 先ほど母と味わって 美味しいって言っていましたよ」
「へぇ~ まだ呑まれるの お母さんは?」
「ええ 昔は私より呑んでいたみたいよ
今は呑んでいるけれどそんなに量は呑まないけどね」
「しかし 美味しいお酒でよかったね 喜んでもらって嬉しいよ」
「そうね 私も嬉しいわ いい日本酒に出会えて」
「また一緒に御殿場に行こうよ」
「ええ お願いしますね」
「それと 明日だけど午前中は上原です 午後から銀座に行きます
それと 翔の書類を見てあげてくれる?FAXする前に、、、」
「ええいいわよ 出社したら机にメモを置いておくわ 何かあるの?」
神山はここ3ヶ月の発注量を調べてみるとA社取引高が昨年の
今の時期に比べると 倍近い発注量になっている事に気がついていた
このままでは他社と差がつき過ぎ良くない状態になると考えていた
翔には話をしたがどこまで理解しているか分らないので
チェックをして欲しいと頼んだ
「ええ 私も気がついていたわよ 先日奥村課長も少し考えていたわ」
「やはりな 奥村課長も考えているんだね
僕自身も少し多くなっているとは感じてはいたんだが、、、」
「デザイナーさん皆一緒よ 特に翔君が多くなっているわね」
「そうしたら 明日銀座に行ったら翔と話すよ」
「ええ あの子も悪気があって
他社に発注をしない訳ではないみたいだから でも分かりました」
「そうだよな、、、それでは何かあったら携帯に連絡をください」
「はい 頑張ってくださいね」
「うんお休み」
神山は由香里との電話を切ると
仕事用の電話機に入っている留守電を再生した
【アルタの高橋です お疲れ様です 明日の墨出しですが
8時から現場に入って9時頃から行います お待ちしています】
神山は高橋の携帯に電話をした
「神山ですが 孝ちゃん」
「やあ 山ちゃん 早いね まだ社長は呑んでいるよ」
「うん こちらも仕事が溜まって 先に失礼してきた」
「山ちゃん 申し訳ないけど、、、明日の朝大丈夫?」
「大丈夫だけど だけど一日で墨出し終わる?」
「そこで早くなったんですよ」
「分りました なるたけ早く現場に行くよ」
「了解です それでは頑張ってください」
「それでは 明日」
神山は明日の墨出しが一日で終るか心配で
上原の図面に目を通しもう一度頭の中で整理をした
現状 考えている部分では完璧に仕上がったが
何か発生したら後は現場で微調整をするしかないと思った
上原の図面を片付け銀座の仕事をしようと思ったが
風呂から出た後にする事に決め 湯船に湯を張った
自分の部屋でゆっくりと湯船に浸かるのは初めてで
ここのバスルームから星空を眺めるのも初めてだった
冷蔵庫から御殿場の地ビールを取り出し風呂に浸かりながら呑んだ
アルタから貰った謝礼金の額の大きさや
今夜プレゼントされたロレックスなど
そして由香里との事や祥子そして亜矢子と
運がついているようで怖かった
これは人生に何回しかない「貴重な運」がまとめて来た様で
果たしてこのまま上手く流れていくのか否か
まず女性に関しては3人と分らないように進めるのは難しいだろうし
かといってそのまま放っておくと
他の男に取られてしまいそうでどうしたら良いか悩んだ
ジャグジーを使っているので気持ちよくなり睡魔が襲ってきた
神山はバスから出るとシャワーで頭を濡らしシャンプーで洗い
ジャグジーにボディーソープをいれ躰を洗うとバスルームを出た
祥子の部屋には着替えが色々とあるがここには殆ど無かったので
半袖のTシャツにルームウェアのズボンを穿き
冷蔵庫からビールを出して呑んだ
一息入れると銀座の仕事が待っているのでこなしていった
出来上がった書類から杉田にFAXをした
1時を廻ったが頭が冴えていたので杉田のデザインまで行えた
この部屋で仕事をする事が決まった時にデザイン用品を揃えたが
仕事を進めていくと足りない物が出てくるので
その都度忘れないようメモに書きたしていった
全てが終ったのは2時を少し廻っていたが祥子からの連絡は無かった
神山は昨日同様に造り付けのベッドに入り目をつぶった
暫くすると玄関のチャイムが鳴ったので出てみると祥子が立っていた
「ごめんなさい 遅くなりました」
「まあ いいから入りなよ」
「ええ しかし楽しかったわ」
神山はテーブルの上を片付けビールを出した
祥子は美味しそうに呑むと
「ねぇ 倉元さんて凄く面白い方ね 素敵だわ」
「そうだろ 真面目だけどどこか面白いのさ」
「ええ 今日は久しぶりに笑いどおしだったわ 真奈美さんも一緒よ」
「良かったじゃないか 楽しめて」
「だけど 肝心なあなたが居なかったからつまらなかったわ」
「うん その分仕事していたよ」
「主役抜きの誉め言葉を聞いても全然つまらないわ 本当に」
「おいおい 帰ってくる早々 そんなに言わないでくれよ」
「だって今夜の主役はあなたでしょ 私の大切な人よ」
「分ったよ だから仕事をしていたんだよ」
「大切な人が誉められた時 傍にいたいの わかる?」
「分るよ 本当に でも仕方ないだろ 明日も御殿場に行くんだ」
祥子は目を丸くして驚いた
「どうしたの 又なんで明日なの?」
神山は経緯を説明し祥子に納得してもらった
「ふーん そうすると
今夜頂いたロレックスもその分が含まれているのかしら」
「うん 分らないけど 何しろ忙しくなってきたよ」
神山は立ち上がって 昨日買ったカメラを祥子に見せた
「このカメラセットもアルタで買ってもらった」
「凄いわね 本当に」
「ねっ だから仕事が山となっている訳でして ごめんね」
「ううん いいの そんなに忙しいって知らなかったから、、、」
「そうしたら バスに入ろうよ 久しぶりにどう?」
「ごめんなさい 先ほど女性になっちゃたの だからだめなの」
「そうか だめなんだ 残念だな」
「そうなの だから今夜はお預けなの ごめんなさい」
神山は久しぶりの交わりを期待していたが諦めた
祥子もビールを呑みながら神山を見て俯いた
神山はそんないじらしい祥子を抱きしめキスをした
祥子も久しぶりのキスにこたえた
「ねぇ これ以上はだめ 我慢できなくなるし ねぇ」
「うん 分ったよ」
「そうしたら 今夜は別々に寝ますか?」
「うん 祥子が辛いだろうから いいよ」
「私も寂しいけど、、、だけど明日は起こしに来るわ」
「分った」
「怒らないでね 一緒に朝ご飯を食べて」
「うん 起こしてくれよ ちゃんと」
「はい 本当にごめんなさい」
祥子は俯いて神山の部屋を出て行った
神山は明日行われる上原の図面を準備してベッドに入った
目をつぶったがなかなか寝入ることが出来なかった
(なぜ女性は同じような時期に生理になるのだろう)
(まさか 亜矢子も生理になっているかもしれないな)
(男に生理が無い事は分るが 在ったらどのような形で
或いはどのような躰の変化が生じるのだろう)
(きっと 気持ちよく大きく元気になっても 射精しないとか、、、)
(よかった そんな事になったら大変だ 男でよかった)
神山はそんな事を考えていると 睡魔が襲ってきて寝入ってしまった
4月14日火曜日 快晴
神山は携帯電話の目覚まし機能で起きた
昨日に続き自分の部屋で起きてみると 祥子の温かさが懐かしかった
まだ7時前だが御殿場の準備をする事を考え早めに起きた
今回はカメラの要請は無いが標準ズームを準備し
着替えをカメラバッグに詰めた
昨夜準備した上原の図面を確認していると玄関のチャイムが鳴った
「私です おはようございます 起きていますか」
神山は玄関を開け
「おはよう 昨夜は寂しかったぞ」
祥子の額を軽くつついて キスをするとそのキスに答えた
「朝食の準備が出来たわ 一緒に頂きましょ」
「うん いつもありがとう 先に戻っていて 直ぐに行くから」
「はい 直ぐに来てね」
祥子はまだルームウェアのままだった
神山は部屋に戻るつもりだったので 起きたままの格好で行った
今朝のメニューも純和風だった
祥子は納豆が嫌いだったが神山の前に納豆と生卵が置かれていた
「どうしたの 納豆は嫌いだったはずだろ」
「ええ 今朝の玉子は美味しいと思って準備したの」
「へぇ 玉子が美味しいなんてうれしいな もしかしてコーチン」
「ふふふ そうよ」
祥子は目玉焼きにして準備していた
神山は持ってきた地ビールをコップに注いで乾杯をして食事をした
祥子が美味しいと言った玉子を納豆にかけて食べてみると甘かった
「祥子 この卵 美味しいよ 本当に」
「よかったわ この玉子 あなたが好きだから買ってきたわ」
「どうもありがとう 嬉しいよ」
神山は祥子との生活をありがたいと思っているが 果たして
祥子自身どこまで本気で 考えているものか頭をよぎった
毎日このように朝食を食べさせてもらって
夜は激しいSEXをして 本当にこのままでいいのだろうか
由香里との事もあるし 亜矢子の純情さも捨てがたいし、、、
「どうしたの? なにかあるの?」
「どうして?」
「だって 私が聞いているのに無視されているもの」
「ごめんごめん 仕事の段取りを考えていたのさ
ごめんね もう一回言って」
「だから 今夜は何時ごろお出かけになるのですか」
「うん 銀座が終って上原の墨出しチェックが終ってだよ」
「そうしたら 夕飯はどうされるの?」
「夕飯はぬき と言うよりも軽く食べるけどね」
「そうしたら 今夜と明日の朝食は私一人なのね」
「うん しょうがないだろ」
「そうね お仕事ですものね」
「それはそうと 今夜は見に来るの」
「ええ そのつもりですよ 銀座が残業なので一緒に帰りましょ」
「うんそうしよう 8時ごろには出られるかな?」
「もう少し掛かりそうだけど 何とかするわ」
「そうしたら 僕が終ったら呼びに行くよ」
「ええそうして その方が出やすいから」
「そうだね ではそうしよう」
今夜の予定が決まった二人は 朝食を平らげた
まだ出かけるまで時間はたっぷりとあったが 何も出来ないので
「祥子 こっちにおいで」
神山は祥子を呼び寄せると 久しぶりにおっぱいの感触を確かめた
「何しているの 嬉しいけど、、、」
「だって 久しぶりだろ ほらおっぱいちゃんも喜んでいるよ」
「ば~か 私が喜んでいるんでしょ だめよ、、ねぇったら」
「分りました しかし素直なおっぱいちゃんだ」
「分りましたから 離して お願いだから」
キスをしようとすると 近づけた唇をとうざけた
「どうして おっぱいは良くて 唇はだめなの?」
「ごめんなさい 納豆の匂いがして、、、」
「そうか 悪かった ごめんね」
「いいの 私が食べられればいいんだけど ごめんなさい」
神山は気を取り直して
「今朝のスケジュールはどうなっているの
僕は直ぐに現場に行きますが」
「私は会社に寄ってから銀座ですけど 朝は少し空いています」
「そうしたら 現場に着なよ 基本が分るから」
「ほんと お邪魔しても怒られないかしら?」
「怒るなんて 皆びっくりするよ」
「そうしたら 教えてくださいね 基本を」
祥子は先ほどまでの暗い感じだった顔が一変で明るくなった
普段の明るい顔に戻った顔を見て内心ホットした
自分の生理で神山を満足させる事が出来ないジレンマで
神山のご機嫌をとろうとしていたが 逃げ道が見つかり安心した
「おはよう」
神山は祥子と一緒に上原の現場でアルタの皆に挨拶した
約束の9時にまだ充分な時間に現れた二人に高橋は驚いた
現場には施工を請け負った作業員が墨出しの準備をしていて
高橋の本心としては準備段階を見られることは好まなかった
しかし神山の技量から考えれば誤魔化す事は出来ないし
ありのまま下準備から見てもらったほうが上手く進むと思っていた
「孝ちゃん 久保さんが時間があるので見てみたいと言っているので
現場に来て貰いました お願いしますね」
「山ちゃん 連絡をくれれば 綺麗にしておくのに、、、」
「いいじゃないですか ありのままで」
高橋は祥子に照れ笑いをしながら
「うん 久保さん 不明なところや疑問のところは仰ってください」
「ありがとうございます 神山さんにも言われてきました」
3人は図面やスケールモデルを見ながらイメージを中心に話が進んだ
「神山さん 本当に思ったとおりに出来上がるのですね」
「勿論ですよ アルタの仕事は間違いないですよ」
「久保さん ご安心下さい 神山さんが付いていますから大丈夫」
「嬉しいわ 神山さんお願いしますね」
祥子は時計を見てみるともう直ぐ10時になるので
「では神山さん 私 本社に行きます」
神山は祥子と代々木上原駅の改札口に歩いていった
「ねぇあなた 今夜 必ずお迎えに来てね」
「うん 分った 8時ごろになると思うけど 必ず行きます」
祥子はその言葉を聞いて軽くキスをした
神山は祥子を見送ると現場に戻った
現場監督の高橋と話をしていると直ぐに時間がたった
「山ちゃん お昼はどうするの」
「うん まだ決めていないよ」
「そうしたら いつもの寿司屋に行く?」
「うん いいけど 現場は?」
「彼らと別行動だから平気ですよ」
「では 行きますか」
高橋は神山を誘って上原駅前の寿司屋に入った
神山は高橋に昨夜の出来事を話しロレックスを見せた
「いいじゃない なかなか似合っていますよ いいですね」
「だけど いいのかな こんなに頂いて、、、」
「大丈夫でしょ 社長は嬉しい気持ちを表して贈られたのだから」
「だけどさ 結局はご自分の財布でしょ?」
「う~ん まあ 余り気にしないほうがいいですよ」
神山は高橋の答えで余り詮索をしないようにした
世間話やNHKニュースなどの話題でお昼を食べ終え現場に戻った
墨出しの続きを高橋と見ながら検査していると携帯がなった
「はい神山ですが どうした」
銀座の杉田からの電話だった
「杉田です すみません」
「なにがあった」
「はい 今夜の造花ですが 届いたのを見ると
サンプルと全然異なり困っています」
「倉さんはなんと言っている?」
「質は落ちるがないよりましだろう と言っています」
「うん、、、そうしたら直ぐにサンプルと同じものを
すぐに入れるよう言ったか?」
「まだです」
「それは だめだ 倉さんに替わってくれ」
「倉さん 神山ですが 今 翔から聞きました すみません」
「おう 山ちゃん 来週にでも変えてもらおうや」
「そうですね ご迷惑をお掛けしてすみません」
「おう しかし 今回の件は
山ちゃんが悪いわけではないから心配するな」
「ありがとうございます ここを早く切り上げ銀座に戻ります」
「おう 翔だとどうしても相手が足元見るからな 頼むぞ」
「分りました すみませんが翔と代わってください」
「おう 翔 部長だ」
「はい 杉田です」
「兎にも角にも 納品をさせるな 直ぐに電話で確認してくれ」
「はい すみません」
「こちらが終ったら 直ぐに行く」
神山は杉田との電話を終えると上原の墨出しに集中した
大きな図面を広げ実際との誤差をなるべく抑えるように仕事をした
現場の大工の腕がいいのか アウトラインの墨出しは順調に行われ
細かい所については高橋に任せる事にした
「孝ちゃん これだけきちんと出ていれば問題ないと思うよ」
「そうですね 山ちゃんが居てくれると助かるよ」
「床は問題ないとして 後は柱周りの微調整ですね」
「このままの調子で行けば 多分問題なく済むと思うよ」
「そう願っています では銀座で仕事をしてきます」
「了解です 夜 来られる時までに終っていますから、、、」
「ほんと そう願っています」
神山は現場を出てタクシーで銀座に向かった
銀座についたのは4時少し前で
催事の納品業者が動き出す少し前の時間だった
部屋に入って奥村課長や由香里に挨拶をしながら自分の席に座り
今夜造花を納品する業者に電話をした
「神山ですが、、、」
担当者はまさか神山から電話があると思っていなかったのか
「すみません どうしても材料が間に合わなくて、、、」
神山は駆け引きに出た
「兎にも角にもこちらの要望どおりに出来ないのだから、、、」
「はい すみません、、、、、」
結局 作った物を納めさせ
サンプル同様の造花を出来次第入れ替えをする事で決まった
一年に何回かしか取引の無い所に対してはこのように話が進まないが
月に何回か取引があり
更に大きいイベントのときにも利用しているので融通が利いた
隣りに居る杉田が きょとんとした顔で
「ありがとうございます 助かりました」
「翔 実績を積まないとこうは行かない 間違うなよ」
「はい 分りました」
「おう 山ちゃん良かったな」
「えぇ 倉さんのお陰ですよ」
デザイナー三人で話をしていると由香里がコーヒーを持ってきた
「翔君 部長をちゃんと見習いなさい わかった」
「おう 翔 そうするとすぐに課長だぞ」
由香里を交えて4人で話をしていると奥村課長がきて
「山ちゃん これ店長からだけど、、、」
奥村は店長からの茶封筒を渡した
神山は中を開けると手紙と現金が入っていた
【神山君 ここ暫くの活躍は目に余る活躍で、、、、、、、】
神山は全てを読み終えると封筒の中にある現金を出した
由香里や倉元 そして翔はびっくりした
「どうしたんですか こんなに一杯」
神山は現金が10万円も入っているので驚いた
しかしもっと驚いたのは周りに居る倉元達だった
「課長 どうしたんですか こんな大金 それに2回目ですよ」
「うん この頃の山ちゃんの業績を報告したんだが、、、」
「しかし 池上店長からこんなにどうして、、、先週頂いたのに」
「おう 山ちゃん 店長に電話しろ その方がいいぞ」
神山は倉元の助言で直ぐに店長に電話をした
「やあ 神山君 ありがとう がんばってくれて嬉しいよ」
「しかし、、、」
「それは私からの気持ちだ 受け取ってくれ」
神山は店長から仕事に対するお墨付きを貰ったと確信した
「おう よかったな 山ちゃん 喜んで居ただろ」
「ええ 倉さんありがとうございます」
「なに言っているんだ、、、」
「そうよ いい仕事をされているから店長も誉めたんだわ」
由香里は愛している神山が公に誉められた事に対して
自分が彼を選んで間違っていなかった事に満足した
「それに ロレックスも凄くお似合いですよ 部長」
由香里は皆に認められる空間に神山と一緒に居られなかった事を
残念に思いながら言ってしまった
神山は昨日パーティーに参加していなかった由香里に対し
「ごめんね 由香里姫のお陰だよ これからも宜しくね」
神山は今後の御殿場撮影などを頭に入れた発言をした
「課長 斉藤さんの写真教授 いいでしょ」
「そうだね そうしよう」
奥村も由香里の写真技術を知っているので了承した
「だけど 今夜は一人で行ってきますね」
「はい 頑張ってくださいね」
そんな話をしていると直ぐに閉店時間になった
神山がそろそろ店内に行こうとした時に携帯がなった
「私です お忙しい処ごめんなさい」
御殿場の亜矢子からだった
「いや こちらこそ連絡できなくてごめんなさい」
「私 これから館内を廻りご連絡が取れなくなるものですから、、、」
「いや 本当に申し訳ない」
神山は催事課の入っているビルを出て一人になった
「明日ですが 先日と同じように御殿場駅で待ち合わせしましょうか」
「はい 御殿場駅でお願いします それと今夜お待ちしています」
「ええ お願いしますね」
「はい 気を付けてきて下さい」
神山は電話を切ると入れ替え作業で重要な個所を廻った
後1時間しないうちに出られるので
アルタ横浜支店の田代に電話をした
「神山ですが 田代さん?」
「こんばんわ 田代です」
「あと もう少しで出られるよ 予定通り8時でOKです」
「了解です 8時に着く様頑張ります」
「ごめんね 遅くなって」
「大丈夫ですよ ご心配なく 色々あって今東京本社です」
「えっ なにそれ?」
「ええ やはり社長ですから バンではなくて乗用車で、、、」
「なるほど 大変だね 気をつけてきてね」
「では 8時に待っています」
神山は田代との連絡を終えると7階催事場に行き
リース什器の入れ替えを確認した
ハンガーなど売場の要望どおりの本数を準備しても
時々不足する事があるので余分に準備はしているものの
それを勝手に使われては経費に跳ね返ってくるので
員数チェックはきちんとした
過不足についての相談は杉田が行う事を売場責任者に伝え
地下催事場へ向かった
食品催事場は毎週催事替えを行うが 殆どのリース什器が使え
大きな催事以外は余り神経を使うことは無かったが
それでも 柱周りの飾りつけなど 急に言ってくる事があるので
売場責任者と事前に話をしておく必要があった
丁度 杉田と食品部長が話しているので
「こんばんわ 部長」
「やあ 山ちゃん 今夜は別に何も無いよ しかし凄いね」
「えっ 何がですか?」
「だって 店長から直々に金一封が出たそうじゃないか」
神山は杉田をにらんだが
「山ちゃん 杉田君じゃないよ でどころは」
「そうなんですよ ここに来たら部長がご存知でしたので」
「ええ しかし休み無しで働きどおしです」
「まあ 若い時しか出来ないから 頑張って」
神山は7階催事場の件を杉田に伝えると
「あと 倉さんに挨拶して 上原の現場に行く」
「はい 分りました」
「その後は御殿場の現場で 何時になるか分らない」
「めちゃくちゃ大変ですね」
「何かあったら 携帯に電話してくれ」
「はい 明日は何時に戻られますか?」
「分らないよ なるべく早く戻りたいけどね
今回はアルタの社長も一緒だから」
「はい 倉元さんは先ほど 夕飯に出ましたよ」
「そうか そうしたら 宜しく言っておいてくれ」
「はい」
神山は地下の催事場を確認すると20時になっていた
1階にあるニーナ・ニーナのブティックに行ってみると
浜野たち社員が残業をしていた
久保の姿が見えないので浜野に尋ねると
「すみません 今化粧室に行っています 直ぐに戻ってきます」
「そうですか では受付で待っていますと伝えてください」
「は~い しかし神山部長さんって すごくお忙しいのですね」
「本当に休みが無くて 嬉しい悲鳴さ それでは失礼するね」
「頑張ってくださいね」
神山はニーナ・ニーナの社員に手を振って別れると
受付で祥子を待つことにした
外でタバコを吹かしていると 帰宅する従業員達が
「お疲れ様です お先に失礼します」
と言ってお辞儀をして帰っていく
銀座の立地か 皆可愛い従業員たちばかりだった
店内からも残業を終えて出てくる従業員達も可愛かったが
制服姿しか見ていない神山はどこの売場か思い出せなかった
制服で売場に立っていると個性を隠されどの子も同じように見えるが
私服姿を観察すると洋服の好みや化粧など色々と好みが分り
楽しみながら観察をしていると祥子から声をかけられた
「ごめんなさい 遅くなりました」
「もう 終った? 大丈夫?」
「はい ごめんなさい お待たせして」
神山は祥子を連れて パーキングビルに行った
待合室にアルタの田代が待っていた
「お待たせ 田代さん こちらニーナ・ニーナの久保さんです」
「こんばんわ ニーナ・ニーナの久保です」
神山達は簡単な挨拶をして 車をタワーから出してもらった
出口に駐車された車は白いフェアレディZだった
神山と祥子が後ろに座り上原に向かった
「田代さん ボルボじゃないの?」
「今夜はこの車で御殿場です」
綺麗に掃除された車内は 車独特の匂いが無かった
祥子は上原のショップが心配なのか言葉少なかった
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